合同合宿編
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*向日side
それから数日。
やっとななしに会える日が来た。
みんなで跡部の家でななしが来るのを待つ。
ななしのことは跡部がサプライズで何も知らせずに迎えに行くことになった。
それに反対してる奴のほうが多かったけど、俺は大賛成。
どうせ同じことするなら、やっぱ面白いほうがいいじゃん?
「ねぇねぇ忍足~」
俺と同じで初めてななしに会うジローもめちゃくちゃワクワクしてるみたいだ。
…と思ったけど。
「どないしたん、ジロー。眠そうやな」
「うん…、眠くないC~…」
「どっちやねん」
ジローは今日ここに一番乗りだったらしい。
それでも一回も寝ずにいたけど、さすがに眠気が襲ってきてるみたいだ。
そりゃそうだよなー。
いつもならとっくに寝てるはずだし。
「ジロー、無理せんと寝とったらどうや。
ななしちゃんが来たら起こしてあげるで」
「そうですよ、先輩。無理は身体に悪いですし」
みんなで眠るようにすすめるけど、ジローは首を横に振った。
「だって、好きになるかもしれない子が来るC~…」
一瞬なんのことかと思ったけど、そういや侑士がそんなこと言ってたな。
「ジローが眠気を我慢するなんてな…」
「すごく貴重ですね」
「忍足さんがくだらないことを言うからですよ」
「えっ、俺のせいなん?」
「そうでしょう、どう考えても」
好きになるかもしれない、かー。
うーん……。
…もしかしたら俺もなったりするのかな?
ななしのこと…好きに……。
前に言われたときにはたいして気にならなかったのに、今は妙にソワソワする。
う…。
ヤバイ。
なんかすげードキドキしてきた。
「ん?
岳人、なんや顔赤いで」
「はっ?!」
「あ~、ホントだ~」
「もしかして具合でも悪いのか?」
宍戸が心配そうに言うから、慌てて否定した。
「違う違う!
ちょっと、ほら、なんていうか、えーっとー……」
うっ、言葉が出てこない…!
まさか真実を言うわけにもいかず、冷や汗がタラタラ流れていくのを感じながらあたふたしていると、日吉の冷めた声が聞こえてきた。
「……忍足さんがくだらないことを言うからですよ」
!!?
バレてる!
なんでだ!?
「ははぁ、そういうことか」
どうやら悟ったらしい侑士が俺にほほえむ。
「そうやなぁ。
ジローだけやない、岳人もななしちゃんに恋するかもしれへんわけやし、それはドキドキするに決まっとるわ」
!!!
「A~、じゃあ俺と同じだね~」
「おっ、俺はちがっ…!」
「なるほど、そういうことならよかったです」
「安心したぜ」
「おいっ!勝手に話をまとめるなよ?!」
ーーガチャ
話に夢中になっていたとき、ノックの音と部屋の扉が開く音がした。
その音につられて部屋の入り口に顔を向けると、そこには一人の女子が立っていた。
そいつはなんかちょっと不安そうな顔をしていて…。
大きな扉の前にポツンといるせいか、小さく見えた。
「あっ、名無しさん!」
鳳が呼びかけたのをきっかけにみんなも気がついたらしく、静かになった。
侑士と宍戸も何か話しかけてたけど、内容は分からなかった。
だって俺は、ななしに見入ってたから。
本当にびっくりした。
ななしはあまりにも想像通りで、本当にタンポポみたいだった。
最初の印象はちょっとおとなしそうな感じだったけど、鳳たちに話しかけられてからは雰囲気が変わった。
表情が柔らかくなって、少しだけ笑ったりもして。
みんなが言ってたみたいに本当に普通なんだけど、ずっと見ててもいいような、側にいってちょっと触ってみたくもなるような、そんな感じ。
気がついたら俺は、ななしのところに行っていた。
近くで見ると、さらにななしに興味がわいてくる。
思わずじーっと見つめると、ななしはびっくりしたみたいに目をパチパチさせた。
そんな様子がなんかちっちゃい動物みたいでめちゃくちゃ可愛くて、嬉しいような楽しいような気持ちが心の奥からブワーッとこみあげてきた。
「やっと会えたな!」
跡部ん家からの帰り道。
俺は侑士と二人で駅に向かっていた。
あれから実際にななしとしゃべってみたら、思ったより結構ハッキリ言うところもあったり、自分のこともしゃべってくれたりして、面白い奴だった。
跡部相手でも全然態度変わらねーし。
女子って普段はうるさいくらいの奴でも、跡部の前だと急におとなしくなったりするんだよなー。
猫かぶるってやつ?
べつにいいけど、相手によってコロコロ態度変える奴、俺はあんまり好きじゃねーし。
けどななしは跡部にも平気でツッコミ入れたりして、スゲー面白い。
基本はやっぱりおとなしいんだろうとは思うけど、ちょっと変わってるよな、ななしって。
「どうやった?岳人。ななしちゃんは」
「みんなから聞いてたとおりだった。普通だったぜ。ちょっと変わってるけど」
目についた道端の小さな石をちょこんと蹴りながら答える。
石は思い通りにまっすぐ転がっていった。
「なら、恋した?」
「し、してねーよ」
さっきの石のところに来たから、また蹴ってみた。
今度は少し曲がったけど、だいたいまっすぐだ。
「せやけど、えらいななしちゃんにくっついとったやん。
てっきり一目惚れしたんかと思ったわ」
「は?!
