少女と彼らの邂逅
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『なんて悲しい叫び声…』
「闇の力に囚われてる。あれはもう…」
黒に染まってしまったあのデジモンは茶髪の青年の憎悪に影響を受けてしまったからあのような姿になったのだと思う。
今この場にデジモンが複数体いること、そして人間たちがそれを当たり前のように受け入れていることの疑問は置いておくとして、わたしたちはこの後どうしたらいいのだろう。もはや出来ることなんてない。
「ぬあああああッ!」
「躱せ、ミラージュガオガモン!」
「くっ!……どわぁッ」
金髪の青年もとい、トーマと呼ばれていた青年が青いデジモンと思われる名前を叫んで指示をする。黒いデジモンが炎の剣を振りぬこうとした時、ミラージュガオガモンはその素早さを活かして躱してみせた。しかし射程の伸びた炎が遅れて攻撃に入り、それが直撃してしまい海へ叩き落されてしまった。
「"ダブルクレセントミラージュ"!」
海へ落されたのも束の間、すぐさま浮上して反撃をするが炎の盾で防がれてしまう。
「戦いの中で散っていったバロモンやエルドラディモンやメルクリモンたちに……てめぇの命をもって詫びやがれーッ!」
「ぐああああ!」
「ミラージュガオガモン!」
茶髪の青年の叫びに呼応するように黒いデジモンは殴り掛かる。地に落とされたミラージュガオガモンにトーマさんが心配そうに駆け寄っていく。このままでは危ないだろう。
「マスター…来てはいけない!」
あのデジモンは人間をマスターと呼び心配している。人間とデジモンが手を取り合っている。そうだ、デジモンのことが大好きな人間がいるように、人間のことを好きだと思ってくれるデジモンもいる。わたしはそんな存在たちを知っている。そしてそれは、あちらの世界だけではなく、この人間界にもいたのだ。
なら、と腕に抱えている彼に声を掛ける。
『ハックモン…!』
「シオリが言いたいこと、分かるよ」
守れば、良いんだよね?
そう言ってこちらを見てくるハックモンに頷いた。何故こんなことになっているかは分からない。元は仲間同士だったはずなのに争っている理由もわたしは知らない。それでも、デジモンも人間もお互いに大切だと思っている心がそこにあるから。わたしはその気持ちを守りたい。
「トドメだああ!消え失せろトーマァァ!」
「やめてーっ!」
小さな女の子が茶髪の青年へと抱き着いた。
「ち、チカ!」
「どうしてトーマくんと戦わなきゃいけないの!?こんなのおかしいよ!」
「…!」
女の子の言葉で茶髪の青年の表情が変わる。そこにはもう先程の憎悪はなかった。
「オオオオオッ!」
だが黒いデジモンの動きは止まることなく、そのままトーマさんとミラージュガオガモンに攻撃をしようとしていた。仲間だったデジモン同士が傷付け合うこと、そんなの辛すぎるに決まっている。
そんなことは絶対にさせない。
『ハックモン…いや、ジエスモン!』
「うんッ」
わたしの腕から飛び出したハックモンが瞬時にジエスモンへと進化して黒いデジモンとミラージュガオガモンの間に入り、間一髪で攻撃を受け止めた。その衝撃波により彼らの周りには煙が巻き起こって何も見えないが、きっとジエスモンなら耐えてくれているはず。
今のうちに、とトーマさんの所へ向かう。
「君は…?」
『トーマさん、でしたね。このデジモンを大切に思うなら、早くこの場を離脱した方が良い。今のあなたたちには、あの闇に染まったデジモンと対峙することはできない』
「……君は一体、」
『早く仲直りすると良いですね。……さぁ、早く行って下さい!』
「くっ。……感謝します!」
そう言ってミラージュガオガモンを不思議な機械の中に収めて走っていった。デジモンを収納できる機械があることに驚いたが今はそれどころではない。急いでジエスモンの元へ戻ると、彼が修行の中で習得したというアト、ルネ、ポルが黒いデジモンを上空へと突き飛ばしていた.
