名字固定【篠崎】
灼熱!バードラモン!
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「んー?」
「何の音だ?」
森の中を歩いていると不意に大きな音が聞こえ、何事かと上空を見上げると黒い物体が凄まじい速さで何処かへ飛んでいくのが確認できた。それに何か不気味な気配を感じで誰に気付かれることなく顔を顰めた。
「歯車みたいだったな」
「空飛ぶ円盤じゃないの?」
「歯車型の隕石だったりして」
「何にしても、良い感じのするものじゃないな」
意見は三者三様だ。ここに来てからというものあり得ない現状が起きているだけにどの意見も否定できない。眼鏡を押し上げながら言う丈に同感である。今のところ良かったと思う出来事はアグモン(黒)たちに出会ったことだけで、その後はここに至るまで不幸の連続だった。皆が肩を落とすのも無理はない。
「うわあっ」
「大丈夫か、タケル」
不意に足場が崩れたらしくタケルくんが足を踏み外して転んでしまったようだがすぐに太一くんが抱き上げる。現在地が森の中というのも相まり、枝やら木葉やらが無造作に落ちているため安定した足場がないのが災いとなってしまったのだろう。
「痛ぁ。けど大丈夫。我慢する」
『我慢しなくて良いんだよ。体にも悪いしね』
「そうよ、痛かったら痛いって言っても良いんだから」
最年少というのを気にしているのか、仲間の足手纏いにはなりたくないというタケルくんの意思を感じる。まだ2年生なのに迷惑はかけまいと我慢し続けていればいつか彼が耐えられなくなってしまいそうだった。わたしがタケルくんと同じ歳の時はこんなに物事を考えるしっかりした子だったろうかと思い浮かべるが、それも彼のパートナーであるパタモンの声に霧散した。
「大丈夫?たけるーっ!」
「あんさんに言われたないなあ」
心配して駆け寄ったパタモンの精神年齢は恐らくタケルくんと同じくらいかそれより幼いのだろう。テントモンが間髪入れずに言えば安心したように皆が笑う。
「さ、行きましょうか」
「そうだ。泣き言言ったって始まらないからな」
「そうは言っても、どっちに行ったら良いかなんて誰にも分らないし」
太一くんが不安そうにそう言う。昨日までは迷いを見せずに前を進み続けていた彼が弱気になるのは非常に珍しい。しかし彼もまた皆と同じく不安なのである。それに蓋をして隠し、一同が持つ負の感情を持ち前の自信に溢れた明るさで払拭するように振舞っていただけで、今のように定期的に弱音を吐き出さないと彼自身も前を向けなくなる。それを彼は無意識のうちにルーチンワークとして行っているのかもしれない。
その天性のカリスマ性をもつ彼の一言は善し悪し関係なく一同の感情を左右する。彼が弱気になれば他の子たちも不安になる。空気はどんより沈み始めていた。
「アタシは空がいてくれれば、それであーんしん」
そんな空気を吹き飛ばすかのようにピヨモンが全幅の信頼をもって空ちゃんに擦り寄る。まるで雛鳥のように見えるその仕草はこちらの擁護欲を掻き立ててくるが空ちゃんはそうではないらしく、眉を八の字にして困ったように後頭部を掻いていた。
「そんなあ。100パーセント安心されちゃっても、困るんだけどな。責任取れないよ?」
「ひゃくぱー?」
「い、良い良い。気にしなくて」
「せきにんとれ?」
「良いってば。気にしないで」
「アタシ、空が喋っていること、いーっぱい知りたい!教えて、ねー?」
「そんなの知らなくて良いよ……」
第三者からすると親子のようで微笑ましいが当事者である空ちゃんは溜息を吐いて呆れていた。普段使っている言葉を一々説明するのはやはり面倒なようで、その場を笑って誤魔化す彼女に若干の同情を込めて苦笑いを浮かべる。ほとんどの人は責任も100%も感覚的に使っているだろうし辞書でも持ってこない限り正確な意味を教えることなど難しいだろう。
