名字固定【篠崎】
灼熱!バードラモン!
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「皆…!逃げろー!」
太一くんの叫びにも似た呼びかけに、ただ山が燃え広がっているのを見ているだけだったわたしたちは行動を始めた。この小さい村では逃げることが難しいが、そういえばと池にあった大きな廃船を思い出す。水が干上がっていたから今ならば容易に逃げ込めるはずだ。この事態にパニックを起こして泣き出してしまったピョコモンたちを抱えて一気に走り出す。
『皆、こっちの船へ!』
先頭を務めてピョコモンたちを船の中へ誘導する。甲板へ辿り着いたところで全員が避難できるように上手くスペースを取っていき、最後に同じく誘導をしてくれていた子供たちも一人また一人を船に上がってきた。
「メラモン、どうしちゃったのかな」
「だいじょうぶかな」
「どうしよう」
『大丈夫。君たちが焦る必要はないよ』
不安げにそう口々にする彼らを宥めるために言ったがそんなものは気休め程度にしかならず、実際は対策なんて全く考えていない。どうしたものか、そう考えていると太一くんとヤマトくんが声を張り上げているのが耳を掠めた。
「空どうした!」
「戻ってこい、空ぁ!」
何やら不穏な気配を感じて一体何があったのだろうかと崖の方を見上げる。そこには崖の上で先程までピョコモンたちを誘導してくれていたピヨモンがおり、その崖下には己のパートナーを待っていたであろう空ちゃんがいた。
そしてはっと息を呑む。仲間を全員無事に避難させることができて安心したように胸を撫で下ろすピヨモンの後ろ。そこには燃え盛る炎をその身に纏ったメラモンが迫っていたのだ。
「ピヨモン、後ろーっ!」
空ちゃんが悲鳴のような叫びをあげればピヨモンはすぐに反応したが、それも一歩遅くピヨモンはメラモンに殴られ、その勢いで崖を転がり地面へと落ちていった。
「ピヨモンッ」
崖下にいた空ちゃんが落ちてくるピヨモンをしっかりと受け止める。何か会話をしたのちにピヨモンは空ちゃんの腕から這い出て再び飛び立ちメラモンの元へと向かっていく。
「マジカルファイヤー!」
『当たってる。……けど』
攻撃を吸収しているのかのようにメラモンの体はどんどん大きくなっていく。どうやらダメージも与えられていないようで不敵な笑みを浮かべたままメラモンは次の攻撃を待っていた。
「碧、オレも行こうか」
『いや、多分だけど炎系の攻撃は効かないと思う』
「……確かに何だか大きくなってる」
『アグモンは待機。ここにも被害が及ぶ可能性があるから、それに控えてほしい』
「分かった。任せろ」
そう素直にこちらの指示を聞いてくれる彼の瞳には強い光が宿っていた。自分も戦いたいだろうにそれでも冷静にこの状況を見極めて今何をすべきかをしっかり理解している。自分の感情だけで動こうとしないのは彼の誇るべき長所だと、こんな時にもそう考えてしまう自分はきっと彼には敵わないのだろうとひっそり思った。
甲板で待機しているゴマモンとアグモン(黒)以外のデジモンたちはピヨモンの加勢に向かったようである。空ちゃんもいるということで太一くんと光子郎も船を離れて彼らに続いていた。
「バーニングフィスト!」
それまで攻撃をただ受けていただけだったメラモンがついに攻撃する側へと回る。掌から放たれた炎の玉を間近で受けたピヨモンは再び地に落とされてしまった。
「ピヨモン!」
「俺は燃えてるんだぜー!」
他のデジモンたちも技を放ちメラモンへ攻撃するが、多数の攻撃を受けているはずのメラモンは全てを吸収して弱体化するどころかパワーを得たように巨大化していた。このままでは近くにいる空ちゃんが危ないと彼女を見ると、諦めたように項垂れたままぴくりとも動いていなかった。それを視界にいれてしまえばたちまちわたしの中の理解しようのない感情がぐるぐると掻き回されていく。
