少女は出会う
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≪詳しいことはオメガモンより聞くがよい≫
『はあ。失礼します』
訳も分からぬまま神様の部屋を出る。元の世界へ帰らないのならここで暮せ、という意見は流石に安直すぎやしないのだろうか。色々と話を聞いてきたが私がすぐに理解することはできず、詳しいことはロイヤルナイツのリーダーであるオメガモンに教われと言い残し水晶姿の神様は姿を消した。
参ったな、と溜息を吐き隣を見やればずっといたのだろうか。オメガモンが腕を組んで立っていた。
「何を情けない顔している」
『……仕方がない。何も理解できていないから』
先に神様から連絡を受けていたのだろう。何もかもを承知したような態度で私に向き合っている。雰囲気は最初に会った時と同じかそれ以上に穏やかなような気がするのは気のせいだろうか。もしや人間を見るのは初めてじゃない、とか。
そんなことをぼんやり考えているとオメガモンは踵を返して歩き出した。
「ロイヤルナイツは後で紹介してやる」
『うん。ありがとう、ございます』
「ゆくゆくは我らと共に仕事をするが、今はとにかくこの世界について覚えるのを優先しろ」
そう。神様からロイヤルナイツと共に暮らせ、なんて唐突かつ理解に苦しむ提案をされたけれど拒む理由もないから私はそれを受け入れた。しかしそもそも私と彼らでは同じ仕事などできるわけがないのではないか。
神様、イグドラシルは何を考えているのだろう。
『…にしても、そんな簡単に受け入れて良いの』
オメガモンの背中へ呟くように言うと、それがしっかりと聞こえたのだろう。足を止めて彼はこちらを振り返った。
「人間には興味がある。ただそれだけだ」
『へぇ』
彼はそれだけ言うと再び歩き始めた。神様曰く、どうやらこの世界にはデジタルモンスターと呼ばれる生き物しかいないようで、人間は来たことがないから興味があるらしい。それはオメガモンも同じだったようだ。
帰らないと言った私に、ならばこの世界に居ろと生きる権利をくれた。人間の可能性とやらを知りたいと神様は言っていたけれど私なんて何の可能性もない。それでも本当に良いのだろうか。
まぁその時はその時か、と考え事を払拭するとオメガモンが今度は足を止めずに言った。
「今日は他のロイヤルナイツは任務で出払っている。明日から世界樹の中と共に彼らも紹介しよう」
『分かった。宜しくお願いします』
「部屋に案内する」
オメガモンの言葉通り、拠点としているこの木を街のデジモンたちは世界樹と名付けているらしい。けれどロイヤルナイツはメインサーバと呼んでいるようで、メインというだけあって世界の秩序を保持するのに大事な役割を持つ機関のようだ。
神様から聞いたけれど、ここは人間が生み出したデータで形成された世界だそうでところどころ人間世界と似ている部分がある。つまり、プログラムの世界だとも。
まだまだ理解をしきれないけれど、私の知らない世界はいっぱいあるんだなあと感慨深くなる。そうこうしているうちに一つの扉の前にやってきた。
「今日からお前の部屋だ。元は空き部屋だから好きに使え」
『……広い』
案内された部屋はとても広く、大きなベッドが一つあるだけだった。恐らく彼らに合わせたサイズなのだろう。私が使うとなれば掃除も大変だしここでの生活も一苦労しそうな予感がする。私が住んでいたマンションのワンルーム部屋よりも広いベッドはいつか小さくしてもらおうと決意した。
「非番のやつはお前と共に行動してもらう。その時に頼んで部屋を改造してしまっても良い」
『そこまでしてもらわなくても…』
「何を遠慮している」
『いやだって、私人間だよ』
いくら興味があるからといってそこまでしてもらう義理はないと思う。というのも、いきなり来た人間を自らの領域に入れて好き勝手させられるかという問題であり、今はただの居候なのだから。
自分の立場が弱いのは理解しているつもりである。そう思って俯くとオメガモンは迷うことなくその場に跪いて私の頭に手を置いた。
「人間であろうとなかろうと、お前から邪悪を感じない。それだけではいけないのか」
目を見開く。こんなに誠実な言葉を掛けられたのはきっと初めてだ。彼は疑いもせずにただ自分の直感を信じて私に向き合ってくれた。不確定でイレギュラーな存在であるはずなのに、ただ一つの信じられる要素だけで私を受け入れようとしてくれている。今まで生きていてそんな人に出会ったことのない私はそれが無性に嬉しくて。
眩しいな、なんて透明の雫が一粒頬を伝った。
