少女は木箱と共に
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コンコン
両手が塞がっているのでアルにノックをしてもらうと、大して間も空かずに「入れ」と渋い声が返ってきた。緊張した面持ちのわたしと違いアルは勢いよく扉をたたいて開けて部屋へ入って行った。
「やっほードゥフトモン!」
『失礼します』
部屋に入って驚いた。それはそれは盛大に。談話室がとても小さく感じるくらいにはドゥフトモンの部屋は広く、壁は本棚で埋め尽くされている。これまで生きていて見たこともない書斎のような部屋はわたしにとってはかなり新鮮だった。
わあ、と感動しているとドゥフトモンは溜息をついてアルに向き合った。文句がありますと言わんばかりの顔で口を開く。
「貴様はもう少し静かに入れんのか」
「え?いつものことじゃん」
「いつも許しているわけではないぞ」
少しも悪びれていない様子から、どうやらアルのこのテンションはいつもらしい。ドゥフトモンも苦労しているな、とたった今顔を合わせたばかりの彼に少し同情した。
『あの、』
「ああ。シオリだな。某はドゥフトモンと申す」
『宜しくお願いします。ところで、これ…』
クレニアムモンから預かった木箱をドゥフトモンへ渡すと頭を撫でてくれた。わたしが重そうに持っているのを不憫に思ったのかもしれない。
頑張って持ってきて良かったと思う。
「これはクレニアムモンからか。よくこんな重い物を持ってきてくれた。感謝する」
『うん。…あ、あの』
「どうした?」
『わたしに、この世界のことを教えてほしい』
この世界で生きていくことを決めたのはわたし。
郷に入っては郷に従え。この世界のことを知らなければ生きている意味がないのだ。
『字も歴史もデジモンのことも分からない。だから、わたしに勉強を教えてください』
彼に懇願すると、顎に手を当てて考えるそぶりをした後すぐに跪いてわたしに視線を合わせてくれた。急に近くなった距離に驚いたけれどこちらも引くわけには行かなかったので目線をそらすことなくドゥフトモンを見やる。
「…ふむ。某も忙しいから毎日とまではいかぬが、良かろう」
『あ、ありがとう!』
いい返事が聞けて良かった。1週間に1回でも勉強できればそれで十分だし分からないことは他のナイツにも教わっていくつもりである。
「勉強だなんてシオリは偉いなあ」
「貴様も見習え」
「いやだぷー!」
「ふん、生意気な」
『ふふ』
アルはこのまま自由でいた方が良い。場を和ますことのできる力は誰もが持っているわけではないのだから。それにただただわたしが楽しい。
「ねえシオリ」
『どうしたの?』
「ドゥフトモンの部屋には高級なお菓子が隠されてるんだ!俺、場所知ってるから今度教えてあげる!」
「おい貴様!何故それを知っている!」
本人の前で言っているのはわざとなのだろうか。
でもドゥフトモンってお菓子が好きなんだね。今度、勉強のお礼にお菓子でも作ってあげようかな。高級なものよりかは劣るけれど是非食べてもらいたい。
「俺にお菓子を隠せると思ったら大間違いでーす!」
「どうりで最近消費が早くなっていると思ったぞ!」
「俺に隠して食べるドゥフトモンが悪い!」
言い合いをしているが、彼らはきっと仲が良いのだろう。見ているだけで気持ちが穏やかになれる。下らないやり取りがこんなにも微笑ましいだなんて思ってもみなかった。
ふふ、と小さく笑って彼らに言う。
『二人とも、仲が良いんだね』
「でしょー!」
「良いわけがあるか!」
ほら、やっぱり仲が良い。
両手が塞がっているのでアルにノックをしてもらうと、大して間も空かずに「入れ」と渋い声が返ってきた。緊張した面持ちのわたしと違いアルは勢いよく扉をたたいて開けて部屋へ入って行った。
「やっほードゥフトモン!」
『失礼します』
部屋に入って驚いた。それはそれは盛大に。談話室がとても小さく感じるくらいにはドゥフトモンの部屋は広く、壁は本棚で埋め尽くされている。これまで生きていて見たこともない書斎のような部屋はわたしにとってはかなり新鮮だった。
わあ、と感動しているとドゥフトモンは溜息をついてアルに向き合った。文句がありますと言わんばかりの顔で口を開く。
「貴様はもう少し静かに入れんのか」
「え?いつものことじゃん」
「いつも許しているわけではないぞ」
少しも悪びれていない様子から、どうやらアルのこのテンションはいつもらしい。ドゥフトモンも苦労しているな、とたった今顔を合わせたばかりの彼に少し同情した。
『あの、』
「ああ。シオリだな。某はドゥフトモンと申す」
『宜しくお願いします。ところで、これ…』
クレニアムモンから預かった木箱をドゥフトモンへ渡すと頭を撫でてくれた。わたしが重そうに持っているのを不憫に思ったのかもしれない。
頑張って持ってきて良かったと思う。
「これはクレニアムモンからか。よくこんな重い物を持ってきてくれた。感謝する」
『うん。…あ、あの』
「どうした?」
『わたしに、この世界のことを教えてほしい』
この世界で生きていくことを決めたのはわたし。
郷に入っては郷に従え。この世界のことを知らなければ生きている意味がないのだ。
『字も歴史もデジモンのことも分からない。だから、わたしに勉強を教えてください』
彼に懇願すると、顎に手を当てて考えるそぶりをした後すぐに跪いてわたしに視線を合わせてくれた。急に近くなった距離に驚いたけれどこちらも引くわけには行かなかったので目線をそらすことなくドゥフトモンを見やる。
「…ふむ。某も忙しいから毎日とまではいかぬが、良かろう」
『あ、ありがとう!』
いい返事が聞けて良かった。1週間に1回でも勉強できればそれで十分だし分からないことは他のナイツにも教わっていくつもりである。
「勉強だなんてシオリは偉いなあ」
「貴様も見習え」
「いやだぷー!」
「ふん、生意気な」
『ふふ』
アルはこのまま自由でいた方が良い。場を和ますことのできる力は誰もが持っているわけではないのだから。それにただただわたしが楽しい。
「ねえシオリ」
『どうしたの?』
「ドゥフトモンの部屋には高級なお菓子が隠されてるんだ!俺、場所知ってるから今度教えてあげる!」
「おい貴様!何故それを知っている!」
本人の前で言っているのはわざとなのだろうか。
でもドゥフトモンってお菓子が好きなんだね。今度、勉強のお礼にお菓子でも作ってあげようかな。高級なものよりかは劣るけれど是非食べてもらいたい。
「俺にお菓子を隠せると思ったら大間違いでーす!」
「どうりで最近消費が早くなっていると思ったぞ!」
「俺に隠して食べるドゥフトモンが悪い!」
言い合いをしているが、彼らはきっと仲が良いのだろう。見ているだけで気持ちが穏やかになれる。下らないやり取りがこんなにも微笑ましいだなんて思ってもみなかった。
ふふ、と小さく笑って彼らに言う。
『二人とも、仲が良いんだね』
「でしょー!」
「良いわけがあるか!」
ほら、やっぱり仲が良い。