「何、あのデジモン!?」
「見たことないデジモンだ!」
赤髪の女性と青髪の少年が驚きの声を上げる。そりゃあそうなるよね、急に乱入してしまって申し訳なく思うけれどどうか許してほしい。
「オオ、オオオオオッ!」
「フンッ」
黒いデジモンが放った炎の波をその剣だけで受け止め、切るように剣を横に振ることで炎を全てかき消した。それだけで分かる圧倒的な強さに思わず息を呑んだ。同じ究極体でも格上の強さ、これがロイヤルナイツに所属するデジモン…。
と、見惚れている場合ではない。もはやあの黒いデジモンは誰も眼中にない。手当たり次第に攻撃を放ち街を壊滅させようとしている。そうなってしまえばいくらジエスモンでも全ての攻撃を防いでいくのは無理だ。
「何やってんだ、あいつ…」
茶髪の青年がこの惨劇を見て呟く。その疑問に答えるように彼の目の前にまたデジモンが現れた。
「バンチョーレオモン!」
「あれは暴走だ。シャイングレイモンは、バーストモードの破壊力を制御できずにいるのだ」
「何だって!?」
どうやらあの闇に染まったデジモンの名はシャイングレイモンというらしい。バーストモードというのは初めて聞いたから本来どういうものかは分からない。ただ、そのとてつもない力を扱えなかった場合の代償はなんとなく理解している。デジメンタルとの相性が合わなかったデジモンの末路と、きっと同じなのだろう。
「はぁッ!」
シャイングレイモンが街を破壊せんと放ったあらゆる攻撃を相殺するために飛び回るジエスモンには、恐らく相当な負担が掛かっているだろう。そろそろ戻ってきてもらった方が良いかもしれない。わたしとしては、今はここにいる何よりもジエスモンが大切だから。
「ぬああああああ!」
「やめろ、シャイングレイモン!やめるんだーっ!」
「無駄だ。暴走を始めたバーストモードは誰にも止められない。自滅するのを待つだけだ」
「そんな!」
シャイングレイモンは持ちうる全てのエネルギーを消費するまで攻撃の手をやめることはないだろう。もはやわたしたちにもそれを止めることはできない。ジエスモンが頑張ってくれているとはいえ、徐々に街も燃えていく。
「"轍剣成敗"」
「グァアアアアアアア!」
防御だけでは埒が明かないと判断したのだろう。一度距離を置いてタイミングを見てから高速移動しつつ、両腕の剣でシャイングレイモンを何度も斬り付けていく。あれはただの反撃ではない。わたしには分かる、彼が手加減していることを。
「おい、やめろぉ!あいつを攻撃するんじゃねえ!」
茶髪の青年が苦しそうに叫ぶ。余程あのデジモンが大事なのだろう。気持ちは分かるけれど、ジエスモンがどういった意図で攻撃をしているのか理解してほしい。そう思ってわたしはついに彼らの前に姿を現した。
『……ジエスモンは、街を守ろうとしてるの』
「な、なんだお前!?ジエスモンって!?」
『今シャイングレイモンと戦っているのがジエスモン。無差別に攻撃を放つあのデジモンの意識を自分に向けさせて街への被害を最小限にしようとしてくれているんだよ』
「……!」
茶髪の青年が驚いた表情で戦闘を繰り広げている二体のデジモンを見やる。
『ジエスモンを見て。一度も攻撃を避けないで全部受け止めてる。それがどれ程の負担になるか、デジモンのことが好きな貴方なら分かるよね』
「……シャイングレイモン」
『そう。闇に呑まれてしまったあのデジモンが一番辛いことも、貴方には分かるはずだよ』
わたしの言葉に彼はぎゅっと拳を握り締めて俯く。傍に居る女の子も心配そうに見つめていた。
「……バンチョーレオモン!チカを頼む!」
「……」
「マサル兄ちゃん!」
マサルと呼ばれた茶髪の青年がバンチョーレオモンに女の子を託し走り出した。どうやらこの子は彼の妹のようだ。
「ところでお前さん、本当に何者だ?」
『……』
走っていくマサルさんの背中を見届けた後、バンチョーレオモンはわたしに向き直って問いかけてきた。
『……別に、ただの一般人です』
