合同合宿編
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今回の合宿場所は跡部先輩の家が所有する施設……のたくさんあるうちの一つ。
学校からみんなでバスに乗って着いたそこは、とても個人の所有物とは思えない立派な建物だった。
あの豪邸を見たあとなら、もう多少のことじゃ驚かないかなと思ってたけど、想像を遥かに上回っていた。
テニス部のみんなは何度も来ているらしくて慣れた様子だけど…。
あっけにとられていた私に、跡部先輩は建物の中や周辺の設備を案内してくれた。
他校の人達が来たときに困らないように、ちゃんと覚えておかなきゃ。
今までにもここで練習とか合宿をしたことがあるらしいから、他校といっても私より詳しい人もいるかもしれないけど。
一体、どんな人達なのかな。
他校の人達が到着する予定の時間が近づいてきて、私は跡部先輩と二人で出迎えに行くことになった。
着いたら、泊まる部屋まで案内するのが私の役目。
駐車場に面した出入口で並んで立っていると、隣で跡部先輩がちらりと腕時計を見た。
「そろそろだな」
『あ、はい。そうですね』
…緊張するなぁ。
ちょっとわくわくもするけど…。
「なんだ、緊張してるのか」
ドキドキしながら門のほうを見ていると、跡部先輩が声をかけてきてくれた。
このドキドキが伝わってしまったみたいだ。
跡部先輩、するどいからなぁ。
『はい、少し…』
「…フッ」
『あ、なんで笑うんですか』
心配してくれたと思ったのに。
「お前の緊張ほど心配する意味のないものも、なかなか無いからな」
?どういう意味だろ。
「どうせ午後にはけろっとしてるだろう。
いや、そこまでかからねぇか」
言いながら、跡部先輩はククッと笑った。
まあ…確かにそうかもしれないけどさ…。
今は本当に緊張してるんだし、そんな言い方しなくても。
「そう拗ねるんじゃねぇ。
俺はお前のそういう、あっけらかんとしてるところも気に入ってるんだぜ」
『えっ…』
……き、気に入ってる…。
跡部先輩の口からそんな言葉を聞くなんて…思わなかった。
びっくりした…。
そのとき、門の方向からエンジンの音が聞こえてきた。
そっちのほうに目を向けると、一台のバスが駐車場へと入ってきたのが見えた。
「来たな。青学だ」
停車したバスから、どんどん人が降りてくる。
確か青学からも手伝いの人が来てくれるんだよね。
それもあるからか、結構大人数。
跡部先輩と私のほうに歩いてくるその人達を、ついじっと見てしまう。
「手塚、よく来たな」
「ああ。しばらく世話になる」
うわっ。
この人、めちゃくちゃ大人っぽい。
跡部先輩が真っ先に話しかけたってことは、青学の部長はこの人かな?
えっと、手塚さん、だっけ。
「…ねぇ。あんた、誰?」
声がすると同時に視線を感じて、そっちに目を向ける。
すると、帽子をかぶった男の子が私をじっと見つめていた。
雰囲気からすると、一年生かな?
『私は2年の名無しななしです。
この合宿にはお手伝いというかたちで参加するので、何かあれば遠慮なく言ってください。
皆さん、よろしくお願いします』
私は挨拶をして、青学の人達に頭をさげた。
「手伝い?」
顔をあげると、みんな少し驚いたように私を見ていた。
「手塚、お前がそんな顔をするのは珍しいな」
跡部先輩、なんだか少し楽しそう。
「いや、珍しいというならそちらのほうだろう」
「うん、そうだね。
まさか女の子の手伝いの子がいるなんて、思わなかったよ」
「俺のデータでは、今までこんなことは一度もなかったはずだが」
「当然だ。初めてのことだからな」
…みんな私をものすごく見てる。
そんなに珍しいんだ。
「でもあんた、テニス部じゃないんでしょ?」
『え?』
「ジャージ」
帽子の男の子が、私が着ているジャージを指差した。
ああ、そっか。
みんなはテニス部のジャージを着てるけど、私は学校のジャージだもんね。
「ああ、こいつはテニス部員じゃねぇ。普段は生徒会で俺の補佐をしている。
なんの因果か、他のレギュラーとも親しいからな。
それでこの合宿に参加させることにした」
「へぇ…そうなんだ」
…この子、たぶん一年生なんだろうけど、跡部先輩に対しても全然縮こまってるような様子ないなぁ。
うーん…。大物だ。
青学の人達を部屋に案内して、私はまたさっきの場所へと小走りで向かっていた。
すぐ他の学校の人達が来るかもしれないしね。
あれからみんなも私に自己紹介してくれたけど、人数が多いから覚えきれなかった。
覚えられたのは、部長の手塚さんと、あの帽子をかぶった一年生の越前くん。
