少女たちの裏側
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「オメガモン、焦るでないぞ。シオリにはジエスモンがついている。きっと守ってくれよう」
「……デュークモン」
先日大きな歪みが発生した大草原には、調査を行うためにやってきたロイヤルナイツのオメガモンとデュークモンがいた。この場所は数日前にガンクゥモンとジエスモン、そしてシオリが歪みの調査にやってきた場所であり、歪みによって生じた空間にジエスモンとシオリが吸い込まれてしまった場所である。
「あぁ、分かっている。ただ…」
「ただ?」
「この世界にいればどこにいても通信は繋がるはず。だが一向に応答する気配がないのだ。もしかすると…」
「……無きにしも非ず、か」
既に命を落としている可能性がある。それはもうロイヤルナイツの中で暗黙の了解になっているほど、通信が繋がらないとはそういうことなのであった。だが、とデュークモンは口を開く。
「まだ希望はある」
「希望?」
「さよう。シオリはどこから来たか?」
「……!」
デュークモンの質問にオメガモンは目を見開く。自分たちの技術を過信していたが、そもそもデジタルワールドではない別の世界に居るのなら通信ができないのも無理はない。それに、とオメガモンは今いる大草原を見渡した。
「……確か、ここは私がシオリを拾った場所。そして今回の歪みで二人が謎の空間に吸い込まれたのも、ここだ」
「うむ。このデュークモン、あやつらは生きている可能性が高いとみているが、そなたはどうだ?」
「……フッ、そうだな。お前の言う通りだ」
シオリもジエスモンもロイヤルナイツの仲間。普段ならば死んでいるなどあり得ないと鼻で笑えたものを、あまりにも手掛かりがないというだけで諦めるとは自分らしくない。オメガモンは静かに自分を叱咤してマントを翻した。向かう先はメインサーバ。彼に倣うようにデュークモンも大草原を後にした。
「オメガモンよ。もしやイグドラシルに謁見を申し出るつもりか?」
「情報処理の得意なマグナモンやドゥフトモンでさえ歪みのデータを解析しきれていないのだ。可能性があるとすれば、あとは神だと思わないか?」
「……時に大胆なことをするのは昔から変わらないな。流石は我が盟友だ」
こんな時でさえいつもの調子でいられるのはデュークモンの中に確かな希望があるからだろう。「お前の無駄にポジティブなところも変わらないな」と本人には届かないくらいの小さな声でオメガモンも呟いた。
そうしてメインサーバへ帰還し、イグドラシルへの謁見を申し出ようと神の間へ向かおうとした時。その扉の前には見慣れた黄金の聖騎士がいた。
「お前たち、神へ直談判か?」
「……マグナモン」
誰よりも規則に厳しい彼がいるとなるとここを通してもらえないかもしれない。オメガモンとデュークモンは顔を見合わせてから一歩前へと出た。それでも怖気づく気配はなく、彼はさらに言葉を続ける。
「召集時以外で神の間へ入ることは禁止されているはずだが。ここを通る理由を聞こうか」
「すまないが今ここでお前と話している時間はない。そこを通してもらおう」
「明確な理由があるのなら説明してみろ。半端な覚悟で神へ謁見するのは身を滅ぼすだけだ」
「……!」
マグナモンの最後の言葉に二人は驚きを隠さずに入られなかった。イグドラシルに忠誠を誓って頑なに規則を守っているわけではない。彼は神へ会うのなら相応の覚悟を持てと、オメガモンを叱咤してみせたのだ。それはシオリがいなくなってから焦りを感じて仕事の効率が大幅に低下した己を思っての言葉だと、オメガモンは察してしまった。
目の前の聖騎士は規則に厳格である以前に正義感が強くて仲間思いであることを思い出す。分かりづらい言葉ではあるが、彼もまた自分たちと同じ気持ちなのだと二人の聖騎士は納得した。
「……はあ。まぁ良いか。デュークモン、これを持っていけ」
「これは?」
「歪みの膨大な情報量から見つけたアクセス権を必要とする小さなデータメモリだ」
「アクセス権……一体誰のだ」
「分からない。だがあの歪みに権限があるということは、シオリやジエスモンを吸い込んだ歪みは自然発生したものではなく、誰かが意図的に作ったものということになる」
「マグナモン、そなた…」
両手に武器を装備していないデュークモンがそのメモリーチップを受け取ると、マグナモンは扉の前から離れ彼らに背を向けて歩き出した。
「あの時ガンクゥモンが発生した歪みの空間データを咄嗟にスキャンして帰還し、それをドゥフトモンとクレニアムモンとオレで解析した。決してオレだけの力ではない。ちゃんと皆に感謝しておけよ」
「あぁ、感謝せねばな」
「……マグナモン」
「何だ」
「ありがとうな」
「……」
オメガモンが素直に礼を言うと、彼は足を止めて振り返った。その表情はどこか複雑そうで、二人に何か文句を言いたげであったが溜息をすることでそれを抑え、片手を振りながら今度こそその場を離れるために歩き出した。
「……奇跡を呼ぶのもオレの仕事だからな」
その言葉はきちんと二人の耳に届いた。マグナモンの後姿を見送り、改めて神の間へ入るための扉の前に立つ。
「では行くぞ」
「あぁ」
資格ある者しか開くことの出来ない神の間へ続く大きな扉が音を立てて開き、二人はその中へと迷うことなく足を進めていった。
