名字固定【篠崎】
蒼き狼!ガルルモン!
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「島が、動いてる~!」
「何だか、シードラモンがこの島を引っ張っているみたいだ!」
光子郎曰く、あのデジモンはシードラモンという名前らしい。どのようにして島を引っ張っているのかは分からないがわたしたちの想像よりも遥かに怪力なのだろう。
そういえば陸地にいたヤマトくんたちは大丈夫なのだろうか、と後ろを振り返ると彼らは驚いた表情でこちらを見ていた。その手には先程まで綺麗な音を奏でていたハーモニカが握られている。もっと聴きたかったなあと暢気に考えていたが今はシードラモンを何とかしなければそれも叶わない。
「そなアホな!シードラモンは殺気を感じん限り、襲ってはきいしまへんで!」
「うわ止まった!」
引っ張られていた島の動きが突如止まった。湖の中央に建てられていた電波塔に島が激突したらしい。体を動かしやすくなったのは良いが島が陸地から離れて孤島になってしまい、わたしたちの逃げ場は失われてしまった。
「あんさんら何か悪いことしよりましたんかいな!?」
「「なんにもしてない!」」
口を揃えて太一くんとアグモンが言った。
「うわあ!」
島が静止したことにより、先程から飛び続けていたテントモンが羽を休めようと赤い葉っぱのようなものに着地した途端、それを拒否するかのように彼は投げ飛ばれてしまった。どうやらその赤い葉っぱはシードラモンの尻尾のようである。
「ああ!あの葉っぱみたいなのは、あいつの尻尾だったのか!」
「やっぱりあんさんらのせいや~!」
太一くんの合点がいった言葉にテントモンが声を震わせながら叫ぶ。さっき跳ねてしまった焚火がシードラモンの尻尾の上に乗ってしまったから怒ったのだろう。偶然が重なってしまっただけでどちらも悪くはない。
『わっ』
しかし一度怒ってしまったシードラモンの怒りは収まらず、その尻尾で島を思いきり叩くと足場が大きく揺れて体勢を維持できずに太一くんたちと共に尻餅をついてしまう。どうやら再び島を引っ張り始めたようだ。
島を揺らすほどの力を持っているのから、あれに当たればわたしたちのような子どもの骨など一発で粉砕できてしまうのではないか。
「奴が怒ってる!」
『随分短気なデジモンだなあ』
「火傷しそうになったら碧も怒るでしょ~?」
『はは、それもそうだね』
島を流されながらアグモン(黒)と暢気な会話をする。丈が傍にいたらまた呆れられそうだ。けれどこういう時こそ普段の自分を見失わないのは大事だという言い訳をしておこう。
「止まった…!」
島がようやく止まり安心したのも束の間、シードラモンが雄叫びを上げてこちらへ襲い掛かってきた。路面電車の中で寝ていた子どもたちもこの騒ぎで起き、何事かと外へ飛び出してきたので現状を説明するとデジモンたちの目つきが変わる。
「皆、行くよー!」
「おっけーい!」
アグモンの掛け声に元気よく答えたのはゴマモン。他のデジモンたちもそれぞれ構え始めた。あまり睡眠は取っていないものの夕飯はバッチリ食べたのでやる気は十分そうである。
隣にいたアグモン(黒)も加勢しに行ってしまった。
「マジカルファイヤー!」
「エアショット!」
「ポイズンアイビー!」
「プチサンダー!」
「ベビーフレイム!」
ピヨモンやパタモン、テントモンとアグモンたちの技はシードラモンに対してあまり効果がないようでさほどダメージは与えていないようだ。パルモンの技もシードラモンの頭があるところまで届くことはなかった。
それを見かねた太一くんがアグモンへ声を掛ける。
「アグモン、進化だ!」
「さっきからやろうとしてるんだけど、できないんだ!」
「何でだよ!」
「だからボクにも分かんないってば!」
「肝心な時に役に立たないやつだな!」
酷い言いようだ。思わず苦笑いを浮かべながら太一くんの肩に両手を置いて宥める。進化ができないのなら仕方がないが、アグモンがグレイモンに進化できないとなるとこの状況は割とピンチなのではないだろうか。クワガーモンやシェルモンの時とは違って十分に戦えるような足場がない。
どうしたものかと思案していると、陸地の方からヤマトくんの声が聞こえた。
「おーい、タケルー!」
見やると彼は弟の身を案じて陸地から泳いで島へ来ようとしている。心配なのは分かるがシードラモンがいる今湖を渡ってくるのは危険すぎて褒められたものではない。
