名字固定【篠崎】
咆哮!イッカクモン
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「確かここら辺だったんだけど…」
「うーん。仕掛けみたいなものは見当たらないな」
黒い歯車が出てきた所へ来てみたが結果はよく分からず。そこは他の崖となんら変わりはなかった。
『どうなっているやら』
「もっとよく探してみよう」
「待って!……なんだ?あの音」
ゴマモンが制止したので口を噤み耳を済ませる。
すると羽をばさばさと羽ばたかせているような音が聞こえて空を見上げると、太陽を背にして何かがこちらへ向かってきていた。
「馬?」
『ユニコーンやペガサスみたいだね』
「あ、ユニモンだ!賢くて大人しいデジモンだよ」
「隠れろ!」
丈はゴマモンを引き寄せて近くの窪みに隠れた。わたしとアグモン(黒)も同じように隠れながらユニモンの行動を見守る。
「なんだよー。ユニモンは大人しいんだから隠れなくても」
「君らのそのデジモン情報ってさ、宛にならないじゃん」
『まあ、黒い歯車のせいで性格が変わっていたから仕方ないとは思うけどね』
そんなことを話している間にユニモンは崖を流れる小さな滝で水を飲み始めた。
「あ、ほら、水を飲んでる。あそこが水飲み場なんだ。綺麗だなあ」
『うん。幻想的だね』
「な?大丈夫って言ったろ?……もっと近くで見ようぜ!」
「あ、おい!」
その時だった。耳の奥にまで残るような嫌な音が聞こえてきた。
「ん?……何か、来る」
「気を付けて」
ゴマモンとアグモン(黒)の言葉に、身を屈めて周りに注意しているとその音の原因が現れた。
「なに!?」
「黒い歯車だ!」
黒い歯車はユニモンへ飛んで行き、勢いを殺さずそのままその背中へと突き刺さる。
「あぁ!」
「や、ヤバイ!」
「目が……目が、逝っちゃってるよお!?」
『ありゃあ』
「これはまずいことになったね」
今までこちらを見向きもしなかったユニモンがわたしたちをその視界に捉えてしまった。ゆっくりと圧力を掛けるようににじり寄って来ている。
「取り敢えず、逃げよう」
アグモン(黒)の言葉にわたしたちは走り出した。が、すぐにユニモンが攻撃を放ってきたので足止めをされてしまう。
『危ない…!流石にこの狭い道で足元に技を放たれたら崖から落ちてしまうよ』
「逃げ場も限られてるからここだと不利だよ」
『そうは言ってもね…』
「ゴマモン、何とかできないのか!?」
丈がゴマモンへ尋ねるが、ゴマモンが答えるよりも先にユニモンがわたしたちの前に立ち塞がった。後ろへ逃げようにも既にユニモンの攻撃で道はなくなっている。
『どうすれば…』
考えている間にもユニモンは技をチャージをしていて、いつ放たれていてもおかしくない状況だ。
「これまでか…!」
咄嗟に丈やゴマモン、アグモン(黒)を腕に引き寄せて衝撃を待つ。あんなの至近距離で喰らえばただでは済みそうもないだろう。
『……あれ?』
いつまで経ってもこない衝撃に目を開けると、空ちゃんと太一くん、そして彼のアグモンを乗せたバードラモンがユニモンを押さえ込んでいた。
「助けに来たぜ!」
「太一!空!」
「大丈夫!?」
『君たちのおかげでね。ありがとう』
しかしユニモンはバードラモンの拘束から逃れて攻撃を繰り出した。ターゲットをわたしたちではなくバードラモンにしてしまったようだ。
「あ!」
ユニモンの放った攻撃がバードラモンへ直撃して崖下へと落ちてゆく。
「バードラモン!」
空ちゃんはすぐに崖を滑ってバードラモンの元へと駆け寄った。わたしを庇って攻撃を喰らったバードラモンが心配でならない。
「アグモン!」
「うん!」
太一くんのアグモンがグレイモンへと進化をして応戦するが、グレイモンの放った技は外れて逆に攻撃を受けてしまう。
