合同合宿編
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建物のまわりをゆっくり散歩していると、テニスコートが見えてきた。
誰もいないと、なんだかさみしい。
自然ときのうのみんなの姿を思い出す。
…みんな、頑張ってたなぁ。
そのとき、どこからか物音が聞こえてきた。
辺りを見回してみるけど、誰もいない。
気のせいかな…?
そう思うのと同時に、また物音がした。
…やっぱり聞こえる。
これって…ボールを打つ音?
でも、どこからだろう?
誰もいないのに…。
音が聞こえてくる方向を探すと、その先に屋内練習場があった。
まだ少し薄暗いからか、電気がついている。
…誰か、練習してるんだ。
私は音のする方へと足を向けた。
屋内練習場の入り口へとたどり着いた私は、きっちり閉じられた扉を静かに少しだけ開けてみた。
すると途端に中から聞こえてくる音が大きくなった。
中の様子を確認するために、隙間に顔を近づける。
そしてそっと中をのぞいてみると、思った通り、練習している人影があった。
あれは……。
…山吹のユニフォームみたい。
あっ……、室町くんだ!
そこにいたのは、山吹の室町くんだった。
他には誰もいないから、一人で練習してたみたい。
…すごい、こんな朝早くから。
たった一人で…。
コートにはたくさんのボールが転がっていた。
そんな中、黙々とサーブを打つ室町くん。
…一体いつから練習してるんだろう。
……って、ボーッと見てる場合じゃなかった。
何か…何か私にできることないかな。
そうだ、ボール拾いとか――。
そう思って扉を開けようとしたけど…。
待てよ…?
こんな時間に一人で練習してるってことは、誰にも邪魔されたくないんじゃ…。
もしそうなら、私は行かないほうがいい。
でもそうじゃないなら、何か手伝いたいし…。
うーん、どっちだろう。
室町くんがどういう人なのか知ってれば想像もできるけど…。
今のところ、クールそうな人だとしか…。
ううっ、私の情報量少なすぎだよ。
それだけじゃ判断できないし…。
うーん……。
うぅーん…………。
「おはよう、名無しさん」
『あ、おはよう、室町くん』
……………………ん?
「ずいぶん早いな。何かあったの?」
………………………。
『えぇぇぇぇぇーーっ!!?』
私の声が辺りに響きわたる。
目の前には瞬時に耳をふさいだ室町くん。
室町くん、すごいっ!
冷静なうえに反射神経いい!
…なんて感激してる場合じゃなかった!
「そんな大声出さなくても…」
『い、いつの間にそこに!?』
「ついさっき」
『いつから気づいてた!?』
「ついさっき」
耳をふさいでいた手をおろすと、室町くんは淡々とそう答えた。
…び、びっくりしたぁ。
一気に目が覚めちゃった…。
「そんなにびっくりした?」
『したよ…。
気づかれてないと思ってたし』
「そんなところにいないで、入ってくればよかったのに」
『あ、うん、そうだよね』
室町くんて、やっぱりクールだなぁ…。
「…あ、違うな」
『?』
「俺の邪魔になるかもしれないと思って、手伝うかどうか迷ってたんだろ」
『…!』
「気をつかわせてごめんな。サンキュ」
…………………。
室町くんて…もしかして、鋭い?
「それで?」
『え?』
「何かあったから来たんだろ?」
そ、そういえばそんなこと聞かれてたような…。
『…えっとね、ここに来たのは偶然なんだ。
散歩中に物音が聞こえてきたから、気になっちゃって』
「散歩?」
『うん。
なんだか早くに目が覚めちゃって、せっかくだから散歩でもしようかなーって』
「ふぅん。
じゃあ、ひょっとして寝不足?」
『え?』
「きのう、千石さんがなかなか離してくれなかったんじゃない?」
『え…』
室町くんは私を見て静かに笑った。
そ、そうだった。
室町くんもきのうのこと知ってるんだった。
で、でも…。
離してくれなかったって…。
う…、ダメだ…。
顔が熱くなってきちゃったよ。
『そ、そんなことないよ。
明日もあるからって、は、早めに部屋まで送ってくれたよっ』
あぁ、もう。
かみすぎだよ、私。
うー…。
恥ずかしくて、思わずうつ向いてしまう。
すると、室町くんがふふっと笑った気配がした。
「ごめん、知ってる」
顔をあげると、室町くんはまだ少し笑いながら私を見ていた。
「俺、千石さんと同室だから」
……………………。
えぇーっ!
知ってたって…それって…。
つまり……。
「名無しさんのこと、からかった。ごめん」
とか言いながら、まだちょっと笑ってる室町くん。
なんか…気が抜けた…。
冗談かぁ…。
『ダメだよ、室町くんがそういうこと言っちゃ…』
「?
どういう意味?」
『だって…。
室町くんてクールな感じだし、そういう冗談言うなんて思わなかったから』
初めて会ったときからそういう印象だったから、びっくりした。
ちょっと意外。
「クール?俺が?」
『え?う、うん』
だけど、室町くんは驚いたみたい。
「まさか。
全然そんなんじゃないよ」
『え?』
「普通だろ、べつに」
『えっ、そうかな。
私はクールだと思うけど…』
「いやいや、違うって。
千石さんみたいな人が近くにいるから相対的にそう見えるだけだと思うよ」
うーん、そうなのかな?
…って、そうだ。
何か手伝えることがないか聞かないと。
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