少女とお買い物
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜の東京のとある電気街。
わたしはどうしても欲しいものがあり、家に帰る前にこの場所へとやってきていた。もちろんハックモンも一緒に。
「シオリ、何買うの?」
『ふふ。お楽しみ!』
「えー」
そこそこ大きい家電量販店。エレベーターで3Fに上がって突き当りを右へ。しばらく歩いていると目当てのものがそこにずらりと並んでいた。
「これ、なに?」
『これはね、カメラっていうの』
「カメラ!写真を撮れるっていうあの?」
『そう。皆との思い出を残したくて…。どうしても欲しかったものだから、買いに来れて良かった』
「ははっ。シオリらしいね!」
ロイヤルナイツ、街のデジモンたち、あちらの世界で催されるイベント。わたしが見て感じて「あぁ大好きだな」って思ったものを写真に残していきたいと思った。生きることを諦めて何にも興味を持てなかったわたしをこんなに成長させてくれた、あの素晴らしい世界全てが宝物だから。
そこでふと、いつも調査任務で忙しそうにしていたロイヤルナイツたちを思い浮かべた。
『……心配、してるよね』
あの正体不明なゲート。前代未聞のことで調査も対策もままならない時にハックモンと共に吸い込まれてしまったから、過保護なあの聖騎士様たちは今頃きっと心配してくれている。ただでさえお仕事で忙しいのに、余計な問題を作ってしまったようで申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「当たり前だよ!今頃あっちはシオリが心配でピリピリしてると思う。特にオメガモンとロードナイトモンはね」
『オメガモンも?』
ロードナイトモンはまぁ何となく想像できるけれど。あの堅物と言われているオメガモンも、わたしがいないだけでピリピリするのかな。
「むしろオメガモンが一番心配してるよ!だってシオリを拾ってから一番傍に居たのは彼でしょ?」
『うん。そうかも』
「しかも任務から帰ってシオリにおかえりって言われるのが密かな楽しみらしくてさ。最近はシオリと一緒にいる時間を増やすために仕事も早めに終わらせるから効率も良いって皆喜んでたよ」
ハックモンの話を聞いているうちに顔に熱が集中していくのが分かった。そりゃ、大切にされてるなって思えるくらいには優しく、時に厳しかったけれど。まさかそんな、良い意味で仕事に影響を与えていたなんて。
「あ、照れてる。可愛いね」
『も、もう!からかわないで!』
「ふふ。ごめんごめん」
楽しそうにハックモンは笑う。こんな状況でもいつもと変わらずいられるのは、余程他のロイヤルナイツを信頼しているのだろう。
デジタルワールドに帰れたら、オメガモンや皆にただいまって言わなければ。待っていてくれる存在がいるのはこの上ない幸せである。
そうして白いデジタルカメラを買って紐を通し、首からぶら下げた。これで好きな時に好きな写真が撮れる。あまりに嬉しくてきっと今わたしの頬は緩くなっているだろう。
『じゃあ今日はもう帰ろうか。晩ご飯は何に――』
しようか。そう問いかけようとして、電気街においてあるテレビに映ったものに体が固まった。バラエティ番組が突然ニュース画面に、そしてニュースキャスターの合図によって画面が切り替わる。
――…緊急速報です。神奈川県横浜市の上空にて未確認生物が暴れているとの情報が入りました。付近の住民は速やかに……
『は、ハックモン!』
「なに?」
『これ見て…!』
テレビの画面をハックモンにも見せると、わたしの腕の中から抜け出してその画面を食い入るように見つめている。その瞳はあり得ないとばかりに揺れていた。
「シオリ……これデジモンだ」
『……やっぱり』
「でもどうして?俺たちのようにあっちの世界から飛ばされてきたのかな」
『分からない。でも行ってみないと!』
ハックモンの言う通りわたしたちと同じように飛ばされてきたのかもしれない。見たことのないデジモンたちだったけれど、それでもデジモンであるのなら放っておくわけにはいかないのだ。
もう一度ハックモンを抱えて走り出す。
「ここからヨコハマってどれくらい!?」
『んーっと、多分1時間半くらい!』
「それじゃ間に合わない!……シオリ!」
『なに……わっ!』
わたしの名を叫んで腕の中から飛び出すと同時に、ハックモンの体が眩い光に包まれた。今は夜のはずなのにまるでお昼のような輝きに思わず目を瞑った。
「シオリ!行こう!」
『……!』
聞き慣れた声に目を開けるとそこにいたのは成長期のハックモンではなく、神に仕える聖騎士デジモン、ジエスモンだった。
『進化、したの?』
「そう。さっきテレビで見たデジモン、あれは究極体だった。だから俺もこの姿になれるかもしれないって思ってね」
『なるほど』
そっか。ハックモンの姿だったのは、ただゲートを通った時に究極体のデータを正常に処理できなかっただけだからか。
ジエスモンの言葉に納得して考えを完結させる。先程までわたしがハックモンを抱えていたけれど、今度はあの世界にいた時のようにジエスモンがわたしを抱えてくれた。
相変わらずの高い視界にどきどきする。
「やっぱりこの姿だと気配をよく察知できる。シオリ、かなり速度を出すからきちんと捕まってて!」
『うん!』
