合同合宿編
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どういうこと……?
私が…日吉くんを嫌ってる……?
そんな…どうして……。
日吉くんの言葉を聞いた瞬間、身体中を強い衝撃が駆け抜けていった。
信じられなかった。
だって、私は…。
日吉くんのことが嫌いどころか、もっと話してみたいってずっと思ってて…。
なのに…日吉くんには真逆に思われてたなんて…。
いつのまにか私はうつむいていて、視界には私と日吉くんの足もとがぼんやりとうつっていた。
………………………………………………………。
……………………。
やっぱり……届かないんだね…。
私の気持ちは…日吉くんには伝わらないんだね……。
だけど私…本当のこと言おうって、さっき思った。
たぶん、こんなふうに二人で話せる機会はもう来ない。
これが…最後。
もう全然残ってないと思ってたけど、最後に後悔しないように、振り絞ろう。
私の中にあるありったけの勇気、出そう。
覚悟を決めた私は、顔をあげた。
そして、どこか苦しそうで悲しそうな日吉くんを見つめた。
『…日吉くん。
私、日吉くんのこと嫌いだなんて全然思ってない。そんなこと、一回だって思ったことない』
日吉くんの眉が、ピクッと動いた気がした。
『それどころか、私は…』
…勇気出せ、私……!
『…私はずっと……、ずっと、日吉くんと話したいって思ってたよ』
日吉くんは不意をつかれたように、無言のままだ。
今、何を思っただろう。
どんな気持ちなんだろう。
それは分からないけど…、やっと…言えた。
やっと…素直に言えた……。
『…私ね、日吉くんのこと、最初は少し苦手だなって思ってたんだ。
無口で厳しそうで、なんだかちょっと怖そうだなって』
あれだけ言えなかったのに、不思議なもので一度フタが開くと後から後から思いが言葉になっていく。
『でも鳳くんとか宍戸先輩と仲良くなれて、他のテニス部のみんなとも一緒にいることが多くなって…。
そうしてるうちに、だんだん分かった』
日吉くんは黙って私の話を聞いてくれていた。
嫌いな人間からこんなことを言われてきっと迷惑してるはず。
現に…さっきも、そう言ってたし……。
…でも今は、拒絶せずにここにいてくれている事実に甘えたい。
『日吉くんはちょっと分かりづらいだけで、すごく優しい人なんだなって』
「っ……」
『だから鳳くんとか樺地くんと話すときみたいに、他の同級生と話すときみたいに、日吉くんとも普通に挨拶したり気軽に声を掛け合ったりできたらどんなにいいだろうって、いつも思ってたんだ』
「!!」
よっぽどびっくりしてるんだと思う。
日吉くんは明らかに動揺した様子で、あっけにとられたように私の顔をただ見ているだけだった。
私は日吉くんに嫌われている。
だけど私は日吉くんと仲良くなりたかった。
それは絶対に交わることがない、叶うことがない願いだった。
でもそれを今以上には確信したくない。
日吉くんからはっきりと言葉にして答えを返されたら、今の私はきっと耐えきれない。
だから…もう終わりにしよう。
『…日吉くん。
いつも優しくしてくれてありがとう。
私、今まで何度も日吉くんに助けてもらった。本当にありがとう』
思い出すのは、日吉くんの優しさばかり。
口数が少なくて無愛想だけど、そんな分かりづらい優しさに私は何度も助けられた。
そう、今だって…。
『さっきも、私のために怒ってくれてありがとう。
あのときはびっくりしてすぐに言えなかった。ごめんなさい』
本当にダメだなぁ、私。
もっと早く言わなきゃいけないことだったのに。
ちゃんとお礼も言えないなんて…。
『あ、それと…佐伯さんにはもう何も言わないでおくね』
日吉くんがいいって言うんだから、そうしよう。
私が何かするのは、迷惑…なんだから。
『明日は合宿最終日だから、今まで以上にしっかり頑張るよ。
……それじゃ、私もう戻るね。
話聞いてくれて…ありがとう』
これが最後なんだ。
そう思うと、目の奥が熱くなった。
…早くここから離れよう。
そうじゃないと、泣いてしまいそうだ。
さっきはなんとか堪えられたけど、今度は自信がない。
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