氷帝での出会い編
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*二年生女子side
「ねー、ホントに理解に苦しむわよね」
「そうよ。どうしてあんな子が」
「地味すぎて、存在してることにさえ最近まで気がつかなかったもの」
放課後の教室。
私は仲がいいグループのみんなと、いつものようにおしゃべりをしていた。
私達のあいだで最近よく話題にのぼるのは、もっぱらあの子のこと。
あの跡部様たちと親しくしている、あの地味な子のこと。
納得いかないわ。
同級生だっていうのに、つい最近までいることすら知らなかったような地味で冴えない子が、あの跡部様を始めとするテニス部のレギュラーの方々と親しいなんて。
あの方々は私達女子みんなの憧れなのよ。
美人だったり頭脳明晰だったり家柄が良かったり…。
そういう突出している何かがあるなら、まだ理解も出来るけれど。
あの子…名無しさんは何もないじゃない。
顔もスタイルも勉強もスポーツも家柄も何もかも、十人並みなんだもの。
生徒会に入ったのだって、私達からすれば図々しさの極みだわ。
生徒会は選ばれた優秀な生徒のみが入ることを許される場所なのよ。
あんな冴えない子がいていい場所じゃないの。
だから私達は遠慮して、手を挙げることさえできずにいるっていうのに。
私達のほうがあんな子よりずっと、女子として、氷帝学園の生徒として、優れているのに。
なのにどうして、跡部様たちはあの子と親しくするのかしら。
どうしてあんなに可愛がるのかしら。
あの子はそれをたいしたことじゃないようにあっさりと受け入れているみたいだし…。
分かっているのかしら。
テニス部のレギュラーの方々は特別な存在なの。
地味で目立たなくて冴えなくて何の取り柄もないあんな子が、あの方々と親しくしてる今の状況がおかしいの。
…やっぱりどう考えても、納得いかないわ。
次の日。
私は同じクラスの樺地くんに、話を聞いてみることにした。
直接聞くなんて少し下品だけれど、この際しょうがないわ。
「樺地くん。
ちょっと聞きたいことがあるの。今いいかしら?」
「…ウス」
私は廊下を歩いていた樺地くんを呼び止めた。
「突然ごめんなさい。
聞きたいことっていうのは、名無しななしさんのことなの」
「……」
名無しさんの名前を出したら、少し樺地くんの表情が変わったような気がしたのは気のせいかしら。
「回りくどいのは嫌いだから単刀直入に聞かせてもらうわ。
跡部様たちは、どうしてあの子と親しくしているの?
あの子のどこにそんな魅力があるというのかしら?」
「……」
樺地くんは何も言わずに私の目をじっと見た。
樺地くんは跡部様の近くにいつもいるから、きっと答えを知っているはずだと思ったのだけど…。
「………話をしたことは…ありますか」
「え?」
「名無しさんと…です」
名無しさんと話?
そんなの、あるわけないじゃない。
あの子と私は住む世界が違うのよ。
「ないわ」
「…話をしてみれば…分かります」
話を?
どうして私がそんなことしないといけないのよ。
そのまま樺地くんは歩き出そうとする。
まだ私の話は終わってないのに。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「話してみれば…あなたも…分かり…ます」
それだけ言うと、樺地くんは私の横をスッと通りすぎて、どこかへ行ってしまった。
話…?
私が、名無しさんと?
本当にそれで分かるのかしら。
…………………。
いいわ、試してみてあげる。
その日の放課後。
あの子を探していると、廊下の先にその姿を見つけた。
誰かと一緒みたいだけど…。
あれは……忍足先輩!
……やっぱり納得いかないわ。
どうみても釣り合っていないもの。
私は二人のほうに真っ直ぐ歩いていって声をかけた。
「忍足先輩、お話中、申し訳ありません。
名無しさん、ちょっといいかしら」
名無しさんは目を白黒させてる。
驚いているみたいね。
『え、私?』
「ええ」
当然だわ。
今まで接点なんて何もなかったんだもの。
『えーっと、…なに?』
「あなたと話がしたいの。
今日これから時間もらえる?」
『えっ?…あ、うん、それは大丈夫だけど…』
「そう、ありがとう。
じゃあ、そうね…カフェテリアに行きましょうか」
『う、うん』
「忍足先輩とのお話が終わったら私のクラスまで来てくれる?B組だから」
「ああ、気ぃ使わんでもええ」
彼女の隣にいた忍足先輩から声がした。
「ただ世間話しとっただけやし、大丈夫やで。
ななしちゃん、一緒に行っておいで」
『あ、はい』
…私、今、忍足先輩に声をかけられたわ。
……………。
やっぱり、素敵…。
『じゃ、じゃあ行こっか』
「えっ?あ、そうね」
いけない。
ついボーッとしてしまったわ…。
本当に、素敵……。
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