合同合宿編
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*向日side
テニス部の活動は毎日あるっていうわけじゃない。
テストの前とか学校行事があるときとかは休みになるし、自主的な練習に任せるってことで休みの日もある。
今日はまさにその日だ。
ということで。
「侑士!」
「ん?あぁ、岳人」
「名無しななしに会いに行ってくるぜ!」
放課後、侑士のクラスに寄って声をかける。
そしたら侑士は渋い顔で教室から出てきた。
「はぁ、やっぱりそうなるんやな」
「だってさ、待ってられねーもん。跡部が言ってたメシの日までまだあるし。
ならこっちから行くしかねーだろ?」
「まぁそうやけどな。けどひとつだけ約束や」
「約束?」
人差し指をスッと顔の前で立てる侑士。
なんかスゲー真面目な顔してるな。
「絶対に静かにしとるんやで。
自分が今の調子のままで行ったら目立って騒ぎになるから、くれぐれも静かにな」
「騒ぎ?
騒ぎって、もしかしてあれか?跡部がよく女子にキャーキャー言われてるみたいな」
「せや。
ななしちゃんに迷惑かかるから、約束やで」
何言うのかと思ったら、騒ぎって…。
「アハハハ、何言ってんだよ侑士!
俺が行ったくらいで騒ぎになんかなるわけねーし!バカバカしいぜ、アハハハッ」
そんなことあるわけないと思って笑ってたけど、侑士はあきれたみたいにため息をついた。
「はぁ…、自分は自覚なさすぎやねん。
しゃあない。この際自覚なくてもええ、とにかく静かにするんや。ええな?」
絶対そんなことないっての。
けどまぁ、他の学年の教室に行くんだし、確かに静かにしてたほうがいいのかもな。
「分かった、とりあえず静かにしとく」
「それならええわ。
ななしちゃんによろしくな」
「オッケー!」
♪~♪♪~~
「あれ?」
電話だ。
聞きなれた音に、反射的にディスプレイを確認する、と。
「げっ」
これまた反射的に声が出た。
「もしかして、おばさんから?」
この状況になれてる侑士は想像がついたらしい。
「あー、最悪。絶対またなんか頼まれる。
この間なんか、卵と牛乳と大根とネギとトイレットペーパー頼まれたんだぜ?
学校帰りのやつに頼む量にしちゃ多すぎだろ」
「まぁええやん。
それだけ岳人のこと頼りにしてくれとるんやって。
ほら、はよ出てやり」
「ちぇっ。人のことだと思って」
ブツブツ言いながら、ひとまず電話に出る。
「もしもし、なんか用か?」
電話の向こうから母親の声が聞こえてきて。
「…えっ。
そんな、急に言われたって俺にも予定ってものがあるんだぞ!
あ、ちょっ、おい待てって!」
ーープツッ。
「切れた…。最悪だ…」
様子を見ていた侑士が不思議そうに首をかしげる。
「どないしたん」
「…急に親戚が来ることになったから早く帰ってこいって……」
「そうなん?
それなら残念やけどしゃあないなぁ、はよ帰らな」
「うー、せっかく会えると思ったのに。なんでこんなときに」
「元気だし、岳人。
ななしちゃんは逃げんから、また次の機会を待てばええ」
「そうだな…。はぁ……」
ーー数日後。
よし!
今日こそ行けるぜっ!!
「侑士!」
「ん?どないしたん、岳人」
「名無しななしに会いに行ってくるぜ!」
「あぁ、今日は会えるとええな」
「サンキュー!じゃっ!」
ピンポンパンポン……
あ、校内放送だ。
ま、いっか。どうせ俺には関係なーー。
「男子テニス部のレギュラーは至急部室に集合しろ。予定を変更してミーティングを行うことになった。
分かったな、アーン?」
………………………………。
「はあ!?」
「あぁ、残念やったなぁ。
まあ、しゃあないわ。ほら行くで。遅れたら大変や」
「えー!!ウソだろ?なんでこんなときに…!
クソクソ、跡部!」
ーー数日後。
よし!
今日こそ行けるぜっ!!
「侑士!」
「ん?どないしたん、岳人」
「名無しななしに会いに行ってくるぜ!」
「あぁ、今日は会えるとええな」
「サンキュー!じゃっ!」
………………ハッ!!
ちょっと待て!
確かこの前もその前もこんな感じで侑士としゃべってたときに……。
「?
行かへんの?岳人」
「行く、けど…。なんか嫌な予感がして…」
「嫌な予感?」
ま、まぁ、そんなの考えすぎだよな。
そんな何回も同じようなことなんか起きるわけないぜ。
「まぁいいや。
とにかく行ってくる!」
見送る侑士に手を振って、シュパッと頭を切り替えて走り出す。
電話もかかってこないし、放送もならない。
よしっ、順調だ!
「おぅ、向日」
ギクッ。
おそるおそる声がしたほうを見ると、そこには担任の先生がいた。
「いつ見ても元気そうだな、お前は。感心感心」
な、なんだ。ただ声かけただけって感じだな。
あー、よかった。
「ありがとな、先生!じゃっ!」
もう一回走り出す。
……けど。
「ちょっと待て」
呼び止められてしまった。
「なに?先生。俺いま急いでるんだよ」
「見りゃ分かる。だが廊下を走るな。危ないだろう」
「あ、そうだった。じゃあ早足で行くことにするぜ。
じゃあまた明日、さよならー先生ー」
「ちょっと待て」
「まだ何かあるのかよ。急いでるのに」
焦って、つい少しだけ強めに言ってしまった。
途端に先生がひきつったような笑顔になる。
これはマズイと思ったけど、時すでに遅し。
「ほほう、本当にキレイサッパリ忘れてるみたいだな」
「な、なにを…?
えーっと、とにかく俺は早くななしのところに行きたいから…」
「ななし?」
「名無しななしだよ。2年の」
「ああ、名無しな。
なるほど、お前は先生との約束を反故にして堂々と後輩のところに遊びに行くわけだ。いい度胸してるな」
「あのー、約束っていうのは…」
全然覚えてない。
けど……嫌な予感しかしない。
「先生とマンツーマンの楽しい楽しい補習だ」
ほしゅう……。
………………………。
…………ホシュウ?
俺が知ってるのとは違うホシュウであることを願った。
だけどそれも叶わず。
「さぁ、下校時間ギリギリまでみっちり教えてやるぞー」
「イヤだー!
せっかくやっとななしに会えそうだったのにー!」
張りきりまくりの先生に背中をグイグイ押されて、空き教室へと連れていかれる。
その途中、俺はふと気がついた。
…あれ?
そういえば俺、いつのまにかななしのことななしって呼んでるな。
…って、なんか変な言い方だけど。
………………………ヘヘッ。
よくわかんねーけど、なんか楽しいような気がする。
なんでだ?
うーん……。
…ま、いーか!
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