清陰高校
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卒業式が終わった
ホームルームが終わった
あとはこの学校を去りさえすれば小田の高校生活は、本当に終わりを告げる
そんな小田は体育館にいた
3年間バレーをした
今年は特に思い出深い
「あれー?
しんちゃん一人?」
体育館に入ってきたのは一つ年下で幼馴染の○○
バレー部のマネージャーである
"後悔ないように二人の時間を作ってやる"
青木が言っていた
それはこの事だったのだと小田は気付く
「まだ、みんな来てない?」
「あぁ、まだ来てない」
卒業式後、バレー部はみんなで送別会を開く
きっと青木が、集合時間をわざと○○だけずらしたのだろう
○○は小田の隣に並ぶ
「しんちゃん、引っ越しいつ?」
「20日。早目にあっち行って、早く練習したいしな」
「相変わらず、バレーバカだねぇ」
ニシシと笑う○○
いつもの笑顔のはずだが、どこか無理やり感があった
小田は卒業後に地元を離れる
幼馴染の二人にとって、物理的な距離が出来るのははじめてだった
「……ちょっとだけ」
○○は俯いて拳握っていた
今、彼女がどんな表情をしているのか小田にはわからない
ただ、今の彼女の声が少し震えている事は分かった
「ちょっとだけ、寂しいね。
しんちゃんが隣にいないのは」
「ちょっとだけか」
「うん、ちょっとだけだよ」
○○はうつむいたまま
彼女の言う"ちょっと"にどんな意味が込められているか、小田にはなんとなく察しがついていた
それはたぶん、彼が彼女の幼馴染であり、また、ずっと意識してきたからである
「なぁ、○○」
小田は彼女の名前を呼ぶ
いつも呼んでる名前なのに、なぜか今は名前を口にする事に緊張がある
「好きやぞ」
バッと俯いていた○○が顔を上げる
口をパクパクとして声が出ていなかった
「今更かもしれんけど……○○が好きなんや」
彼はそう言うと固く握られた彼女の手に、自分の手を重ねた
はじめ驚いたようにビクっとした手を彼は強く握る
彼の顔と握られた手を交互に見つめ、彼女の顔は次第に赤く染まっていく
「これは俺のワガママやけど……
これからも俺のそばにいてくれんか?」
「えっと……それは……」
「幼馴染やお隣さんやなくて、彼女としてや」
再び○○の顔が赤くなる
そして繋がれた手を強く握り返す
「"ちょっと"とか言うなや……俺は結構、寂しいんやぞ」
「寂しいもん……
本当はしんちゃんがいないの凄く寂しいもん!」
「やっと素直になったな」
小田を見上げる○○に、彼は視線を向け笑う
「私だって、しんちゃんの隣ににいたいよ……ずっと一緒にいたい……」
彼女は繋いだ手にもう一つの手を重ねる
「私もしんちゃん、好き」
真っ直ぐな瞳が小田を見つめる
いつも見慣れたその瞳
毎日見てきたその瞳が、今はとても新鮮に感じた
その時
体育館の扉からバタバタっと音がした
二人が振り返るとそこには黒羽はじめ、大隈、青木とバレー部員がそれこそマンガの用に倒れ込んでいた
「こ、これはですね……青木先輩が青春を見れるって言ったから……」
黒羽がそう言うと小田は視線を青木に移す
「送り出したからには結果が気になる訳で……」
「まったく、お前らは」
小田は半分呆れた、もう半分はどこか嬉しそうなため息を吐く
「今行くから」
彼はそう言うと彼女の手を引き部員の元へ向った
今日は卒業式
そして二人の新しい関係のスタートの日