少女の初任務①
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『デュークモン。待たせてごめんね』
「このデュークモンも今しがた参った。謝る必要はない」
彼はデュークモン。ロイヤルナイツの古株3人衆の1人。残りはオメガモンとマグナモン。
デュークモンは、わたしが部屋で料理をしている時にその匂いにつられて彼が部屋へやって来たのが初めての出会いだった。その時は急なお客さんに大変驚いたのを覚えている。
それからデュークモンはパン作りがとても上手なことを知り、たまに一緒にパンを作ってはロイヤルナイツの皆に手当たり次第配り歩いていたりする。かなり好評なのでまた彼と一緒に作りたいな。
そんな感じで邂逅した頃の思い出に浸っていると、コホンと一つ咳払いをしてデュークモンは口を開いた。
「さて。今回の任務は覚えているだろうか」
『うん。はじまりの町で起きている火災事件の調査だよね』
「その通り。知っているとは思うが、はじまりの町は全てのデジモンの故郷だ。無論、我らとて同じこと」
『……早く原因を突き止めないとね』
はじまりの町はデジモンの故郷。ドゥフトモンとの勉強のおかげで知識としてはあるけれど、実際に行くのは初めてになる。
「はじまりの町は少しばかり遠い。このデュークモンにしっかり捕まっておくのだぞ」
デュークモンに抱えられ、落ちないよう腕に力をこめる。空を飛ぶことのできないわたしの移動手段はもはやロイヤルナイツなのである。いつもありがとう。
ふと、今回調査する火災事件の犯人について思いを馳せた。犯人は誰かわからないけれど、何だかとても悲しい気がした。
『ねえ、デュークモン』
「どうした?」
『何で、自分の故郷を燃やそうとするんだろうね』
「それはこのデュークモンにも分からぬ」
『……そっかあ』
自分が生まれてきた場所なのに。
けれど、わたしだってそのデジモンのことを悪く言えない。決して憎んでいたわけではなかったけれど、自分の生まれ育った世界を捨ててきたのだから。
そこで一つの疑問が浮かんだ。
『もし、主犯のデジモンを見つけたらどうするの?』
「……」
『殺し、ちゃうの?』
答えてはくれない。
無言。それは肯定を意味しているのだろうか。大罪であることは分かっている。はじまりの町を破滅させてしまえばデジモンが生まれてくることはない。
それはつまり、デジタルワールドの衰退を意味している。
「そなたは我らを、冷酷だと幻滅するか?」
デュークモンが細々と問うてきた。
『いいえ。一つの命と大勢の命。天秤に掛けなくともどちらを優先すべきかなんて、考えなくても分かるよ』
「……そうか」
ただ、どちらも救う方法があれば良いな、なんて、甘いだろうか。
しばらくお互い無言で飛び続けていると、デジタマや幼年期などで溢れている町が目に映ってきた。所々焦げた痕も見えるが、今のところ大事ないようで一安心。
少し離れたところに降り立ち、はじまりの町へ歩を進める。
『そういえば、デジタマの管理は誰がしているの?』
「エレキモンだ」
『エレキモン。……ああ、成長期の!』
「うむ。勉強の賜物だな」
そう言うと、屈んで頭を撫でてくれた。
デュークモンの手つきはいつも優しい。
『わあ、デジタマがたくさん』
「そなたは初めて見るか」
『うん』
目の前にたくさんの命がある。これからのデジタルワールドを担う命が、こんなにもたくさんある。この町だけは壊させないと、わたしは静かに誓った。
「シオリよ。このデュークモン、エレキモンを探してくる。そなたはデジタマを孵していてはくれないだろうか」
『分かった。でもどうやって孵すの?』
「撫でてやると良い。このようにな」
しかし、デュークモンが撫でたのはデジタマではなく……
『何故わたし』
「このように気持ちを込めて撫でると良い」
それだけ言うと、満足気にエレキモンを探しに去って行く。その時わたしは思った。デュークモンはアルと同じくらいマイペースなのだと。
『まあ、良いか』
デュークモンの背中が見えなくなったのを確認して、周りにあるデジタマを一つ持ち上げる。ずっしりとした命の重みを感じた。丁寧に、ゆっくりと、先程デュークモンがわたしにしてきたように気持ちを込めて撫でてあげる。
『早く生まれておいで』
この世界は、新たな命を待っているから。
ピキピキッ
『わっ』
手に持っていたデジタマに、小さなヒビが走った。生まれてこようとしている。この世界に呼ばれた小さな命が、わたしの腕の中に誕生しようとしている。
