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小物入れ
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は、は、と荒く息を吐き出し、飛ぶ。
酷使し過ぎた翼は鉛を背負っているが如く重く、体全体が悲鳴を上げていた。
体力はとうの昔に尽きていて、早く休めと己の体が我が意識に疲労を訴えかけてくる。
けれどそれらを無視して、倒れ込みそうになる体を必死に支え、翼を広げて羽ばたかせる。
苦しくて足りない呼吸を補うように、ぜぇぜぇと不格好に呼吸する。
時に噎せながら、渇いた喉に鞭を打った。
止まりたい、止まりたい、と全身が叫ぶ。
しかし、今止まる事だけは許さない。
ぼろぼろになった体は気力だけで、前へ、前へ。
地面が抉れて凸凹になっている丘を駆け上がる。
データの塵となりゆく敵を無視して、飛ぶ。
「はぁ、っ……く、は」
限界を超えている翼のギシギシとした音と、自分の不規則な呼吸だけが聞こえる。
周りは静まり返り、気配一つしない。
それが余計に焦りへと繋がるが、もう少しだ、と自分を叱咤した。焦りは戦に持ち込んではならぬ。
この丘の、どこか。
気配がないせいで正確な場所は分からないが、必ず近くにいるであろう。
いなければ、困るのだ。
「はあッ…どこ、だ……、どこに、いるッ、ロードナイトモン!返事をしろッ!」
集中力を切らさないよう、通信の途切れた相棒の姿を血眼になって探す。
時間がない。早く、早く見つけなければ。
だが、宙を流れていく誰とも分からないデータに、徐々に焦りが募っていく。
2人でやってきたこの戦場。
ロイヤルナイツとしての戦いにも慣れていた。
いつもの如く、相棒が前線で戦う。
いつもの如く、俺が後方支援をして戦う。
いつもの如く、軽口を叩き合って。
「――ロードナイトモンッ!」
いつもの如く、任務を終えて、帰るはず、だったのに。
「ぅ…デュナ、スモ…?」
丘を駆け上った先の惨状に息を呑む。
地面には大きなクレーターが出来ていて、その中央で仰向けに倒れる薔薇色の聖騎士。
データは流れていないが、鎧には多数の切傷。
いつデリートしても可笑しくなかった。
足元で助けを乞う敵を蹴飛ばし、なりふり構わず相棒の元へ駆け寄る。
膝をつき、ゆっくりと抱きかかえ、叫ぶ。
「相棒!まだ、まだだ相棒!」
「デュナス、モン…」
「喋るな!いま手当てをッ」
弱々しいが、まだ生命反応がある。
まだ、生きている。
けれど安心してはいられない。
抉られた鎧の傷は生々しく痛ましい。
彼の武器であるパイルバンカーは粉々で、自慢の帯刀も幾つかを失っている。
ここじゃ駄目だ。メインサーバへ連れ帰って、きちんとした手当てをしなければ。
今の自分には何もできないことに歯がぎりぎりと音を立てるくらいに噛み締める。
動くのも辛いだろう相棒が、ぎこちない動作で顔をこちらに向けた。
「お、い……任務、は」
「ふざけるなッ。お前が死んでしまったら、達成したって意味ないだろう!」
違和感はあった。
敵の数がいつもより少ない気がした。
あらかじめ聞いていた数と合わない。そう、確かに感じていた。
何故気が付かなかった。
こちらは良いから自分の戦いに専念しろ、とモニター越しに言い放った相棒の声がいつもより真剣だったこと。
空が真っ黒の雲に覆われた直後に聞こえた、相手も本気だな、という声が、震えていたこと。
遅かったのだ。気付くのが遅かった。
自分のところに来る敵を全て倒した後、応答のない相棒へ無理やりモニターを繋げて気が付いた。
ロイヤルナイツを潰そうとしている軍団の主戦力の全てが相棒の元に流れていたこと。
