合同合宿編
主人公(あなた)の姓名を入力してください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ようやく予定していた料理が完成した。
みんなで協力して、うまくできたと思う。
青学の子たちは、一生懸命で仲がよくて、みんないい子ばかりだった。
下級生って、可愛いものだなぁ。
さて、あとは配膳するだけだ。
無事に準備ができてよかったなーと思っていたら、ドタバタと誰かが走ってくる音が聞こえてきた。
もう誰か来たのかなと音がする方を見ると、
「すみません!遅れましたです!」
ヘアバンドをした男の子が、息をきらして入ってきた。
えっと、この子は山吹の…確か、壇くん。
「あっ、先輩!皆さんも…、ごめんなさい!
僕…ご迷惑をおかけしてしまったです」
『壇くん、そんなに気にしなくていいよ。
遅れてくるって聞いてたし』
「で、でも…。
先輩達を遅刻させてしまったのも僕なんです。
僕が忘れ物なんかしたから…」
しゅんとして、うつむく壇くん。
何度も頭をさげたから、ちょっと大きめなヘアバンドがずり落ちて、目の辺りにかかってしまってる。
すごく落ち込んでる壇くんを見ていたらなんだか胸が苦しくなって、私はそのヘアバンドをそっと元の位置まで戻してあげた。
「…っ、先輩?」
壇くんがバッと顔をあげた。
その大きな目に、かすかに涙がにじんでいる。
『わざと忘れたわけじゃないんだから、大丈夫だよ。
きっと先輩達も迷惑だなんて思ってないよ』
ミーティングのときに見ただけだけど、千石さんも隣にいた人も他の人達も、怒ってる様子なんか全然なかった。
『私達もそんなこと思ってないし。
ね?だから元気出して?』
「名無しさん…」
壇くんて、真面目な子なんだな…。
私の言葉じゃ役に立たないかもしれないけど、少しでも元気になってほしい。
「そうそう、そんな落ち込むなって。
俺達だけでもなんとかなったし」
「うん、そうだね。
壇くんがいてくれたらもっと早くできるだろうけど」
「夕食の準備もあるから、一緒に頑張ろう。
よろしくね」
「男なんだから、失敗の一つや二つ、気にしてちゃダメよー!」
「合宿がうまくいくように、私たちみんなで頑張ろう?」
青学の子たちが次々に壇くんに声をかける。
「皆さん…。
ありがとうございます…!
僕、これから一生懸命頑張るです!」
みんな…。
なんていい子たちなんだ…。
…ううっ、泣いちゃいそう。
「あ、そういえば私、壇くんに聞きたいことがあったんだった」
「えっ、僕にですか?
何ですか?」
私が一人で涙をこらえていると、小坂田さんがあっさり話を変えた。
……うーん、さっぱりした子だ。
「千石さん、名無しさんのこと何か言ってなかった?」
『えっ…!』
…な、何を言いだすんだろう、この子は。
「名無しさんのこと、ですか?」
「そうよ。
何か言ってたでしょ?
あんなふうに再会したことについて」
「ああ、そういうことですか。
…えーっと、でも僕、急がなきゃと思ってバタバタしてたですから…」
うぅーん…と考え込む壇くん。
いや、そこまで一生懸命考えなくても。
「絶対、何か言ってたはずよっ」
「うーん…。
千石先輩、確かに名無しさんのこと話してたです。
ミーティングのあと、他の先輩とか他校の人達に囲まれて色々聞かれてたみたいですから」
ええーっ!?
「あ、思い出したです!」
「ホント?あんたやるじゃない!
それで?何て言ってた?」
小坂田さんが期待のこもった目で食い入るように壇くんを見つめる。
「“ずっと会いたいと思ってた”」
………えっ。
「千石先輩、そう言ってたです」
辺りがシーンと静まり返る。
「ちょ、ちょっと、あんた達…今の、聞いた…?」
壇くんの答えを聞いた小坂田さんは、興奮を押さえきれないようにふるふると小さく震えながら、みんなの方を振り返った。
「ほらっ!私の言ったとおりだったでしょ?」
すると、竜崎さんがうっとりしたような表情で小さなため息をついた。
「本当に朋ちゃんが言ったとおり…。
はぁ…、素敵…。
まるで、物語の王子様とお姫様みたい…」
はっ…?
王子様とお姫様?
えーっと……………誰が?
「す、すげー。
ホントだったんだ」
「僕達関係ないのに、なんだかドキドキするね」
「う、うん…。
大人の世界って感じだね」
「皆さん、なんの話してるですか?」
…話に、ついていけない……。
「桜乃の言うとおりだわ!
千石さんと名無しさんは、王子様とお姫様なのよっ!」
『ね、ねぇ、ちょっと待って。
壇くんが聞いた一言がたまたま一緒だっただけで、そんな…』
「キャーーーーー!!」
……………。
ダメだ、とりつく島もない。
「おい、お前ら」
『あ、跡部先輩!』
いつの間にか厨房に跡部先輩の姿があった。
全然、気がつかなかった。
「もうじき昼食の時間だ。
準備はできてるのか」
『は、はい、大丈夫です』
「そうか。ならいいが」
絶対気がついてただろうけど、跡部先輩は私達が騒がしくしてたことには何も触れずに厨房から出ていった。
ごはんは完成してたから、見逃してくれたのかな…?
.