『……頑張れ。待っているよ』
ピキッ
『さあ、おいで』
その時。デジタマが孵った。
「このデュークモンも今しがた参った。謝る必要はない」
彼はデュークモン。ロイヤルナイツの古株3人衆の1人。残りはオメガモンとマグナモン。
デュークモンは、わたしが部屋で料理をしている時にその匂いにつられて彼が部屋へやって来たのが初めての出会いだった。その時は急なお客さんに大変驚いたのを覚えている。
それからデュークモンはパン作りがとても上手なことを知り、たまに一緒にパンを作ってはロイヤルナイツの皆に手当たり次第配り歩いていたりする。かなり好評なのでまた彼と一緒に作りたいな。
そんな感じで邂逅した頃の思い出に浸っていると、コホンと一つ咳払いをしてデュークモンは口を開いた。
「さて。今回の任務は覚えているだろうか」
『うん。はじまりの町で起きている火災事件の調査だよね』
「その通り。知っているとは思うが、はじまりの町は全てのデジモンの故郷だ。無論、我らとて同じこと」
『……早く原因を突き止めないとね』
はじまりの町はデジモンの故郷。ドゥフトモンとの勉強のおかげで知識としてはあるけれど、実際に行くのは初めてになる。
「はじまりの町は少しばかり遠い。このデュークモンにしっかり捕まっておくのだぞ」
デュークモンに抱えられ、落ちないよう腕に力をこめる。空を飛ぶことのできないわたしの移動手段はもはやロイヤルナイツなのである。いつもありがとう。
ふと、今回調査する火災事件の犯人について思いを馳せた。犯人は誰かわからないけれど、何だかとても悲しい気がした。
『ねえ、デュークモン』
「どうした?」
『何で、自分の故郷を燃やそうとするんだろうね』
「それはこのデュークモンにも分からぬ」
『……そっかあ』
自分が生まれてきた場所なのに。
けれど、わたしだってそのデジモンのことを悪く言えない。決して憎んでいたわけではなかったけれど、自分の生まれ育った世界を捨ててきたのだから。
そこで一つの疑問が浮かんだ。
『もし、主犯のデジモンを見つけたらどうするの?』
「……」
『殺し、ちゃうの?』
答えてはくれない。
無言。それは肯定を意味しているのだろうか。大罪であることは分かっている。はじまりの町を破滅させてしまえばデジモンが生まれてくることはない。
それはつまり、デジタルワールドの衰退を意味している。
「そなたは我らを、冷酷だと幻滅するか?」
デュークモンが細々と問うてきた。
『いいえ。一つの命と大勢の命。天秤に掛けなくともどちらを優先すべきかなんて、考えなくても分かるよ』
「……そうか」
ただ、どちらも救う方法があれば良いな、なんて、甘いだろうか。
しばらくお互い無言で飛び続けていると、デジタマや幼年期などで溢れている町が目に映ってきた。所々焦げた痕も見えるが、今のところ大事ないようで一安心。
少し離れたところに降り立ち、はじまりの町へ歩を進める。
『そういえば、デジタマの管理は誰がしているの?』
「エレキモンだ」
『エレキモン。……ああ、成長期の!』
「うむ。勉強の賜物だな」
そう言うと、屈んで頭を撫でてくれた。
デュークモンの手つきはいつも優しい。
『わあ、デジタマがたくさん』
「そなたは初めて見るか」
『うん』
目の前にたくさんの命がある。これからのデジタルワールドを担う命が、こんなにもたくさんある。この町だけは壊させないと、わたしは静かに誓った。
「シオリよ。このデュークモン、エレキモンを探してくる。そなたはデジタマを孵していてはくれないだろうか」
『分かった。でもどうやって孵すの?』
「撫でてやると良い。このようにな」
しかし、デュークモンが撫でたのはデジタマではなく……
『何故わたし』
「このように気持ちを込めて撫でると良い」
それだけ言うと、満足気にエレキモンを探しに去って行く。その時わたしは思った。デュークモンはアルと同じくらいマイペースなのだと。
『まあ、良いか』
デュークモンの背中が見えなくなったのを確認して、周りにあるデジタマを一つ持ち上げる。ずっしりとした命の重みを感じた。丁寧に、ゆっくりと、先程デュークモンがわたしにしてきたように気持ちを込めて撫でてあげる。
『早く生まれておいで』
この世界は、新たな命を待っているから。
ピキピキッ
『わっ』
手に持っていたデジタマに、小さなヒビが走った。生まれてこようとしている。この世界に呼ばれた小さな命が、わたしの腕の中に誕生しようとしている。
『……頑張れ。待っているよ』
ピキッ
『さあ、おいで』
その時。デジタマが孵った。