そういえばアグモン(黒)も結構甘えん坊さんだったなあ、と隣を歩く彼に目線を移せばわたしの視線に気が付いたようだ。こちらを見るや柔らかく笑う彼にわたしも釣られて一緒に笑う。わたしはピヨモンやアグモン(黒)のような性格の子との相性は良いのだと自負しているが、それは自分があまりにものんびりしていて暢気だからではないだろうか。この二日間で知ったことといえば空ちゃんはわたしと正反対にとてもしっかり者で世話焼きであることだった。
「何じゃれてるんだよ!」
「余裕だな」
「好きでじゃれてるんじゃないわよ!」
再び歩きだした一行の先頭にいるヤマトくんと太一くんが珍しく最後尾にいる空ちゃんをからかう。投げ掛けられた言葉に彼女は不服そうに顔を歪めてすぐに彼らの後を追った。ピヨモンは空ちゃんとなら何をしてても楽しいようでにこにこと笑顔で彼女について歩いている。
「ピヨモンは人懐っこいデジモンなんや」
「なるほど。デジモンによって性格がそれぞれ違うんですね」
前方を歩くテントモンと光子郎の会話を聞いて、デジモンも人間と同じなんだなあと緩く考える。考えることのできる頭脳を持ち、知性があり、感情を表現するための声と言葉もある。限りになく人間に近い彼らはそれでも人間とは程遠い容姿をしており改めて未知で不思議な存在であることを誇張していた。
「あ、森から抜けるぞ!」
最後尾でぼんやり考え事をしていたら先頭を歩いていたヤマトくんの少し安堵の篭った声が聞こえた。皆について行くように前方を見ると、彼の言葉通り生い茂っていた木が徐々に開けていく。
そうして見慣れた森をようやく抜けたかと思うと、目の前に広がっていたのは広大な砂漠だった。先程までは木々のお陰で直射日光を避けていたが、この砂地には電線を繋ぐ電柱が建てられているがそれは遮蔽物にはなりそうもなく、太陽を浴びながら歩き進めるしかないようだ。
「ここ、テレビで見たアフリカのサバンナってとこに似てる」
わたしの前を歩く光子郎が額に滲む汗を拭きながら小さく呟いた。その言葉を先頭にいる太一がしっかりと聞き取り勢いよくこちらを振り向いた。彼の額にもじんわりと汗が滲んでいる。
「ええ!?じゃあ、ライオンとかキリンとか出てきちゃうのか!?」
「さあ。そんな普通の奴だったらまだマシだけどな」
太一くんに対しヤマトくんは冷静に言う。まぁ今まであった敵のデジモンたちに比べたらマシなのだと思うけれど、ライオンは流石に身の危険がある。キリンだって意外に足は速いし凶暴な一面を持っているのだから一概に安全とはいえないだろう。
「ここにはそんな動物いないよ?」
「その通り!ここにはデジモンしかいてまへん」
「デジモンしかいない、か」
ガブモンとテントモンの言葉に太一くんはここに来てから何度目かの落胆をする。ライオンもキリンも知らないとなると、ここはわたしたちの住んでいる世界とは違う世界なのかもしれない。いよいよ異次元という説も否定できなくなってくる。
「光子郎が見たサバンナって、電柱とか建ってたか?」
「いいえ。建ってませんでしたね」
ヤマトくんの問いに光子郎が答えるがもちろんノーである。今まで見てきたテレビ番組、習ってきた授業内容を思い出しても砂漠地帯に電柱など見たことない。ことごとくわたしたちの想像を裏切って斜め上にまでいくこの世界にも少しずつ慣れていきそうであった。すると、今までの会話をずっと聞いていた丈が拳を握って希望を含ませた声を上げる。
「きっと人間がいるんだ!きっとそうに違いない!」
丈はポジティブかつ元気だなあ、と目を細めて緩く笑う。
「ええ?でも海岸の公衆電話とか、湖の電車みたいなことだってあるじゃん」
「いや違う!絶対絶対人間がいるんだって!」
足を止めてまでも力説する丈に他の子たちも足を止めて彼を振り返った。恐らくまだ人間がいると思っているのは丈だけなのでは、という解釈を含ませて口を開く。
『丈。デジモンしかいないって彼らが言ってるんだから、人間なんていないんじゃないの?』
「いーや!絶対にいるね!」
