氷帝での出会い編
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2年生になってから約一週間が過ぎた。
…とてつもなく濃い一週間だった。
鳳くん、宍戸先輩、日吉くんと会話をした。
言葉にするとたったそれだけのことだけど…。
たぶん何も接点がないまま卒業するだろうと思ってた彼らと、こんなふうに関わることになるなんて。
少し前まで予想もしていなかった。
その彼らとの間にできた接点を最初は正直歓迎できなかったけど、それも少しずつ変わってきた。
鳳くんはいい人だし、時々来る宍戸先輩も気さくに接してくれるし、…日吉くんとはあれ以来会ってないけど…、楽しいなって思う気持ちも今はある。
彼らと一緒にいると注目を浴びてしまうのも、みんなが興味があるのは私じゃないって自分に言い聞かせてるうちに、少しずつだけど慣れてきた。
それに、鳳くんや宍戸先輩とこうして話をするのも、きっと次の席替えかクラス替えまでだ。
そう思うとちょっとだけさみしいけど…。
とにかく今は、素直にこの時間を楽しんだほうがいいかなって気がする。
そんなふうに毎日が落ち着いてきていた今日この頃。
いつもの朝のホームルームで、先生がバツが悪そうに話を切り出した。
「実はな、先生すっかり忘れてたことがあるんだ」
ふーん、一体なんだろう。
まぁ、なんでもいいけど…。
―ふわぁぁ、眠いなぁ。
「各委員を決めるのを忘れてたんだ、すまん。
今日の放課後、委員会があるからな。今から急いで決めるぞー」
そういえば新学期になると、委員とか決めてたな。
私も忘れてたや。
うーん、私どうしようかなー。
去年やって結構楽しかったから、また図書委員にしようかな?
この学校の図書室ってすごく立派で雰囲気いいんだよね。
あの雰囲気好きだし、仕事も楽しかったし。
よし、図書委員にしよう。
他の人とかぶらないといいけど…。
…それにしても眠いなぁ。
さっきから何回あくびしてるだろ。
昨日ちょっと夜更かししちゃったからなぁ…。
「それじゃあ順番に聞いていくからな。
希望する委員のところで挙手しろよー」
はいはい、図書委員のところにきたら手を挙げればいいんだね。
…うー…。
まぶたが重い…。
スー……………………。
「それじゃ―――――。
――と―――しょ――」
…ハッ。
いけない、ウトウトしてた。
い、今、図書委員って言ったよね?
手、挙げなきゃ!
私は急いで手をあげた。
「おっ、名無し!
おまえやってくれるのか!」
えっ。
先生、そんな大げさな。
でもまぁ、いっか。
先生のこの様子からすると、他には希望者いなかったみたいだし。
ラッキー。
「名無しさん、ほ、本当にいいの?」
隣から鳳くんが慌てた様子で声をかけてきた。
『え?何が?』
「何がって…。
結構…いや、かなり…大変だと思うよ?」
?
鳳くんも大げさだなぁ。
そんなに大変じゃないよ。
去年やったから、だいたいのことは分かってるし。
「みんな、勇気ある名無しに拍手~!」
パチパチパチパチ
…な、なんで拍手?
勇気って……?
「いやー、仕事が大変だからな、なかなか他の学年でも立候補者がいなくて、先生達も困ってたんだ。
かと言って仕事が仕事だけに、無理にさせるのもな。
やっぱり意欲があるやつにやってもらわないと」
…………。
一体、何の話?
他の学年とか意欲とか…。
委員決めるだけでこんな話になる?
「一応他のクラスとか他の学年に立候補した生徒がいないか確認してみるが、たぶんいないだろうから。
頑張れよー!」
…先生、そんな嬉しそうにガッツポーズされても…。
一体なんのことだか…。
「生徒会書記、2年C組名無しななし!
いや~、カッコいいなぁ!先生も昔、生徒会に憧れてたんだぞ」
……………………。
……は?
「一応生徒会長の了解を得てから正式に決定ってことになるが、まぁおまえなら大丈夫だ。
先生が太鼓判押すって、跡部に伝えておいてやるからな!」
いや………判子押すしぐさはしなくていいです。
ていうか…この状況は一体…何?
…結局、断れなかった。
だって、先生があまりにも喜んでて…。
他に立候補した人もいなかったみたいだし…。
この学園に入学してからの私のデータを生徒会長が見て、私と直接会って話をして、それでOKだったら決定らしい。
あ゛ぁぁー………。
私、なんてことしちゃったんだろう。
あのときすごく眠くて、生徒会書記っていうのを図書委員と勘違いして、ちゃんと確認せずに手を挙げてしまった。
ああ、もう…。
よりによってあんなときにウトウトするなんて…。
私のバカバカバカバカバカ~!!
「名無しさん…大丈夫?」
隣から鳳くんの優しい声。
『鳳くん…。
…うわぁーーーん』
「よしよし」
頭をそっと撫でてくれる鳳くん。
その優しさが今は染みるよ。
『ねぇ、鳳くん。
生徒会長が断ってくれないかな。
そうしたらいくら先生が残念がっても、しょうがないからって納得してくれるよね?』
「うーん…」
困ったように頬をかく鳳くん。
「俺は…たぶん跡部さんは了解すると思うけどなぁ」
『えっ。
生徒会ってそんなに人材不足なの?』
「いや、そういう意味じゃなくて…」
『…でも生徒会って仕事忙しいから、いくら困ってても私みたいな凡人を入れたりしないよ。
うん、きっとそう』
そうだ。
よく考えたら、跡部先輩が許可しなきゃ決定じゃないんだよね。
じゃあきっと大丈夫だ。
鳳くんは気をつかってあんなふうに言ってくれたけど、私には生徒会なんてとても務まらない。
いくらなんでも生徒会はちょっとハードルが高すぎだよね。
はぁ…、とため息をつきながらろう下を歩いていると、先生に呼び止められた。
「名無し、ちょっといいか」
『あ、はい』
も、もしかして他に誰か立候補したとか?!
「今からすぐに生徒会室に行ってくれ」
『今から?!』
違った…。
しかも放課後だったんじゃ…。
「ああ、今跡部が生徒会室にいてな。おまえのこと話したら会いたいって」
………………ガーン。
こんなに嬉しくない“会いたい”を初めて聞いた。
はぁ…。
しょうがない。
こうなったら覚悟決めるか。
私は生徒会室へと向かった。
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