名字固定【篠崎】
灼熱!バードラモン!
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「ここは一体どこでしょー!じゃーん!」
声高々に一行の真ん中に立つミミちゃんの手には方位磁針が握られていた。砂漠地帯で進行方向が定まらない為、サバイバル用品が詰められたバッグの中から役に立つかもと取り出したらしい。針が安定するようにしゃがんで方向を見る彼女に合わせて皆で囲む。
しかし、ミミちゃんや他の子たちの期待を裏切るように針は勢いをつけて激しく回り、本体に引き寄せられるようにして砂もどんどんくっついていく。これでは方角も何も確認できるものではないし砂漠地帯では使い物になりそうもなかった。
「やーん!なにこれ~!」
『あらら』
「砂みたいに見えるけど、これよく見たら鉄の粉だ。磁石にくっつきますよ」
地面の砂を手に取って検分していた光子郎がそう結論付けた。彼に倣ってわたしも砂を見るが確かに鉄のようだった。砂さえも疑っていく光子郎の観察眼には思わず感嘆の声が漏れる。
「やっぱりあたしたち、とんでもない所に来ちゃったのかしら」
キャンプに来ただけなのに気が付いたらこんな所へ。本来であれば友人たちと遊んだりバーベキューをしたりするはずだったのだ。それらを思い出して空ちゃんは宙を仰いだ。
「それよりも暑いですね。早く水を確保した方が良いんじゃないですか?」
「うーん。確かにな」
煌々と照り付ける太陽はじりじりと暑さをもってわたしたちを追い詰める。着ていたポンチョを脱いで少しでも体の内側に籠る熱を外へ排出し体感温度を下げていく。あまり汗をかかない体質に感謝する。お風呂か水でも良いから何処かで浴びれたら良いなあ、と暑さで溶けそうな思考で考える。
せっかく用意した方位磁石もここでは役に立たないと、ミミちゃんは急に立ち上がると天に向かって叫んだ。
「うわあああん!ここは一体どこなのー!?」
『ふふ。いつかの丈みたいだね』
ミミちゃんの渾身の叫びは最初の頃の丈を思い出させてくれて、それに思わず笑うと彼にバレてしまいじとりと睨まれた。
方位磁針がないのならいつまでもここで立ち止まるのは野暮、ということで再び歩き始めるが一向に景色が変わる様子はない。どこを見渡しても視界に映るのは砂、砂、砂。
「うわあ、暑い」
「やっぱり森の中にいた方が良かったんだよ」
「このままじゃ、全員干上がっちまうな」
やはり皆辛そうだ。熱中症とかで倒れなければ良いのだけれど日陰もないこんな場所では対策のしようもない。中でも海洋系のデジモンであるゴマモンは特にしんどそうだ。隣で同様にへとへとになっている丈が声を掛ける。
「暑いのか、ゴマモン?」
「氷が欲しい。せめて水…」
丈を見上げる気力もないのかゴマモンが弱々しく答えた。暑いのが苦手なのに彼の移動手段は腹ばいになって歩くしかないというのが見ていてこちらも辛くなってくる。
そこで思い出した。わたしが家から冷凍した水とウーロン茶を持ってきていたことを。ここに来るまでに色々なことがあり過ぎて忘れていたが、一晩経ってこの暑さならば氷は溶けているだろうがないよりはましなはずだ。
わたしの前を歩くミミちゃんの隣に行って声を掛ける。
『ミミちゃん。穴をあけるキリとか持っていたりするかな?』
「ええ、あるわよ」
『それ借りても良い?』
「ちょっと待ってて」
この暑い中、鞄に手を突っ込んで探すという労力さえ億劫だろう。申し訳ないと思いつつ待っていると、ミミちゃんが先端の尖った綺麗なキリを取り出してくれた。
「これでしょ?」
『うん。ありがとう』
一度立ち止まってわたしも鞄からペットボトルを取り出す。中は解凍されて水になっていた。ぬるいわけでもなくそこそこに冷たさを保っていることに安堵をして、キリを使いペットボトルのキャップに穴をあけていく。
皆も気になったのかわたしを囲いながら様子を見ている。
『っと、よし。できた』
「それ何を作ってるの~?」
『ふふ。ちょっと見てて』