『ふふ。そっかぁ』
いつになく篤くなっている丈に、わたしは小さく頬を緩めた。
「何の音だ?」
森の中を歩いていると不意に大きな音が聞こえ、何事かと上空を見上げると黒い物体が凄まじい速さで何処かへ飛んでいくのが確認できた。それに何か不気味な気配を感じで誰に気付かれることなく顔を顰めた。
「歯車みたいだったな」
「空飛ぶ円盤じゃないの?」
「歯車型の隕石だったりして」
「何にしても、良い感じのするものじゃないな」
意見は三者三様だ。ここに来てからというものあり得ない現状が起きているだけにどの意見も否定できない。眼鏡を押し上げながら言う丈に同感である。今のところ良かったと思う出来事はアグモン(黒)たちに出会ったことだけで、その後はここに至るまで不幸の連続だった。皆が肩を落とすのも無理はない。
「うわあっ」
「大丈夫か、タケル」
不意に足場が崩れたらしくタケルくんが足を踏み外して転んでしまったようだがすぐに太一くんが抱き上げる。現在地が森の中というのも相まり、枝やら木葉やらが無造作に落ちているため安定した足場がないのが災いとなってしまったのだろう。
「痛ぁ。けど大丈夫。我慢する」
『我慢しなくて良いんだよ。体にも悪いしね』
「そうよ、痛かったら痛いって言っても良いんだから」
最年少というのを気にしているのか、仲間の足手纏いにはなりたくないというタケルくんの意思を感じる。まだ2年生なのに迷惑はかけまいと我慢し続けていればいつか彼が耐えられなくなってしまいそうだった。わたしがタケルくんと同じ歳の時はこんなに物事を考えるしっかりした子だったろうかと思い浮かべるが、それも彼のパートナーであるパタモンの声に霧散した。
「大丈夫?たけるーっ!」
「あんさんに言われたないなあ」
心配して駆け寄ったパタモンの精神年齢は恐らくタケルくんと同じくらいかそれより幼いのだろう。テントモンが間髪入れずに言えば安心したように皆が笑う。
「さ、行きましょうか」
「そうだ。泣き言言ったって始まらないからな」
「そうは言っても、どっちに行ったら良いかなんて誰にも分らないし」
太一くんが不安そうにそう言う。昨日までは迷いを見せずに前を進み続けていた彼が弱気になるのは非常に珍しい。しかし彼もまた皆と同じく不安なのである。それに蓋をして隠し、一同が持つ負の感情を持ち前の自信に溢れた明るさで払拭するように振舞っていただけで、今のように定期的に弱音を吐き出さないと彼自身も前を向けなくなる。それを彼は無意識のうちにルーチンワークとして行っているのかもしれない。
その天性のカリスマ性をもつ彼の一言は善し悪し関係なく一同の感情を左右する。彼が弱気になれば他の子たちも不安になる。空気はどんより沈み始めていた。
「アタシは空がいてくれれば、それであーんしん」
そんな空気を吹き飛ばすかのようにピヨモンが全幅の信頼をもって空ちゃんに擦り寄る。まるで雛鳥のように見えるその仕草はこちらの擁護欲を掻き立ててくるが空ちゃんはそうではないらしく、眉を八の字にして困ったように後頭部を掻いていた。
「そんなあ。100パーセント安心されちゃっても、困るんだけどな。責任取れないよ?」
「ひゃくぱー?」
「い、良い良い。気にしなくて」
「せきにんとれ?」
「良いってば。気にしないで」
「アタシ、空が喋っていること、いーっぱい知りたい!教えて、ねー?」
「そんなの知らなくて良いよ……」
第三者からすると親子のようで微笑ましいが当事者である空ちゃんは溜息を吐いて呆れていた。普段使っている言葉を一々説明するのはやはり面倒なようで、その場を笑って誤魔化す彼女に若干の同情を込めて苦笑いを浮かべる。ほとんどの人は責任も100%も感覚的に使っているだろうし辞書でも持ってこない限り正確な意味を教えることなど難しいだろう。
