第1特殊消防隊
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彼女の事をフォイェンは、ずっと前から知っていた
板橋区担当の消防士である事
消防官に匹敵する程の火力を持つ第三世代である事
数年前に出向という形で第七特殊消防隊にて、書類を担当している事
そしてあの炎よりも深く赤い瞳に自分の姿が映っていない事
(果たして、何年越しの片思いでしょう……)
彼女を知ったきっかけは大したものではない
第1特殊消防教会に来ていた消防士の彼女と廊下ですれ違ったのだ
凛とした姿
なのにどこか壊れてしまいそうな儚い姿
その二つを持ち合わせる彼女から視線が外せなかった
少しの時間があれば彼女を探す
好きな読書でさえ、手につかない時もあった
あぁ、これが恋なのだとしみじみと感じた
その日から彼女の話題は些細な事でも耳が拾ってしまうようになった
自分を知りもしない彼女の話を耳にしては、
彼女を深く理解していく
いや、理解した気になっていく
話かける機会がなかった訳ではない
教会内ですれ違う時
消防官の会議の時
当たり障りない話題で声をかけても良かった
だが、そこで終わってしまう事に恐れを感じた
話しかけて名前すら覚えて貰えなかったら
話が続かず、微妙な空気になってしまったら
臆病な自分ばかりが前に出る
影で見ているだけなら、いつまででも許される
想い続ける事が許されるのだ
(でも、片思いも終わりにしなくてはですね……)
数週間前、烈火が死んだ
そして彼自身、片腕を失った
日常が不変でない事を身を持って知ったのだ
彼女を追いかける日常はいつまで続くのか
恋い焦がれる日常は無くならないのか
大災害が迫るこの世界で何一つ信じられるものなんてない
もし、信じられるとするならば、
それは自分の意思のみである
彼女を想うこのどうにも自分では消化しきれない
込み上げてくる恋慕は何も間違っていない
変わりゆく日常で一つ好機が生まれた
カリムが第8特殊消防隊を出入りするようになった
そして、大隊長である桜備と旧友である彼女もまたそこを出入りする
(この機を逃してはダメですよね)
次に彼女を見かけたら声をかけよう
なんと声をかけるのか
カリムがお世話になっております
読書はお好きですか
お強いと聞いています
浅草はどんなところですか
好きな物は何ですか
彼女と交わしたい会話は沢山ある
彼女をもっともっと知りたい
(でも一番最初は……)
"はじめまして"
そう声をかけよう
そしてあの美しい顔がこちらを向き、
赤い瞳に自分の姿を映したのなら
飛び付きたくなる衝動を抑えて平然を装って微笑もう
長い長い片想いがやっと一歩踏み出せるように