氷帝での出会い編
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*宍戸side
やっと昼飯の時間だ。
今日は腹がへってたから、一段と美味く感じる。
名無しがここにいないのは少し残念だけどな。
「岳人、食事中やで。
きちんと座って食べや」
「このからあげ、めちゃくちゃうまいぞ、侑士」
「…あかん、全然聞いてへん」
いつものメンバーの、見慣れた光景。
跡部は時々こういう場を設ける。
跡部なりの部長としての気配りかもしれねぇ。
「実は俺、最近知り合って今日ここに誘ったやつがいたんだけどよ。断られちまった」
俺は何気なく名無しの話を切り出した。
「A~、そうなんだ。どんなやつ?」
ジローが身を乗り出して聞いてきた。
「どんなって…そうだな。普通だぜ?普通の、いいやつ」
「A~?よくわかんないC~」
そんなこと言われてもなぁ。
名無しは女子にしては接しやすくて、普通で、なんかいいやつで…。
「3年になって同じクラスになったのか?」
「いや、長太郎と同じクラスのやつだ」
そう答えると、岳人は口をもぐもぐさせながら、えっ、と驚いた。
「鳳と同じクラスってことは2年だろ?いつの間に仲良くなったんだよ」
「長太郎のクラスに行ったときに、たまたまな」
「何にせよ、宍戸がわざわざこの場に誘うとは珍しいじゃねーか。
鳳、そいつのこと知ってるんだろ。どういうやつなんだ」
言いながらも、ナイフとフォークを無駄なく動かして食事を進める跡部。
「えーと、そうですね…。
何ていうか…、そう、自然な子ですよ。飾り気がないっていうか。
一緒にいると、こっちも自然でいられるんです」
「ふうん。そうなんや…
……………って、ちょい待ち」
………………………。
…?なんだ、この間。
「今、俺の聞き間違いやなかったら“子”って聞こえたんやけど」
「え?はい、言いましたけど…」
………………………。
だから、なんだよ。この間は。
「ほんなら、さっきから話に出とったのって、もしかして…女の子なん?」
「え?そうですよ。言ってませんでしたか?」
「…聞いてへん」
「A~!!マジマジ!?」
「ほ、ほんとかよっ、宍戸?」
「ちょ、ジロー、岳人!
おまえら口にものいれたままだろ!汚いだろーが!」
ジローと岳人がすげぇ勢いで詰め寄ってきた。
ったく、そこまで驚くことかよ?
まぁ確かに、俺にしては珍しいかもしれねぇけどよ。
「クックック…ハーーッハッハッハ!
おもしれぇじゃねーの!
なぁ、樺地」
「ウス」
跡部がいきなり大声で笑いだした。
怖ぇからやめてもらいたいぜ。
「宍戸、まさかお前が女を食事に誘う日がくるとはな」
「食事に誘うって…。
確かにその通りだけどよ、深い意味なんかないぜ」
「照れんでもええやん。
最初はびっくりしたけど、なんや、だんだん嬉しなってきたわ。
また機会があったら連れてきたらええ」
…忍足。
引くくらいに暖かい眼差しで俺を見てるが、それは勘違いだ。
「俺も俺も!俺も忍足に賛成だC~!
宍戸の好きな子、見てみたいC~」
「ジロー、俺は別にあいつのこと……す、す、すす…す、すきなんかじゃ、ねぇんだぞ!」
「楽しみだC~。どんな子かな~」
……聞いちゃいねぇ。
「ちょっと待てよ。俺は嫌だからな、女と飯食うなんて」
言いながらもからあげを口に運ぶ岳人。
よく食うな。何個目だよ。
「女はウルセーし。いくら宍戸の彼女でもなー」
――――――ブハッ
「か、かかかかかか彼女っ?!」
「違いますよ、向日さん」
おおっ、長太郎!頼むぜ!
名無しと俺はただの知り合いだって言ってやってくれ。
俺はメシでむせちまって今しゃべれそうにねぇ。
「彼女はうるさくなんかないですよ。大丈夫です」
…って、おい!
そっちの否定かよ!
「ん~。
…じゃあまぁ、いっか。しょうがねぇなあ」
なに納得してんだよ。違うっての!
「…ゴホッ、おい。
お前ら勝手に話進めんなよ!
あいつと俺はただの知り合いだっつーの!」
「アーン?
そんな話、今更誰が信じるかよ。往生際が悪いぜ」
………………………。
頭いたくなってきた。
「…なんや、もしかしてほんまに何でもないん?」
「そう言ってるだろ」
「好きやゆうのも違うん?」
「べ、べつに好きとかじゃねーよ」
「そうなん?そら残念や」
その寂しげな微笑みやめろ。気持ちわりぃ。
「じゃあその女、お前にとってなんなんだ、アーン?」
「あ?」
「お前は一体何人食事に誘うつもりだ」
…ああ、まあ…それもそうだよな。
本当にただの知り合いだと自分で思ってるなら、俺はわざわざ誘ったりしない。
けど、こいつらの言う好きっていうのとは、なんか違う気がする。
あいつとはまだ知り合ってから日が浅い。
俺はあいつのことほとんど知らねぇ。
でも、一緒にいて感じたんだ。
俺はこいつと…名無しと、もっと仲良くなっていくんじゃないかって。
今こいつらといて感じる感覚に似た感覚を、名無しといるときにも感じた。
…仲間に、なれる気がする。
女と友達だとか仲間だとか、今までの俺はありえねーって思ってたけど、今は違う。
名無しとは、そうなれる…なりたい気がするんだ。
だからこいつらに会わせたいと思ったのかもしれねぇ。
「で?結論は出たのか、アーン」
「は?」
「えらい百面相、見せてもろたで」
「黙って見てたのかよ、悪趣味だな」
……ったく。
まあ、おかげで分かったこともあるし…いいか。
「あいつは………よく分からねぇけど……。
……なんか特別なんだよ」
仲間とかなんとか言うのは、やめた。
俺が分かってればいいことだからな。
さ、メシメシ。
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