少女と彼らの邂逅
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「昨日、デジモンたちを知ってるっていうあの人間たちについて行かなくて良かったの?」
昨日の騒動の後、あの場からこっそり抜け出してハックモンと共に家に帰ってきたのだ。デジモンを知っていて、尚且つ相棒のように手を取り合っていたあの人たちに事情を聞くためついて行っても良かったのだがそうはしなかった。
『だって、ジエスモン疲れてると思ったから。ゆっくり休ませたいなって……ダメだったかな』
「あのくらいのこと、師匠の試練に比べたらなんでもないよ!でもありがとう。シオリが作ってくれたオムライスってやつ凄く美味しかった!」
『うん、それなら良かった!』
家に帰ってきてから、料理はあまり得意でないわたしが唯一作れるオムライスをハックモンに振舞った。ケチャップライスにふわふわとろとろ卵を乗せた、簡単だけどそれでいて美味しいオムライス。おかわりもしてくれてわたしとしては大満足だった。
「ねえシオリ」
『分かってるよ。昨日のとこ、行ってみよう』
「うん!」
そわそわしてるハックモンは非常に分かりやすい。恐らく昨日、横浜で何かを感じたのだと思う。ジエスモンには異変を察知する能力があると聞いたから、きっと横浜を中心に何かが起こる。いや…既に起きているのかもしれない。わたしたちはそれを確かめる必要がある。デジタルワールドに帰れる希望が少しでもあるのならそれに縋る他ないからだ。
そしてハックモンを連れて電車で一時間半。昨夜シャイングレイモンとミラージュガオガモンが戦っていた場所へとやってきた。暴走していたシャイングレイモンの相手をジエスモンがしてくれたお陰であまり被害は出ていない。改めて「ありがとう」と言うとどういたしまして、と返してくれた。
「でも、どうしてこの世界にもデジモンが?あんなに馴染んでいたし。……シオリはデジモンのこと知らなかったんだよね?」
『うん。デジモンのことも、デジタルワールドのことも何も知らなかった。もしかしたらわたしのようなただの一般人が知らなかっただけで、本当はデジモンたちはこの世界にずっといたのかもしれないけどね』
「そもそもどうやってシオリがあっちの世界に行ったのか。オメガモンは、空間の異常を検知して様子を見に行ったらシオリがいたって言ってたけど…」
『わたしもよく分かってないの。だって玄関を開けて外に出たらデジタルワールドだったんだもん。仮定の話だけど、最近調査をしていた歪みと何か関係がありそうだね』
「俺もそう思う」
点と点が一本の線で繋がりそうで、だけどまだ手掛かりが足りない。わたしの居場所はデジタルワールドにあると思っている。ロイヤルナイツたちがわたしの帰る場所。だけど決してこの人間界が嫌いというわけではない。ただ、自分を含めた人間にも世界にも興味をもてず魂の抜かれた人形みたいだったわたしを拾って、イグドラシルの命令とはいえ育ててくれた彼らと共にいたいと。だからデジタルワールドに帰りたいと思っている。その為にもまず今ここで起こっていることを調べて解決するしかないのだろう。ジエスモンもきっと協力を惜しまないはずだ。
そうしてハックモンと横浜の街を散策していると、人通りの少ない工業地帯でボロボロの少年とそれを支える紫の鳥のようなデジモンが歩いているのを目撃した。ハックモンと顔を見合わせて頷き、走る。
『大丈夫!?』
「うっ……お前、確か昨日いた…」
「イクトに何する気だ!」
少年もデジモンも傷だらけなのに驚き、肩を支えてあげようとすると彼を守るかのように鳥デジモンがわたしの手を払い除けた。イクトと呼ばれたこの少年との絆や信頼関係がひしひしと伝わってくる。
『大丈夫、何もしない。でも酷い傷だから早く治療しないと。仲間がどこにいるか分かるかな?そこまで運ぶよ』
