少女と蒼の聖騎士
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「まずはここ、じゃーん!」
早速案内されたのは、ソファやら簡易キッチンやら本棚がある落ち着いた空間のお部屋だった。といっても全て彼らのサイズに合わせてあるので私は見上げることしかできない。まるでガリバー旅行記である。
『談話室、かな…?』
「正解!俺ね、この部屋が好き!」
『どうして?』
「休憩できるから!」
なんと安直な。にこにこと両手を広げるその仕草には楽しいという気持ちが乗っていた。どうやら本当にこの部屋がお好きらしい。でも彼らのお仕事は大変そうだし休まないと気力や体力が持たないのならそれも仕方のない事なのだろう。
すると、私たち以外にいなかったこの部屋に呆れたような声が聞こえてきた。
「全く、お前はもう少し仕事をしろ」
声が聞こえてきたのは私たちの後ろ。振り向くと開けっ放しの扉の所には黄金の鎧を纏った騎士が腕を組んで立っていた。その姿を見るや否やアルの顔は先程よりもっと晴れやかになり、ぶんぶんと手を振って呼び掛ける。
「マグナー!おはよう!」
『…おはようございます』
「オメガモンから聞いているぞ。シオリだな。オレはマグナモンでコイツの相棒。宜しく頼むよ」
低すぎない声で穏やかに挨拶をしてくれるマグナモンにこちらも頭を下げる。見た感じ噂の彼はアルと正反対に落ち着いているようだ。そしてオメガモンやアルより幾分か小さく、目線的にも私と近くてなんだかちょっと安心してしまったのは内緒にしておこうと思う。
『お世話になります、マグナモン』
「ああ。…他のナイツには会ったのか?」
『オメガモンとアルだけ、かな』
「!……そうか、アルと呼んでいるか」
驚いたような声を出してマグナモンは私とアルを交互に見ている。もしやあだ名で呼ぶのはいけなかっただろうか。部外者の私がアルと馴れ馴れしくしているとでも思われてしまったかもしれない。
しかしそんなものは杞憂だったように彼はふっと顔を綻ばせた。
「ありがとうな。コイツともっと仲良くしてやってくれ」
『えっ、はい。了解です』
じゃあオレは任務へ行ってくる、とマグナモンは談話室を後にした。何だかアルの保護者みたいな人だったな、なんて思いつつアルを見上げるとマグナモンが出ていった扉を見てにこにこと嬉しそうに微笑んでいた。
『アル、顔が緩んでるよ』
「えへへ。分かっちゃった?マグナ、わざわざ挨拶しに来たんだよ」
なんと。でも確かに言われてみれば談話室に入ってきて休憩という休憩はしていなかった。そこでふいに昨日のアルとの会話を思い出す。任務で夜遅くに帰ってきたのはアルだけではなく、彼もまた同じだと認識していたがどうだろうか。未だ表情筋を緩みっぱなしにしている蒼い竜騎士に問う。
『ねえ。マグナモンも昨日帰ってくるの遅かったの?』
「うん。俺と一緒だったよ!」
『……遅い時間まで任務へ行ってたのに今日もお仕事なんだ』
「そ!マグナって本当はメインサーバからのサポート担当なんだけど、
ここ最近は調査地域が増えて人手が足りないって駆り出されてるんだ!」
『大変そうだね』
「シオリもこれからやるんだよ!」
随分と社畜レベルの高い職場ですね。今はまだこの世界についても彼らについても分からないからかもしれないけれど非常に先行きが不安である。密かにげんなりする私を余所にアルは声高らかに宣言した。
「ちなみに俺は嫌だから無理やり休んでる!」
胸を張って自信たっぷりに言っているが、それはただ自分の仕事から逃げているだけではなかろうか。でもどこか憎めないのはその言葉が彼らしいからなのだろう。そしてそれを周りの仲間も容認しているからこそ彼はどこまでも天真爛漫でいられるのだと思う。
『アルは自由だね』
「だって皆みたいな堅物にはなりたくないもん!」
『なるほど』
仲間のことを思い浮かべたのか、急にそっぽ向いた彼はやはり幼く感じる。けれど堅苦しい雰囲気に呑まれないよう自分だけでも明るくいようと彼は意図的に考えていたのだ。生真面目のように見えたマグナモンがアルの相棒の座にいるのはアルのこういう自由さに振り回されており、尚且つそれに助けられる部分もあったからなのではないかと思う。もちろん他にも彼らにしか分からない理由はあるだろうがこれもあながち間違ってはいないだろう。
物思いに耽っていると、あっと声をあげてアルがこちらを見た。
「確か今日はドゥフトモンも休みだったから会いに行こう!」
『ドゥフトモン?』
「そう!ナイツの参謀!部屋に行ったらシオリも吃驚するよ!」
『それは楽しみだね』
アルに連れられて談話室を出ると、廊下でばったり紫色の強面な騎士とご対面することになってしまいました。
