合同合宿編

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*向日side



ーーーーーーー



「それでな、ななしちゃんがうたた寝しとったから、ついほっぺたツンツンしてしもたんや」

「はぁ!?お前っ、な、なに考えてんだよ!」

「そうですよ!何してるんですか、忍足さん!」

「まぁまぁ、そない怒らんといてや。
あんまりにも可愛らしゅうて、つい」

「……忍足さん。それは立派なセクハラですよ。あいつが知ったらなんて言うか」

「いくらお人好しでのんきなあいつでも、さすがに警戒するようになるだろうな。
なぁ、樺地」

「ウス」

「えぇ?それは絶対に嫌や。ななしちゃんに嫌われてしもたら悲しすぎるわ…」

「だったらもう触らないでくださいよ。次に触ったら即あいつに伝えます」

「日吉の言うとおりですよ!
本人の同意なく女子に触るなんて、男として最低です!」

「そうだぜ!激ダサだぜ!」

「激ダサ……です」

「まぁ、ちょっと頬に触ったくらいで騒ぎすぎな気もするがな」

「跡部!自分はやっぱり分かっとるなぁ!
あんな可愛い寝顔が目の前にあったら、男は触りたなるってもんやで」

「あいつが可愛いかどうかは知らねぇがな」

「何言うとるん。ななしちゃん、めっちゃ可愛いやん。
すやすや寝息たててな……。あー、ほんまに可愛らしい…」

「なに思い出してるんですか。完璧に変態ですね」

「そんなこと言うけどな。日吉、自分かてそんなシチュエーションになったら触りたなるって。絶対なるって」

「あいつ相手にそんな気になるとは思えませんが…、万が一なっても我慢しますよ。それが男ってものでしょう」

「そのとおりだな」

「当然ですよ」

「ウス」

「はぁ、みんな真面目やなぁ」

「だが名無しみてぇなガキ相手によくそんな気が起きたな。
いや、この場合はむしろガキだからか」

「跡部さん、そういう問題じゃないですよ」

名無しさんはガキなんかじゃないです」

「いや、ガキだろ」

「違うぜ。あいつはしっかりしてるからな」

「はぁ…。宍戸、俺が言ってるのはそういう意味じゃねぇよ」

「じゃあどういう意味だよ」

「女としてってことだ」

「なっ……」

「分かったか、アーン?」



…………………………………。


最近よく見る光景が、今日もまた俺の周りで繰り広げられている。



「宍戸、顔赤いぞ」

「う、うるせぇな」

「今想像しましたね。あいつの寝顔」

「えっ。そうなんですか、宍戸さん」

「ちっ、ちがっ…」

「みんな、そないに責めたらあかん。硬派に見えても宍戸かて思春期真っただ中の男なんやで」

「べっ…!べつに!」

「そない恥ずかしがらんでもええやん。
宍戸も俺と同じ、“ななしちゃんのほっぺたに触りたい派”ってだけやし」

「おいっ!勝手に決めるな!」

「なら、お前は触りたくねぇんだな」

「………………………………」

「……また想像しましたね」

「えっ。そうなんですか、宍戸さん」

「……し、してねぇよ」

「見え見えの嘘つくんじゃねぇよ。男らしくねぇぞ。なぁ、樺地」

「ウス」




名無しななし


しゃべったことも見たこともない女子の名前を、いつのまにか覚えてしまった。

前に少し話にでてきたこともあるそいつは、ここにいる中で俺とジロー以外の全員と顔見知りらしい。

みんなで集まっていると、こんなふうにそいつの話題になることも最近じゃしょっちゅうで、正直最初は全然興味がなかったけど、さすがに少し気になってきた。


「なぁ、その名無しってやつ、そんなに面白いのか?」


真っ赤な顔をしてあたふたしている宍戸を横目に聞いてみる。

いつもは女子の話なんて知らねーよって感じの宍戸がこんな感じになるんだもんなー。

そりゃちょっとは気にもなるじゃん。


「あー、それ俺も聞きたいC~。教えて教えて~」


半分眠気まなこでジローが顔をあげた。

ジローも会ったことないんだもんな。


「おもろいで~。
そのうえ素直で素朴で優しゅうて、ほんまに可愛らしい子やねん。
岳人もジローも、会ったらすぐ好きになること間違いなしやわ」


ニッコニコしながら答える侑士。


…なんかうさんくせーけど、そう言われるとますます気になってくる。


「A~、マジマジ?ホントに俺、その子のこと好きになるの?」

「なるなる。恋してまうで」

「A~!」


侑士の言葉を全く疑ってないジローは、目を輝かせて身を乗り出した。


「…忍足さん。いい加減なこと言わないでください。
あいつはそんな変わったところなんかない、ごく普通のやつですよ。会ってすぐ好きになるなんて、あるわけがないでしょう」


日吉があきれたようにため息をついた。

なんか微妙に不機嫌なような…。

気のせいか?