許せなかったのだと思う。頑張りを何よりも優先して褒めてほしいという己のパートナーが頭をよぎった。わたしたちのためにその身を挺して戦ってくれているデジモンたちに応えなければならないはずだ。ぐるぐると渦巻くソレは恐らく苛立ち。どうして諦めているの。ピヨモンはあんなに頑張っているというのに肝心の彼女はパートナーの、仲間の勇士をこのままその目に焼き付けないつもりだろうか。
まだだ。最後までその目を離してはいけない。
『空ちゃんッ!上を向いて…!』
気付けばわたしは叫んでいた。
『貴方のことが大好きなピヨモンを、信じてあげてッ!』
ピクリ。空ちゃんが動いたのが見える。
「燃えてるぜー!」
「あ、危ない!」
ついにメラモンが崖下にいる皆を襲おうと降りてきた時だった。
「ピヨモンッ」
今まで塞ぎ込むように俯いていた空ちゃんが顔を上げて力強い眼差しをピヨモンに向けた。彼女の諦めない心と何か別の想いを感じたのだろうか。ピヨモンがその翼である腕を大きく広げたのだ。自分が空ちゃんを守る、そう言霊を乗せて。
そしてそんな2人の想いをアグモンやガブモンの時のように温かい光がピヨモンを包んでいた。何度見てもやはりその光は懐かしく、先程まで荒立っていた心がすーっと浄化されていく感覚に陥る。
「ピヨモン進化ー! バードラモン!」
光の中から姿を現したのは、青空とパートナーの想いを背負った不死鳥だった。ピヨモンの頃とは比べ物にならないくらい大きく美しい翼を広げて飛ぶ姿は皆の視線を一手に集めている。目を奪われるとはきっとこのことを言うのだろう。わたしの口からは小さく感嘆の声が漏れていた。
『……綺麗』
「碧のあんな大きな声、初めて聞いたよ」
『ふふ。そうだね』
アグモン(黒)に言われてはたと気付く。そういえば空ちゃんに話しかけたのはさっきの怒声が初めてだった。そのつもりはなかったけれどお説教のようになってしまい、彼女からしたらきっと印象は良くないだろう。やってしまったと今更後悔しても遅いが苦笑いをせずにはいられなかった。でも、それでも空ちゃんにはピヨモンをしっかりと受け止めてほしかったのだ。それがお節介だとしても。
「俺は、メラメラに燃えてるんだぜー!」
羽ばたいたバードラモンが大きく旋回し、それを追いかけるようにメラモンも炎の玉を集中的に放っていた。一方的な攻防戦はこちらの気持ちをはらはらとさせるが、それでも空ちゃんはバードラモンから視線を外そうとはしなかった。他の子たちも期待を込めた声援で声を張り上げている。
「バーニングフィスト!」
「バードラモン!」
「俺は、俺はメラメラに燃えてるぜ!燃えてるぜ!」
流石に燃えすぎなんじゃないかという疑問は口に出さず蓋をした。攻撃の嵐をその身に受けても物ともせずにバードラモンはメラモンへと近づいていく。
「バードラモンッ!頑張って!」
空ちゃんが声を張り上げた。
「メテオウィング!」
まるで一緒に戦ってくれているかのような空ちゃんに応えるようにバードラモンがその美しい翼を広げ、そこから流星の如くメラモンへと攻撃を放つ。流石に吸収できるエネルギーではなかったのだろう。苦しそうに雄叫びをあげながらその体はどんどん小さくなっていき、その背中から黒い影が飛び出したのが見えた。
『あれは、』
爆発して砕け散った見覚えのあるそれは森の上空を飛んでいた黒い歯車だった。何故あれがメラモンの体の中から出てきたのだろうか。新たな謎が浮かび上がってきたが高確率で悪い物であるはずだ。
頭の片隅でそんなことを考えていると、戦いを終えたバードラモンがピヨモンへと戻り空ちゃんのところへ駆け寄っていた。ずっと不安で不安で仕方がないという表情をしていたタケルくんは笑顔を取り戻しており、辺りには彼の嬉しそうな声が響く。
