新しい日常編
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アクセサリーショップを出たあと、他にもいくつかお店をまわってから、フードコートでお昼ごはんを食べた。
そして午後はいよいよ宍戸先輩と鳳くんの行きたい場所へ。
『ビリヤード?』
「そうだよ」
「やったことあるか?」
『いえ、無いです』
「そうか、なら教えてやるぜ」
「心配いらないよ、名無しさん。宍戸さんはすごく上手なんだ」
『えっ、そうなの?』
「うん」
「いや、長太郎も上手いじゃねぇか」
「宍戸さんには全然かないませんよ」
宍戸先輩と鳳くんから行き先がビリヤード場だと聞いて、予想とは全然違ったからびっくりした。
でもちょっとワクワクする。
一回もやったこと無いから、楽しみ。
それにしても、宍戸先輩の目の輝きがさっきまでとはまるで別人みたい。
ビリヤード、本当に好きなんだなぁ。
ショッピングモールを出て二人について街を歩いていくと、到着したのは地下へと続く階段だった。
降りた先の辺りが薄暗くなっていて、少し怖い。
「行こうぜ」
「はい」
『は、はい…』
二人は慣れた様子でさっさと階段を降りていく。
宍戸先輩と鳳くんがこんな感じで行く場所だし、きっと怖いところじゃないはずだ。
…と思うけど、こういう雰囲気のところに行ったことがない私は、なかなか一歩が踏み出せずにいた。
「名無し、どうした?」
私が付いてこないことに気がついた宍戸先輩と鳳くんが振り返った。
『えっと…』
「…あ、そっか、気がつかなくてごめん。
大丈夫だよ、名無しさん。ここには宍戸さんも俺も何回も来てるし、俺たちと同年代の人もたくさん遊びに来てるから」
「ああ、ワリィ、そうだよな。初めてだと怖いか。
けど長太郎が言ったとおり、大丈夫だぜ。俺たちも一緒にいるしな」
二人は私がちゅうちょしている理由にすぐ気づいてくれて、私のところへ戻ってきてくれた。
『はい、そうですよね。もう大丈夫です』
「よし、じゃあ行くか」
「名無しさん、先にどうぞ」
『うん、ありがとう』
先に降りていく宍戸先輩のあとについていく。
途中で立ち止まって振り返ると、私の後ろを降りてくる鳳くんが、安心させるようにほほえんでくれた。
階段を降りきると、さらにそこから少し歩く。
その先にビリヤード場はあった。
中に入ると思っていたより賑やかで明るくて、鳳くんから聞いたとおり中高生くらいの人たちもたくさんいた。
もっと静かな感じを想像してたけど、ビリヤードがあるゲームセンターみたいな雰囲気だ。
「ね?怖くないでしょ?」
『うん、よかった。心配かけてごめんね』
「ううん、こっちこそ気が利かなくてごめん」
これなら安心して楽しめそうだと、ホッと息をついていると。
「よぉ、宍戸!」
「なんだよ、お前らも来てたのか」
少し先を歩いていた宍戸先輩が誰かと親しげに話し始めた。
四人…五人?いるけど、全然知らない人ばかりだ。
氷帝の生徒じゃないみたい。
「あの人たちは宍戸さんのビリヤード仲間だよ」
『えっ、ビリヤード仲間?』
「うん、俺も何度か会ったことがあるんだ。みんな他校の三年生だよ」
『そうなんだ…』
ビリヤード仲間かぁ。
そんな友達がいるなんて、知らなかったな。
「おっ、鳳もいるじゃん」
「うそ、マジ?」
「ほらほら、そこに」
先輩の友達は鳳くんの存在に気がついたらしく、こっちへと歩み寄ってくる。
鳳くんが笑顔で挨拶をした。
「こんにちは」
「あぁ、元気そうだな」
「と・こ・ろ・で…」
人懐っこい雰囲気の人が、鳳くんの隣にいる私を見てワクワクしたように声をはずませた。
みんなの視線が集まるのを感じて、思わず身をただす。
「その子は?誰?誰?」
「お前なー、野暮なこと聞くなって。彼女に決まってるじゃん」
『えっ!』
「えっ!」
また当たり前のように彼女だと思われてしまった。
なんでいつもこうなるんだろう。
鳳くんと一緒にいると、しょっちゅうだ。
「あ、やっぱり?そりゃそうだよな」
「へぇ。鳳、彼女できたのか。
まぁ今までいなかったのが不思議なくらいだったしな」
「お似合いじゃん。いいなー、可愛い彼女」
『あ、あの…。わ、私は…』
ああ、どうしよう。
知らない人たちに見られてる緊張と、彼女だと思われている恥ずかしさとで、顔が熱い。
誤解を解かなきゃいけないのに、これじゃますます誤解されちゃう…!