すかさず声に反応したタケルくんとゴマモンが泳いでいるヤマトくんの元へ向かったので、わたしもすぐに追いかけた。
「お兄ちゃーん!うわあ!」
『タケルくん!』
泳いできたヤマトくんを引き上げようと駆け付けたタケルくんだが、シードラモンにより島が揺れて湖へ振り落とされてしまった。
手を伸ばすも間に合わず、夜中ということもあって水中は真っ暗で何も見えない。狼狽するわたしたちの横からゴマモンがタケルくん救出のために湖に飛び込んだ。
「任せて!」
「タケルっ」
不安そうにわたしたちが見守る中、しばらくしてタケルくんを背中に乗せたゴマモンが無事に浮上した。タケルくんも大事はないようで険しい表情をしていたヤマトくんも安心した表情を見せる。
一瞬ヒヤッとしたが本当に良かった。
「良いぞ、ゴマモン!」
一部始終を見ていたらしい丈もゴマモンの活躍で嬉しそうに声を上げる。
「ヤマト、早く!」
「ヤマトー!シードラモンや!」
太一くんとテントモンの声掛けにより一度島へ上がるか迷いを見せたヤマトくんだが、何を思ったのかゴマモンにタケルくんを預けるだけで自分は一向に湖から出ようとはせず、逆に島から離れるように泳ぎ始めた。
一体何をするつもりなのだろうか。
「おい!シードラモン、こっちだ!」
シードラモンの視界に入るよう片手を上げて誘導し始めた。ヤマトくんはシードラモンを島から引き離して子どもたちから距離を取ろうとしているのだろう。泳いで離れるヤマトくんを追ってガブモンも湖へ飛び込んだ。
水の中は人間が動ける場所ではない。今の状況でその判断がどれほど危険なことなのか彼は理解しているのだろうか。
『ヤマトくん、無茶はしないで…!』
「プチファイヤー!」
雄叫びを上げて襲い掛かろうとしたシードラモンにガブモンが口から蒼い炎を放出して攻撃する。他のデジモンよりも至近距離で、しかも不意打ちだったお陰かガブモンの攻撃は効いていた。
「うわあ!」
けれどシードラモンはその長い尻尾で湖の中からガブモンをわたしたちの方へ弾き飛ばしてきた。手も足も出ない、という言葉はこの時のために使うのではないだろうか。
「ガブモン!……なぁっ!?」
ガブモンに気を取られて余所見をした時、ヤマトくんの呻き声が聞こえてそちらを振り向いてが姿が見当たらなかった。どこに行ってしまったのか、想像するのは簡単だ。シードラモンの尻尾に捕まって水中へと引き摺り込まれてしまったのだろう。
『ヤマトくん!』
「ダメです碧さん!」
『離して光子郎!』
「嫌です。離しません!」
黙ってみているわけにはいかずわたしも飛び込もうとするが、寸でのところで光子郎に腕を掴まれて止められる。このままではヤマトくんが窒息してしまう。タケルくんに兄の死を体験させるにはまだ早いのだ。
『離しなさい、光子郎』
「っ…!碧さん。あなた、今どんな顔をしているか分かっているんですか」
『どんな顔って、』
普通に、いつも通りじゃないか。
「何だか、シードラモンがこの島を引っ張っているみたいだ!」
光子郎曰く、あのデジモンはシードラモンという名前らしい。どのようにして島を引っ張っているのかは分からないがわたしたちの想像よりも遥かに怪力なのだろう。
そういえば陸地にいたヤマトくんたちは大丈夫なのだろうか、と後ろを振り返ると彼らは驚いた表情でこちらを見ていた。その手には先程まで綺麗な音を奏でていたハーモニカが握られている。もっと聴きたかったなあと暢気に考えていたが今はシードラモンを何とかしなければそれも叶わない。
「そなアホな!シードラモンは殺気を感じん限り、襲ってはきいしまへんで!」
「うわ止まった!」
引っ張られていた島の動きが突如止まった。湖の中央に建てられていた電波塔に島が激突したらしい。体を動かしやすくなったのは良いが島が陸地から離れて孤島になってしまい、わたしたちの逃げ場は失われてしまった。
「あんさんら何か悪いことしよりましたんかいな!?」
「「なんにもしてない!」」
口を揃えて太一くんとアグモンが言った。
「うわあ!」
島が静止したことにより、先程から飛び続けていたテントモンが羽を休めようと赤い葉っぱのようなものに着地した途端、それを拒否するかのように彼は投げ飛ばれてしまった。どうやらその赤い葉っぱはシードラモンの尻尾のようである。
「ああ!あの葉っぱみたいなのは、あいつの尻尾だったのか!」