相棒がわざと黙って、1人で戦っていたこと。
それからすぐに飛んだ。
無理やり繋げたモニターにもすぐにノイズが走り、生存確認がままならなくて。
死に物狂いで見つけた相棒は、死にかけていて、でも生きていた。
「勝手に逝くなよ、まだ、逝くには早いッ」
見るに堪えない傷に応急処置用のプログラムを流し込んで傷が広がるのを防ぐ。
敵の殆どが究極体。多勢に無勢もいいところだ。
相棒の傷を分析すると、その殆どが遠距離攻撃によるものだった。
裏を返せば、相棒は決して敵を自らの懐には入れなかったことになる。
たった1人、近距離攻撃しか持たない相棒が、無数の敵を相手に戦った証。
俺がもっと早く気が付いていれば。俺のせいで、相棒が、こんな目に。
「下を、向くな……、注意を、怠る、な…」
なのにこいつは、どこまでも戦士だ。
純粋に敵を狩るという意思を失わない戦士。
大きな傷だけに応急処置を施し、倒れている相棒の肩を抱きかかえる。
このまま時間が経てば間違いなく死ぬ。
そんなこと、絶対にさせはしない。だから早くこいつを連れ帰らなければ。
「……デュナ、スモン」
「なんだ」
「敵。……敵の、増援が…来てい、る」
「…ッ」
ここから少し離れた空を見ると、数えるには気が遠くなるほどの敵を捉えた。
しかもそれだけに留まらず、強大な敵の気配が四方八方に感じる。
流石に、終わり、という言葉が脳裏にチラつく。
通信妨害を施されているのか、メインサーバへも連絡がつかない。
ここに残るのは俺と相棒のみ。だが相棒は瀕死。
絶望的な状況だってくらい、俺にも分かる。
「退け。……そして援軍を、呼んで…こい」
相棒を置いて逃げることは可能だ。
だが、仲間を連れてくる頃には、きっとここに相棒はいないだろう。
俺が本当にそんなことを出来ると思っているのか。
だって相棒とは、幼年期から一緒で、ロイヤルナイツに加入して幾度となく戦い、助け合い、時には喧嘩もしながら生きてきた。
だからな。
「悪いがその案は拒否する」
「ッ、ふざけて、いる…場合かッ」
「大真面目だ。お前、俺の相棒だろう。なら、」
――地獄の果てまで付き合えよ
確実に抹殺するため、多数の敵が俺たちの上空を覆った。
どうせ死ぬのなら、最後の悪あがきを。
相棒を抱えながら、僅かに残った全身のエネルギーを集めていく。
指揮を執っているであろう究極体が動いた。
俺たちを囲う敵が同時に技を放とうとしている。
上等だ。我が誇りに賭けて、半分くらいは地獄へ道連れにしてやろうではないか。
「ブレス・オブ、」
「必要ない」
技を放つ直前に聞こえた低い声。
聞き間違えるはずもない、その声は。
「マグナモン、アルフォースブイドラモン。障壁展開……耐えてみせろよ」
「了解」
「任せてー!」
他にも聞こえた2つの声。
「ライトオーラバリア」
「テンセグレートシールドッ!」
敵の一斉攻撃と、俺たちを守るように輝きを放つ2つの障壁がぶつかる。
あまりにも眩しいそれに目を閉じてやり過ごす。
「守りの要は、伊達じゃないんでね」
「ひゅー! マグナかっこいい!」
この場には似つかわしくない明るい声に目を開けると、金色と蒼色の聖騎士の他、そこにはロイヤルナイツ全員が立っていた。
思わず相棒と顔を見合わせる。
どういうことだ。
通信は、確かに妨害されていたはず。
その思いを込めて白き鎧と赤い裏地の白いマントを身に纏った聖騎士に視線を送る。
終焉の聖騎士にしてロイヤルナイツのリーダー
――オメガモン。
「街のデジモンから通報が入ってな。……何より、私たちがこれだけの勢力に気配で気付かない訳がないだろう?」
