少女の初任務②
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『ん、むぅ』
「シオリ。目が覚めたか」
目を開くと、心配そうにデュークモンが覗いていた。体を起こして辺りを見渡す。所々焼き焦げてはいるが、確かにはじまりの町だった。
『あれ、わたし……』
そこで先程のことを思い出した。
そうだ、セトモンを助けようとしていたんだ。
『デュークモン、セトモンは!?』
「……」
『答えて!セトモンは、どこにいるの?』
「落ち着けシオリ。セトモンは、」
大きく心臓が脈を打っている。
嫌な予感がするのは当たらないでいてと願うばかり。
デュークモンの言葉を待つ。彼のその表情もどこか険しく見える。
「セトモンは……」
『……』
「……死んだのだ」
『えっ…?』
頭を打たれたような衝撃だった。
セトモンが、死んだ?
『わた、わたし…セトモンを、たすけ、』
「シオリ。落ち着くのだ」
落ち着くことなんて出来ないでしょ。
だって、助けるんだって意気込んでいた。
セトモンもはじまりの町も助けるって、そう心に誓っていたのに。
『ごめん。ごめんなさい。ごめんなさい』
ただひたすらに謝ることしか出来ない。
だって、デジメンタルを使ってセトモンに進化してから苦しかったはずだ。悲しかったはずだ。だからそこから救い出してあげたかった。
『ひっ、く…ごめん、ごめんね』
涙が止まらない。誰かのためにこんなに泣ける自分がいたのだと驚いたけれど、今はちっとも嬉しくなかった。
わたしには無理だったのかな。両親からの愛情をまともに受け取れなかったわたしが、セトモンを戻すほどの愛情なんて注げるはずなかったのかな。
悔しい。ただただ悔しい。
「聞いてくれ、シオリ」
『な、に……?』
デュークモンがわたしの頭を優しく撫でる。
それに酷く安心してしまう自分に腹が立った。
「シオリが気を失った後、セトモンは自我を取り戻していた」
『……うそ』
「真だ。ただ奴は、デジメンタルと共に滅ぶことを自ら選んだのだ」
デジメンタルと一緒に滅ぶ…?
どうして、どうしてそうする必要があるの。
「セトモンが教えてくれた。何らかの影響によってデジメンタルのデータが書き換わっているのだと」
『どういうこと……?』
「詳しいことはまだ分からぬ。しかし、これ以上デジメンタルのせいで被害が拡大するのだけは防ぎたいと、奴はそう言っていた」
デュークモンの話がどうしても理解できない。それじゃあ、セトモンがデジメンタルと離れることを拒んだことになる。
デジメンタルをメインサーバで保管すれば、セトモンも無事だし被害の拡大もないのではないのか。
「奴がデジメンタルと離れたところで、命は長くなかったのだ」
『え…?』
まるでわたしの心を読んだかのようにデュークモンが教えてくれた。
セトモン自体の命が、長くなかった?
「我々の思っていた以上に奴はデジメンタルにデータを侵食されていた。進化を解けば、すぐに死んでしまうくらいに」
『じゃあ、セトモンがデジメンタルと離れなかったのは……』
「ああ。奴はデジメンタルのおかげで、生き永らえていたのだ」
最初からセトモンが助かることはなかったということなのか。最初から彼をあの苦しみから解放してあげることはできなかったということなのか。
胸が、心が、とても痛い。こんなにも、苦しい。
『それでも…それでも、救いたかった…っ!』
我儘だと、呆れられてしまうだろうか。
「シオリ。奴から、セトモンから伝言を賜っている」
『セトモンから…?』
なんだろう。助けてあげられなかったことに対しての恨み辛みかもしれない。
それなら仕方がないと思った。
「〝生まれ変わって、会いに行く"……と」
『!』
――生まれ変わって、また会いに行くよ
蘇ったのは夢で、わたしの心の世界で見たブイモンの言葉。
もしかして、あのブイモンはセトモンが退化した時のブイモンと同じ…?でなければ、お礼だなんて。
考えれば考えるほど、心の世界で見たブイモンの言葉の意味が理解できた。
『あのブイモンはセトモンだったんだ…。ねえ、デュークモン』
「どうした?」
『セトモン……ブイモンね、元気の良い活発的なデジモンだったよ。わたしの名前を何度も呼んでくれてね、何もしていないのにお礼もくれて、それで…それで、言ってくれたんだ、』
生まれ変わって、また会いに行くよって。
「……そうであったか」
『けれど、胸を張って助けたなんて言えない』
はじまりの町は助かった。それでも、一体のデジモンという大きな犠牲が出てしまったのだ。
「しかし、確かにセトモンはそなたに救われたのだ」
『デュークモ、』
「会ったのであろう?元気であったのだろう?なら、確かに救われていたのだ」
そう言ってわたしを包み込むように抱きしめてくれた。
止まっていた涙は、ダムが決壊したように流れ出していた。
『待ってる。ずっと、待ってるよ』
「ああ。シオリが望むのならば、また会える」
それからしばらくはデュークモンの腕の中で声を押し殺して泣き続けた。
わたしの初任務は、悲しく切なくも、わたし自身が大きく成長する出来事として記憶に残り続けることになった。
「シオリ。目が覚めたか」
目を開くと、心配そうにデュークモンが覗いていた。体を起こして辺りを見渡す。所々焼き焦げてはいるが、確かにはじまりの町だった。
『あれ、わたし……』
そこで先程のことを思い出した。
そうだ、セトモンを助けようとしていたんだ。
『デュークモン、セトモンは!?』
「……」
『答えて!セトモンは、どこにいるの?』
「落ち着けシオリ。セトモンは、」
大きく心臓が脈を打っている。
嫌な予感がするのは当たらないでいてと願うばかり。
デュークモンの言葉を待つ。彼のその表情もどこか険しく見える。
「セトモンは……」
『……』
「……死んだのだ」
『えっ…?』
頭を打たれたような衝撃だった。
セトモンが、死んだ?