アグモン(黒)がわたしの作業を不思議そうに首を傾げて見ている。キャップには幾つか穴が開いており、試しにペットボトルを逆さにするとその穴から水が程良い感じに放出されている。我ながらの出来栄えによし、と呟き暑さで気力を失いつつあるゴマモンを呼ぶ。
『ゴマモン、おいで』
「なあに?」
丈の足元にいたゴマモンがこちらへ移動してきたのでペットボトルを彼に向ける。そのまま手に持っているペットボトルをぎゅーっと押し込んでいくと、シャワーのようにゴマモンへ水が降りかかった。簡単な水浴びしかさせてあげられないのが残念であるが近くに水源がないのなら仕方がないだろう。今はこれで我慢してもらうしかなかった。
「ひゃー!きっもちいい!」
きゃっきゃと水を浴びるゴマモンに自然と頬が緩む。見れば彼のパートナーである丈も苦笑いを浮かべつつも安心したように笑っていた。この炎天下の中、腹ばいになって歩くゴマモンは他のデジモンたちよりも体に熱が伝わっていたのだろう。丈はそれをずっと心配していたのも知っている。彼は素直じゃないだけで表情にはよく感情が乗っているのだ。
キャップに数個の穴をあけることによって水の無駄な消費も防ぐことができる上に簡易シャワーが完成する。これもミミちゃんがサバイバル用品を持ってきてくれていたからこそである。キリを返してお礼を言うと、一連の様子を見ていた彼女も嬉しそうだった。
「ありがとな、碧!」
「僕からもお礼を言うよ。ありがとう、碧くん」
『ふふ。どういたしまして』
他のデジモンたちにも順番に水を与えていき、残った少量の水はキャップを外してぼーっとしている太一くんの髪にえいっと浴びせた。突然のことに吃驚したのか、飛び跳ねてリアクションをする彼にからかうように笑う。
「うぉい!何で俺にかけるんだよ!」
『んー、一番熱中症になりやすそうだったからかな』
「せめて一言くれよ。でもさんきゅ!お陰で涼しくなったぜ」
先程よりは気力を取り戻したようで何よりである。しかしこのまま砂漠地帯が続けばこのやり取りもまた無意味になってしまうかもしれない。そうなる前にどうにかして新しい場所へ出るのが理想である。
『さ、頑張ろうか』
空のペットボトルをバッグにしまって一行は再び歩き出した。
声高々に一行の真ん中に立つミミちゃんの手には方位磁針が握られていた。砂漠地帯で進行方向が定まらない為、サバイバル用品が詰められたバッグの中から役に立つかもと取り出したらしい。針が安定するようにしゃがんで方向を見る彼女に合わせて皆で囲む。
しかし、ミミちゃんや他の子たちの期待を裏切るように針は勢いをつけて激しく回り、本体に引き寄せられるようにして砂もどんどんくっついていく。これでは方角も何も確認できるものではないし砂漠地帯では使い物になりそうもなかった。
「やーん!なにこれ~!」
『あらら』
「砂みたいに見えるけど、これよく見たら鉄の粉だ。磁石にくっつきますよ」
地面の砂を手に取って検分していた光子郎がそう結論付けた。彼に倣ってわたしも砂を見るが確かに鉄のようだった。砂さえも疑っていく光子郎の観察眼には思わず感嘆の声が漏れる。
「やっぱりあたしたち、とんでもない所に来ちゃったのかしら」
キャンプに来ただけなのに気が付いたらこんな所へ。本来であれば友人たちと遊んだりバーベキューをしたりするはずだったのだ。それらを思い出して空ちゃんは宙を仰いだ。
「それよりも暑いですね。早く水を確保した方が良いんじゃないですか?」
「うーん。確かにな」
煌々と照り付ける太陽はじりじりと暑さをもってわたしたちを追い詰める。着ていたポンチョを脱いで少しでも体の内側に籠る熱を外へ排出し体感温度を下げていく。あまり汗をかかない体質に感謝する。お風呂か水でも良いから何処かで浴びれたら良いなあ、と暑さで溶けそうな思考で考える。
せっかく用意した方位磁石もここでは役に立たないと、ミミちゃんは急に立ち上がると天に向かって叫んだ。
「うわあああん!ここは一体どこなのー!?」
『ふふ。いつかの丈みたいだね』
ミミちゃんの渾身の叫びは最初の頃の丈を思い出させてくれて、それに思わず笑うと彼にバレてしまいじとりと睨まれた。