「……俺は仕事に戻るぞ」
『うん。ありがとう、オメガモン』
何だか久しぶりに笑えた気がした。
『はあ。失礼します』
訳も分からぬまま神様の部屋を出る。元の世界へ帰らないのならここで暮せ、という意見は流石に安直すぎやしないのだろうか。色々と話を聞いてきたが私がすぐに理解することはできず、詳しいことはロイヤルナイツのリーダーであるオメガモンに教われと言い残し水晶姿の神様は姿を消した。
参ったな、と溜息を吐き隣を見やればずっといたのだろうか。オメガモンが腕を組んで立っていた。
「何を情けない顔している」
『……仕方がない。何も理解できていないから』
先に神様から連絡を受けていたのだろう。何もかもを承知したような態度で私に向き合っている。雰囲気は最初に会った時と同じかそれ以上に穏やかなような気がするのは気のせいだろうか。もしや人間を見るのは初めてじゃない、とか。
そんなことをぼんやり考えているとオメガモンは踵を返して歩き出した。
「ロイヤルナイツは後で紹介してやる」
『うん。ありがとう、ございます』
「ゆくゆくは我らと共に仕事をするが、今はとにかくこの世界について覚えるのを優先しろ」
そう。神様からロイヤルナイツと共に暮らせ、なんて唐突かつ理解に苦しむ提案をされたけれど拒む理由もないから私はそれを受け入れた。しかしそもそも私と彼らでは同じ仕事などできるわけがないのではないか。
神様、イグドラシルは何を考えているのだろう。
『…にしても、そんな簡単に受け入れて良いの』
オメガモンの背中へ呟くように言うと、それがしっかりと聞こえたのだろう。足を止めて彼はこちらを振り返った。
「人間には興味がある。ただそれだけだ」
『へぇ』
彼はそれだけ言うと再び歩き始めた。神様曰く、どうやらこの世界にはデジタルモンスターと呼ばれる生き物しかいないようで、人間は来たことがないから興味があるらしい。それはオメガモンも同じだったようだ。
帰らないと言った私に、ならばこの世界に居ろと生きる権利をくれた。人間の可能性とやらを知りたいと神様は言っていたけれど私なんて何の可能性もない。それでも本当に良いのだろうか。
まぁその時はその時か、と考え事を払拭するとオメガモンが今度は足を止めずに言った。
「今日は他のロイヤルナイツは任務で出払っている。明日から世界樹の中と共に彼らも紹介しよう」
『分かった。宜しくお願いします』
「部屋に案内する」
オメガモンの言葉通り、拠点としているこの木を街のデジモンたちは世界樹と名付けているらしい。けれどロイヤルナイツはメインサーバと呼んでいるようで、メインというだけあって世界の秩序を保持するのに大事な役割を持つ機関のようだ。
神様から聞いたけれど、ここは人間が生み出したデータで形成された世界だそうでところどころ人間世界と似ている部分がある。つまり、プログラムの世界だとも。
まだまだ理解をしきれないけれど、私の知らない世界はいっぱいあるんだなあと感慨深くなる。そうこうしているうちに一つの扉の前にやってきた。
「今日からお前の部屋だ。元は空き部屋だから好きに使え」
『……広い』
案内された部屋はとても広く、大きなベッドが一つあるだけだった。恐らく彼らに合わせたサイズなのだろう。私が使うとなれば掃除も大変だしここでの生活も一苦労しそうな予感がする。私が住んでいたマンションのワンルーム部屋よりも広いベッドはいつか小さくしてもらおうと決意した。
「非番のやつはお前と共に行動してもらう。その時に頼んで部屋を改造してしまっても良い」
『そこまでしてもらわなくても…』
「何を遠慮している」
『いやだって、私人間だよ』
いくら興味があるからといってそこまでしてもらう義理はないと思う。というのも、いきなり来た人間を自らの領域に入れて好き勝手させられるかという問題であり、今はただの居候なのだから。
自分の立場が弱いのは理解しているつもりである。そう思って俯くとオメガモンは迷うことなくその場に跪いて私の頭に手を置いた。
「人間であろうとなかろうと、お前から邪悪を感じない。それだけではいけないのか」
目を見開く。こんなに誠実な言葉を掛けられたのはきっと初めてだ。彼は疑いもせずにただ自分の直感を信じて私に向き合ってくれた。不確定でイレギュラーな存在であるはずなのに、ただ一つの信じられる要素だけで私を受け入れようとしてくれている。今まで生きていてそんな人に出会ったことのない私はそれが無性に嬉しくて。
眩しいな、なんて透明の雫が一粒頬を伝った。
「……俺は仕事に戻るぞ」
『うん。ありがとう、オメガモン』
何だか久しぶりに笑えた気がした。