合同合宿編
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少しずつ食堂にみんなが集まってきて、私達は配膳に忙しくしていた。
みんな、ありがとうとかお疲れ様とか声をかけていってくれて、なんだか嬉しくなる。
あとはおいしく食べてもらえたら最高なんだけど…。
でもきっと大丈夫。
みんなで頑張ったもんね。
「う~ん、いい匂いだなー」
あ…。
会うのが今一番緊張する人の声。
小坂田さんがキャーキャー言ってるし、きっと間違いない。
おそるおそる顔をあげてみると、予想どおり千石さんの姿があった。
山吹のみんなで一緒に来たみたい。
「やぁ、みんな頑張ってるね。お疲れさま」
うわー、どどどどうしよう!
さっきまであんな話してたからか、まともに顔を見れないよ。
ドキドキして視線を定められずにいると、千石さんとは別の誰かの声が聞こえてきた。
「さっきはごめんな。
千石のせいで、日吉に注意されてただろ」
『えっ?
い、いえ…大丈夫です』
…あ、この人、ミーティングのときに千石さんの隣にいた人だ。
「一応はじめまして、だな。
俺は山吹の部長をやってる南健太郎。三年だ。
よろしくな、名無し」
『こちらこそ、よろしくお願いします』
この人が南さんだったんだ。
なんだか優しそう。
それから南さんは、山吹の人達のことを紹介してくれた。
跡部先輩から壇くんのことだけは聞いてたけど、それ以外の人はミーティングのときに見ただけでまだ知らなかったから、よかった。
「名無しさん。
今日の夕食後の自由時間、何か予定あるかい?」
突然千石さんに声をかけられて、反射的に顔を向ける。
すると私と目が合った千石さんは、ニコッとほほえんだ。
さっきからずっとなかなか千石さんのほうを見られずにいたからか、たったそれだけで鼓動が早くなる。
「キミと話がしたいんだ。
時間もらいたいんだけど…どうかな?」
――“ずっと会いたいと思ってた”
そのとき、さっき壇くんから聞いた言葉が頭をよぎった。
!な、なに思い出してるんだろう。
壇くんは急いでたって言ってたから聞き間違えたのかもしれないし、もし間違いじゃなかったとしても、千石さんはノリがいい感じの人だからみんなにいろいろ聞かれてそう言っただけだよね、きっと。
「名無しさん?
もし都合が悪いならムリしないでね。
オレは明日でもあさってでもいいんだ。ただ、いつでもいいからキミと話したくて」
『い、いえ。
今日の自由時間で大丈夫です』
「ホント?ラッキ~!」
パッと笑顔になる千石さん。
それがなんだかおかしくて、緊張してた気持ちが少しだけ緩んで、私も一緒に笑ってしまった。
「ねぇ、桜乃っ、聞いた?
王子と姫が夜のデートの約束を…っ!」
「と、朋ちゃん、聞こえちゃうよ」
千石さんと私のやりとりをバッチリ見ていたらしい小坂田さんが、まあまあの大きさの声で竜崎さんに話しかけた。
本人としてはひそひそ話のつもりだったみたいだけど、全然そうなってない。
ちょ、ちょっと!
千石さんに聞こえたらどうす――
「?…王子?姫?」
千石さんが不思議そうに首をかしげる。
うわーっ!
千石さんに聞こえちゃった…!
ど、どうしよう!?
とととにかくごまかさなきゃ!
『こ、こっちの話です。
ききききき気にしないでください!』
「ん?そうかい?」
とりあえず納得してくれた様子の千石さん。
…ほっ。
なんとかごまかせたみたい。
よ、よかった…。
それから私は、千石さんと夜の自由時間に会う待ち合わせの約束をした。
緊張するけど、楽しみで…でも少しだけ不安で。
なんだかいろんな気持ちが入りまじってる。
だけど、とりあえず今はやるべきことに集中しないと。
みんなにちゃんと、ごはん渡さないとね。
それにしても…。
こうして改めて見ると、山吹の人達もすっごく個性的だ。
氷帝じゃ見かけないタイプの人もいて、なんだか面白いなぁ。
お手伝いメンバーのみんなと一緒に山吹の人達に順調にごはんを渡していくと、列は無事に最後の一人になった。
…あ、次の人が最後みたい。
この人は室町くん。同じ二年生なんだよね。
ミーティングルームで見かけたとき、サングラスしてて目立ってたからすごく印象に残ってる。
『はい、どうぞ、室町くん』
「サンキュ」
私からお茶碗を受け取ったけど、室町くんはその場に立ち止まったままで。
あれ?
…あ、もしかして。
『量、少なかった?それとも多い?』
「…あぁ、いや。ちょうどいいよ」
?
それじゃ一体…。
…ハッ!
ま、まさか、食べる気になれないとかだったりして…。
サングラスで目が見えないから、表情が分かりづらい…。
「あのさ」
『えっ。な、なに?』
ドキドキ。
「なんか、悪いね。
うちの先輩がいろいろ騒がせたみたいで」
えーっと…。
うちの先輩って…、千石さんのことだよね?たぶん。
『あ、ううん。そんなことないよ』
「そっか。それならよかった」
こっちこそよかった…。
ごはんのことじゃなかった。
「…まぁ、あの人ああいう感じだから軽いヤツに見えるかもしれないけど、結構いい人だから、安心して」
…………。
もしかして、先輩のこと誤解されてるんじゃないかって心配してるのかな?
それに、さりげなく私のことも気遣ってくれてる…。
……おお。
なんか…すごくいい人だ。
「名無しさん?」
わっ、ついボーッとしちゃってた。
『あっ、ごめん。
室町くん、わざわざありがとう』
「君がお礼言うことじゃないよ。
俺が言いたかっただけだから」
それじゃ、と言うと、室町くんはスタスタと歩いていった。
……………。
室町くんて、クールな人だなぁ。
…ふぅ、とにかくこれで無事全員に配り終わった。
つ、疲れたー!お腹すいたし…。
さぁ、私もごはん食べよー。
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