「……デュークモン」
先日大きな歪みが発生した大草原には、調査を行うためにやってきたロイヤルナイツのオメガモンとデュークモンがいた。この場所は数日前にガンクゥモンとジエスモン、そしてシオリが歪みの調査にやってきた場所であり、歪みによって生じた空間にジエスモンとシオリが吸い込まれてしまった場所である。
「あぁ、分かっている。ただ…」
「ただ?」
「この世界にいればどこにいても通信は繋がるはず。だが一向に応答する気配がないのだ。もしかすると…」
「……無きにしも非ず、か」
既に命を落としている可能性がある。それはもうロイヤルナイツの中で暗黙の了解になっているほど、通信が繋がらないとはそういうことなのであった。だが、とデュークモンは口を開く。
「まだ希望はある」
「希望?」
「さよう。シオリはどこから来たか?」
「……!」
デュークモンの質問にオメガモンは目を見開く。自分たちの技術を過信していたが、そもそもデジタルワールドではない別の世界に居るのなら通信ができないのも無理はない。それに、とオメガモンは今いる大草原を見渡した。
「……確か、ここは私がシオリを拾った場所。そして今回の歪みで二人が謎の空間に吸い込まれたのも、ここだ」
「うむ。このデュークモン、あやつらは生きている可能性が高いとみているが、そなたはどうだ?」
「……フッ、そうだな。お前の言う通りだ」
シオリもジエスモンもロイヤルナイツの仲間。普段ならば死んでいるなどあり得ないと鼻で笑えたものを、あまりにも手掛かりがないというだけで諦めるとは自分らしくない。オメガモンは静かに自分を叱咤してマントを翻した。向かう先はメインサーバ。彼に倣うようにデュークモンも大草原を後にした。
「オメガモンよ。もしやイグドラシルに謁見を申し出るつもりか?」
「情報処理の得意なマグナモンやドゥフトモンでさえ歪みのデータを解析しきれていないのだ。可能性があるとすれば、あとは神だと思わないか?」
「……時に大胆なことをするのは昔から変わらないな。流石は我が盟友だ」
こんな時でさえいつもの調子でいられるのはデュークモンの中に確かな希望があるからだろう。「お前の無駄にポジティブなところも変わらないな」と本人には届かないくらいの小さな声でオメガモンも呟いた。
そうしてメインサーバへ帰還し、イグドラシルへの謁見を申し出ようと神の間へ向かおうとした時。その扉の前には見慣れた黄金の聖騎士がいた。
「お前たち、神へ直談判か?」
「……マグナモン」
誰よりも規則に厳しい彼がいるとなるとここを通してもらえないかもしれない。オメガモンとデュークモンは顔を見合わせてから一歩前へと出た。それでも怖気づく気配はなく、彼はさらに言葉を続ける。
「召集時以外で神の間へ入ることは禁止されているはずだが。ここを通る理由を聞こうか」
「すまないが今ここでお前と話している時間はない。そこを通してもらおう」
「明確な理由があるのなら説明してみろ。半端な覚悟で神へ謁見するのは身を滅ぼすだけだ」
「……!」
マグナモンの最後の言葉に二人は驚きを隠さずに入られなかった。イグドラシルに忠誠を誓って頑なに規則を守っているわけではない。彼は神へ会うのなら相応の覚悟を持てと、オメガモンを叱咤してみせたのだ。それはシオリがいなくなってから焦りを感じて仕事の効率が大幅に低下した己を思っての言葉だと、オメガモンは察してしまった。
目の前の聖騎士は規則に厳格である以前に正義感が強くて仲間思いであることを思い出す。分かりづらい言葉ではあるが、彼もまた自分たちと同じ気持ちなのだと二人の聖騎士は納得した。
「……はあ。まぁ良いか。デュークモン、これを持っていけ」
「これは?」
「歪みの膨大な情報量から見つけたアクセス権を必要とする小さなデータメモリだ」
「アクセス権……一体誰のだ」
「分からない。だがあの歪みに権限があるということは、シオリやジエスモンを吸い込んだ歪みは自然発生したものではなく、誰かが意図的に作ったものということになる」
「マグナモン、そなた…」
両手に武器を装備していないデュークモンがそのメモリーチップを受け取ると、マグナモンは扉の前から離れ彼らに背を向けて歩き出した。
「あの時ガンクゥモンが発生した歪みの空間データを咄嗟にスキャンして帰還し、それをドゥフトモンとクレニアムモンとオレで解析した。決してオレだけの力ではない。ちゃんと皆に感謝しておけよ」
「あぁ、感謝せねばな」
「……マグナモン」
「何だ」
「ありがとうな」
「……」
オメガモンが素直に礼を言うと、彼は足を止めて振り返った。その表情はどこか複雑そうで、二人に何か文句を言いたげであったが溜息をすることでそれを抑え、片手を振りながら今度こそその場を離れるために歩き出した。
「……奇跡を呼ぶのもオレの仕事だからな」
その言葉はきちんと二人の耳に届いた。マグナモンの後姿を見送り、改めて神の間へ入るための扉の前に立つ。
「では行くぞ」
「あぁ」
資格ある者しか開くことの出来ない神の間へ続く大きな扉が音を立てて開き、二人はその中へと迷うことなく足を進めていった。
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