氷帝での出会い編
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樺地くんに連れられて戻った私は、案の定みんなに笑われてしまった。
まぁ、しょうがないけどさ…。
中学生にもなって迷子だもんね…。
なんとか気をとりなおして、今はみんなでデザートを食べようとしてるところなんだけど…。
これがまた…すっごく、すっごく、かわいい!
フルーツいっぱいのタルトとか、ぷるぷるのババロアとか…。
どれも本当においしそうでかわいくて…。
思わずにやけちゃう。
この完成形を崩してしまうのがもったいないけど、おいしそうだからひとくち…。
パクッ。
―――――――――!!
お…、おいしいっ!
『おいしーっ!!
これっ、すっごくおいしいです!!』
おお…。
もったいないと思いつつも手がとまらない。
こんなにおいしいものがこの世にあるとは…。
学校のカフェテリアのだって感動するくらいおいしいけど、それをさらに上回ってるよ、これ。
「お前のためにつくらせたものだからな。
お前の口にあったなら何よりだ」
『跡部先輩、ありがとうございます!
もう、口に合いまくりです!最高です!』
「フッ。そうか」
跡部先輩は満足そうな顔で小さく笑った。
ここに来た経緯を思うと我ながら現金だと思うけど、おいしいものはおいしい。
「ななしもそういう顔してると普通の女子だよなー」
そう言いながら、向日先輩はモグモグと口いっぱいにケーキを頬張った。
『?それは普段は普通の女子じゃないってことですか?』
うーん。
私は一体どんなふうに思われてるんだろう。
私、普通だと思うけどなぁ。
「なんかななしはさ、もっとこう……ポヘーっとしてるんだよ」
…ポヘー?
…………??
全然分からない…。
「あ~、それ分かるよ~」
「俺もなんとなく分かりますよ」
「俺もや」
「俺様もだ」
「俺も分かるぜ」
「ウス」
「……」
えっ。
な、なにが分かるんだろう…。
そもそも向日先輩と芥川先輩とは今日会ったばっかりなのに。
うーん……?
私が一人で悩んでいると、鳳くんがクスッと笑った。
「名無しさんはそのままでいいってことだよ」
『え?…う、うん』
よく分からないけど…鳳くんがそう言うなら…。
まぁ、いっか。
「そうだ、お前ら。
来週の連休、あけておけよ」
「来週?何かあるん、跡部」
話をきり出した跡部先輩にみんなの視線が集まる。
「ああ、他校との合同合宿を計画してる」
「合同合宿?」
「どの学校が参加するんですか?」
へぇ、合同合宿かー。
テニス部、強いもんね。
やっぱりそういうのしてるんだ。
「青学と山吹、それと六角だ」
「六角も参加してくれるんですか?
遠いのに、ありがたいですね」
「そうだな。
強いやつらと練習するのはいい刺激になるぜ」
…テニスの話になったとたん、みんな目つきが変わった。
あんなにたくさんいるテニス部の中のレギュラーなんだもんね。
…………。
やっぱりすごいなぁ、みんな。
よし、私は私で頑張ろう!
さっき樺地くんのおかげで、そう決心できたんだから。
『跡部先輩、生徒会のことで何かあれば言ってください。
私に出来ることは私がやりますから』
「アーン?何言ってやがる」
『え?』
私、何か変なこと言ったっけ?
「おまえも参加するんだよ」
……………………。
今のは聞き間違いだろうか。
私も合宿に参加するんだと言われたような気がするけど…。
「…跡部さん、今なんて言いました?」
隣で鳳くんの驚いたような声がする。
そりゃ鳳くんだって…というよりみんなびっくりするよ。
でも…それじゃやっぱり聞き間違いじゃ…ない?
「合同合宿には名無しも参加する。
合宿を効率的に行うために手伝ってもらいたいことがいろいろあるからな」
……………。
『えええーーっ!?』
な、なんてこと言い出すんだ、跡部先輩は。
私、テニス部員じゃないよ。
「A~!マジマジ?