くっついたって、いつの話だよ?!」
足元に来た石をまた蹴る。
思ったより力が入って、遠くまで転がっていってしまった。
「ななしちゃんが部屋に来たとき。自分めっちゃ迫っとったやん」
「!
べつに、そんなつもりじゃねーし!」
「そうなん?
そのままキスする気かと思ったで」
「な!?!?
キッ……キッ……キッ……!!??」
石を蹴るつもりだった足が勢いよくスカッと空を蹴って、よろめいた。
キ、キ、キ、キ、キキキキキキキキキキ……………………。
次の一文字を頭のなかで思い浮かべるのすら恥ずかしい。
それなのに、そっ、そんなこと、でででできるわけねーよ!
「す、するわけねーだろ!?
キ………なんて…っ」
「ふふ。そら分かっとる」
「…………………はぁ!?」
「冗談に決まっとるやん。
岳人はそういうのサラッとできるタイプちゃうしな」
…………………………。
「くそくそ、侑士!からかったな!」
「ふふふ、すまんすまん」
「くそー!」
どうせ俺はサラッとキ……なんてできねーよ。
つーか、そもそも一回もそんなことしたことねーし。
……フン。
そういうのはいつか本当に好きなやつができたらでいいんだ。
そしたらきっとサラッとじゃなくてモタモタしてたとしても、幸せなはずなんだ。
「岳人、いつかそういうことしたい子ができたら俺にも教えてな。必ず応援するから」
「お、教えない」
「え~?なんで」
「からかうし、絶対」
「そんなことしたことないやん」
「いっつもしてるだろ!」
「ふふふ」
あー、もう!
けど……。
…なんだかんだ言って結局侑士に相談するんだろうなー、俺。
はぁーあ……。
「それよりジローやで。ほんまにヒヤヒヤしたわ」
「ジロー?何が?」
「岳人は見とったか分からへんけど、自分のあとジローもななしちゃんに同じようなことしたんやで」
あー、そういやそうだったような…。
宍戸に首ねっこつかまれた直後でちょっと意識が薄れてたからなー…。
「けどジローだって、さすがにそんなことしないだろ?いくらなんでも」
「うーん…、どうやろ。ジローはあやしいなぁ」
「そうかぁ?」
「好きになったら一直線!な気がするわ。周りの目なんか気にせんタイプやろ」
「ふーん…」
「まぁ、あくまで好きになったらの話やけどな。俺の考えすぎか」
「けどさ、ならあんまりその気になるようなこと言わないほうがいいんじゃねーか?
侑士、結構言ってるじゃん」
「いや、ただ好きになるだけならええんやで?一方的にキスとかしてしもたらあかんていうだけや。
俺はななしちゃんも岳人もジローもみんなも好きやし、その中で恋が生まれたらええなぁて思て。素直に応援できるしな」
まだ起きてないことなのに、侑士は嬉しそうに笑った。
確かに侑士の言うとおりかもしれない。
俺もテニス部の仲間のことは好きだ。
だから、ななしと仲間のうちの誰かが付き合うとかそういう話になったら、俺もきっと応援したいと思うはずだ。
「なぁ、もし侑士がななしのこと好きになったらどうするんだ?」
「俺?そんなん決まっとるやろ」
「なになに?どうすんの?」
「さっさとキスして落としてみせるわ」
「はぁ!!?な、なに言ってんだよ!
人にはするなとか言っといて!」
「俺はええねん。
タイミングとか相手の様子とかみて、ちゃーんとうまくやるから」
ぐぐぐぐ………。
確かに侑士ならそういうのできそうだな…。
そして俺には絶対ムリだ…。
「岳人にも伝授したろか?」
「い、いらねーよ!
俺には俺のやり方があるの!それに、べつにうまくやらなきゃダメだってわけじゃねーし!
気持ちが大事なんだよ、気持ちが!」
「っはは、せやな。ふふふ」
「笑うな!」
「すまんすまん、……ははははっ」
「~~~~!
くそくそ、侑士!」
ぐぬぬぬぬ…。
なんか腹立つ!
………って、もしかしたらななしが侑士のこと好きになる可能性だってあるんだよな。
今日見てたかぎりじゃ、ななしは侑士のこと信頼してるっぽかったし。
…………………………。
まぁ…それならそれでななしが男を見る目があるってことだよな。
侑士は頼りになる奴だし、きっと一緒にいれば幸せになれる。
けど……。
「っははははは!」
「笑いすぎだっての!」
くそー!
やっぱりなんかイヤだ!
俺だって侑士に負けないんだからな!
もしななしを好きになったら、俺だって絶対ななしを幸せにしてみせる!
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