合同合宿編
主人公(あなた)の姓名を入力してください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ミーティングルームに、みんながポツポツと集まり始めた。
山吹の人達が到着したら跡部先輩に連絡が来るから、そうしたら私が出迎えに行って、部屋じゃなくて直接ここに案内してくることになった。
山吹か…。
山吹といえば、あの真っ白な制服だよね。
街でもすっごく目立ってるから、すぐ覚えちゃった。
あの制服、カッコいいし可愛いけど、自分が着ること考えたらめちゃくちゃ勇気いるよね。
似合うかどうかっていう問題もあるけど、それよりまずすぐ汚れそうで、着てて落ちつかなさそうだし。
えっと確か、青学はセーラー服だっけ。男子は学ランで。
セーラー服も可愛いんだよねー。
でもやっぱり私は氷帝の制服が一番好きだな。
全体の色合いが特にお気に入り。
六角は…どんなのだろう?
今回はみんなジャージで来てるから見られないけど…。
あ、そもそも女の子が来てないから女子の制服は分からないか。
…うーん、ちょっと気になるなぁ。
後で聞いてみようかな。
千葉の学校の人と会う機会なんて、なかなか無いもんね。
他校の人達を見ながら何となく制服のことを考えていたら、
「名無し」
ふいに跡部先輩に名前を呼ばれた。
『はい、なんですか?』
「全員に配布する資料を、他の部屋に置いてきちまった。
取ってきてくれねぇか」
『わかりました』
「悪いな。
お前がいない間に山吹が来たら、迎えには樺地に行かせる。
部屋の場所は――」
場所を確認して、私はさっそく向かおうとしたんだけど…。
「…ちょっと待て」
すぐに跡部先輩に呼び止められた。
何だろうと思って振り返ると、先輩はちょうどそばを通りかかった日吉くんに声をかけた。
「日吉。
お前、こいつと一緒に行ってやれ」
えっ…。
「ミーティングで使う資料を取ってくるよう頼んだんだが、こいつ一人じゃ心もとないからな」
…それは量が多いからだろうか。
それとも跡部先輩の家に行ったときみたいに、また迷いそうだからだろうか。
立ち止まった日吉くんのほうをチラリと見ると、案の定浮かない顔をしていた。
「……わかりました」
不満そうな日吉くん。
私、手伝う為に来てるのに、逆に手伝わせちゃうなんて…なんか悪いなぁ。
それに、二人になるなんて…やっぱりちょっと緊張しちゃうよ。
ここに来たからにはそんなこと言ってちゃいけないんだけど…。
跡部先輩から聞いた場所を伝えると、日吉くんはさっさと先に歩き出してしまった。
は、速い…。
小走りで追いつけたけど、早歩きじゃなきゃついていけない。
『日吉くん、ごめんね』
私は、前を歩く日吉くんの背中に声をかけた。
「何が」
返ってきた声は、不機嫌そうだ。
日吉くん、私が合宿に参加することに反対してたし…たぶん今も納得はしてないんだろうな。
『私、みんなの合宿を手伝うためにここに来たのに、逆に手伝ってもらっちゃって』
「…別に。
お前のためじゃない。
跡部さんに頼まれたから来ただけだ」
『そうかもしれないけど…』
「取りに行かないといけなくなったのは、お前のせいじゃないだろ」
――だから、気にするな。
一瞬、そんなふうに言われた気がした。
………。
なんて、自分に都合よく考えすぎかな、私。
それからずっと無言のまま歩いて、目的の部屋にたどり着いた。
…ふぅ、結構遠かったなぁ。
日吉くんの歩くペースも速かったから、ちょっと疲れちゃった。
日吉くんは平気そう。すごいなぁ。
「ここだな」
『あ、うん』
部屋の中に入ると、確かにそれらしい荷物があった。
これだ。あった、あった。
私はそこにあった荷物の、だいたい半分を手に取った。
あと半分は日吉くんにお願いしよう。
頑張ったら一人でも持てそうだけど、ここまでの距離を考えたらやっぱりきついかもしれない。
日吉くんがいてくれて助かった。
『じゃあ行こっか、日吉くん』
視界の端で日吉くんが残りの荷物を持つのが見えたから、さっそく出発しようと思ったんだけど…。
日吉くんはなぜか私をじっと見たまま動こうとしない。
『日吉くん?どうかした?』
「もう少し、貸せ」
『え?』
あ、私の分、もっと持ってくれるってことかな。
『大丈夫だよ、このくらい』
言いながら少し後ずさったんだけど、日吉くんはスッと距離をつめてきて、私の手から荷物をたくさんとった。
腕に感じていた重さが、フッと軽くなる。
「行くぞ」
そのまま歩き出してしまう日吉くん。
私は慌てて追いかけた。
『ダメだよ、そんなに』
「………」
『私ももっと持つよ』
「………」
…ダメだ。
この様子じゃ、何を言っても聞いてくれなさそう。
…ここは、素直に日吉くんの厚意に甘えよう。
『ありがとう、日吉くん』
「…ああ」
…ちゃんと返事してくれた。
よかった…。
………………………。
日吉くん、たぶんさっきまでよりもゆっくり歩いてくれてる。
来るときは背中しか見えなかったのに、今は少し横顔も見えるから。
『………日吉くん、ありがとう』
私の言葉に、少し不思議そうに日吉くんがこっちを向いた。
「礼なら、もう聞いたぜ」
『…うん。
今のは、さっきとは違うことに言ったから』
日吉くんは少し考えると、そうか、と言った。
わ、分かったのかな…?
ゆっくり歩いてくれてありがとう、なんて、なんだか恥ずかしくて言えないけど…。
でも嬉しいから、ありがとうはちゃんと言いたかった。
前に鳳くんが言ってたみたいに、日吉くんはあんまりしゃべらない。
だから分かりにくいだけで…。
良く思ってないはずの私にも、こんなふうに気遣ってくれる。
本当は……すごく周りのことを考えてる人なんだよね。
.