氷帝での出会い編
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「だ、駄目だ…。
もう嫌な予感しかしねぇ」
「…同感です」
「みんな同じみたいですね…」
「A~?なになに~?」
「ほら、やっぱ俺のせいじゃねーだろ?」
「はぁ……。
あいつ…タイミング悪すぎやっちゅうねん」
この騒ぎの大きさとこれまでの流れからして、その中心にいるのが誰かなんてもう考えなくても分かってしまうけど…。
もし本当にその人だった場合、ここが更にすごい状況になってしまうのは目にみえてる。
予想が外れていることを願いつつ、おそるおそる、今日何度目か教室の入り口に目を向けた。
「一体なんだ、この騒ぎは。アーン?」
キターーーーーーーー!
やっぱり跡部先輩、キターーーーーーーーーーーーーー!!!
一気にざわつく…なんてもんじゃない、大騒ぎの教室内。
「名無しのクラスはここで間違いねぇな、樺地」
「ウス」
か、樺地くんまで一緒に…。
「ったく、どうなってやがる。
おまえら、道をあけろ」
跡部先輩の一声で、サッと道ができる。
この光景、何かに似てる。
えーっと、なんだっけ。
モーゼ…、モーゼの…。
…あー、ダメだ。
何かもう、頭がクラクラしてきちゃった。
その開けた道を、スタスタとこっちまで歩いてくる跡部先輩。
なんかすごい光景だけど、先輩は何も気にしていないような涼しい顔だ。
「この俺が直々に来てやったぜ、名無し」
『こ、こんにちは…跡部先輩』
「今日の放課後の件で話があってな」
「跡部、自分タイミング悪すぎやで」
「アーン?
おまえらこそ、なんだってこんなところに集まってるんだ」
うーん…。
何のんきに挨拶してるんだろう、私。
教室どころか廊下まで人で溢れかえって、女の子たちの悲鳴みたいな歓声がすごくて…。
なんだか、ちょっと…めまいが…。
「名無しさん?」
『鳳くん…』
ふと隣を見ると、鳳くんが心配そうな顔をしていた。
…あ、なんかクラッとしたような気がしたけど、一瞬だったみたい。
もう平気だ…よかった。
「大丈夫?顔色悪いような…」
『あ、大丈夫。
一瞬クラッとしたような気がしただけ』
私がそう答えると、鳳くんは難しい顔をして広げていたお弁当を片づけ始めた。
『鳳くん?どうしたの?』
「名無しさん、宍戸さんと日吉も。
お弁当、一旦片づけて」
「長太郎?」
「すみません、早くお願いします。
それで、ここから脱出しましょう」
「は?…脱出?」
さすがに日吉くんも驚いたみたいで、ポカンとしてる。
「そうだよ。
日吉だってこの状況の中にこれ以上いたくないだろ?」
「あ、あぁ」
日吉くんと宍戸先輩が納得した様子でお弁当を片づけ始めた。
わ、私も片づけよう。
このままここにいるのはちょっと息苦しい。
でも脱出っていっても、どこに…。
全員片付け終えたのを確認して、鳳くんが他の先輩たちに小さな声で提案した。
「先輩、部室に移動しませんか?
このままだと騒ぎがおさまりそうにないですし」
部室…なるほど。
「アーン?
なんでわざわざ移動するんだ。
放っておけばいいだろうが」
「跡部が来てからめちゃくちゃ人が増えたC~」
「跡部が来てからめちゃくちゃうるさくなったぜ」
「…………………。
チッ…しょうがねぇな」
「こうなったらしゃあないな。
鳳が正解や」
「よし、行きましょう!
せーのっ!」
鳳くんの声を合図に、私たちは跡部先輩が通ってきた道を逆戻りでダッシュして教室から脱出した。
なんとか教室からは無事出ることが出来た。
でも…。
後ろから追いかけてくる子たちが!
みんなは足が速いけど、私は普通の中二女子の足の速さしか持ち合わせていない。
みんな私のスピードに合わせてくれてるから、なかなか振りきれない。
部室に行くつもりだってバレちゃったら意味ないし…。
……って、女の子たち、速い!
ちょっと振り返ってみたら、後ろから集団が迫ってきていた。
な、なんで!?
私だって、決して足は遅くないのに!
どうしよう。
このままじゃ……。
「跡部さんっ」
「なんだ、鳳」
「すみませんっ!」
「アーン?」
――――――ドンッ
「うっ…?!」
走りながら突然、鳳くんが跡部先輩の肩の辺りを押した。
その反動で足が止まった跡部先輩は、女の子の集団にあっというまに追いつかれてしまった。
「すみません、跡部さんっ!
さぁ、先輩たち!この隙に行きましょう!」
「……鳳、おまえ結構えげつない手使うな…」
大勢の女の子たちに囲まれてしまった跡部先輩を振り返りながら、青ざめた顔で日吉くんがそうつぶやいた。
まだ追いかけてきていた子たちを振りきって、私たちはようやく部室へとたどり着いた。
みんなが部屋に入ったあと、辺りの様子をうかがいつつ扉を閉めて、おでこの汗をぐいっとぬぐう鳳くん。
「…ふぅ。
なんとか無事まいたみたいですね」
「……………。
自分…、なんかキャラ変わってへん?」
心なしか、若干引き気味の忍足先輩。
た、確かにちょっと…そうかもしれないけど…。
…でも、鳳くんにそうさせたのは私だ。
みんなだけなら普通に走ってたって大丈夫だった。
そもそも私がちょっと具合が悪くなったなんて教室で言っちゃったから…。
体力的にっていうより精神的に疲れたらしいみんなは、それぞれソファーに座ったり壁に寄りかかって一息ついていた。
私は鳳くんに謝りに行ったけど、鳳くんは自分もあのまま教室にいたくなかったから、私の為だけじゃないし気にすることないよって言ってくれた。
むしろ、具合よくないのに無理に走らせてごめんねって謝られてしまった。
だけど、鳳くんが私を心配して教室から移動することを提案したのは間違いないと思う。
だから、跡部先輩が戻ってきたら鳳くんの代わりにちゃんと謝らないと。
それにしても…。
やっと静かなところに来られた。
はー…、疲れた……。
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