「おい、お前ら。そいつは長太郎の彼女じゃないぜ」
そのとき、宍戸先輩がみんなに向かってはっきりと言ってくれた。
それに続けて、今度は鳳くんが慌てたように言った。
「そ、そうです。
名無しさんは、宍戸さんと俺の友達なんです…!」
すると、みんなは一瞬唖然としたあと、なぜか笑い始めた。
「いやいや、つくならもっと上手い嘘つこうぜ」
「そうそう。
鳳も、えっーと…名無しさん、だっけ?その子もめちゃくちゃ照れてるのにただの友達なわけないし」
「だいたい、宍戸に女友達なんて、あり得ねー」
「ははっ、そんな子いるわけナイナイ」
「宍戸に仲良い女子が出来るなんて、天地がひっくり返るくらいの出来事だからな」
…………………………。
全く信じてもらえてない…。
「…お前らなぁ、そこまで言うか」
宍戸先輩が決まり悪そうに頭に手をやる。
「だって事実だし?」
「今までのお前を見てるとな」
「女友達どころか女子とろくに口もきかないもんな」
「…ん?ちょっと待てよ…?」
なぜか分からないけど、一番近くにいた人に突然まじまじと見られて、つい一歩後ずさった。
すると私の様子に気がついたのか、その人はすぐに小さく片手をあげて謝った。
「あ、ごめんな。ちょっとその帽子が気になってさ」
『えっ、帽子…ですか?』
「そう。それって名無しさんの?」
「なになに?帽子がどうしたの?」
またみんなの視線が私に集まる。
『いえ、これは宍戸先輩の帽子ですけど…』
「えっ!宍戸の!?」
「マジか!」
『は、はい…』
なんか…みんなものすごくビックリしてる…。
宍戸先輩の帽子だって言っちゃまずかったのかな…?
「やっぱそうか~。なんか見たことあるなと思ったんだよ」
「つーか、宍戸もそういうことするんだな」
「どうりで、“名無しさんは鳳の彼女じゃない”って強めに否定するわけだ」
「なるほどな~」
みんなが心なしかニヤニヤしつつ、宍戸先輩と私を交互に見やる。
意味が分からず私が戸惑っていると、宍戸先輩が私をかばうように歩み出た。
「なんだかよく分からねぇが、変な目でこいつを見るな」
するとみんなが驚いたように顔を見合わせた。
「おぉ…、これは本物だぞ」
「だな」
「今はそっとしておいたほうがいいんじゃね?」
「そのほうがいいな。本人たち何も分かってないみたいだし」
「さんせーい。俺たちは暖かく見守ろうぜ」
なんだかよく分からないまま、とりあえず話はまとまった…みたい?
先輩の友達はみんな何かに納得したらしく、ウンウンうなずいてるし。
一体なんだったんだろう?
それにしても、他校の友達からもあんなふうに言われるってことは、宍戸先輩って本当に女子と関わらないんだなぁ。
私が今みたいに先輩と話すようになったのも、鳳くんとたまたま席が隣同士になったからだもんね。
あのきっかけがなかったら、絶対全く何の関わりもないままだったと思う。
宍戸先輩と話したり一緒にいるのは楽しいから、もしそうなってたらと思うと、想像なのに寂しくなる。
だから、本当に良かったな…。
それからみんなに教えてもらいつつ、先輩の友達と一緒にビリヤードをすることになった。
先輩の友達はみんな優しくて面白くて、すごく楽しくて。
最初は緊張していた私も、宍戸先輩と鳳くんがそばにいてくれたおかげもあって、いつの間にか緊張を忘れてすっかりビリヤードに熱中してしまっていた。
まぁ、私にセンスが無いせいで、全然上手くはないんだけど…。
だけどたまに上手くいったときとか、みんなの神がかったプレーを見たときにはついついはしゃいでしまって、ふと気がつくと喉がカラカラになっていた。
うーん、どうしよう、喉かわいちゃったな。
少し疲れたし…。
…そうだ!
ここに来る途中にジュースの自動販売機がいくつか並んでる休憩スペースみたいな場所があったし、あそこで少し休んでこよう。
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