合同合宿編
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*鳳side
“おやすみ…”
そう言ってから数分で名無しさんは眠ったようで…。
今は俺の隣で、スースー、と小さな寝息をたてている。
よっぽど疲れてたんだな…。
あっという間に寝てしまった名無しさんを見て、そう思った。
無理もないと思う。
もし俺が名無しさんの立場だったら。
…想像しただけで疲れそうだ。
名無しさんは自分では違うと言うけど、俺は名無しさんは頑張り屋だと思っている。
たとえそれが苦手なことでも、やるとなったら一生懸命やる子だから。
真面目で責任感が強いから、手を抜けなくて、頑張る。
きっと今回だって…俺の知らないところで俺が考えているよりずっと、いろんな思いをして、頑張ってたんだろうと思う。
名無しさんは人の気持ちをすごく思いやる子だから、初対面の人たちに囲まれて、気疲れもしただろうし…。
『ん……』
小さな声と同時に、名無しさんの身体がほんの少し動いた。
その拍子に髪がサラリと顔にかかる。
『う……』
その髪がわずらわしいのか、かすかに顔をしかめる。
……えっと…、どうしよう…。
少し迷ったけど、俺は名無しさんを起こさないよう気をつけながらそっと手をのばして、その髪をすくって耳にかけた。
『スー……スー……』
再び聞こえ始めた寝息に、ひとまずホッとする。
き、緊張した…。
寝てる名無しさんにさわるなんて、初めてだし…。
今さらのように、心臓がドキドキと早鐘をうつ。
……よかったのかな、勝手にさわったりして…。
いや、起こして許可をとるわけにもいかないんだけど…。
女の子なんだし、嫌だったかも…。
……………………。
目を覚ましたら、謝ろう……。
…ごめんね、名無しさん。
「なぁ、ななしー」
!!
突然の向日さんの声に、ビクッと肩がはねた。
「あれ?
もしかしてななし、寝てるのか?」
「は、はい、そうなんです。
名無しさん、疲れてたみたいで」
「なんだ、せっかくななしとしゃべろうと思ったのに」
その会話をきっかけに、近くにいたみんながこっちを振り返った。
「なになに~、ななしちゃん、寝たの~?」
「まぁそうなるわ。
大変なことの連続やったしな」
「そうだな。がんばってたしな」
そんな中、名無しさんの顔をじっと見ている芥川さんに気づいた。
「芥川さん、どうしたんですか?」
「ななしちゃんの寝顔、かわEな~と思って」
「えっ!」
「な、何言ってんだよ、ジロー」
「いやいや、ジローの言うとおりや。
ほんまに可愛らしいわ」
「お、お前ら、よくそんなこと言えるな」
…本当に、よく言葉にできるなと思う。
俺も名無しさんの寝顔、正直…可愛いなって、思うけど…、恥ずかしすぎてとてもじゃないけど口には出せない。
「…先輩たち、そろそろやめてやったらどうですか。
そいつ、たぶん鳳にしか寝顔見られないと思ってますよ。先輩たちにまで見られたなんて知ったら恥ずかしがるんじゃないですか」
日吉の意見に、宍戸さんもうなずく。
「そ、そうだぜ。日吉の言うとおりだ」
…えっ。
名無しさん、俺には寝顔見られてもいいと思ってくれたのかな…?
もしそうだったら…なんだか嬉しいな。
心を許してくれてるっていうことだと思うし…。
「ほほぉ?
宍戸、それと岳人もやな。自分らは今さらちゃう?
寝顔見るなんて可愛く思えるようなことしたんやろ?ななしちゃんと」
「!!!」
「!!!」
宍戸さんと向日さんの顔色がサッと青くなる。
「?
宍戸さん、向日さん、何かあったんですか?」
「い、いや…」
「べ、べつに…」
???
二人の様子が明らかにおかしい。
「A~、なになに~?どうしたの~?」
「…?
どうして答えないんですか?」
怪訝な表情で二人を交互に見る日吉。
「そ、それは…。
つーか、そもそもなんで侑士が知ってるんだよ!?」
「聞いたんや。
“なんやさっき騒がしかったけど、何かあったん?”って、聞いたら教えてくれたんや。跡部が」
「はぁ!?
跡部、お前あそこにいたのかよ!?」
「途中からだがな」
「なんで言っちまうんだ!」
「言われたらまずいのか?」
「ぐっ…。そ、それは…」
「ねぇねぇ、どうしたの~?」
「まったく、たいしたことねぇだろ、あれくらい。ガキじゃあるまいし」
「ええなぁ、自分らは。
俺なんてボール探しして、怪しいおっちゃんみたいなまねしとったんやで。
せやのに自分らはななしちゃんとキラッキラな青春を謳歌しとったやなんて。羨ましすぎるわ」
怪しいおっちゃんみたいなまね……。
一体なんなんだろう……。
「…ろくでもない事だってことだけはおおよそ分かりました。
見損ないましたよ、宍戸さん」
「は!?な、なんで俺だけなんだ」
「向日さんに関しては、そういう事をやりかねないと元々思っていたので」
「はぁ!?」
「はは、岳人、後輩からの信頼無いなぁ」
「ちなみに忍足さんに関しては、必ずやると元々思っていたので」
「えぇ!?何で俺やねん!」
「ハハハ!俺以下じゃねーか、侑士!俺の勝ちだぜ!」
…………喜んでいていいのだろうか…。
「ハァ、騒々しいったらねぇな。なぁ、樺地」
「平和……です……」
「ねぇねぇ、何の話~?」
「さっきからウルセーぞ、ジロー。
そもそもお前が諸悪の根源なんだからな!」
「A~?何のことか分からないC~」
「…いい性格してるな、お前は本当に…。
時々無性にうらやましくなるぜ…」
あははは…。
なんだかよく分からないけど、とにかく名無しさんには絶対に聞かせられない会話だ。
熟睡してくれてて良かった…。
隣をそっと見ると、名無しさんが気持ちよさそうに、どこか幸せそうに眠っていた。
俺はホッとすると同時に、その寝顔を見ているうちに自分の心にも幸せな気持ちが少しずつ広がっていくのを感じた。
「…お疲れさま、名無しさん」
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