合同合宿編
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室町くんと別れて、私は自分の部屋へと向かっていた。
結構汗をかいたから、朝食の準備をする前にシャワーを浴びようと思って。
まだ時間はあるしね。
あー、楽しかったなー。
「名無しじゃねーか」
?
声をかけられて振り向くと、黒羽さんと、ダビ…天根くん、木更津さん、樹さんがいた。
『あ、おはようございます』
「ああ、おはようさん」
「おはよう」
「おはよ」
「おはようなのね」
みんなもうすっかり目が覚めてる感じだ。
『早いですね、皆さん』
「それは名無しさんのほうなのね」
『え?』
「クスクス…。
ずいぶん楽しそうだったね、君たち」
……あ、もしかして。
『み、見てました?』
「うぃ」
うわー、なんかちょっと恥ずかしいなぁ。
見られてるなんて思ってなかったよ。
「たまたま廊下を通りかかったら、お前と室町がコートにいるのが見えたからな。
俺たち以外にも見てたやつら、結構いるぜ」
『えっ、ホントですか?』
黒羽さんに思わず聞き返すと、木更津さんが静かに笑った。
「クスクス…。
しょうがないんじゃない?
あんなふうに練習してたら、目立つよ」
うーん…。
私のあの下手っぷりを結構な人に見られてたのか…。
ちょっと恥ずかしいけど…、まぁいっか。
恥ずかしさより楽しさのほうが勝るよ、うん。
「それよりきのうの話だけどよ」
?
きのうの話?
「おいおい、まさか忘れちまったのか?
俺たちと遊ぶって話だよ」
黒羽さんは笑いながらそう言った。
『あ、その話ですか。
もちろん覚えてますよ』
そんなの、覚えてるに決まってる。
だって嬉しかったもん。
「それはよかったのね。
みんな楽しみにしてるのね」
「名無しさんも物好きだね。クスクス…」
「それでな、今日の昼休みがいいんじゃねーかってみんなで話してたんだ。
お前の都合はどうだ?」
『はい、大丈夫です』
「よし、それじゃ決定だな」
昼休みかぁ。
うーん、楽しみだなー。
あっ!そうだ。
天根くんにあの事も聞かなきゃ。
千石さんと会うって分かった理由のひとつが、私の顔だっていうやつ。
あの約束、ちゃんと覚えてるかな。
『ね、ダビ……』
……………………。
…ハッ!
今、私…………。
天根くんのこと、ダビデって言いそうになっちゃった…!
うわー!どうしよう!?
き、気づかれた…?
「……………」
おそるおそる、ダ…天根くんの様子をうかがうと、天根くんは無言のまま、じぃーっ…とまばたきもせずに私を凝視していた。
だ、ダメだ……。
これは絶対気がついてる…!
冷や汗がダラダラと背中をつたっていく。
どどどどうしよう!
ものすごく、気まずい…。
仲がいいわけでもないのに、あだ名で呼んじゃうなんて…。
気をつけなきゃって思ってたのにー!
よりによって黒羽さん達もいるところで…!
「…名無し、今、ダビデって言わなかったか?」
――ギクッ!
や、やっぱりバレてるー!
思いっきり黒羽さんに指摘されてしまった…。
「確かに言ったのね」
「クスクス…。
俺にもそう聞こえたよ」
樹さんと木更津さんまで…。
『い、言ってません。
きっ、きききき聞き間違いですよ』
う…。
つ、つい否定してしまった。
だって、恥ずかしいんだもん…!
「え?そうか?
ダビデ、お前も聞こえたよな?」
「うぃ」
黒羽さんの問いかけに、コクリとうなずく天根くん。
あ゛ぁぁぁぁぁ…。
もうダメだ…終わった…。
「間違いなく、言った」
心なしか、少し力強く言うダビ…天根くん。
『む…。
い、言ってないもん』
思わず強めに言い返してしまった。
すると、天根くんの眉が、一瞬ピクリと動いた。
「絶対、言った」
ものすごくハッキリと断言する天根くん。
なんかちょっと…。
…むむっ。
『い、言ってないよ』
そ、そうだよ。
ダビデとは言ってない。
あくまで、言いかけただけだもん。
「言った」
『言ってない』
「言った」
『言ってない』
「言った」
『言ってない』
「言った」
『言ってない』
「………………」
『………………』
ゼェゼェ……。
ま、負けられない。
「…なかなかやるな」
『…そっちこそ』
「二人とも、頑固なのね」
「クスクス…。
似た者同士ってやつだね」
「ハハハ、面白い奴らだな」
樹さんと木更津さんと黒羽さんが何か言ってるけど、それどころじゃない。
私と天根くんは向かい合ったままで、こう着状態が続いていた。
…なかなか粘るな、天根くん。
「言った」
『言ってない』
「言った」
『言ってない』
そのとき、ダビ…天根くんの表情に自信の色がさした気がした。
…な、何?
