名字固定【篠崎】
咆哮!イッカクモン
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「って、これ……沸騰してるぜ…」
両手両膝を地面に付けて項垂れながら太一くんは悲嘆した。
温泉だと思いやってきたそこにあったのはぶくぶくと不穏な音を立てて沸騰している、とても温泉とは言えないような何かだった。
「碧、沸騰してるよ」
『そうみたいだね』
誤って落ちた時を考えるとゾッとする。
「これに浸かるんかいな…」
「まさか」
テントモンの呟きに光子郎も苦笑いをしながら即答した。心なしかその声に覇気がないように感じる。
「うわーん!これじゃあお風呂に入れない!」
『仕方がないね』
「でもあったかいわ!」
「取り敢えず、寒さは凌げるな」
ヤマトくんの言う通りだ。
ここは少し暑いくらいだから丁度良い。
「呑気な事言ってる場合か!」
丈が不安そうに声を上げた。
呑気、なのかな?
『丈。この寒い中で暖を取れるかどうかは死活問題だよ。呑気なはずがない』
「君が言っても説得力に欠ける…」
『ありゃ』
それは困った。
「第一、食料はどうするんだよ。ここには食料なんて…」
「あるよ!」
丈の言葉をタケルくんが遮った。
「何言ってるんだよ。こんなごつごつした岩だらけの所に…」
「ほら!」
タケルくんが指を差した先、そこには場違いにも冷蔵庫が置いてあった。
そういえば、海岸にも電話ボックスがあったことを思い出した。常識などないのかもしれない。
「そんな馬鹿な」
素っ頓狂な声を出して肩を落とす。その眼鏡も思わずズレてしまっている。
電話ボックスや電車、自販機に続き冷蔵庫とは。もはやこれ以上何が出ても驚かない自信がある。
「何だよ?……あ、ラッキー!」
「非常識だ。何でこんなところに冷蔵庫が!?」
丈の叫びも虚しく、皆は冷蔵庫に興味津々だ。
「何が入ってるのかな?」
「そういう問題じゃないだろう!」
「取り敢えず開けてみたら?」
「だから!」
可哀想に。誰も丈の言葉が耳に入っていないようである。宥めるように丈の肩へ手をポンッと置いた。
『まあまあ』
「君からも何とか言ってやってくれよ」
『……うーん。非常識なことなんて、ここに来るまでに色々あったじゃない。そろそろ受け入れてみたらどう?』
「そんな簡単にできたら苦労しないさ!」
『まあ、そうだよね』
受け入れるかどうかは人それぞれだもんね。
強要するのは野暮というものかな。
「ミミ、ゼリーが良いなあ!」
「ゼリーって何?」
「よーし、開けちゃえー!」
太一くんが冷蔵庫の扉を開けると、中は卵がたくさん入っていた。というか卵しかない。
「うわ~!」
「たーまーごーだー!」
太一くんとアグモンが声を揃えて喜んだ。
「今日の夕食はこれで決まりだな!」
「ちょ、ちょっと待てよ! 食べられるかどうか分からないじゃないか」
丈が一歩前に出て異を唱える。
「大丈夫だよ。毒見だったら俺がやるからさ!」
「何言ってんだよ!食べられるにしても、人の物を勝手に食べるなんて泥棒と変わりないじゃないか!」
「仕方ないだろ、腹減ってるんだから」
「事情を離せば分かってくれるわよ」
「何しろ非常事態ですからね」
「夕食はこれで決まりや!」
結局皆の意見に押し切られる形となってしまった。丈は納得のいっていない様子であるが仕方がないだろう。
ここには他に食べられるものが見当たらない。
『君の言いたいことも分かるけど、食べ物が目の前にあるのに餓死なんてしたら後味悪いじゃない』
「それはそうだけど…」
『ここら辺の管理人が出てきたらその時は皆で謝ろう。これは誰の責任でもないから難しく考えない方が良いよ』
「…はあ」
観念したかのように溜息を吐いて丈も皆の輪へと溶け込んでいった。ちょっと悪いことしたかな、なんて思いながらわたしも彼らのところへ向かう。
難しく考えない方が良い。なんて、余計に不安にさせる言葉だったのかもしれないのに。
両手両膝を地面に付けて項垂れながら太一くんは悲嘆した。
温泉だと思いやってきたそこにあったのはぶくぶくと不穏な音を立てて沸騰している、とても温泉とは言えないような何かだった。
「碧、沸騰してるよ」
『そうみたいだね』
誤って落ちた時を考えるとゾッとする。
「これに浸かるんかいな…」
「まさか」
テントモンの呟きに光子郎も苦笑いをしながら即答した。心なしかその声に覇気がないように感じる。
「うわーん!これじゃあお風呂に入れない!」
『仕方がないね』
「でもあったかいわ!」
「取り敢えず、寒さは凌げるな」
ヤマトくんの言う通りだ。
ここは少し暑いくらいだから丁度良い。
「呑気な事言ってる場合か!」
丈が不安そうに声を上げた。
呑気、なのかな?