そうして呆気に取られている俺たちを見下ろして、奴は不敵に笑った。
「さあ、チェス盤をひっくり返すぞ」
酷使し過ぎた翼は鉛を背負っているが如く重く、体全体が悲鳴を上げていた。
体力はとうの昔に尽きていて、早く休めと己の体が我が意識に疲労を訴えかけてくる。
けれどそれらを無視して、倒れ込みそうになる体を必死に支え、翼を広げて羽ばたかせる。
苦しくて足りない呼吸を補うように、ぜぇぜぇと不格好に呼吸する。
時に噎せながら、渇いた喉に鞭を打った。
止まりたい、止まりたい、と全身が叫ぶ。
しかし、今止まる事だけは許さない。
ぼろぼろになった体は気力だけで、前へ、前へ。
地面が抉れて凸凹になっている丘を駆け上がる。
データの塵となりゆく敵を無視して、飛ぶ。
「はぁ、っ……く、は」
限界を超えている翼のギシギシとした音と、自分の不規則な呼吸だけが聞こえる。
周りは静まり返り、気配一つしない。
それが余計に焦りへと繋がるが、もう少しだ、と自分を叱咤した。焦りは戦に持ち込んではならぬ。
この丘の、どこか。
気配がないせいで正確な場所は分からないが、必ず近くにいるであろう。
いなければ、困るのだ。
「はあッ…どこ、だ……、どこに、いるッ、ロードナイトモン!返事をしろッ!」
集中力を切らさないよう、通信の途切れた相棒の姿を血眼になって探す。
時間がない。早く、早く見つけなければ。
だが、宙を流れていく誰とも分からないデータに、徐々に焦りが募っていく。
2人でやってきたこの戦場。
ロイヤルナイツとしての戦いにも慣れていた。
いつもの如く、相棒が前線で戦う。
いつもの如く、俺が後方支援をして戦う。
いつもの如く、軽口を叩き合って。
「――ロードナイトモンッ!」
いつもの如く、任務を終えて、帰るはず、だったのに。
「ぅ…デュナ、スモ…?」
丘を駆け上った先の惨状に息を呑む。
地面には大きなクレーターが出来ていて、その中央で仰向けに倒れる薔薇色の聖騎士。
データは流れていないが、鎧には多数の切傷。
いつデリートしても可笑しくなかった。
足元で助けを乞う敵を蹴飛ばし、なりふり構わず相棒の元へ駆け寄る。
膝をつき、ゆっくりと抱きかかえ、叫ぶ。
「相棒!まだ、まだだ相棒!」
「デュナス、モン…」
「喋るな!いま手当てをッ」
弱々しいが、まだ生命反応がある。
まだ、生きている。
けれど安心してはいられない。
抉られた鎧の傷は生々しく痛ましい。
彼の武器であるパイルバンカーは粉々で、自慢の帯刀も幾つかを失っている。
ここじゃ駄目だ。メインサーバへ連れ帰って、きちんとした手当てをしなければ。
今の自分には何もできないことに歯がぎりぎりと音を立てるくらいに噛み締める。
動くのも辛いだろう相棒が、ぎこちない動作で顔をこちらに向けた。
「お、い……任務、は」
「ふざけるなッ。お前が死んでしまったら、達成したって意味ないだろう!」
違和感はあった。
敵の数がいつもより少ない気がした。
あらかじめ聞いていた数と合わない。そう、確かに感じていた。
何故気が付かなかった。
こちらは良いから自分の戦いに専念しろ、とモニター越しに言い放った相棒の声がいつもより真剣だったこと。
空が真っ黒の雲に覆われた直後に聞こえた、相手も本気だな、という声が、震えていたこと。
遅かったのだ。気付くのが遅かった。
自分のところに来る敵を全て倒した後、応答のない相棒へ無理やりモニターを繋げて気が付いた。
ロイヤルナイツを潰そうとしている軍団の主戦力の全てが相棒の元に流れていたこと。
相棒がわざと黙って、1人で戦っていたこと。
それからすぐに飛んだ。
無理やり繋げたモニターにもすぐにノイズが走り、生存確認がままならなくて。
