名字固定【マクダウェル】
シルヴァラント編
Nîmes
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2日前の朝、突如世界には皆が見上げるほどに大きな塔が姿を現した。人々はそれを救いの塔と呼んでいる。なんでも村の聖堂へ信託が下り、神子が世界再生の旅を始めたらしい。歓声が上がり騒がしくなった町を私は宿の窓からぼんやりと眺めていた。
ここ800年近くは再生の旅も失敗続きだとどこかで聞いたことがある。いつの世にも救いを拒むものは必ずいるのだろう。今回はどうなるのかな、なんて薄いマナを感じながらぽつりと言葉を零した。
――…ルーナ、あの子をお願いします
瞼を閉じる。聞こえるのは懐かしい声。しかしそれは優しさと悲しさを孕んでおり今の私には理解することのできない複雑なものである。記憶喪失になったことなどないのに、このような声色でお願いをされれば忘れるはずなどないのに、どうしてもその声の主を思い出すことができないでいた。
記憶にないのならば放っておけばいいのに、そうするといつも胸の奥が酷く苦しくなる。余程大事なものなのだろうか、ぽっかりと心に穴が空いたような錯覚さえ覚える。この足りない何かを探すために私はあてのない旅をすることにしたのだった。
「……あ、そろそろチェックアウトの時間だ」
扉に立てかけてある両刃のついた杖を持ち、旅に必要な物が入っている麻袋を肩に引っ掛けて部屋を出る。受付のお姉さんに部屋の鍵を返す際、私をジロリと見て怪訝な顔をされたが慣れたものだ。
「さて、どうしようかなぁ」
神子による再生の旅が始まったことでいつもより活気づいている町にまるで祝福するかのように穏やかな風が吹いていた。さらさらと靡く髪を抑えて天を仰ぎ見る。
オサ山道で魔物を狩りながら野営を続けて3日前に今いるこの町イズールドへとやってきた。手に入れた素材を売り、そのお金で料理の材料やアイテムを補充するためである。無事に宿も取れて久々のベッドには感動を覚えたが長居するわけにもいかない。この町にはパルマコスタへ行くための船が出ているらしいのでそれに乗って海を渡るのが得策だろう。
よし、と静かに気合いをいれて歩き出す。
「お姉ちゃんや。あんた、旅をしているのかい?」
宿を出たところで年配のおばあさんに声を掛けられた。杖をついて歩いており姿勢も悪いところを見るに、恐らく足腰があまり良くないのだろう。少しでも話しやすくなるよう自分よりも目線の低いおばあさんに合わせるように屈む。
「はい、そうですよ。どうかしましたか?」
「あたしゃ目が悪くてねぇ。港に行きたいんじゃが足元が悪くてのう。連れてってほしいのじゃ」
どうやらおばあさんは足腰だけでなく目も悪いようだった。一人で歩くのも大変だろうに港まで行くなんて何か理由があるのだろうか。何にしても私もパルマコスタへ行くのに船のある港へ行かねばならないから断る理由もなく、おばあさんの手を握って頷いた。
「もちろんです。一緒に行きましょう」
ここ800年近くは再生の旅も失敗続きだとどこかで聞いたことがある。いつの世にも救いを拒むものは必ずいるのだろう。今回はどうなるのかな、なんて薄いマナを感じながらぽつりと言葉を零した。
――…ルーナ、あの子をお願いします
瞼を閉じる。聞こえるのは懐かしい声。しかしそれは優しさと悲しさを孕んでおり今の私には理解することのできない複雑なものである。記憶喪失になったことなどないのに、このような声色でお願いをされれば忘れるはずなどないのに、どうしてもその声の主を思い出すことができないでいた。
記憶にないのならば放っておけばいいのに、そうするといつも胸の奥が酷く苦しくなる。余程大事なものなのだろうか、ぽっかりと心に穴が空いたような錯覚さえ覚える。この足りない何かを探すために私はあてのない旅をすることにしたのだった。
「……あ、そろそろチェックアウトの時間だ」
扉に立てかけてある両刃のついた杖を持ち、旅に必要な物が入っている麻袋を肩に引っ掛けて部屋を出る。受付のお姉さんに部屋の鍵を返す際、私をジロリと見て怪訝な顔をされたが慣れたものだ。
「さて、どうしようかなぁ」
神子による再生の旅が始まったことでいつもより活気づいている町にまるで祝福するかのように穏やかな風が吹いていた。さらさらと靡く髪を抑えて天を仰ぎ見る。
オサ山道で魔物を狩りながら野営を続けて3日前に今いるこの町イズールドへとやってきた。手に入れた素材を売り、そのお金で料理の材料やアイテムを補充するためである。無事に宿も取れて久々のベッドには感動を覚えたが長居するわけにもいかない。この町にはパルマコスタへ行くための船が出ているらしいのでそれに乗って海を渡るのが得策だろう。
よし、と静かに気合いをいれて歩き出す。
「お姉ちゃんや。あんた、旅をしているのかい?」
宿を出たところで年配のおばあさんに声を掛けられた。杖をついて歩いており姿勢も悪いところを見るに、恐らく足腰があまり良くないのだろう。少しでも話しやすくなるよう自分よりも目線の低いおばあさんに合わせるように屈む。
「はい、そうですよ。どうかしましたか?」
「あたしゃ目が悪くてねぇ。港に行きたいんじゃが足元が悪くてのう。連れてってほしいのじゃ」
どうやらおばあさんは足腰だけでなく目も悪いようだった。一人で歩くのも大変だろうに港まで行くなんて何か理由があるのだろうか。何にしても私もパルマコスタへ行くのに船のある港へ行かねばならないから断る理由もなく、おばあさんの手を握って頷いた。
「もちろんです。一緒に行きましょう」