氷帝での出会い編
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*鳳side
俺には最近、すごく気になっていることがある。
それは…名無しさんのこと。
名無しさんとは2年になって初めて話した。
同じ学年だから顔と名前は知っていたけど、本当にそれ以上のことは何も知らなくて。
だから、あの突然の席替えで隣同士になったとき、話しかけるのに結構緊張した。
俺が最初に話しかけたとき名無しさんから何の反応もなかったから、ものすごく焦ったっけ。
…あれからまだそんなに時間が過ぎてないのに、なんか懐かしいな。
あれから俺達は、自然と少しずつ仲良くなった。
偶然教室に来た宍戸さんも彼女と話すようになって、三人で過ごすことも多くなった。
宍戸さんは女の子が苦手だから、名無しさんと普通に会話しているのは少し不思議な光景だけど、楽しそうな二人を見るのはなんだか嬉しかった。
そういう俺も、女の子はあまり得意じゃないけど…。
なぜか名無しさんとは普通に接することができた。
そして彼女も、俺の前でいろんな顔を見せてくれた。
笑ったり、照れたり、すねたり…。
そうそう、少しぬけてる所もあったりして。
彼女は、そっと静かに俺の心のそばに来てくれた、そんな女の子なんだ。
ついこの間、名無しさんは生徒会の役員になった。
あのとき手を挙げた彼女に、俺がもっと早く勘違いしていることを伝えてあげることができればよかったと、何度も後悔した。
生徒会の仕事はすごく大変だから、固い意志を持って入らないと辛いはずだ。
跡部さんが認めないだろうからきっと大丈夫だと彼女は言っていたけど、俺は間違いなく跡部さんは名無しさんを認めるだろうと思っていた。
あの跡部さんが彼女のもっているものを見抜けないはずがない。
うまく言葉にできないけど…。
たぶん名無しさん自身も自覚していない、飾り気のない、彼女のまとっている空気。
跡部さんはきっとそれを見逃さないだろう。
そしてきっと、そんな名無しさんに目をとめると思う。
先輩は、取り繕ったものには誤魔化されず本質を見抜く人だ。
本人も気づいていないような本質を…。
そうしたら、彼女は意に添わない大変な思いをしないといけなくなる。
俺はそれが心配だった。
だけど、俺のそんな心配は杞憂だった。
自分の意思で入ったわけじゃない生徒会で、それでも名無しさんはちゃんと頑張っていた。
跡部さんの補佐的活動をすることになったと聞いたときには、俺の不安は増すばかりだったけど…。
彼女は俺が考えていた以上に、強くてまっすぐな子だった。
こっちはあまり心配していなかったことだけど、跡部さんともうまくいっているみたいで。
そのうえ忍足さんとまで知り合いになったらしくて、俺も二人で話しているところを何度か見かけた。
生徒会の活動にも意欲的で、生徒会の先輩達や忍足さんともうまくいっていて。
そんな彼女を見て、俺はほっとすると同時に、小さな尊敬の念も抱いていた。
名無しさんと出会えて良かった、と思う。
名無しさんと出会ってから、俺の小さな世界に新しい風が吹くようになった気がするから。
だけど、自分のそういう気持ちに気がついてから、俺には別の気がかりなことができた。
それは彼女の、名無しさんの気持ち。
彼女と一緒にいる時間が増えて、気がついたことがある。
名無しさんは俺といるとき、いつもほんの少しだけ緊張しているような気がする。
気を張っているっていうか…。
最初はまだ知り合って間もないからだと思っていたけど、今もまだそれが消えることはない。
もしかしたら俺が男だから…男子が苦手だからかとも思ったけど、クラスの他の男子といるときはそんな様子はない。
そしてもうひとつ気がついたこと。
それは俺だけじゃなくて、宍戸さんといるときもそうだということ。
俺と宍戸さんに共通する一番分かりやすい点は、テニス部だってことだ。
他に心当たりはないし…。
他のテニス部員といるところはあまり見たことがないから、分からないけど…。
………………………。
…もしかしたら、名無しさんは何か理由があって、テニス部のことが嫌いなんだろうか。
それとも………。
ただ、俺や宍戸さんのことが嫌いなんだろうか…。
もしそうなら、俺は…。
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