死に物狂いで見つけた相棒は、死にかけていて、でも生きていた。
「勝手に逝くなよ、まだ、逝くには早いッ」
見るに堪えない傷に応急処置用のプログラムを流し込んで傷が広がるのを防ぐ。
敵の殆どが究極体。多勢に無勢もいいところだ。
相棒の傷を分析すると、その殆どが遠距離攻撃によるものだった。
裏を返せば、相棒は決して敵を自らの懐には入れなかったことになる。
たった1人、近距離攻撃しか持たない相棒が、無数の敵を相手に戦った証。
俺がもっと早く気が付いていれば。俺のせいで、相棒が、こんな目に。
「下を、向くな……、注意を、怠る、な…」
なのにこいつは、どこまでも戦士だ。
純粋に敵を狩るという意思を失わない戦士。
大きな傷だけに応急処置を施し、倒れている相棒の肩を抱きかかえる。
このまま時間が経てば間違いなく死ぬ。
そんなこと、絶対にさせはしない。だから早くこいつを連れ帰らなければ。
「……デュナ、スモン」
「なんだ」
「敵。……敵の、増援が…来てい、る」
「…ッ」
ここから少し離れた空を見ると、数えるには気が遠くなるほどの敵を捉えた。
しかもそれだけに留まらず、強大な敵の気配が四方八方に感じる。
流石に、終わり、という言葉が脳裏にチラつく。
通信妨害を施されているのか、メインサーバへも連絡がつかない。
ここに残るのは俺と相棒のみ。だが相棒は瀕死。
絶望的な状況だってくらい、俺にも分かる。
「退け。……そして援軍を、呼んで…こい」
相棒を置いて逃げることは可能だ。
だが、仲間を連れてくる頃には、きっとここに相棒はいないだろう。
俺が本当にそんなことを出来ると思っているのか。
だって相棒とは、幼年期から一緒で、ロイヤルナイツに加入して幾度となく戦い、助け合い、時には喧嘩もしながら生きてきた。
だからな。
「悪いがその案は拒否する」
「ッ、ふざけて、いる…場合かッ」
「大真面目だ。お前、俺の相棒だろう。なら、」
――地獄の果てまで付き合えよ
確実に抹殺するため、多数の敵が俺たちの上空を覆った。
どうせ死ぬのなら、最後の悪あがきを。
相棒を抱えながら、僅かに残った全身のエネルギーを集めていく。
指揮を執っているであろう究極体が動いた。
俺たちを囲う敵が同時に技を放とうとしている。
上等だ。我が誇りに賭けて、半分くらいは地獄へ道連れにしてやろうではないか。
「ブレス・オブ、」
「必要ない」
技を放つ直前に聞こえた低い声。
聞き間違えるはずもない、その声は。
「マグナモン、アルフォースブイドラモン。障壁展開……耐えてみせろよ」
「了解」
「任せてー!」
他にも聞こえた2つの声。
「ライトオーラバリア」
「テンセグレートシールドッ!」
敵の一斉攻撃と、俺たちを守るように輝きを放つ2つの障壁がぶつかる。
あまりにも眩しいそれに目を閉じてやり過ごす。
「守りの要は、伊達じゃないんでね」
「ひゅー! マグナかっこいい!」
この場には似つかわしくない明るい声に目を開けると、金色と蒼色の聖騎士の他、そこにはロイヤルナイツ全員が立っていた。
思わず相棒と顔を見合わせる。
どういうことだ。
通信は、確かに妨害されていたはず。
その思いを込めて白き鎧と赤い裏地の白いマントを身に纏った聖騎士に視線を送る。
終焉の聖騎士にしてロイヤルナイツのリーダー
――オメガモン。
「街のデジモンから通報が入ってな。……何より、私たちがこれだけの勢力に気配で気付かない訳がないだろう?」
そうして呆気に取られている俺たちを見下ろして、奴は不敵に笑った。
「さあ、チェス盤をひっくり返すぞ」
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