「トーマを逃がしてシャイングレイモンと戦ったお前なんか信用できない!」
「よせファルコモン!」
「でもイクト!」
困ったなぁと頬を掻く。この鳥デジモン、もといファルコモンはあまり人間のことを信用していないのかもしれない。けれどわたしたちも事情を知らないまま昨日の騒動に居合わせてしまったわけだし、あの時はただ仲間同士だったデジモンたちを戦わせなくないとか、街の破壊を阻止しなくてはとかそんなことをしか頭になかったから信用できないと言われても。
どうしようかなと考えていると、わたしの前にスッとハックモンが出てきて口を開いた。
「俺たちは君たちに聞きたい事があるんだ。それは君たちも同じのはず。それにこの少年を早く休ませてあげたいんでしょ?」
「……信用してもいいのか」
「俺たちが君たちを襲う理由はないしね」
ハックモンの言葉にひとまず納得したのか、ファルコモンが恐る恐るといった様子でイクトくんをわたしに預けてきた。急いで跪いて背中を向け、ファルコモンとハックモンに手伝ってもらいながらイクトくんを背負う。
「あり、がと…」
『わたしの方こそ、信じてくれてありがとう。……仲間の場所、分かるかな?』
「朝方、ここでトーマたちと戦った。マサルたちいたから、多分近くでオレたちのこと探してる」
『そっか。心配してるだろうし早く見つけようね』
弱々しい声でイクトくんが教えてくれた。背負われている彼の腕にもあまり力は入っていない。一刻も早くマサルさんたちを見つけて彼とファルコモンを治療してあげないと。
ハックモンに目配せをすると、わたしの意図をすぐに察してくれて機敏な動きで走って行きその姿を消した。
「あいつ、どこに行ったんだ?やっぱり…」
『大丈夫。ハックモンが君たちの仲間を探してきてくれるよ。一番身軽に動けるのは彼だけだから、わたしが頼んだの』
「……」
疑い深いファルコモンを安心させるためにそう言うと、それ以上は何も言わずに心配そうにイクトくんを見やりながらわたしの隣を歩き始めた。
「マサル…」
イクトくんの消え入るような声に返事はしない。
昨日の騒動の後、あの場からこっそり抜け出してハックモンと共に家に帰ってきたのだ。デジモンを知っていて、尚且つ相棒のように手を取り合っていたあの人たちに事情を聞くためついて行っても良かったのだがそうはしなかった。
『だって、ジエスモン疲れてると思ったから。ゆっくり休ませたいなって……ダメだったかな』
「あのくらいのこと、師匠の試練に比べたらなんでもないよ!でもありがとう。シオリが作ってくれたオムライスってやつ凄く美味しかった!」
『うん、それなら良かった!』
家に帰ってきてから、料理はあまり得意でないわたしが唯一作れるオムライスをハックモンに振舞った。ケチャップライスにふわふわとろとろ卵を乗せた、簡単だけどそれでいて美味しいオムライス。おかわりもしてくれてわたしとしては大満足だった。
「ねえシオリ」
『分かってるよ。昨日のとこ、行ってみよう』
「うん!」
そわそわしてるハックモンは非常に分かりやすい。恐らく昨日、横浜で何かを感じたのだと思う。ジエスモンには異変を察知する能力があると聞いたから、きっと横浜を中心に何かが起こる。いや…既に起きているのかもしれない。わたしたちはそれを確かめる必要がある。デジタルワールドに帰れる希望が少しでもあるのならそれに縋る他ないからだ。
そしてハックモンを連れて電車で一時間半。昨夜シャイングレイモンとミラージュガオガモンが戦っていた場所へとやってきた。暴走していたシャイングレイモンの相手をジエスモンがしてくれたお陰であまり被害は出ていない。改めて「ありがとう」と言うとどういたしまして、と返してくれた。
「でも、どうしてこの世界にもデジモンが?あんなに馴染んでいたし。……シオリはデジモンのこと知らなかったんだよね?」
