氷帝での出会い編
主人公(あなた)の姓名を入力してください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は地味だ。
成績、普通。
運動神経、普通。
容姿、兄弟曰く、普通。
いわゆる、目立たない生徒。
でも私はそんな自分が嫌いじゃなかった。
今の自分を自分らしいと思うし、私を大切に思ってくれる家族や友達もいる。
でも…
「ななし!なにボーッとしてるの?」
『わぁっ!』
クラスの女の子に急に肩を叩かれて変な声が出てしまった。
……いつの間にか教室で考え込んでしまっていたみたい。
「あ、ごめん。びっくりさせちゃった」
『ううん、大丈夫。今から部活?』
「うん、じゃあまた明日ね~」
手を振る友達に、こちらも手を振って返す。
うーん…頑張ってるなぁ…。
小走りで教室から出ていくその背中を見て思う。
辺りを見渡せば、既に人はまばらになっていた。
授業が終わってから考え事をしていたら、もうそれなりに時間が過ぎてしまったみたいだ。
きのう卒業式だったからか、いつもより学校が静かな気がする。
……と思っていたその時、校舎の外から突然女の子達のキャーッという声が聞こえてきた。
これは……
「跡部様ー!」
「忍足せんぱーい!!」
……やっぱり。
窓から外を覗くと、想像どおり、そこには部室へ向かう途中の男子テニス部の人達の姿があった。
氷帝に入学してからもう何度も見た光景だけど、何度見ても圧倒される。
こんなことが実際にあるなんて思わなかった。
同じ学校の生徒からこんなに黄色い声援を浴びる人達がいるなんて。
……なんだか、アイドルみたい。
たくさんの女の子に囲まれながらも慣れた様子で歩いていく彼らは、まるで本当のスターのようだ。
私は中等部から氷帝に入ったから知らなかったけど、もっと前から氷帝にいた子達の話だと、あのメンバーはみんな幼稚舎から有名だったらしい。
私が入学したばかりの頃、「ね、あの人達カッコいいでしょ?!」って、幼稚舎からいた子達によく言われたなぁ。
そう言われて見たあの人達は、確かに見た目はカッコいいとは思ったけど、その時はただそう思っただけだった。
いくら見た目がカッコいいからって、よくあんなに熱心になれるなぁと、最初は少し引きぎみに彼女達のことを見ていた。
だけど、この1年で彼女達の気持ちも少し分かるようになってきた。
理由は、彼らがテニスに対して本当に一生懸命だと知ったから。
同じ学校に1年いてそれがよく分かった。
あんなに練習して結果も出して、その上見た目もカッコよければ、人気があるのも当たり前だよね。
今、窓から見える女の子達も、すごく楽しそう。
なんだかキラキラしてる。
…夢中なんだよね、きっと。
あの女の子達は男子テニス部のメンバーに、男子テニス部のメンバーはテニスに。
………ちょっと、羨ましいな……。
私にはそういうものが無いから…。
私は帰宅部だから部活は関係ないし、かと言ってあの女の子達みたいに夢中になれるものも特にない。
勉強もスポーツも、嫌いじゃないけど好きでもないし…。
他に好きな事と言えば、テレビ見たりマンガ読んだりゲームしたり…かなぁ。
でも、それも大好きかどうかと聞かれればそこまでじゃないし…。
あとは可愛い雑貨とか服も好きだけど…うーん…。
他にはお菓子とかスイーツとかも…。
でも特にこだわりもないし、基本的に何でもおいしいと思っちゃうし…。
……………………。
……ほんと、私って何にもないなぁ。
中学生活も1年過ぎたっていうのに、このままでいいのかな…。
…人に誇れるものじゃなくていい、ただ自分の心の中で大好きだって断言できるものがあったら、きっと今よりもっと毎日が楽しくなるよね。
……探してみようかな。
…やっぱり私も夢中になってみたいから。
.