合同合宿編
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「千石さんとは、一体どういう関係なんですか?」
…こういうときの女の子って、すごい。
今日初めて会ったばっかりなのに、グイグイ詰め寄ってくるし…。
「と、朋ちゃん。
失礼だよ、いきなりそんなこと聞いたら」
「なによ、桜乃だって気になるくせに」
「それはそうだけど…」
ミーティングが終わって、私はお昼ごはんの準備のために厨房に来た。
ここは厨房と食堂とが一緒になっていて、とても広い。
今回の合宿には男子テニス部の監督でもある榊先生が責任者として同行していて、他にもこの施設の管理人さんとか、何人も大人がいてくれてる。
でも、基本的に自分達でできることは自分達でするということらしい。
だから、私達も頑張らなきゃ。
ということで、お手伝いメンバーが厨房に集まったんだけど…。
厨房に入るなり、待ち構えていた小坂田さんに質問攻めにあってしまって…今に至る。
『か、関係っていわれても…』
小坂田さんの勢いにおされて、思わず一歩後ずさってしまった。
「やっぱり、並々ならぬ関係なんですね?!」
「ちょっと、朋ちゃん…」
詰め寄る小坂田さんと、おろおろしてる竜崎さん。
その後ろで戸惑う男の子が三人。
『ま、前に一回、会ったことがあるだけだよ』
本当のことを言ったんだけど、小坂田さんは不満げな顔だ。
『ね、ねぇ、とりあえずごはん作ろう?
間に合わなかったら大変だし』
「あ、そうですね、そうしましょう。
ね、朋ちゃん」
私の提案に竜崎さんがうなずいてくれた。
しょうがないわねー、とか言いながら、なんとか小坂田さんも納得してくれた。
ほっ…。
よかった…。
今回お手伝いで来たのは、青学の一年生の女の子二人と男の子三人、山吹の一年生の男の子一人、そして私。
到着が遅くなってバタバタしてるらしいから、山吹の子は遅れるっていうことで、今いるのは青学のみんなと私。
――ストトトトトトトン
す、すごい…。
小坂田さんの手さばき…。
あれから私達は分担を決めて、さっそく作業に取りかかった。
その中で曖昧だった男の子達の名前も覚えることが出来て、ひと安心しつつも、私達だけでちゃんと間に合うかどうか少し心配だったんだけど…。
…この様子じゃ、私、かえって足手まといになっちゃうかも。
「それで前に会ったっていうのは、いつどこでどういうシチュエーションで、なんですか?」
――シュパパパパパパ
『ちょ、手元見なきゃ危ないよ!』
「このくらい目つぶってても平気ですって。
それより、千石さんとの話ですよー。
詳しく!教えてくださいっ」
……………。
小坂田さん一人でも間に合いそう…。
千石さんと会ったときのこと、はっきり話したほうが逆にこの話題から離れてもらえそうだから、大まかなところだけ話そう。
べつに隠すようなことじゃないし、いろいろ勘違いしてるだけだろうし。
『あのね、実は…』
「あっ、分かりました!
つまりこういうことですね?」
説明しようとした瞬間、小坂田さんが包丁を置いて、ポンッと手を打った。
「ある日、ある街で、二人は出会ったんです」
『え?』
得意気な顔で、腕を組んでみんなに向かって話し出す小坂田さん。
えーっと…?
「曲がり角でぶつかった二人。
“ご、ごめん!大丈夫かい?”
“こちらこそ、すみません!私は大丈夫です”
しゃがみこんだ彼女にサッと手を差し出す彼!」
――!
こ、これは…!
「二人はひと目で恋に落ちたの!
“ああ、なんて可愛い子なんだ”
“すごく素敵な人…”」
小坂田さんはあっちへこっちへと素早く移動しながら声色まで変えて……たぶん、千石さんと私が最初に会ったときの様子を再現してるみたいだ。
「でもそのときは二人は照れちゃって、うしろ髪をひかれながらも別れるの。
だけどそれからも、どこの誰かも分からない、名前も知らない相手への想いをお互いに募らせていっていた二人…」
……完全に入り込んでる。
涙うかべてるし…。
ふと、シーンとなってる他の子達の様子が気になって見てみると、みんな顔が赤い。
えっ、なぜ?!
ちょ、待って!
これは小坂田さんの想像で…。
「そして…一年後。
招かれたパーティーで、ついに二人は運命の再会を果たすのよっ!」
パ、パーティー?
「たくさんの人であふれた会場で、それでも二人はすぐにお互いの存在に気がつくの!
“き、君は…!”
“……っ!”
“僕のこと…覚えてる?”
“は、はい…”」
う…。
このあたりは見られてたから否定できない…。
…かなり装飾されてるけど。
「ゆっくりとひかれ合うように歩み寄る二人。
“ずっと…君に会いたかった”
“私もです…”」
…って、ちがーう!!
そそそんなこと、言ってないよ!
「感極まった二人は、人目も気にせず、ギュッと抱きしめあう!」
ガシッと、自分の身体を抱きしめる小坂田さん。
「“僕はもう、君を離さないよ”
“私も…離れたくありません”
“僕は、君のことが……好――”」
『ちょーーーっと、待ったぁ!!』
思わず大声で叫んでしまった。
「もう、なんですか?
今いいところだったのにー」
いや、いいところって…。
『私も千石さんも、そんなこと言ってないでしょ!』
「え、そうでしたっけ」
『そうだよ!』
まったく、もう。
「でも、結構イイ線いってたんじゃないですかっ?」
そ、それは…。
当たらずとも遠からずっていうところはあったけど…。
『あ、あってないよ、全然』
「えー?あやしいなぁ」
『あ、ほら!もうこんな時間だよ!
は、早く完成させないとっ!』
「むー…」
思いっきり疑ってる小坂田さんをなんとか説得して、私達は料理を再開した。
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