方位磁針がないのならいつまでもここで立ち止まるのは野暮、ということで再び歩き始めるが一向に景色が変わる様子はない。どこを見渡しても視界に映るのは砂、砂、砂。
「うわあ、暑い」
「やっぱり森の中にいた方が良かったんだよ」
「このままじゃ、全員干上がっちまうな」
やはり皆辛そうだ。熱中症とかで倒れなければ良いのだけれど日陰もないこんな場所では対策のしようもない。中でも海洋系のデジモンであるゴマモンは特にしんどそうだ。隣で同様にへとへとになっている丈が声を掛ける。
「暑いのか、ゴマモン?」
「氷が欲しい。せめて水…」
丈を見上げる気力もないのかゴマモンが弱々しく答えた。暑いのが苦手なのに彼の移動手段は腹ばいになって歩くしかないというのが見ていてこちらも辛くなってくる。
そこで思い出した。わたしが家から冷凍した水とウーロン茶を持ってきていたことを。ここに来るまでに色々なことがあり過ぎて忘れていたが、一晩経ってこの暑さならば氷は溶けているだろうがないよりはましなはずだ。
わたしの前を歩くミミちゃんの隣に行って声を掛ける。
『ミミちゃん。穴をあけるキリとか持っていたりするかな?』
「ええ、あるわよ」
『それ借りても良い?』
「ちょっと待ってて」
この暑い中、鞄に手を突っ込んで探すという労力さえ億劫だろう。申し訳ないと思いつつ待っていると、ミミちゃんが先端の尖った綺麗なキリを取り出してくれた。
「これでしょ?」
『うん。ありがとう』
一度立ち止まってわたしも鞄からペットボトルを取り出す。中は解凍されて水になっていた。ぬるいわけでもなくそこそこに冷たさを保っていることに安堵をして、キリを使いペットボトルのキャップに穴をあけていく。
皆も気になったのかわたしを囲いながら様子を見ている。
『っと、よし。できた』
「それ何を作ってるの~?」
『ふふ。ちょっと見てて』
アグモン(黒)がわたしの作業を不思議そうに首を傾げて見ている。キャップには幾つか穴が開いており、試しにペットボトルを逆さにするとその穴から水が程良い感じに放出されている。我ながらの出来栄えによし、と呟き暑さで気力を失いつつあるゴマモンを呼ぶ。
『ゴマモン、おいで』
「なあに?」
丈の足元にいたゴマモンがこちらへ移動してきたのでペットボトルを彼に向ける。そのまま手に持っているペットボトルをぎゅーっと押し込んでいくと、シャワーのようにゴマモンへ水が降りかかった。簡単な水浴びしかさせてあげられないのが残念であるが近くに水源がないのなら仕方がないだろう。今はこれで我慢してもらうしかなかった。
「ひゃー!きっもちいい!」
きゃっきゃと水を浴びるゴマモンに自然と頬が緩む。見れば彼のパートナーである丈も苦笑いを浮かべつつも安心したように笑っていた。この炎天下の中、腹ばいになって歩くゴマモンは他のデジモンたちよりも体に熱が伝わっていたのだろう。丈はそれをずっと心配していたのも知っている。彼は素直じゃないだけで表情にはよく感情が乗っているのだ。
キャップに数個の穴をあけることによって水の無駄な消費も防ぐことができる上に簡易シャワーが完成する。これもミミちゃんがサバイバル用品を持ってきてくれていたからこそである。キリを返してお礼を言うと、一連の様子を見ていた彼女も嬉しそうだった。
「ありがとな、碧!」
「僕からもお礼を言うよ。ありがとう、碧くん」
『ふふ。どういたしまして』
他のデジモンたちにも順番に水を与えていき、残った少量の水はキャップを外してぼーっとしている太一くんの髪にえいっと浴びせた。突然のことに吃驚したのか、飛び跳ねてリアクションをする彼にからかうように笑う。
「うぉい!何で俺にかけるんだよ!」
『んー、一番熱中症になりやすそうだったからかな』
「せめて一言くれよ。でもさんきゅ!お陰で涼しくなったぜ」
先程よりは気力を取り戻したようで何よりである。しかしこのまま砂漠地帯が続けばこのやり取りもまた無意味になってしまうかもしれない。そうなる前にどうにかして新しい場所へ出るのが理想である。
『さ、頑張ろうか』
空のペットボトルをバッグにしまって一行は再び歩き出した。