名字固定【篠崎】
電光!カブテリモン
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工場では何の役に立つのかも分からない部品を延々と組み立てていたが、人らしき人は見当たらなかった。
この部品たちを作っている機械がどのようにして動いているか調べてみるか、という誰かが提案した意見にそれならばついでに人間も探そうと力説する丈に反論する人はおらず、広い工場を探すのに二手に分かれることになる。わたしはヤマトくん、タケルくん、ミミちゃん、光子郎と共に散策していた。
「動力室だ…!」
「中に入ってみよう」
歩き回っているとPOWER SUPPLYRと書かれている部屋を見つけたので、ドアを開けて中に入る。そこには今までで見たことのないくらい大きい電池とモーターが取り付けられていた。初めてみるものに一同は感嘆の声を出して唖然と見上げていたが、その中でも光子郎が好奇心に目を輝かせて動力室へと入っていく。
「お化け電池とモーターだ!こんなので動かしてるなんて…」
巨大なこの機械はたった今光子郎によってお化け電池と名付けられた。それからしばらく周辺を調べていたが、これといった収穫はなく光子郎を除いてわたしたちはお化け電池の前で座り込んでいた。未だに調べる手を止めることのない彼の瞳は真剣そのものでわたしたちなど眼中にないようである。もはや彼の頭の中は目の前の観察対象で埋めつくされているのだろう。
「まだ調べるのか?」
これには流石に痺れを切らしたヤマトくんも口を挟む。
「はい。先を急ぐんでしたら皆さんだけどうぞ。僕は残ってもう少し調べます」
こちらを振り返ることもせず言い放った光子郎にヤマトくんは困った表情を浮かべた。気持ちは分かる。何かあるか分からないのに一人残すのは危ないし心配にもなる。ましてや弟のいる彼なら自分より年が下の仲間を気に掛けてしまうのも無理はない。先へ進みたいけれどここに一人置いて行くわけにはいかないという葛藤がこちらにもひしひしと伝わっている。
そんな彼の気持ちも今の光子郎は気付いていないのだろうと思うと、彼の心配が空回りをしている感じがして何だが悲しい気持ちになってしまった。わたしは緩く眉を下げながらヤマトくんに振り返る。
『ヤマトくん。光子郎が心配だしわたしも残るよ』
「良いのか…?」
『うん。必ず光子郎も連れて行くから、後で合流しよう』
「……分かった」
渋々といった感じだが納得してくれたようだ。もちろんその間も光子郎は調べごとに夢中だけれど。先へ進む彼らを見送る時にミミちゃんとタケルくんが手を振ってくれたのでゆるりと振り返す。純粋って良いなあ。
しばらくアグモン(黒)と座り込んで工場内を見渡していると、光子郎が何かを見つけたらしく、小さくあっと声を上げたのが聞こえた。
「あれ、こんなところにドアが…」
『入ってみる?』
「はい」
立ち上がり光子郎と共に慎重に扉を開けて中へ入ると、そこは様々な色で書かれた不思議な文字が壁一面を埋め尽くしている。電池に扉があるのにも驚いたが、中身が空洞であることにも大層驚いた。
「これ、何でっか」
「コンピューターのプログラムだ…」
光子郎がテントモンの問いに答える呟きとともに壁の文字をなぞると、ぷつんと電気が消えて薄暗くなる。扉を開けて部屋の外を確認してみるが、どうやら工場内の電気が落とされているようだった。機械の稼働音も聞こえず完全にこの工場は静寂に包まれたらしい。
『これは完全に落ちたね』
「碧〜、オレのこと見つけられる〜?」
後ろの方からアグモン(黒)に呼ばれて振り向くが、停電して真っ暗になった部屋ではどうにも見つけにくい。この状況でさえ楽しむアグモン(黒)に頬が緩むのを感じながら手を伸ばす。