考えてみたけれど、デジタルワールドに行ったことがあるというだけで特別な人間ではない。本当にそこら辺にいる民間人なので正直に答えたのだが、どうもそれでは納得してもらえないようだ。
「シャイングレイモーン!」
遠くでマサルさんの叫び声が聞こえた。あのデジモンに呼び掛けているんだ。わたしがセトモンにそうしたように、あの人もまた、シャイングレイモンを救いたいと思っている。
『頑張って…』
わたしにはもう祈る事しかできない。シャイングレイモンを救えるのは、もうきっとあの人しかいないのだから。
「もういい、シャイングレイモン!」
「ぬあああッ、アアアッ!」
「はぁッ!」
マサルさんが呼び掛けてもあのデジモンには届いていないのか、やはり止まることはない。ジエスモンは未だに攻撃の波を受け止めてくれている。パワーはあちらの方が上なのか、アト、ルネ、ポルが押さえつけてもすぐに振り払っていた。
「もうやめろ!……頼む、もうやめてくれ!」
その時、マサルさんの手元が大きな輝きを放った。そこには色は違えどトーマさんが持っていたものと同じ物があった。
「グゥ、ウゥゥアアアアアッ!!」
「シャイングレイモン!?」
あの機械の輝きに連動するようにシャイングレイモンの体からも真っ白な温かい光を放ち始めた。だけど表情は酷く苦しそうで、見ているこちらの胸が痛くなるほどだった。そして気付く、シャイングレイモンを覆っていた真っ黒な炎が消えていくのに。
『もしかして、闇の力に抵抗している…?』
「そのようだな」
わたしの疑問にバンチョーレオモンが頷いた。きっとマサルさんの思いがあの不思議な機械を通してシャイングレイモンに届いたのだと思う。だからその思いに応えようと、苦しいのに、それでも頑張って闇の力に負けないように抵抗しているんだ。
「グ…ヌアアアアアアアッ!」
光はどんどんシャイングレイモンを覆っていく。それでもやはり苦しそうで、光に全てを包まれた時、彼のデータはデジタマとなってそれまでの生涯を一度閉じてしまったのだった。
「……嘘だろ。何でだよ。……なんでデジタマに戻っちまうんだよーっ!」
マサルさんの叫び声が街にこだました。
「闇の力に囚われてる。あれはもう…」
黒に染まってしまったあのデジモンは茶髪の青年の憎悪に影響を受けてしまったからあのような姿になったのだと思う。
今この場にデジモンが複数体いること、そして人間たちがそれを当たり前のように受け入れていることの疑問は置いておくとして、わたしたちはこの後どうしたらいいのだろう。もはや出来ることなんてない。
「ぬあああああッ!」
「躱せ、ミラージュガオガモン!」
「くっ!……どわぁッ」
金髪の青年もとい、トーマと呼ばれていた青年が青いデジモンと思われる名前を叫んで指示をする。黒いデジモンが炎の剣を振りぬこうとした時、ミラージュガオガモンはその素早さを活かして躱してみせた。しかし射程の伸びた炎が遅れて攻撃に入り、それが直撃してしまい海へ叩き落されてしまった。
「"ダブルクレセントミラージュ"!」
海へ落されたのも束の間、すぐさま浮上して反撃をするが炎の盾で防がれてしまう。
「戦いの中で散っていったバロモンやエルドラディモンやメルクリモンたちに……てめぇの命をもって詫びやがれーッ!」
「ぐああああ!」
「ミラージュガオガモン!」
茶髪の青年の叫びに呼応するように黒いデジモンは殴り掛かる。地に落とされたミラージュガオガモンにトーマさんが心配そうに駆け寄っていく。このままでは危ないだろう。
「マスター…来てはいけない!」
あのデジモンは人間をマスターと呼び心配している。人間とデジモンが手を取り合っている。そうだ、デジモンのことが大好きな人間がいるように、人間のことを好きだと思ってくれるデジモンもいる。わたしはそんな存在たちを知っている。そしてそれは、あちらの世界だけではなく、この人間界にもいたのだ。
なら、と腕に抱えている彼に声を掛ける。
『ハックモン…!』
「シオリが言いたいこと、分かるよ」
守れば、良いんだよね?