「確かに名無しさんは普通といえば普通ですね。
でもそこが良いところだと俺は思います」


クラスでも席が隣同士の鳳は、この中でも一番仲がいいらしい。

鳳はもともと女子と普通にしゃべってる奴だけど、名無しななしのことを話すときは今みたいにいつもより楽しそうな顔になる。


「…普通がいいって、よく分かんねーな。変わった奴のほうが面白いだろ」


思ったことを俺がそのまま聞くと、鳳は少し首を傾けた。


「うーん、それはそうかもしれませんけど…。
難しいなぁ、なんて言ったらいいのか…」

「任しとき!俺がめっちゃええ例えしてあげるわ」

「また変なこと言わないでくださいよ、忍足さん」

「…信頼ないなぁ、俺」

「前科がありますからね」

「大丈夫やって。えーっとな……」


やっぱり不機嫌そうな日吉の冷たい視線を受けつつ、侑士が楽しげに話し出す。


「俺らって、たいてい毎日同じ道通って通学するやろ?
見慣れた景色に乗り慣れた電車やらバス…。
最初は新鮮やったけど、だんだんそこに新しいものなんか探さんようになるやん?毎日ただ淡々と過ごすようになるやん…?」


………………………。


自分の世界に入り込んでるな、侑士…。


「A~?そんなことないC~。
俺は眠くないときは虫とか探したりするよ~。
あー、あと新しくできたお店も!マニアックなお菓子がおいてあるかもしれないC~」


…………………………………。


「というわけだ。
忍足、話は終わったな」

「ちょ、ちょい待ち!今のは例外やって!ジローは型にはまらんタイプやねんから!規格外やねんから!」


跡部の容赦ないツッコミに慌てて言い返す侑士。

結局なんとか続きを言えることになった。


「コホン。
……そんな毎日の中、俺は見つけたんや。
道端に何気なく、けど元気に咲く可愛らしい野の花をっ!」


……………………………。


この短時間でよくまた入り込めたな……。

メンタルつえー…。


「いい例えって、まさか野の花ですか?ありがちですね」

「うっ……」

「せめて具体名を出してくれないと話になりませんよ」

「うぅっ……」


日吉……やっぱりどう考えても機嫌悪いな。

いつにもましてバッサリいってるし。

まぁ落ち込んでる侑士はほっとくとして…。


野の花、かー……。


なんとなく考えながら、今までにみんなが名無しななしについて言ってたことを思い出してみる。

そしたら、パッと思い浮かんだ花があった。



「……タンポポ」

「えっ」

「えっ」


思いついたから何気なく言っただけだったけど、なんかみんな一斉に俺のほうを見た。


「な、なんだよ?びっくりするだろ」

「あ、すみません。
でもぴったりだったので…名無しさんのイメージに」

「ほんまに。ぴったりや」


え、ホントかよ。

なんとなくそう思っただけなのに。


「確かにそうだな。なぁ樺地」

「ウス」

「…違和感ないですね」

「よく出てきたな、タンポポなんて。
あいつに会ったことねぇのに」

「べつに、なんとなくだよ。
おまえら最近しょっちゅうそいつのことしゃべってただろ?
だからいつのまにかイメージが出来てきてたって感じでさ」


よく分からねーけど感心されて、ちょっとむずがゆく思いながら答えた。

けど…、みんながここまで言うってことは、ホントにその例えが合ってたってことだよな。


ふーん……、タンポポみたいな女子、か…。

…ちょっと会ってみたいかも。


タンポポってその辺にフツーに咲いてるし、わざわざ足とめてまで見たりなんかしねーけどさ。

けど咲いてるのを見かけると、なんか嬉しくなるんだよな。

なんつーか、こう…。

ポカポカしてくるような感じがするんだ。


でもなー。

女子に会ってみたいとか、なんか恥ずかしくて言えねーぜ。

絶対からかわれるだろーし……。




「ハイハーイ!
俺会ってみたい!会ってみたい!
タンポポみたいな女の子に会ってみたいC~!!」



………………………………………………。


「クスッ。
芥川さん、そんな大きな声出さなくても聞こえますよ」

「あー、ごめんね~!
会いたいなーと思ったら、つい。恥ずかC~!」


…嘘つけ。どこが恥ずかしいんだよ。

ったく、ジローはホンットーにいい性格してるよなー。


はしゃぐジローをため息をつきながら見ていると、ジローが満面の笑顔で俺に話をふってきた。


「ねぇねぇ、向日も俺と同じでしょ~?
タンポポみたいな女の子に会ってみたいよね~?」


…えっ。

え、えっと…。


「お、おう。
まぁ、面白そうだし、どっちかって言うと会ってみたいかな…」

「だよねだよね~!やっぱりそうだよね~」


い、言えた……!!

会いたいって言えたぞ!しかも自然な流れで!

ホンット、ジローっていい奴だよなー!

サンキュー、ジロー!


「ジロー、ずっと友達でいような!」

「???
どうしたの?急に」

「なんでもねーよっ」


ついつい笑ってしまう。

これでもう会ってみたいって堂々と言えるもんなー!

人の力を借りてっていうのがちょっと男らしくねーけどさ。



ーーププッ。


ん?

誰か笑ってるような…?


急に聞こえてきた笑い声を不思議に思って見回してみると、侑士が笑いをこらえるように口もとを手で押さえていた。


「?
侑士、なんか笑うようなことあったか?」


別に何も無かったよな?


「ま、まぁ、ちょっとな。………ププッ」

「?
なんだよ。なんで笑ってるんだ?」

「いや、まぁええやん。
ただ岳人にはずっとそのままでおってほしいなぁと思ったんや。………ププッ」


………………………。


よく分かんねーけど、なんかバカにされてるような……。

つーか、よく見たら他のやつらも笑ってるような……。


なんか………ムムッ。



「心配するな。
会いたかろうと会いたくなかろうと、お前らもあいつと会うことになる。そう遠くない未来にな」


ほんの少しムッとしたそのとき、それをさえぎるように跡部が口を開いた。

跡部が言うには、名無しななしを招いての食事会を計画しているらしい。

めちゃくちゃ面白くなりそーだ!

…と思ったけど。


俺はもっと早く、名無しななしに会ってみたいなー。

待ってられねーよ。

……よしっ!

こうなったら行動あるのみ!

こっちから会いに行くぜっ!



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