『はは、保護色になって見えづらいよ』
そうは言いつつしっかりと頭を撫でると、それが嬉しかったのかえへへと笑いながら抱き着いてきた。
「何で分かったの?」
『だって君の瞳、とても綺麗だしね』
そう言ってやると彼はわたしの名前を呼んで頭を擦り付けてくる。これではピヨモンのことを甘えん坊だなんて言ってられないなあと密かに苦笑していれば一連の様子を見ていたであろうテントモンが暗闇の中から姿を現した。
「あんさんらのイチャコラっぷりに驚きですわ」
『ふはっ。言い回しが若干古いよね、君』
デジモンもイチャコラって使うんだ、と妙な関心を覚えたが関西弁で話すデジモンがいるのだから今更なのだろう。
わたしたちがそんなやり取りをしている中でうーんと唸る声が微かに聞こえる。停電してしまった原因を光子郎がその持前の頭脳で究明しているのだ。工場内の全ての機能が停止していることも分かったので部屋の中へ戻り、顎に手を置いて考えている光子郎の隣に立つ。
「プログラムを間違って消しちゃったせいかな」
「どうでっしゃろ。……ああ、せや。消したとこ直せば分かるんちゃいますか?」
「それもそうだ」
そうなんだ。なぞっただけで消えるプログラムにも吃驚だけれど、消えた壁のプログラムってそんな簡単に直せるものなのだろうか。
そんなことを疑問に思っていると、光子郎がどこからかマジックペンを取り出して消してしまったところを書き直す。その直後にけたたましい機械の稼働音が聞こえ部屋の中も明るくなる。どうやら今まで停電していた電気が復旧したようだった。
『マジックペンで復旧するって、どういう仕組み…?』
明るくなるや光子郎は床に座り込んでパソコンを起動した。
その向かい側にわたしも座る。
「それにしても不思議だ」
「何がでっか?」
光子郎の独り言にも思える呟きにテントモンが尋ねる。
「電池は金属と溶液の化学反応によって電気を起こすんだ。でもこれは違う。この壁に書かれてあるプログラム、それ自体が電気を起こしている」
「うーん。なんや難しそうな話でんなあ」
『つまり、ここでは電気の起こし方が他とは違うってことじゃないかな』
「碧も頭良いなあ」
『いや、こういった分野は光子郎に劣るよ』
小学3年生が溶液とかプログラムとか当たり前のように持っている知識ではないと思うのだけれど、光子郎は将来が楽しみだ。
まあ確かに文字によって発電しているのには疑問を持たざるを得ないが。
「そうだ!」
「今度は何しはるんです?」
「このプラグラムを分析してみるのさ! やっと僕のパソコンの出番ってわけさ!」
そんなに嬉しかったのだろう。光子郎の瞳はきらきらと輝いていた。
「光子郎はんの顔、なんや今までにないくらい生き生きしてまんな」
「そうかい?」
「はいな」
テントモンも光子郎の表情の変化に気が付いたらしい。
そういえば、最初にクワガーモンから逃げて崖から川へ落ちる時は「光子郎」と呼び捨てにしていたような気がしたが、今は敬称をつけることに落ち着いる。
「どこが楽しいんでっか?」
「暗号や古代文字を解読するのに似た楽しさかな」
『古代文字…?』
本当にこの子は凄い。
「ふーん。解読する楽しさねえ。…んで、解読して何かええことあるんでっか?」
「もしかすると、謎が解けるかもしれないよ。この世界がどういう世界で、君たちが何者かとか」
「ここがどこで自分が何者かなんて、うちさっぱり興味おまへんなあ」
「そう?」
そっか。今までそんなことを考えなくても関係なく生きていけたんだもんね。
内容もシンプルなようで難しいし、考えるだけ無駄って感じなのかな、彼らにとっては。
「光子郎はんは自分が何者かなんて、興味ありまっか?」
「僕は……」