その際に崩れた崖が破片の雨として彼らに降り注いでいた。
「太一、グレイモン!空、バードラモン!」
『大丈夫!?』
「あ、ああ」
破片に埋もれていた太一くんはグレイモンが守っていたようで一安心だ。崖下を覗き込むと空ちゃんとバードラモンもいた。
バードラモンは空高く飛んで技を放つ。
「メテオウィング!」
しかし技が当たるよりも前にユニモンが体当たりをすると、再び崖の下へ落下していった。その際に逃げ遅れた空ちゃんの足元の地面も抉って巻き込まれる。
「きゃあ!」
『空ちゃん!」
砂埃が舞って正確な安否は分からないが、耳を澄ますと僅かに空ちゃんの声が聞こえてきた。
『良かった…』
ユニモンが近くを通ると、その背中に黒い歯車が痛々しく刺さっているのが見えた。
「黒い歯車!?あれを外せば…!」
「丈?」
「てぇーい!」
「丈!」
『ちょっ、丈!?』
突然丈がユニモンの背中へと飛び移った。
なんて自殺行為なことを。
「これを!」
「丈!」
「これを外せば…!」
丈が力を込めて黒い歯車を抜こうとするとユニモンが痛そうに悲鳴を上げた。
「丈、やめろ!無理だよ!」
『無茶はしないでッ』
「駄目だ。僕がやらなきゃ!……僕が、僕が皆を守るんだ!」
『丈…』
しかしユニモンは自身の背中に乗っている丈を振り落とそうと必死に暴れる。
『丈、丈…!』
「碧、危ないから下がって!」
『アグモン。…でも丈が』
「僕が一番、大きいんだから!僕が皆を守る!うわあああッ!」
『丈!』
ついに丈が振り落とされてしまった。
手を伸ばすと丈も応えてくれてパシッと手を取り合うが、支えきれる訳もなく2人で落下していく。
「碧ーッ!」
「うわああ!」
『くっ…』
せめて、丈だけでも。そう思い彼の頭を守るように腕をまわして丈を引き寄せる。
『死なないと、良いなあ』
まだアグモン(黒)と会ったばかりなんだ。
ずっと待っていてくれた彼を置いていくなんてこと、わたしにはできない。どれだけ深手を負ったとしても耐えてくれよ、わたしの体。
「碧、やだ、碧!」
「じょおおおおお!」
悲痛な声で叫ぶアグモン(黒)を遮るかのようにゴマモンの声が響いた。
瞬間、辺り一面が眩い光に包まれる。
「ゴマモン進化ー!イッカクモン!」
「うわあ!」
『わふっ』
迎えたのは地面へ落下する衝撃ではなく、わたしたちを優しく包んでくれるようなやわらかい感触だった。
どうやらイッカクモンへと進化したゴマモンが受け止めてくれたようである。
「ハープーンバルカン!」
すぐに技を放つがユニモンはそのスピードを活かして全て避けてしまった。
「駄目だ。あいつ速いぞ!」
しかしその技から追尾機能を持ったミサイルが出てきて、予想していなかったであろうユニモンに直撃する。
その際に黒い歯車を壊したようで、ユニモンはそのまま去っていった。
「やった。……やった、やった!」
丈が喜ぶ。
「碧ー!」
『…アグモン』
イッカクモンから降りると、駆け寄ってきたアグモン(黒)に勢いを付けて抱き着かれる。
いつもなら受身でわたしもゆっくり抱き締め返すのだが、今は形振り構わずぎゅっと強く彼を腕の中に収めた。それくらい、彼を近くに感じたかったのである。
「……良かったぁ」
『ごめん』
「やめてよ。あんな無茶するの」
『ごめん』
「碧がいなくなると思って、俺、」
『うん。ごめんね』
顔を上げたアグモン(黒)の顔を見ると、その翡翠の瞳は溜まっている涙でキラキラとしていた。
綺麗だなあ、なんて場違いにも思う。
『でも』
「うん?』
『落ちている時、絶対に君を置いていったりしたくないって思ったの』
「碧…」
『わたしも、アグモンと離れたくないからね。だから今回のことは本当に謝る。ごめん』
頭を撫でながら謝ると、彼はそれまで溜めていた涙をぽろぽろと零し始める。静かに泣く彼はとても上品だ。