ホントにななしちゃんも来るの?」
「そら大歓迎や。
男だらけのむっさいところにななしちゃんがおってくれるんなら、楽しなりそうやで」
「名無しさんさえよければ参加してみない?きっと楽しいよ」
「そうだな、予定が無いなら来いよ。
お前なら歓迎するぜ」
「ななしも来るなら面白くなりそーだな。楽しみだぜ!」
みんななんだか盛り上がってるけど…。
『あの、ちょっと待ってください。
そんなこと、急に言われても…』
「アーン?今度は事前に言っただろうが」
『た、確かにそうですけど…』
「何か予定があるのか」
『いえ…ないですけど』
「なら、決まりだな」
う…、どうしよう。
生徒会のことは頑張るって決めたけど、テニス部の活動に関わることなんて全然考えてなかったから…。
「ちょっといいですか」
……!
「……なんだ、日吉」
突然の事態に私が軽く混乱していると、ずっとほとんど無言だった日吉くんが、チラリと私を見て話しはじめた。
「なぜこいつを部の合宿に参加させるんです?
こいつは部外者ですよ」
日吉くんの言葉が胸に突き刺さる。
日吉くんの言う通りだ。
私は部外者だ…。
「跡部さん、…いえ、他の先輩達も鳳も。
公私混同しているんじゃないですか。
こいつと親しくするのは構いませんが、部にそれを持ち込まないでください」
…………。
ど、どうしよう。
私、なんて言ったら…。
「公私混同じゃねぇ。
氷帝が主催した合宿なんだ。ウチからも手伝う人間を出すのが筋ってもんだろう」
「今までは出さずにいたでしょう」
「適任がいなかったからな。だが今は名無しがいる。
出さない理由はない」
「…っ」
日吉くんが一瞬言葉につまった。
「名無しは俺達全員と面識があるし、生徒会にも所属している。
俺達にとっても他校から来るやつらにとっても、これ以上ない人材だ。
俺の判断に何か問題があるか、日吉」
……日吉くん、黙りこんだまま動かない。
私が参加するの、嫌…なんだろうな…。
「…………。
いえ……ありません」
日吉くんはそれ以上何も言わなかったけど、表情はすごく不満そうで。
…あ、ダメだ。
ちょっと…涙出そう。
テニス部の人達と関わる機会が増えれば増えるほど、日吉くんの気持ちを前より悲しく感じるようになってきてる。
「名無し。お前はどうしたい」
涙が出ないようにグッとこらえていると、跡部先輩がじっと私を見て聞いてきた。
「俺としては日吉にも言った通りお前を適任だと思ってるが、まぁ一応お前の意思も確認しておかねぇとな」
『あ、はい…』
私…私は……どうしたいんだろう。
たぶん少し前の私なら断ってただろうけど…。
今は…。
今は…やってみたい。
がんばってみたい。
せっかくこうしてみんなと会えたんだから…。
私を適任だって言ってくれる人がいるんだから…。
だから、こういう機会を大切にしたい。
『…私、お手伝いやってみたいです。がんばります。』
「そうか、わかった。よろしく頼むぜ」
跡部先輩は少し笑ってそう言ってくれた。
跡部先輩のこういう顔を見ると、なんだか嬉しくなる。
「それじゃあ、さっそく帰りにお前の保護者に事情を説明して、承諾をもらわねぇとな」
『はい、分かりました。話しておきます』
「アーン?
お前じゃねぇよ。俺が直接お会いして話をする」
『え?そ、そこまでしなくても』
「何言ってやがる。
未成年、しかも女を外泊させるんだ。
こういうことはきちんとしねぇとな」
………。
跡部先輩だって未成年なのに……なんか、大人だ…。
それから忍足先輩や鳳くんにもそうしたほうがいいと言われて、結局跡部先輩の言う通りにすることにした。
合同合宿か…。
ちょっと緊張するけど、みんなにとって少しでも有意義な合宿になるといいな。
それに…日吉くんにも、ちょっとでも認めてもらいたい。
……よし、頑張るぞ!
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