テントモンの何気ない問いに、光子郎は何かを考え始めていて視線が定まらなくなっていく。
今の光子郎に、その質問はまだ駄目だ。
この部品たちを作っている機械がどのようにして動いているか調べてみるか、という誰かが提案した意見にそれならばついでに人間も探そうと力説する丈に反論する人はおらず、広い工場を探すのに二手に分かれることになる。わたしはヤマトくん、タケルくん、ミミちゃん、光子郎と共に散策していた。
「動力室だ…!」
「中に入ってみよう」
歩き回っているとPOWER SUPPLYRと書かれている部屋を見つけたので、ドアを開けて中に入る。そこには今までで見たことのないくらい大きい電池とモーターが取り付けられていた。初めてみるものに一同は感嘆の声を出して唖然と見上げていたが、その中でも光子郎が好奇心に目を輝かせて動力室へと入っていく。
「お化け電池とモーターだ!こんなので動かしてるなんて…」
巨大なこの機械はたった今光子郎によってお化け電池と名付けられた。それからしばらく周辺を調べていたが、これといった収穫はなく光子郎を除いてわたしたちはお化け電池の前で座り込んでいた。未だに調べる手を止めることのない彼の瞳は真剣そのものでわたしたちなど眼中にないようである。もはや彼の頭の中は目の前の観察対象で埋めつくされているのだろう。
「まだ調べるのか?」
これには流石に痺れを切らしたヤマトくんも口を挟む。
「はい。先を急ぐんでしたら皆さんだけどうぞ。僕は残ってもう少し調べます」
こちらを振り返ることもせず言い放った光子郎にヤマトくんは困った表情を浮かべた。気持ちは分かる。何かあるか分からないのに一人残すのは危ないし心配にもなる。ましてや弟のいる彼なら自分より年が下の仲間を気に掛けてしまうのも無理はない。先へ進みたいけれどここに一人置いて行くわけにはいかないという葛藤がこちらにもひしひしと伝わっている。
そんな彼の気持ちも今の光子郎は気付いていないのだろうと思うと、彼の心配が空回りをしている感じがして何だが悲しい気持ちになってしまった。わたしは緩く眉を下げながらヤマトくんに振り返る。
『ヤマトくん。光子郎が心配だしわたしも残るよ』
「良いのか…?」
『うん。必ず光子郎も連れて行くから、後で合流しよう』
「……分かった」
渋々といった感じだが納得してくれたようだ。もちろんその間も光子郎は調べごとに夢中だけれど。先へ進む彼らを見送る時にミミちゃんとタケルくんが手を振ってくれたのでゆるりと振り返す。純粋って良いなあ。
しばらくアグモン(黒)と座り込んで工場内を見渡していると、光子郎が何かを見つけたらしく、小さくあっと声を上げたのが聞こえた。
「あれ、こんなところにドアが…」
『入ってみる?』
「はい」
立ち上がり光子郎と共に慎重に扉を開けて中へ入ると、そこは様々な色で書かれた不思議な文字が壁一面を埋め尽くしている。電池に扉があるのにも驚いたが、中身が空洞であることにも大層驚いた。
「これ、何でっか」
「コンピューターのプログラムだ…」
光子郎がテントモンの問いに答える呟きとともに壁の文字をなぞると、ぷつんと電気が消えて薄暗くなる。扉を開けて部屋の外を確認してみるが、どうやら工場内の電気が落とされているようだった。機械の稼働音も聞こえず完全にこの工場は静寂に包まれたらしい。
『これは完全に落ちたね』
「碧〜、オレのこと見つけられる〜?」
後ろの方からアグモン(黒)に呼ばれて振り向くが、停電して真っ暗になった部屋ではどうにも見つけにくい。この状況でさえ楽しむアグモン(黒)に頬が緩むのを感じながら手を伸ばす。
『はは、保護色になって見えづらいよ』
そうは言いつつしっかりと頭を撫でると、それが嬉しかったのかえへへと笑いながら抱き着いてきた。