『わた、わたし…セトモンを、たすけ、』
「シオリ。落ち着くのだ」
落ち着くことなんて出来ないでしょ。
だって、助けるんだって意気込んでいた。
セトモンもはじまりの町も助けるって、そう心に誓っていたのに。
『ごめん。ごめんなさい。ごめんなさい』
ただひたすらに謝ることしか出来ない。
だって、デジメンタルを使ってセトモンに進化してから苦しかったはずだ。悲しかったはずだ。だからそこから救い出してあげたかった。
『ひっ、く…ごめん、ごめんね』
涙が止まらない。誰かのためにこんなに泣ける自分がいたのだと驚いたけれど、今はちっとも嬉しくなかった。
わたしには無理だったのかな。両親からの愛情をまともに受け取れなかったわたしが、セトモンを戻すほどの愛情なんて注げるはずなかったのかな。
悔しい。ただただ悔しい。
「聞いてくれ、シオリ」
『な、に……?』
デュークモンがわたしの頭を優しく撫でる。
それに酷く安心してしまう自分に腹が立った。
「シオリが気を失った後、セトモンは自我を取り戻していた」
『……うそ』
「真だ。ただ奴は、デジメンタルと共に滅ぶことを自ら選んだのだ」
デジメンタルと一緒に滅ぶ…?
どうして、どうしてそうする必要があるの。
「セトモンが教えてくれた。何らかの影響によってデジメンタルのデータが書き換わっているのだと」
『どういうこと……?』
「詳しいことはまだ分からぬ。しかし、これ以上デジメンタルのせいで被害が拡大するのだけは防ぎたいと、奴はそう言っていた」
デュークモンの話がどうしても理解できない。それじゃあ、セトモンがデジメンタルと離れることを拒んだことになる。
デジメンタルをメインサーバで保管すれば、セトモンも無事だし被害の拡大もないのではないのか。
「奴がデジメンタルと離れたところで、命は長くなかったのだ」
『え…?』
まるでわたしの心を読んだかのようにデュークモンが教えてくれた。
セトモン自体の命が、長くなかった?
「我々の思っていた以上に奴はデジメンタルにデータを侵食されていた。進化を解けば、すぐに死んでしまうくらいに」
『じゃあ、セトモンがデジメンタルと離れなかったのは……』
「ああ。奴はデジメンタルのおかげで、生き永らえていたのだ」
最初からセトモンが助かることはなかったということなのか。最初から彼をあの苦しみから解放してあげることはできなかったということなのか。
胸が、心が、とても痛い。こんなにも、苦しい。
『それでも…それでも、救いたかった…っ!』
我儘だと、呆れられてしまうだろうか。
「シオリ。奴から、セトモンから伝言を賜っている」
『セトモンから…?』
なんだろう。助けてあげられなかったことに対しての恨み辛みかもしれない。
それなら仕方がないと思った。
「〝生まれ変わって、会いに行く"……と」
『!』
――生まれ変わって、また会いに行くよ
蘇ったのは夢で、わたしの心の世界で見たブイモンの言葉。
もしかして、あのブイモンはセトモンが退化した時のブイモンと同じ…?でなければ、お礼だなんて。
考えれば考えるほど、心の世界で見たブイモンの言葉の意味が理解できた。
『あのブイモンはセトモンだったんだ…。ねえ、デュークモン』
「どうした?」
『セトモン……ブイモンね、元気の良い活発的なデジモンだったよ。わたしの名前を何度も呼んでくれてね、何もしていないのにお礼もくれて、それで…それで、言ってくれたんだ、』
生まれ変わって、また会いに行くよって。
「……そうであったか」
『けれど、胸を張って助けたなんて言えない』
はじまりの町は助かった。それでも、一体のデジモンという大きな犠牲が出てしまったのだ。
「しかし、確かにセトモンはそなたに救われたのだ」
『デュークモ、』
「会ったのであろう?元気であったのだろう?なら、確かに救われていたのだ」
そう言ってわたしを包み込むように抱きしめてくれた。
止まっていた涙は、ダムが決壊したように流れ出していた。
『待ってる。ずっと、待ってるよ』
「ああ。シオリが望むのならば、また会える」
それからしばらくはデュークモンの腕の中で声を押し殺して泣き続けた。
わたしの初任務は、悲しく切なくも、わたし自身が大きく成長する出来事として記憶に残り続けることになった。