そう言ってこちらを見てくるハックモンに頷いた。何故こんなことになっているかは分からない。元は仲間同士だったはずなのに争っている理由もわたしは知らない。それでも、デジモンも人間もお互いに大切だと思っている心がそこにあるから。わたしはその気持ちを守りたい。
「トドメだああ!消え失せろトーマァァ!」
「やめてーっ!」
小さな女の子が茶髪の青年へと抱き着いた。
「ち、チカ!」
「どうしてトーマくんと戦わなきゃいけないの!?こんなのおかしいよ!」
「…!」
女の子の言葉で茶髪の青年の表情が変わる。そこにはもう先程の憎悪はなかった。
「オオオオオッ!」
だが黒いデジモンの動きは止まることなく、そのままトーマさんとミラージュガオガモンに攻撃をしようとしていた。仲間だったデジモン同士が傷付け合うこと、そんなの辛すぎるに決まっている。
そんなことは絶対にさせない。
『ハックモン…いや、ジエスモン!』
「うんッ」
わたしの腕から飛び出したハックモンが瞬時にジエスモンへと進化して黒いデジモンとミラージュガオガモンの間に入り、間一髪で攻撃を受け止めた。その衝撃波により彼らの周りには煙が巻き起こって何も見えないが、きっとジエスモンなら耐えてくれているはず。
今のうちに、とトーマさんの所へ向かう。
「君は…?」
『トーマさん、でしたね。このデジモンを大切に思うなら、早くこの場を離脱した方が良い。今のあなたたちには、あの闇に染まったデジモンと対峙することはできない』
「……君は一体、」
『早く仲直りすると良いですね。……さぁ、早く行って下さい!』
「くっ。……感謝します!」
そう言ってミラージュガオガモンを不思議な機械の中に収めて走っていった。デジモンを収納できる機械があることに驚いたが今はそれどころではない。急いでジエスモンの元へ戻ると、彼が修行の中で習得したというアト、ルネ、ポルが黒いデジモンを上空へと突き飛ばしていた.
「何、あのデジモン!?」
「見たことないデジモンだ!」
赤髪の女性と青髪の少年が驚きの声を上げる。そりゃあそうなるよね、急に乱入してしまって申し訳なく思うけれどどうか許してほしい。
「オオ、オオオオオッ!」
「フンッ」
黒いデジモンが放った炎の波をその剣だけで受け止め、切るように剣を横に振ることで炎を全てかき消した。それだけで分かる圧倒的な強さに思わず息を呑んだ。同じ究極体でも格上の強さ、これがロイヤルナイツに所属するデジモン…。
と、見惚れている場合ではない。もはやあの黒いデジモンは誰も眼中にない。手当たり次第に攻撃を放ち街を壊滅させようとしている。そうなってしまえばいくらジエスモンでも全ての攻撃を防いでいくのは無理だ。
「何やってんだ、あいつ…」
茶髪の青年がこの惨劇を見て呟く。その疑問に答えるように彼の目の前にまたデジモンが現れた。
「バンチョーレオモン!」
「あれは暴走だ。シャイングレイモンは、バーストモードの破壊力を制御できずにいるのだ」
「何だって!?」
どうやらあの闇に染まったデジモンの名はシャイングレイモンというらしい。バーストモードというのは初めて聞いたから本来どういうものかは分からない。ただ、そのとてつもない力を扱えなかった場合の代償はなんとなく理解している。デジメンタルとの相性が合わなかったデジモンの末路と、きっと同じなのだろう。
「はぁッ!」
シャイングレイモンが街を破壊せんと放ったあらゆる攻撃を相殺するために飛び回るジエスモンには、恐らく相当な負担が掛かっているだろう。そろそろ戻ってきてもらった方が良いかもしれない。わたしとしては、今はここにいる何よりもジエスモンが大切だから。
「ぬああああああ!」
「やめろ、シャイングレイモン!やめるんだーっ!」
「無駄だ。暴走を始めたバーストモードは誰にも止められない。自滅するのを待つだけだ」
「そんな!」
シャイングレイモンは持ちうる全てのエネルギーを消費するまで攻撃の手をやめることはないだろう。もはやわたしたちにもそれを止めることはできない。ジエスモンが頑張ってくれているとはいえ、徐々に街も燃えていく。