ジエスモンの登場に電気街は大混乱だが今は仕方がない。ぎゅっと腕に力を込めてわたしを抱えてくれている彼のその大きな腕にしがみついた。
わたしはどうしても欲しいものがあり、家に帰る前にこの場所へとやってきていた。もちろんハックモンも一緒に。
「シオリ、何買うの?」
『ふふ。お楽しみ!』
「えー」
そこそこ大きい家電量販店。エレベーターで3Fに上がって突き当りを右へ。しばらく歩いていると目当てのものがそこにずらりと並んでいた。
「これ、なに?」
『これはね、カメラっていうの』
「カメラ!写真を撮れるっていうあの?」
『そう。皆との思い出を残したくて…。どうしても欲しかったものだから、買いに来れて良かった』
「ははっ。シオリらしいね!」
ロイヤルナイツ、街のデジモンたち、あちらの世界で催されるイベント。わたしが見て感じて「あぁ大好きだな」って思ったものを写真に残していきたいと思った。生きることを諦めて何にも興味を持てなかったわたしをこんなに成長させてくれた、あの素晴らしい世界全てが宝物だから。
そこでふと、いつも調査任務で忙しそうにしていたロイヤルナイツたちを思い浮かべた。
『……心配、してるよね』
あの正体不明なゲート。前代未聞のことで調査も対策もままならない時にハックモンと共に吸い込まれてしまったから、過保護なあの聖騎士様たちは今頃きっと心配してくれている。ただでさえお仕事で忙しいのに、余計な問題を作ってしまったようで申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「当たり前だよ!今頃あっちはシオリが心配でピリピリしてると思う。特にオメガモンとロードナイトモンはね」
『オメガモンも?』
ロードナイトモンはまぁ何となく想像できるけれど。あの堅物と言われているオメガモンも、わたしがいないだけでピリピリするのかな。
「むしろオメガモンが一番心配してるよ!だってシオリを拾ってから一番傍に居たのは彼でしょ?」
『うん。そうかも』
「しかも任務から帰ってシオリにおかえりって言われるのが密かな楽しみらしくてさ。最近はシオリと一緒にいる時間を増やすために仕事も早めに終わらせるから効率も良いって皆喜んでたよ」
ハックモンの話を聞いているうちに顔に熱が集中していくのが分かった。そりゃ、大切にされてるなって思えるくらいには優しく、時に厳しかったけれど。まさかそんな、良い意味で仕事に影響を与えていたなんて。
「あ、照れてる。可愛いね」
『も、もう!からかわないで!』
「ふふ。ごめんごめん」
楽しそうにハックモンは笑う。こんな状況でもいつもと変わらずいられるのは、余程他のロイヤルナイツを信頼しているのだろう。
デジタルワールドに帰れたら、オメガモンや皆にただいまって言わなければ。待っていてくれる存在がいるのはこの上ない幸せである。
そうして白いデジタルカメラを買って紐を通し、首からぶら下げた。これで好きな時に好きな写真が撮れる。あまりに嬉しくてきっと今わたしの頬は緩くなっているだろう。
『じゃあ今日はもう帰ろうか。晩ご飯は何に――』
しようか。そう問いかけようとして、電気街においてあるテレビに映ったものに体が固まった。バラエティ番組が突然ニュース画面に、そしてニュースキャスターの合図によって画面が切り替わる。
――…緊急速報です。神奈川県横浜市の上空にて未確認生物が暴れているとの情報が入りました。付近の住民は速やかに……
『は、ハックモン!』
「なに?」
『これ見て…!』
テレビの画面をハックモンにも見せると、わたしの腕の中から抜け出してその画面を食い入るように見つめている。その瞳はあり得ないとばかりに揺れていた。
「シオリ……これデジモンだ」
『……やっぱり』
「でもどうして?俺たちのようにあっちの世界から飛ばされてきたのかな」
『分からない。でも行ってみないと!』
ハックモンの言う通りわたしたちと同じように飛ばされてきたのかもしれない。見たことのないデジモンたちだったけれど、それでもデジモンであるのなら放っておくわけにはいかないのだ。
もう一度ハックモンを抱えて走り出す。
「ここからヨコハマってどれくらい!?」
『んーっと、多分1時間半くらい!』
「それじゃ間に合わない!……シオリ!」
『なに……わっ!』
わたしの名を叫んで腕の中から飛び出すと同時に、ハックモンの体が眩い光に包まれた。今は夜のはずなのにまるでお昼のような輝きに思わず目を瞑った。
「シオリ!行こう!」
『……!』
聞き慣れた声に目を開けるとそこにいたのは成長期のハックモンではなく、神に仕える聖騎士デジモン、ジエスモンだった。
『進化、したの?』
「そう。さっきテレビで見たデジモン、あれは究極体だった。だから俺もこの姿になれるかもしれないって思ってね」
『なるほど』
そっか。ハックモンの姿だったのは、ただゲートを通った時に究極体のデータを正常に処理できなかっただけだからか。
ジエスモンの言葉に納得して考えを完結させる。先程までわたしがハックモンを抱えていたけれど、今度はあの世界にいた時のようにジエスモンがわたしを抱えてくれた。
相変わらずの高い視界にどきどきする。
「やっぱりこの姿だと気配をよく察知できる。シオリ、かなり速度を出すからきちんと捕まってて!」
『うん!』
ジエスモンの登場に電気街は大混乱だが今は仕方がない。ぎゅっと腕に力を込めてわたしを抱えてくれている彼のその大きな腕にしがみついた。