清陰高校
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小田の一つ年下幼馴染
付き合い済
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小田が進学した夏
長期休みを利用して、○○が彼のアパートを訪れた
「意外とキレイにしとるねぇ」
「あんま、じろじろ見るなや、恥ずかしい」
「しんちゃん、向こうでも部屋にはよく入れてくれたのに」
「それとこれは何か別やろ」
「そうかなぁ〜。
あっ、おばさんから色々作り置き頼まれたから台所借りるね」
○○はそう言って一般家庭の物よりコンパクトなキッチンに立った
付き合い始めて数ヶ月
"彼氏彼女"と言う肩書を得てから、
こうやって二人の時間を過ごすのは初めてだった
(なんか……新鮮や)
キッチンに立つ彼女の後ろ姿を見て彼は思う
散々見てきたはずの彼女の姿
料理してる姿
それが今までとは違う色彩で彼の目に飛び込む
「しんちゃーん。タッパとかあるー」
「あぁー、上やから、俺取るわ」
彼はそう言うと彼女の背後から手を上に伸ばし
キッチンの棚の扉を開ける
「こんくらいので大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
下から見上げる彼女の視線
それと自分の視線が重なった時
彼の中で今までの留めていたものが
プツリとキレて溢れ出す
(あぁー、止められん)
体は思考より先に動く
それはコートに落ちそうなボールを追いかける時の感覚に似ていた
「……しんちゃん」
料理の手を止めた彼女が呟く
彼は彼女の腰に手を回し、背後から抱きしめる
フワっとした髪から香るシャンプーの香りが、
3月までの物と変わらない事に深い安心感を得る
服越しの温もりを愛しいと感じる
「しんちゃん、大丈夫?」
心配そうな表情で彼女は振り返る
彼を見上げる瞳
その表情は昔のままで、不思議と安心する
安心しているはずなのに、
彼女に回す腕にはキュッと力が入った
抱き締められる事
体温を感じられる事
それがこんなにも心を満たしてくれるのを
彼は初めて知った
「しんちゃん」
彼女は彼の手に自分の手を重ねた
水に触れていたせいか、ひんやりしたその手は、温かい彼の手の上で存在感があった
「離れてると寂しいね」
「……」
彼女の言葉に彼は返事をしなかった
無言で相槌の様に腰に回す腕に力を込めた
「電話だけじゃぁ、寂しいね」
「……」
「毎日一緒いられるって、特別だったんだね」
「……」
「二人でいると、気持ちがあったまるね」
彼女の言葉は、彼の口に出来ない気持ちを紡いでいるようだった
それは彼にとって、彼女と気持ちを共感出来ている、分かってくれているという、安心感へと繋がる
「ねぇ、しんちゃん……
そんな悲しい顔しないでよ」
ね?
そう付け足した彼女の言葉に彼ははっとする
自分では気付かなかった
寂しい、会いたい、時間が来ればまた一人……
そんな現実に知らずしらず表情が暗くなっていた
そしてそれに彼女は気付いていた
彼女は重ねた手に力を込める
「一緒に頑張ろうね」
"一緒に"その言葉が彼の心を包み込む
「一緒に……だよ」
離れてたって、すぐに会えなくたって、
いつでも互いを想っている
一人でいると分からなくなる
自分の気持ちも、相手の気持ちも
でも、そんな時間があるからこそ、
今のこの時間に温かみを感じられる
それを彼女の言葉から学んだ
「……」
小田は何も言わず、○○の肩に顔を埋めた
伸びた髪をが彼の頬を撫で、少し顔を動かすと首に唇が触れた
知っているシャンプーの香りと、クセになりそうな甘い香りを感じる
「……ない」
「しんちゃん?」
「離したくないんや」
彼はそう言うとより強く腕に力を込める
「ちょっと前までぇ、単なる幼馴染やったのに……
好きになるだけでこんなに離れ難いんちゅーのは、何か、いかん」
ふんっと鼻を鳴らす彼を、彼女はクスクスと笑う
「そやから……」
彼は小さな声で呟く
「来年には必ずこっち来て、一緒に暮らそうや」
力を込める腕は赤面する彼女を抱きしめる
そんな彼の表情は、とても穏やかに笑っていた
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