第七特殊消防隊
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「なんで○○は着物を着ないんだ?」
「着物着られないのか○○は?」
賑やかな双子にそう聞かれたのは数日前の事
この浅草で常に洋服を着ている○○に双子は尋ねていた
詰め所の一角
書類が重なる机
○○は第三世代能力者ではあるものの現場に赴く事は少なく
事後処理、書類処理が主な仕事である
「着方教えてやろうかぁ、なぁヒナ」
「着替させてやろうかぁ、なぁヒカ」
うひゃひゃひゃひゃひゃ
「着物持ってない」
『!?』
「私は浅草生まれでも、浅草育ちでもないから縁がなかった」
○○が浅草に務めるようになったのは浅草の大火災の後
一般消防隊にいた○○は浅草火消しが、第七特殊消防隊になる時に事務処理の担当として配属されたのだ
「浅草好きじゃないのか?」
「浅草嫌いなのか?」
「浅草は好き」
○○の言葉にニカっと笑うと双子は外へと遊びに行った
✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤
「○○ちゃん、いるかい?」
「大福のばばぁじゃないか!」
「死にぞこないの、ばばぁか!」
「約束した物を持ってきたよ」
『おぉ!!待ってだぜぃ!!』
「奥にいるぜぃ!」
「書類に埋もれているぜぃ!」
「二人とも案内しとくれ」
『合点承知!!』
いつものように風呂敷を抱えたおばぁちゃんを双子は○○のどこまで案内した
「○○ちゃんにこれを着てほしくてねぇ」
大福のおばぁちゃんへ風呂敷を下ろすと
浴衣の一式を出した
「着物も考えたんだけどねぇ…着るの大変でしょう
それに比べたら浴衣は着やすいし、使いやすいから」
○○は驚いて言葉が出ない
そう言えば最近双子に、着物は着ないのかと言われていたが……
まさか大福のおばぁちゃんが出てくるとは思わなかった
「……なんで?」
「何でってそりぁ、着てほしいと思ったのさ
○○ちゃんに浅草をもっと好きになってもらうためにさ」
大福のおばぁちゃんはニコニコとしている
普段無表情な○○ではあるが、誰が見ても戸惑っているのが分かる様子だ
「ヒカゲちゃん、ヒナタちゃん奥の部屋を借りるよ
○○ちゃん私に着付けさせておくれ」
「準備はできてるぞ、ばばぁ」
「いつでも大丈夫だぞ、ばばぁ」
うひゃひゃひゃひゃひゃぁー
と笑いながら大福のおばぁちゃんと○○を連れて行った
大福のおばぁちゃんは素晴らしい手際で浴衣を着つけた
次は自分で出来るようにと大事なポイントを○○に伝えながら
「はい、出来た
ヒカゲちゃん、ヒナタちゃん、開けていいよ」
廊下で待っていた双子は、ばっと勢いよく襖を開けた
「似合ってんじゃねぇか、なぁヒカ」
「ぴったりじゃねぇか、なぁヒナ」
「浴衣の色はヒカが選んだんだぞ」
「浴衣の柄はヒナが選んだんだぞ」
「○○ちゃんによく似合っているねぇ」
○○の周りをくるくると周り双子はニコニコする
浴衣を指差して、うんうんと頷く
『次は紺炉だ!!』
「ぇっ?」
双子は○○の手を引っ張り紺炉のいる所まで連れて行った
「紺炉ー!」
「○○を連れてきたぜぃ!」
「ヒカヒナ、思ったり早かったな」
「はばぁが張り切ってやがった!」
「あれはばばぁの最期の輝きだ!」
「お前ら……それ本人の前で言ってないだろうな……」
双子がうひゃひゃひゃひゃひゃぁーと言っているのを聞いてから、紺炉は目の前に立つ○○を見た
「こりぁ、また……。あの、ばぁさんいい仕事しやがったな
もしかすると本当に最期かもしれねぇ」
「紺炉……」
「綺麗ですぜぃ
○○は整った顔立ちしてるから洋服も似合うが……これはこれで見惚れちまうな」
「……」
「照れる事はねぇよ。さぁ、次は俺の番だ
ここに座ってくれ
ヒカヒナは紅を探しとけよ」
『合点承知!!』
双子はぴゅーと駆けて部屋を飛び出す
○○は紺炉に言われるがまま畳に座る
「髪を触るぞ……練習はしたんだが……もし痛ければ遠慮なく言ってくれ」
「……」
紺炉は手際よく○○の髪を解かす
結んだり、編んだりをとても器用に進めていく
「ヒカヒナで練習はしたんだが、○○の髪はまた違うな」
そう言えば最近、双子の髪型が違っていた
いつものお団子ではなく、シンプルだったり編み込んであったり……
「出来だぞ」
紺炉は近くにあった鏡を、○○に渡す
「……上手」
「○○の為に練習しましたので」
ぽんと肩に手を当てられ、頬が熱くなるのが分かった
「仕上げにこれは……俺から」
整えられた髪に一つの簪が着けられた
シンプルだか丁寧な細工のある素敵な簪
「○○に似合うかどうか不安だったんだがぁ、良かった。よく似合ってる」
「……」
「綺麗だぜ○○」
鏡を見る○○の耳元で紺炉は囁いた
「紺炉ー!若が見つかったぞ」
「紺炉ー!若はいつもの縁側だ」
しゅっと勢いよく襖を開ける双子
「キレーじゃねぇか○○!」
「似合ってんじゃねぇか○○!」
『いい仕事すんじゃねぇか、紺炉!!』
「はいはい。ところで紅は縁側だったな」
『そうだよ!!』
「さぁ○○。次は紅の所ですぜぃ」
紺炉は○○に手を差しだす
ここに手を載せろと言わんばかりである
○○がそっと手を乗せると「足元気をつけて」と言って歩き出した
『若ー!!』
双子は縁側に座る紅丸の、肩に飛びついた
「出来たのか?」
『おぅよ!!』
足音に気付き紅丸は振り返る
そこには紺炉に手を引かれた○○が立っていた
「○○か……」
ほぅ……と顎に手を当てる
「馬子にもい……」
そこまで口にすると両肩の双子に着物の袖で殴られた
「紅丸、紺炉、ヒカゲ、ヒナタ……
これはいったい……」
ここ1時間程で浴衣を着させられ、髪を整えられ○○は何がなんだか分からない
「待ってろ○○、なぁヒナ」
「ほら最後は若だろ、なぁヒカ」
両肩の双子は紅丸をニヤっと見る
さぁさぁと言わんばかりにそわそわしている
「○○……」
紅丸は照れた様に頬を人差し指でかく
「はっぴーばーすでぃ」
パン、パーンとクラッカーの音が紅丸の言葉の後響く
両肩の双子はニヤニヤしながら使用後の筒をもっている
「たん……じょう…び」
そう言えば今日は自分の生まれた日
そんな事はすっかり忘れていた
「"さぷらいず"ってやつだ。○○誕生日おめでとう」
紺炉はそう言って優しい笑顔を向ける
「皇国じゃぁ、クラッカーすんだろ」
「みんなでケーキ食べんだよな」
『森羅に教えてもらったんだ!!』
あひゃひゃひゃひゃひゃひゃぁー
と双子は笑う
「これからも一緒に浅草を守んぞ」
紅丸は法被の袖に手を突っ込んでいる
照れているのが分かった
「……とぅ」
少しの間俯いていた○○は顔を上げる
「ありがとう」
その笑顔は天下一品
ここ浅草の誰よりも美しくキレイな笑顔だった