そういえばアグモン(黒)も結構甘えん坊さんだったなあ、と隣を歩く彼に目線を移せばわたしの視線に気が付いたようだ。こちらを見るや柔らかく笑う彼にわたしも釣られて一緒に笑う。わたしはピヨモンやアグモン(黒)のような性格の子との相性は良いのだと自負しているが、それは自分があまりにものんびりしていて暢気だからではないだろうか。この二日間で知ったことといえば空ちゃんはわたしと正反対にとてもしっかり者で世話焼きであることだった。
「何じゃれてるんだよ!」
「余裕だな」
「好きでじゃれてるんじゃないわよ!」
再び歩きだした一行の先頭にいるヤマトくんと太一くんが珍しく最後尾にいる空ちゃんをからかう。投げ掛けられた言葉に彼女は不服そうに顔を歪めてすぐに彼らの後を追った。ピヨモンは空ちゃんとなら何をしてても楽しいようでにこにこと笑顔で彼女について歩いている。
「ピヨモンは人懐っこいデジモンなんや」
「なるほど。デジモンによって性格がそれぞれ違うんですね」
前方を歩くテントモンと光子郎の会話を聞いて、デジモンも人間と同じなんだなあと緩く考える。考えることのできる頭脳を持ち、知性があり、感情を表現するための声と言葉もある。限りになく人間に近い彼らはそれでも人間とは程遠い容姿をしており改めて未知で不思議な存在であることを誇張していた。
「あ、森から抜けるぞ!」
最後尾でぼんやり考え事をしていたら先頭を歩いていたヤマトくんの少し安堵の篭った声が聞こえた。皆について行くように前方を見ると、彼の言葉通り生い茂っていた木が徐々に開けていく。
そうして見慣れた森をようやく抜けたかと思うと、目の前に広がっていたのは広大な砂漠だった。先程までは木々のお陰で直射日光を避けていたが、この砂地には電線を繋ぐ電柱が建てられているがそれは遮蔽物にはなりそうもなく、太陽を浴びながら歩き進めるしかないようだ。
「ここ、テレビで見たアフリカのサバンナってとこに似てる」
わたしの前を歩く光子郎が額に滲む汗を拭きながら小さく呟いた。その言葉を先頭にいる太一がしっかりと聞き取り勢いよくこちらを振り向いた。彼の額にもじんわりと汗が滲んでいる。
「ええ!?じゃあ、ライオンとかキリンとか出てきちゃうのか!?」
「さあ。そんな普通の奴だったらまだマシだけどな」
太一くんに対しヤマトくんは冷静に言う。まぁ今まであった敵のデジモンたちに比べたらマシなのだと思うけれど、ライオンは流石に身の危険がある。キリンだって意外に足は速いし凶暴な一面を持っているのだから一概に安全とはいえないだろう。
「ここにはそんな動物いないよ?」
「その通り!ここにはデジモンしかいてまへん」
「デジモンしかいない、か」
ガブモンとテントモンの言葉に太一くんはここに来てから何度目かの落胆をする。ライオンもキリンも知らないとなると、ここはわたしたちの住んでいる世界とは違う世界なのかもしれない。いよいよ異次元という説も否定できなくなってくる。
「光子郎が見たサバンナって、電柱とか建ってたか?」
「いいえ。建ってませんでしたね」
ヤマトくんの問いに光子郎が答えるがもちろんノーである。今まで見てきたテレビ番組、習ってきた授業内容を思い出しても砂漠地帯に電柱など見たことない。ことごとくわたしたちの想像を裏切って斜め上にまでいくこの世界にも少しずつ慣れていきそうであった。すると、今までの会話をずっと聞いていた丈が拳を握って希望を含ませた声を上げる。
「きっと人間がいるんだ!きっとそうに違いない!」
丈はポジティブかつ元気だなあ、と目を細めて緩く笑う。
「ええ?でも海岸の公衆電話とか、湖の電車みたいなことだってあるじゃん」
「いや違う!絶対絶対人間がいるんだって!」
足を止めてまでも力説する丈に他の子たちも足を止めて彼を振り返った。恐らくまだ人間がいると思っているのは丈だけなのでは、という解釈を含ませて口を開く。
『丈。デジモンしかいないって彼らが言ってるんだから、人間なんていないんじゃないの?』
「いーや!絶対にいるね!」
『ふふ。そっかぁ』
いつになく篤くなっている丈に、わたしは小さく頬を緩めた。