それから、女の子の小坂田さんと竜崎さんだけ。
…これから頑張って覚えていこう。
それにしても、なんだか大人っぽい人が多かったなぁ。
手塚さんもそうだけど…副部長さんも、メガネの人も、ニコニコしてた人も。
そういえば、越前くん、先輩におチビとか呼ばれてたなー。
クールな感じの子だと思ったけど、ああいうときは普通の一年生なんだなぁ。
元の場所近くまで戻ってきたとき、跡部先輩が見慣れない人達と一緒にいるのが見えた。
あ、山吹か六角の人達が来たんだ。
急がなきゃ。
『跡部先輩、すみません。遅くなりました』
「構わねぇ。ご苦労だったな」
はぁ、このくらいで息があがるなんて、情けないな。
私ももう少しスポーツとかしたほうがいいのかも。
体育のときくらいしか、ちゃんと運動しないもんね。
「あのー、跡部さん。
こちらの方は…?」
跡部先輩の向かいに立っていた丸刈りの男の子が、私を見ながら尋ねた。
「ああ、こいつは手伝いとしてこの合宿に参加する。
名無し、こいつらは六角だ」
跡部先輩の説明をうけて、私は六角の人達に自己紹介した。
すると、さっきの丸刈りの男の子が私の前に歩みでて、ビシッと姿勢を正した。
「僕は、千葉の六角中男子テニス部部長で、1年の葵剣太郎です!
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします!」
へー、この子一年生なんだ。なんだか一生懸命な感じの子だなぁ。
で、この子が六角の部長さん。
…………ん?
部長?
この子…えっと、葵くんが部長…って言った?
『ぶ、部長…?』
「はいっ!」
『えっと…一年生なんだよね?』
「はいっ!」
………。
確か、六角って古豪なんだよね。
一年生が古豪の部長って…。
『すごい!』
「へっ?」
『葵くんて、すごいんだね!
頑張り屋さんなんだー』
部長って、ただ強いだけじゃダメだもんね。
人望とかそういうのも必要だと思う。
古豪なんて呼ばれるような学校なら、なおさらそうじゃないかな。
私、そういうの無いからなぁ。
年下の子がそんな立場で頑張ってるんだと思うと、感動しちゃうよ。
「あの、えっと…。
あ、ありがとうございます」
葵くんは顔を赤くしながらも嬉しそうで。
……………。
なに、このリアクション。
……可愛すぎる。
「ハハッ。剣太郎、よかったじゃないか」
「嬉しそうな顔しやがって」
「分かりやすいのね~」
「クスクス…。
耳まで真っ赤だしね」
「しょっぱなから…好調好調…校長先生。
……………ぷっ」
「うるせー、タビデっ!」
「うわっ!ちょ、たんま、バネさん!……ぐえっ」
六角の人達を部屋に案内して、私はまたまた跡部先輩のところに戻る途中。
先輩達から六角は古豪だって聞いてたから、なんとなく堅い感じかと思ってたけど…全然違った。
緊張してることなんてあっという間に忘れちゃうくらいに、気さくで。
完全な初対面なのに、びっくりするくらいに壁を作らない人達だった。
……でも結局、葵くんしか名前覚えてないよ。
ダビデとかバネさんとかのあだ名のほうは結構覚えてるんだけど…。
みんなずっとあだ名で呼びあってたから、そっちばっかり頭に残っちゃった。
…うん、またあとで覚えよう。
よし、あとは山吹だ。
…と思ったけど、なかなか来ないなぁ。
何かあったんじゃないといいけど…。
「遅いな…」
『そうですね…』
~~~♪~~♪~~
跡部先輩の携帯の着信音が鳴った。
「噂をすれば、だな。南からだ」
『南さん?』
「山吹の部長だ。
………俺だ、どうした」
先輩は山吹の部長さんと話し始めた。
なんか…ドキドキする。大丈夫かな…。
心配で、話している跡部先輩の顔をじっと見つめてしまう。
「ああ、分かった。
……いや、気にするな。急がなくていい。
……ああ、また後でな」
話が終わったみたいだ。
『跡部先輩…』
「アーン?なんて顔してる」
『すみません、心配で』
「安心しろ、大丈夫だ。
忘れ物があったらしくてな。
途中まで来ていたが引き返すことにしたから、遅くなると言ってきた」
『そうですか…。よかったですね』
はぁ…。
事故とかじゃなくて本当によかった。
「そうだな」
跡部先輩は小さく息をはいた。
先輩も心配してたんだな…。
「よし、戻るぞ。
とりあえず、今いるやつらだけで始める。
じきに山吹も来るだろうからな」
『はい』
歩き出した跡部先輩と一緒に、みんなのところへと向かった。
まずは、全体ミーティングだ。
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