『丈。この寒い中で暖を取れるかどうかは死活問題だよ。呑気なはずがない』
「君が言っても説得力に欠ける…」
『ありゃ』
それは困った。
「第一、食料はどうするんだよ。ここには食料なんて…」
「あるよ!」
丈の言葉をタケルくんが遮った。
「何言ってるんだよ。こんなごつごつした岩だらけの所に…」
「ほら!」
タケルくんが指を差した先、そこには場違いにも冷蔵庫が置いてあった。
そういえば、海岸にも電話ボックスがあったことを思い出した。常識などないのかもしれない。
「そんな馬鹿な」
素っ頓狂な声を出して肩を落とす。その眼鏡も思わずズレてしまっている。
電話ボックスや電車、自販機に続き冷蔵庫とは。もはやこれ以上何が出ても驚かない自信がある。
「何だよ?……あ、ラッキー!」
「非常識だ。何でこんなところに冷蔵庫が!?」
丈の叫びも虚しく、皆は冷蔵庫に興味津々だ。
「何が入ってるのかな?」
「そういう問題じゃないだろう!」
「取り敢えず開けてみたら?」
「だから!」
可哀想に。誰も丈の言葉が耳に入っていないようである。宥めるように丈の肩へ手をポンッと置いた。
『まあまあ』
「君からも何とか言ってやってくれよ」
『……うーん。非常識なことなんて、ここに来るまでに色々あったじゃない。そろそろ受け入れてみたらどう?』
「そんな簡単にできたら苦労しないさ!」
『まあ、そうだよね』
受け入れるかどうかは人それぞれだもんね。
強要するのは野暮というものかな。
「ミミ、ゼリーが良いなあ!」
「ゼリーって何?」
「よーし、開けちゃえー!」
太一くんが冷蔵庫の扉を開けると、中は卵がたくさん入っていた。というか卵しかない。
「うわ~!」
「たーまーごーだー!」
太一くんとアグモンが声を揃えて喜んだ。
「今日の夕食はこれで決まりだな!」
「ちょ、ちょっと待てよ! 食べられるかどうか分からないじゃないか」
丈が一歩前に出て異を唱える。
「大丈夫だよ。毒見だったら俺がやるからさ!」
「何言ってんだよ!食べられるにしても、人の物を勝手に食べるなんて泥棒と変わりないじゃないか!」
「仕方ないだろ、腹減ってるんだから」
「事情を離せば分かってくれるわよ」
「何しろ非常事態ですからね」
「夕食はこれで決まりや!」
結局皆の意見に押し切られる形となってしまった。丈は納得のいっていない様子であるが仕方がないだろう。
ここには他に食べられるものが見当たらない。
『君の言いたいことも分かるけど、食べ物が目の前にあるのに餓死なんてしたら後味悪いじゃない』
「それはそうだけど…」
『ここら辺の管理人が出てきたらその時は皆で謝ろう。これは誰の責任でもないから難しく考えない方が良いよ』
「…はあ」
観念したかのように溜息を吐いて丈も皆の輪へと溶け込んでいった。ちょっと悪いことしたかな、なんて思いながらわたしも彼らのところへ向かう。
難しく考えない方が良い。なんて、余計に不安にさせる言葉だったのかもしれないのに。