いつの間にか太一くんたちが周りにいて、わたしたちを温かい目で見守ってくれていた。
「うーん。仕掛けみたいなものは見当たらないな」
黒い歯車が出てきた所へ来てみたが結果はよく分からず。そこは他の崖となんら変わりはなかった。
『どうなっているやら』
「もっとよく探してみよう」
「待って!……なんだ?あの音」
ゴマモンが制止したので口を噤み耳を済ませる。
すると羽をばさばさと羽ばたかせているような音が聞こえて空を見上げると、太陽を背にして何かがこちらへ向かってきていた。
「馬?」
『ユニコーンやペガサスみたいだね』
「あ、ユニモンだ!賢くて大人しいデジモンだよ」
「隠れろ!」
丈はゴマモンを引き寄せて近くの窪みに隠れた。わたしとアグモン(黒)も同じように隠れながらユニモンの行動を見守る。
「なんだよー。ユニモンは大人しいんだから隠れなくても」
「君らのそのデジモン情報ってさ、宛にならないじゃん」
『まあ、黒い歯車のせいで性格が変わっていたから仕方ないとは思うけどね』
そんなことを話している間にユニモンは崖を流れる小さな滝で水を飲み始めた。
「あ、ほら、水を飲んでる。あそこが水飲み場なんだ。綺麗だなあ」
『うん。幻想的だね』
「な?大丈夫って言ったろ?……もっと近くで見ようぜ!」
「あ、おい!」
その時だった。耳の奥にまで残るような嫌な音が聞こえてきた。
「ん?……何か、来る」
「気を付けて」
ゴマモンとアグモン(黒)の言葉に、身を屈めて周りに注意しているとその音の原因が現れた。
「なに!?」
「黒い歯車だ!」
黒い歯車はユニモンへ飛んで行き、勢いを殺さずそのままその背中へと突き刺さる。
「あぁ!」
「や、ヤバイ!」
「目が……目が、逝っちゃってるよお!?」
『ありゃあ』
「これはまずいことになったね」
今までこちらを見向きもしなかったユニモンがわたしたちをその視界に捉えてしまった。ゆっくりと圧力を掛けるようににじり寄って来ている。
「取り敢えず、逃げよう」
アグモン(黒)の言葉にわたしたちは走り出した。が、すぐにユニモンが攻撃を放ってきたので足止めをされてしまう。
『危ない…!流石にこの狭い道で足元に技を放たれたら崖から落ちてしまうよ』
「逃げ場も限られてるからここだと不利だよ」
『そうは言ってもね…』
「ゴマモン、何とかできないのか!?」
丈がゴマモンへ尋ねるが、ゴマモンが答えるよりも先にユニモンがわたしたちの前に立ち塞がった。後ろへ逃げようにも既にユニモンの攻撃で道はなくなっている。
『どうすれば…』
考えている間にもユニモンは技をチャージをしていて、いつ放たれていてもおかしくない状況だ。
「これまでか…!」
咄嗟に丈やゴマモン、アグモン(黒)を腕に引き寄せて衝撃を待つ。あんなの至近距離で喰らえばただでは済みそうもないだろう。
『……あれ?』
いつまで経ってもこない衝撃に目を開けると、空ちゃんと太一くん、そして彼のアグモンを乗せたバードラモンがユニモンを押さえ込んでいた。
「助けに来たぜ!」
「太一!空!」
「大丈夫!?」
『君たちのおかげでね。ありがとう』
しかしユニモンはバードラモンの拘束から逃れて攻撃を繰り出した。ターゲットをわたしたちではなくバードラモンにしてしまったようだ。
「あ!」
ユニモンの放った攻撃がバードラモンへ直撃して崖下へと落ちてゆく。
「バードラモン!」
空ちゃんはすぐに崖を滑ってバードラモンの元へと駆け寄った。わたしを庇って攻撃を喰らったバードラモンが心配でならない。
「アグモン!」
「うん!」
太一くんのアグモンがグレイモンへと進化をして応戦するが、グレイモンの放った技は外れて逆に攻撃を受けてしまう。
その際に崩れた崖が破片の雨として彼らに降り注いでいた。
「太一、グレイモン!空、バードラモン!」