「"轍剣成敗"」
「グァアアアアアアア!」
防御だけでは埒が明かないと判断したのだろう。一度距離を置いてタイミングを見てから高速移動しつつ、両腕の剣でシャイングレイモンを何度も斬り付けていく。あれはただの反撃ではない。わたしには分かる、彼が手加減していることを。
「おい、やめろぉ!あいつを攻撃するんじゃねえ!」
茶髪の青年が苦しそうに叫ぶ。余程あのデジモンが大事なのだろう。気持ちは分かるけれど、ジエスモンがどういった意図で攻撃をしているのか理解してほしい。そう思ってわたしはついに彼らの前に姿を現した。
『……ジエスモンは、街を守ろうとしてるの』
「な、なんだお前!?ジエスモンって!?」
『今シャイングレイモンと戦っているのがジエスモン。無差別に攻撃を放つあのデジモンの意識を自分に向けさせて街への被害を最小限にしようとしてくれているんだよ』
「……!」
茶髪の青年が驚いた表情で戦闘を繰り広げている二体のデジモンを見やる。
『ジエスモンを見て。一度も攻撃を避けないで全部受け止めてる。それがどれ程の負担になるか、デジモンのことが好きな貴方なら分かるよね』
「……シャイングレイモン」
『そう。闇に呑まれてしまったあのデジモンが一番辛いことも、貴方には分かるはずだよ』
わたしの言葉に彼はぎゅっと拳を握り締めて俯く。傍に居る女の子も心配そうに見つめていた。
「……バンチョーレオモン!チカを頼む!」
「……」
「マサル兄ちゃん!」
マサルと呼ばれた茶髪の青年がバンチョーレオモンに女の子を託し走り出した。どうやらこの子は彼の妹のようだ。
「ところでお前さん、本当に何者だ?」
『……』
走っていくマサルさんの背中を見届けた後、バンチョーレオモンはわたしに向き直って問いかけてきた。
『……別に、ただの一般人です』
考えてみたけれど、デジタルワールドに行ったことがあるというだけで特別な人間ではない。本当にそこら辺にいる民間人なので正直に答えたのだが、どうもそれでは納得してもらえないようだ。
「シャイングレイモーン!」
遠くでマサルさんの叫び声が聞こえた。あのデジモンに呼び掛けているんだ。わたしがセトモンにそうしたように、あの人もまた、シャイングレイモンを救いたいと思っている。
『頑張って…』
わたしにはもう祈る事しかできない。シャイングレイモンを救えるのは、もうきっとあの人しかいないのだから。
「もういい、シャイングレイモン!」
「ぬあああッ、アアアッ!」
「はぁッ!」
マサルさんが呼び掛けてもあのデジモンには届いていないのか、やはり止まることはない。ジエスモンは未だに攻撃の波を受け止めてくれている。パワーはあちらの方が上なのか、アト、ルネ、ポルが押さえつけてもすぐに振り払っていた。
「もうやめろ!……頼む、もうやめてくれ!」
その時、マサルさんの手元が大きな輝きを放った。そこには色は違えどトーマさんが持っていたものと同じ物があった。
「グゥ、ウゥゥアアアアアッ!!」
「シャイングレイモン!?」
あの機械の輝きに連動するようにシャイングレイモンの体からも真っ白な温かい光を放ち始めた。だけど表情は酷く苦しそうで、見ているこちらの胸が痛くなるほどだった。そして気付く、シャイングレイモンを覆っていた真っ黒な炎が消えていくのに。
『もしかして、闇の力に抵抗している…?』
「そのようだな」
わたしの疑問にバンチョーレオモンが頷いた。きっとマサルさんの思いがあの不思議な機械を通してシャイングレイモンに届いたのだと思う。だからその思いに応えようと、苦しいのに、それでも頑張って闇の力に負けないように抵抗しているんだ。
「グ…ヌアアアアアアアッ!」
光はどんどんシャイングレイモンを覆っていく。それでもやはり苦しそうで、光に全てを包まれた時、彼のデータはデジタマとなってそれまでの生涯を一度閉じてしまったのだった。
「……嘘だろ。何でだよ。……なんでデジタマに戻っちまうんだよーっ!」
マサルさんの叫び声が街にこだました。