今の余裕の笑みは……。
一体、何をたくらんでるの?
……ゴクッ…………。
「………言いかけた」
!!!
そ、そうきたかーーー!!
『くっ……』
「……フッ」
か、勝ち誇った顔!
くっ……、やられた…。
『こ…降参です』
私は負けを認めた。
確かに私は言いかけた……。
「勝った………」
負けた………。
「名無し、…いい勝負だったな」
『天根くん…。
…うん、そうだね』
爽やかな気持ちでそう答えると、天根くんはふっと笑った。
私も笑って、そのまましばらく見つめあっていた。
…あぁ、全力で戦うのって、素晴らしい……。
「ッハハ、なに健闘を称えあってるんだ、お前ら」
…ハッ。
いつの間にか主旨が変わってた。
なぜこんなことに…。
「ダビデと名無しさん、意外といいコンビなのね」
「クスクス…。
二人で変な世界作り上げてたしね。
なんだか二人の周りがキラキラしてたよ」
…うっ。
返す言葉もない…。
「お前らなかなか気が合いそうだし、そもそも同い年なんだ。
ダビデ、のほうが言いやすいなら、そう呼べばいいんじゃねーか?」
えっ。
「ダビデも構わねぇだろ?」
「うぃ。ご自由にどうぞ」
ちょ、ちょっと待って。
「あぁ、何なら俺たちのこともあだ名でいいぜ。
な、いっちゃん、亮」
「それはナイスアイディアなのね。
もちろん、いいのね」
「クスクス…。面白そうだね。
名無しさん、俺のことは、亮でいいよ」
えええーーーーーっ!!
そ、そんな優しく言われても…。
『あ、あのっ。
今までどおりでいいです、今までどおりで!
そ、そう言ってくれるのは嬉しいですけど…!』
「なんだ、遠慮なんていらないんだぜ。
俺たち学年とかそういうの関係なく、みんなあだ名で呼びあってるしな」
「バネの言うとおりなのね。
サエも剣太郎もOKするはずなのね」
「というより、剣太郎はむしろ大喜びするんじゃない?…クスクス」
…………………。
な、なんて垣根の低い人達なんだ。
誰とでも仲良くなれちゃいそう…。
…とか感心してる場合じゃなかった。
『えっと…ありがとうございます。嬉しいです。
でもやっぱり今までどおりで…』
百歩譲って、ダ…天根くんとか葵くんならまだしも、上級生のことまであだ名で呼ぶなんて、私には無理だ…。
六角の人達はみんな気さくだから、他の学校の人達よりはまだ呼びやすそうだけど…。
「そうか?そりゃ残念だな。
だがまぁ、無理させるのも悪いしな」
「そうなのね。
もっと仲良くなったら、自然と変わるかもしれないのね」
「クスクス…。そうだね。
そのときの楽しみにとっておこうか」
……ほっ。
本当に嬉しいけど、やっぱりちょっと抵抗があるし。
でも……。
こんなふうに言ってもらえるのって、…嬉しいな。
「名無し」
『なに?ダビ……あっ!
えっと、な、なに?天根くん』
「……」
うわーっ!
考え事してたら、また…。
黒羽さん達も、笑ってるし…。
…ああ、もう!
私のバカバカ!!
心の中で自分自身の頭をポカポカ叩いていると、天根くんがかすかに笑った。
「昼、楽しみにしてるぜ」
『あ…、う、うん。私も』
「お前がダビデって口すべらせるのも、楽しみにしてるぜ」
『あ…、う、うん。私も。
…………って、ちがーう!!それは全然楽しみじゃない!』
「…プッ」
天根くんが吹き出すのと同時に、みんなが大笑いする。
あー、もう、恥ずかしいよ。
でも…。
…うん、六角のみんなと遊ぶの、本当に楽しみ!
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