『うん。デジモンのことも、デジタルワールドのことも何も知らなかった。もしかしたらわたしのようなただの一般人が知らなかっただけで、本当はデジモンたちはこの世界にずっといたのかもしれないけどね』
「そもそもどうやってシオリがあっちの世界に行ったのか。オメガモンは、空間の異常を検知して様子を見に行ったらシオリがいたって言ってたけど…」
『わたしもよく分かってないの。だって玄関を開けて外に出たらデジタルワールドだったんだもん。仮定の話だけど、最近調査をしていた歪みと何か関係がありそうだね』
「俺もそう思う」
点と点が一本の線で繋がりそうで、だけどまだ手掛かりが足りない。わたしの居場所はデジタルワールドにあると思っている。ロイヤルナイツたちがわたしの帰る場所。だけど決してこの人間界が嫌いというわけではない。ただ、自分を含めた人間にも世界にも興味をもてず魂の抜かれた人形みたいだったわたしを拾って、イグドラシルの命令とはいえ育ててくれた彼らと共にいたいと。だからデジタルワールドに帰りたいと思っている。その為にもまず今ここで起こっていることを調べて解決するしかないのだろう。ジエスモンもきっと協力を惜しまないはずだ。
そうしてハックモンと横浜の街を散策していると、人通りの少ない工業地帯でボロボロの少年とそれを支える紫の鳥のようなデジモンが歩いているのを目撃した。ハックモンと顔を見合わせて頷き、走る。
『大丈夫!?』
「うっ……お前、確か昨日いた…」
「イクトに何する気だ!」
少年もデジモンも傷だらけなのに驚き、肩を支えてあげようとすると彼を守るかのように鳥デジモンがわたしの手を払い除けた。イクトと呼ばれたこの少年との絆や信頼関係がひしひしと伝わってくる。
『大丈夫、何もしない。でも酷い傷だから早く治療しないと。仲間がどこにいるか分かるかな?そこまで運ぶよ』
「トーマを逃がしてシャイングレイモンと戦ったお前なんか信用できない!」
「よせファルコモン!」
「でもイクト!」
困ったなぁと頬を掻く。この鳥デジモン、もといファルコモンはあまり人間のことを信用していないのかもしれない。けれどわたしたちも事情を知らないまま昨日の騒動に居合わせてしまったわけだし、あの時はただ仲間同士だったデジモンたちを戦わせなくないとか、街の破壊を阻止しなくてはとかそんなことをしか頭になかったから信用できないと言われても。
どうしようかなと考えていると、わたしの前にスッとハックモンが出てきて口を開いた。
「俺たちは君たちに聞きたい事があるんだ。それは君たちも同じのはず。それにこの少年を早く休ませてあげたいんでしょ?」
「……信用してもいいのか」
「俺たちが君たちを襲う理由はないしね」
ハックモンの言葉にひとまず納得したのか、ファルコモンが恐る恐るといった様子でイクトくんをわたしに預けてきた。急いで跪いて背中を向け、ファルコモンとハックモンに手伝ってもらいながらイクトくんを背負う。
「あり、がと…」
『わたしの方こそ、信じてくれてありがとう。……仲間の場所、分かるかな?』
「朝方、ここでトーマたちと戦った。マサルたちいたから、多分近くでオレたちのこと探してる」
『そっか。心配してるだろうし早く見つけようね』
弱々しい声でイクトくんが教えてくれた。背負われている彼の腕にもあまり力は入っていない。一刻も早くマサルさんたちを見つけて彼とファルコモンを治療してあげないと。
ハックモンに目配せをすると、わたしの意図をすぐに察してくれて機敏な動きで走って行きその姿を消した。
「あいつ、どこに行ったんだ?やっぱり…」
『大丈夫。ハックモンが君たちの仲間を探してきてくれるよ。一番身軽に動けるのは彼だけだから、わたしが頼んだの』
「……」
疑い深いファルコモンを安心させるためにそう言うと、それ以上は何も言わずに心配そうにイクトくんを見やりながらわたしの隣を歩き始めた。
「マサル…」
イクトくんの消え入るような声に返事はしない。