「何で分かったの?」
『だって君の瞳、とても綺麗だしね』
そう言ってやると彼はわたしの名前を呼んで頭を擦り付けてくる。これではピヨモンのことを甘えん坊だなんて言ってられないなあと密かに苦笑していれば一連の様子を見ていたであろうテントモンが暗闇の中から姿を現した。
「あんさんらのイチャコラっぷりに驚きですわ」
『ふはっ。言い回しが若干古いよね、君』
デジモンもイチャコラって使うんだ、と妙な関心を覚えたが関西弁で話すデジモンがいるのだから今更なのだろう。
わたしたちがそんなやり取りをしている中でうーんと唸る声が微かに聞こえる。停電してしまった原因を光子郎がその持前の頭脳で究明しているのだ。工場内の全ての機能が停止していることも分かったので部屋の中へ戻り、顎に手を置いて考えている光子郎の隣に立つ。
「プログラムを間違って消しちゃったせいかな」
「どうでっしゃろ。……ああ、せや。消したとこ直せば分かるんちゃいますか?」
「それもそうだ」
そうなんだ。なぞっただけで消えるプログラムにも吃驚だけれど、消えた壁のプログラムってそんな簡単に直せるものなのだろうか。
そんなことを疑問に思っていると、光子郎がどこからかマジックペンを取り出して消してしまったところを書き直す。その直後にけたたましい機械の稼働音が聞こえ部屋の中も明るくなる。どうやら今まで停電していた電気が復旧したようだった。
『マジックペンで復旧するって、どういう仕組み…?』
明るくなるや光子郎は床に座り込んでパソコンを起動した。
その向かい側にわたしも座る。
「それにしても不思議だ」
「何がでっか?」
光子郎の独り言にも思える呟きにテントモンが尋ねる。
「電池は金属と溶液の化学反応によって電気を起こすんだ。でもこれは違う。この壁に書かれてあるプログラム、それ自体が電気を起こしている」
「うーん。なんや難しそうな話でんなあ」
『つまり、ここでは電気の起こし方が他とは違うってことじゃないかな』
「碧も頭良いなあ」
『いや、こういった分野は光子郎に劣るよ』
小学3年生が溶液とかプログラムとか当たり前のように持っている知識ではないと思うのだけれど、光子郎は将来が楽しみだ。
まあ確かに文字によって発電しているのには疑問を持たざるを得ないが。
「そうだ!」
「今度は何しはるんです?」
「このプラグラムを分析してみるのさ! やっと僕のパソコンの出番ってわけさ!」
そんなに嬉しかったのだろう。光子郎の瞳はきらきらと輝いていた。
「光子郎はんの顔、なんや今までにないくらい生き生きしてまんな」
「そうかい?」
「はいな」
テントモンも光子郎の表情の変化に気が付いたらしい。
そういえば、最初にクワガーモンから逃げて崖から川へ落ちる時は「光子郎」と呼び捨てにしていたような気がしたが、今は敬称をつけることに落ち着いる。
「どこが楽しいんでっか?」
「暗号や古代文字を解読するのに似た楽しさかな」
『古代文字…?』
本当にこの子は凄い。
「ふーん。解読する楽しさねえ。…んで、解読して何かええことあるんでっか?」
「もしかすると、謎が解けるかもしれないよ。この世界がどういう世界で、君たちが何者かとか」
「ここがどこで自分が何者かなんて、うちさっぱり興味おまへんなあ」
「そう?」
そっか。今までそんなことを考えなくても関係なく生きていけたんだもんね。
内容もシンプルなようで難しいし、考えるだけ無駄って感じなのかな、彼らにとっては。
「光子郎はんは自分が何者かなんて、興味ありまっか?」
「僕は……」
テントモンの何気ない問いに、光子郎は何かを考え始めていて視線が定まらなくなっていく。
今の光子郎に、その質問はまだ駄目だ。