『子供が泣きそうな顔ですね』
「私が泣きそうだ」
早速案内されたのは、ソファやら簡易キッチンやら本棚がある落ち着いた空間のお部屋だった。といっても全て彼らのサイズに合わせてあるので私は見上げることしかできない。まるでガリバー旅行記である。
『談話室、かな…?』
「正解!俺ね、この部屋が好き!」
『どうして?』
「休憩できるから!」
なんと安直な。にこにこと両手を広げるその仕草には楽しいという気持ちが乗っていた。どうやら本当にこの部屋がお好きらしい。でも彼らのお仕事は大変そうだし休まないと気力や体力が持たないのならそれも仕方のない事なのだろう。
すると、私たち以外にいなかったこの部屋に呆れたような声が聞こえてきた。
「全く、お前はもう少し仕事をしろ」
声が聞こえてきたのは私たちの後ろ。振り向くと開けっ放しの扉の所には黄金の鎧を纏った騎士が腕を組んで立っていた。その姿を見るや否やアルの顔は先程よりもっと晴れやかになり、ぶんぶんと手を振って呼び掛ける。
「マグナー!おはよう!」
『…おはようございます』
「オメガモンから聞いているぞ。シオリだな。オレはマグナモンでコイツの相棒。宜しく頼むよ」
低すぎない声で穏やかに挨拶をしてくれるマグナモンにこちらも頭を下げる。見た感じ噂の彼はアルと正反対に落ち着いているようだ。そしてオメガモンやアルより幾分か小さく、目線的にも私と近くてなんだかちょっと安心してしまったのは内緒にしておこうと思う。
『お世話になります、マグナモン』
「ああ。…他のナイツには会ったのか?」
『オメガモンとアルだけ、かな』
「!……そうか、アルと呼んでいるか」
驚いたような声を出してマグナモンは私とアルを交互に見ている。もしやあだ名で呼ぶのはいけなかっただろうか。部外者の私がアルと馴れ馴れしくしているとでも思われてしまったかもしれない。
しかしそんなものは杞憂だったように彼はふっと顔を綻ばせた。
「ありがとうな。コイツともっと仲良くしてやってくれ」
『えっ、はい。了解です』
じゃあオレは任務へ行ってくる、とマグナモンは談話室を後にした。何だかアルの保護者みたいな人だったな、なんて思いつつアルを見上げるとマグナモンが出ていった扉を見てにこにこと嬉しそうに微笑んでいた。
『アル、顔が緩んでるよ』
「えへへ。分かっちゃった?マグナ、わざわざ挨拶しに来たんだよ」
なんと。でも確かに言われてみれば談話室に入ってきて休憩という休憩はしていなかった。そこでふいに昨日のアルとの会話を思い出す。任務で夜遅くに帰ってきたのはアルだけではなく、彼もまた同じだと認識していたがどうだろうか。未だ表情筋を緩みっぱなしにしている蒼い竜騎士に問う。
『ねえ。マグナモンも昨日帰ってくるの遅かったの?』
「うん。俺と一緒だったよ!」
『……遅い時間まで任務へ行ってたのに今日もお仕事なんだ』
「そ!マグナって本当はメインサーバからのサポート担当なんだけど、
ここ最近は調査地域が増えて人手が足りないって駆り出されてるんだ!」
『大変そうだね』
「シオリもこれからやるんだよ!」
随分と社畜レベルの高い職場ですね。今はまだこの世界についても彼らについても分からないからかもしれないけれど非常に先行きが不安である。密かにげんなりする私を余所にアルは声高らかに宣言した。
「ちなみに俺は嫌だから無理やり休んでる!」
胸を張って自信たっぷりに言っているが、それはただ自分の仕事から逃げているだけではなかろうか。でもどこか憎めないのはその言葉が彼らしいからなのだろう。そしてそれを周りの仲間も容認しているからこそ彼はどこまでも天真爛漫でいられるのだと思う。
『アルは自由だね』
「だって皆みたいな堅物にはなりたくないもん!」
『なるほど』
仲間のことを思い浮かべたのか、急にそっぽ向いた彼はやはり幼く感じる。けれど堅苦しい雰囲気に呑まれないよう自分だけでも明るくいようと彼は意図的に考えていたのだ。生真面目のように見えたマグナモンがアルの相棒の座にいるのはアルのこういう自由さに振り回されており、尚且つそれに助けられる部分もあったからなのではないかと思う。もちろん他にも彼らにしか分からない理由はあるだろうがこれもあながち間違ってはいないだろう。
物思いに耽っていると、あっと声をあげてアルがこちらを見た。
「確か今日はドゥフトモンも休みだったから会いに行こう!」
『ドゥフトモン?』
「そう!ナイツの参謀!部屋に行ったらシオリも吃驚するよ!」
『それは楽しみだね』
アルに連れられて談話室を出ると、廊下でばったり紫色の強面な騎士とご対面することになってしまいました。
『子供が泣きそうな顔ですね』
「私が泣きそうだ」