「バードラモンの勝ちだぁ!」
わたしも隣のパートナーと笑い合った。
太一くんの叫びにも似た呼びかけに、ただ山が燃え広がっているのを見ているだけだったわたしたちは行動を始めた。この小さい村では逃げることが難しいが、そういえばと池にあった大きな廃船を思い出す。水が干上がっていたから今ならば容易に逃げ込めるはずだ。この事態にパニックを起こして泣き出してしまったピョコモンたちを抱えて一気に走り出す。
『皆、こっちの船へ!』
先頭を務めてピョコモンたちを船の中へ誘導する。甲板へ辿り着いたところで全員が避難できるように上手くスペースを取っていき、最後に同じく誘導をしてくれていた子供たちも一人また一人を船に上がってきた。
「メラモン、どうしちゃったのかな」
「だいじょうぶかな」
「どうしよう」
『大丈夫。君たちが焦る必要はないよ』
不安げにそう口々にする彼らを宥めるために言ったがそんなものは気休め程度にしかならず、実際は対策なんて全く考えていない。どうしたものか、そう考えていると太一くんとヤマトくんが声を張り上げているのが耳を掠めた。
「空どうした!」
「戻ってこい、空ぁ!」
何やら不穏な気配を感じて一体何があったのだろうかと崖の方を見上げる。そこには崖の上で先程までピョコモンたちを誘導してくれていたピヨモンがおり、その崖下には己のパートナーを待っていたであろう空ちゃんがいた。
そしてはっと息を呑む。仲間を全員無事に避難させることができて安心したように胸を撫で下ろすピヨモンの後ろ。そこには燃え盛る炎をその身に纏ったメラモンが迫っていたのだ。
「ピヨモン、後ろーっ!」
空ちゃんが悲鳴のような叫びをあげればピヨモンはすぐに反応したが、それも一歩遅くピヨモンはメラモンに殴られ、その勢いで崖を転がり地面へと落ちていった。
「ピヨモンッ」
崖下にいた空ちゃんが落ちてくるピヨモンをしっかりと受け止める。何か会話をしたのちにピヨモンは空ちゃんの腕から這い出て再び飛び立ちメラモンの元へと向かっていく。
「マジカルファイヤー!」
『当たってる。……けど』
攻撃を吸収しているのかのようにメラモンの体はどんどん大きくなっていく。どうやらダメージも与えられていないようで不敵な笑みを浮かべたままメラモンは次の攻撃を待っていた。
「碧、オレも行こうか」
『いや、多分だけど炎系の攻撃は効かないと思う』
「……確かに何だか大きくなってる」
『アグモンは待機。ここにも被害が及ぶ可能性があるから、それに控えてほしい』
「分かった。任せろ」
そう素直にこちらの指示を聞いてくれる彼の瞳には強い光が宿っていた。自分も戦いたいだろうにそれでも冷静にこの状況を見極めて今何をすべきかをしっかり理解している。自分の感情だけで動こうとしないのは彼の誇るべき長所だと、こんな時にもそう考えてしまう自分はきっと彼には敵わないのだろうとひっそり思った。
甲板で待機しているゴマモンとアグモン(黒)以外のデジモンたちはピヨモンの加勢に向かったようである。空ちゃんもいるということで太一くんと光子郎も船を離れて彼らに続いていた。
「バーニングフィスト!」
それまで攻撃をただ受けていただけだったメラモンがついに攻撃する側へと回る。掌から放たれた炎の玉を間近で受けたピヨモンは再び地に落とされてしまった。
「ピヨモン!」
「俺は燃えてるんだぜー!」
他のデジモンたちも技を放ちメラモンへ攻撃するが、多数の攻撃を受けているはずのメラモンは全てを吸収して弱体化するどころかパワーを得たように巨大化していた。このままでは近くにいる空ちゃんが危ないと彼女を見ると、諦めたように項垂れたままぴくりとも動いていなかった。それを視界にいれてしまえばたちまちわたしの中の理解しようのない感情がぐるぐると掻き回されていく。