『大丈夫!?』
「あ、ああ」
破片に埋もれていた太一くんはグレイモンが守っていたようで一安心だ。崖下を覗き込むと空ちゃんとバードラモンもいた。
バードラモンは空高く飛んで技を放つ。
「メテオウィング!」
しかし技が当たるよりも前にユニモンが体当たりをすると、再び崖の下へ落下していった。その際に逃げ遅れた空ちゃんの足元の地面も抉って巻き込まれる。
「きゃあ!」
『空ちゃん!」
砂埃が舞って正確な安否は分からないが、耳を澄ますと僅かに空ちゃんの声が聞こえてきた。
『良かった…』
ユニモンが近くを通ると、その背中に黒い歯車が痛々しく刺さっているのが見えた。
「黒い歯車!?あれを外せば…!」
「丈?」
「てぇーい!」
「丈!」
『ちょっ、丈!?』
突然丈がユニモンの背中へと飛び移った。
なんて自殺行為なことを。
「これを!」
「丈!」
「これを外せば…!」
丈が力を込めて黒い歯車を抜こうとするとユニモンが痛そうに悲鳴を上げた。
「丈、やめろ!無理だよ!」
『無茶はしないでッ』
「駄目だ。僕がやらなきゃ!……僕が、僕が皆を守るんだ!」
『丈…』
しかしユニモンは自身の背中に乗っている丈を振り落とそうと必死に暴れる。
『丈、丈…!』
「碧、危ないから下がって!」
『アグモン。…でも丈が』
「僕が一番、大きいんだから!僕が皆を守る!うわあああッ!」
『丈!』
ついに丈が振り落とされてしまった。
手を伸ばすと丈も応えてくれてパシッと手を取り合うが、支えきれる訳もなく2人で落下していく。
「碧ーッ!」
「うわああ!」
『くっ…』
せめて、丈だけでも。そう思い彼の頭を守るように腕をまわして丈を引き寄せる。
『死なないと、良いなあ』
まだアグモン(黒)と会ったばかりなんだ。
ずっと待っていてくれた彼を置いていくなんてこと、わたしにはできない。どれだけ深手を負ったとしても耐えてくれよ、わたしの体。
「碧、やだ、碧!」
「じょおおおおお!」
悲痛な声で叫ぶアグモン(黒)を遮るかのようにゴマモンの声が響いた。
瞬間、辺り一面が眩い光に包まれる。
「ゴマモン進化ー!イッカクモン!」
「うわあ!」
『わふっ』
迎えたのは地面へ落下する衝撃ではなく、わたしたちを優しく包んでくれるようなやわらかい感触だった。
どうやらイッカクモンへと進化したゴマモンが受け止めてくれたようである。
「ハープーンバルカン!」
すぐに技を放つがユニモンはそのスピードを活かして全て避けてしまった。
「駄目だ。あいつ速いぞ!」
しかしその技から追尾機能を持ったミサイルが出てきて、予想していなかったであろうユニモンに直撃する。
その際に黒い歯車を壊したようで、ユニモンはそのまま去っていった。
「やった。……やった、やった!」
丈が喜ぶ。
「碧ー!」
『…アグモン』
イッカクモンから降りると、駆け寄ってきたアグモン(黒)に勢いを付けて抱き着かれる。
いつもなら受身でわたしもゆっくり抱き締め返すのだが、今は形振り構わずぎゅっと強く彼を腕の中に収めた。それくらい、彼を近くに感じたかったのである。
「……良かったぁ」
『ごめん』
「やめてよ。あんな無茶するの」
『ごめん』
「碧がいなくなると思って、俺、」
『うん。ごめんね』
顔を上げたアグモン(黒)の顔を見ると、その翡翠の瞳は溜まっている涙でキラキラとしていた。
綺麗だなあ、なんて場違いにも思う。
『でも』
「うん?』
『落ちている時、絶対に君を置いていったりしたくないって思ったの』
「碧…」
『わたしも、アグモンと離れたくないからね。だから今回のことは本当に謝る。ごめん』
頭を撫でながら謝ると、彼はそれまで溜めていた涙をぽろぽろと零し始める。静かに泣く彼はとても上品だ。
いつの間にか太一くんたちが周りにいて、わたしたちを温かい目で見守ってくれていた。