許せなかったのだと思う。頑張りを何よりも優先して褒めてほしいという己のパートナーが頭をよぎった。わたしたちのためにその身を挺して戦ってくれているデジモンたちに応えなければならないはずだ。ぐるぐると渦巻くソレは恐らく苛立ち。どうして諦めているの。ピヨモンはあんなに頑張っているというのに肝心の彼女はパートナーの、仲間の勇士をこのままその目に焼き付けないつもりだろうか。
まだだ。最後までその目を離してはいけない。
『空ちゃんッ!上を向いて…!』
気付けばわたしは叫んでいた。
『貴方のことが大好きなピヨモンを、信じてあげてッ!』
ピクリ。空ちゃんが動いたのが見える。
「燃えてるぜー!」
「あ、危ない!」
ついにメラモンが崖下にいる皆を襲おうと降りてきた時だった。
「ピヨモンッ」
今まで塞ぎ込むように俯いていた空ちゃんが顔を上げて力強い眼差しをピヨモンに向けた。彼女の諦めない心と何か別の想いを感じたのだろうか。ピヨモンがその翼である腕を大きく広げたのだ。自分が空ちゃんを守る、そう言霊を乗せて。
そしてそんな2人の想いをアグモンやガブモンの時のように温かい光がピヨモンを包んでいた。何度見てもやはりその光は懐かしく、先程まで荒立っていた心がすーっと浄化されていく感覚に陥る。
「ピヨモン進化ー! バードラモン!」
光の中から姿を現したのは、青空とパートナーの想いを背負った不死鳥だった。ピヨモンの頃とは比べ物にならないくらい大きく美しい翼を広げて飛ぶ姿は皆の視線を一手に集めている。目を奪われるとはきっとこのことを言うのだろう。わたしの口からは小さく感嘆の声が漏れていた。
『……綺麗』
「碧のあんな大きな声、初めて聞いたよ」
『ふふ。そうだね』
アグモン(黒)に言われてはたと気付く。そういえば空ちゃんに話しかけたのはさっきの怒声が初めてだった。そのつもりはなかったけれどお説教のようになってしまい、彼女からしたらきっと印象は良くないだろう。やってしまったと今更後悔しても遅いが苦笑いをせずにはいられなかった。でも、それでも空ちゃんにはピヨモンをしっかりと受け止めてほしかったのだ。それがお節介だとしても。
「俺は、メラメラに燃えてるんだぜー!」
羽ばたいたバードラモンが大きく旋回し、それを追いかけるようにメラモンも炎の玉を集中的に放っていた。一方的な攻防戦はこちらの気持ちをはらはらとさせるが、それでも空ちゃんはバードラモンから視線を外そうとはしなかった。他の子たちも期待を込めた声援で声を張り上げている。
「バーニングフィスト!」
「バードラモン!」
「俺は、俺はメラメラに燃えてるぜ!燃えてるぜ!」
流石に燃えすぎなんじゃないかという疑問は口に出さず蓋をした。攻撃の嵐をその身に受けても物ともせずにバードラモンはメラモンへと近づいていく。
「バードラモンッ!頑張って!」
空ちゃんが声を張り上げた。
「メテオウィング!」
まるで一緒に戦ってくれているかのような空ちゃんに応えるようにバードラモンがその美しい翼を広げ、そこから流星の如くメラモンへと攻撃を放つ。流石に吸収できるエネルギーではなかったのだろう。苦しそうに雄叫びをあげながらその体はどんどん小さくなっていき、その背中から黒い影が飛び出したのが見えた。
『あれは、』
爆発して砕け散った見覚えのあるそれは森の上空を飛んでいた黒い歯車だった。何故あれがメラモンの体の中から出てきたのだろうか。新たな謎が浮かび上がってきたが高確率で悪い物であるはずだ。
頭の片隅でそんなことを考えていると、戦いを終えたバードラモンがピヨモンへと戻り空ちゃんのところへ駆け寄っていた。ずっと不安で不安で仕方がないという表情をしていたタケルくんは笑顔を取り戻しており、辺りには彼の嬉しそうな声が響く。
「バードラモンの勝ちだぁ!」
わたしも隣のパートナーと笑い合った。