「やっぱりあんさんらのせいや~!」
太一くんの合点がいった言葉にテントモンが声を震わせながら叫ぶ。さっき跳ねてしまった焚火がシードラモンの尻尾の上に乗ってしまったから怒ったのだろう。偶然が重なってしまっただけでどちらも悪くはない。
『わっ』
しかし一度怒ってしまったシードラモンの怒りは収まらず、その尻尾で島を思いきり叩くと足場が大きく揺れて体勢を維持できずに太一くんたちと共に尻餅をついてしまう。どうやら再び島を引っ張り始めたようだ。
島を揺らすほどの力を持っているのから、あれに当たればわたしたちのような子どもの骨など一発で粉砕できてしまうのではないか。
「奴が怒ってる!」
『随分短気なデジモンだなあ』
「火傷しそうになったら碧も怒るでしょ~?」
『はは、それもそうだね』
島を流されながらアグモン(黒)と暢気な会話をする。丈が傍にいたらまた呆れられそうだ。けれどこういう時こそ普段の自分を見失わないのは大事だという言い訳をしておこう。
「止まった…!」
島がようやく止まり安心したのも束の間、シードラモンが雄叫びを上げてこちらへ襲い掛かってきた。路面電車の中で寝ていた子どもたちもこの騒ぎで起き、何事かと外へ飛び出してきたので現状を説明するとデジモンたちの目つきが変わる。
「皆、行くよー!」
「おっけーい!」
アグモンの掛け声に元気よく答えたのはゴマモン。他のデジモンたちもそれぞれ構え始めた。あまり睡眠は取っていないものの夕飯はバッチリ食べたのでやる気は十分そうである。
隣にいたアグモン(黒)も加勢しに行ってしまった。
「マジカルファイヤー!」
「エアショット!」
「ポイズンアイビー!」
「プチサンダー!」
「ベビーフレイム!」
ピヨモンやパタモン、テントモンとアグモンたちの技はシードラモンに対してあまり効果がないようでさほどダメージは与えていないようだ。パルモンの技もシードラモンの頭があるところまで届くことはなかった。
それを見かねた太一くんがアグモンへ声を掛ける。
「アグモン、進化だ!」
「さっきからやろうとしてるんだけど、できないんだ!」
「何でだよ!」
「だからボクにも分かんないってば!」
「肝心な時に役に立たないやつだな!」
酷い言いようだ。思わず苦笑いを浮かべながら太一くんの肩に両手を置いて宥める。進化ができないのなら仕方がないが、アグモンがグレイモンに進化できないとなるとこの状況は割とピンチなのではないだろうか。クワガーモンやシェルモンの時とは違って十分に戦えるような足場がない。
どうしたものかと思案していると、陸地の方からヤマトくんの声が聞こえた。
「おーい、タケルー!」
見やると彼は弟の身を案じて陸地から泳いで島へ来ようとしている。心配なのは分かるがシードラモンがいる今湖を渡ってくるのは危険すぎて褒められたものではない。
すかさず声に反応したタケルくんとゴマモンが泳いでいるヤマトくんの元へ向かったので、わたしもすぐに追いかけた。
「お兄ちゃーん!うわあ!」
『タケルくん!』
泳いできたヤマトくんを引き上げようと駆け付けたタケルくんだが、シードラモンにより島が揺れて湖へ振り落とされてしまった。
手を伸ばすも間に合わず、夜中ということもあって水中は真っ暗で何も見えない。狼狽するわたしたちの横からゴマモンがタケルくん救出のために湖に飛び込んだ。
「任せて!」
「タケルっ」
不安そうにわたしたちが見守る中、しばらくしてタケルくんを背中に乗せたゴマモンが無事に浮上した。タケルくんも大事はないようで険しい表情をしていたヤマトくんも安心した表情を見せる。
一瞬ヒヤッとしたが本当に良かった。
「良いぞ、ゴマモン!」
一部始終を見ていたらしい丈もゴマモンの活躍で嬉しそうに声を上げる。
「ヤマト、早く!」
「ヤマトー!シードラモンや!」
太一くんとテントモンの声掛けにより一度島へ上がるか迷いを見せたヤマトくんだが、何を思ったのかゴマモンにタケルくんを預けるだけで自分は一向に湖から出ようとはせず、逆に島から離れるように泳ぎ始めた。
一体何をするつもりなのだろうか。
「おい!シードラモン、こっちだ!」
シードラモンの視界に入るよう片手を上げて誘導し始めた。ヤマトくんはシードラモンを島から引き離して子どもたちから距離を取ろうとしているのだろう。泳いで離れるヤマトくんを追ってガブモンも湖へ飛び込んだ。
水の中は人間が動ける場所ではない。今の状況でその判断がどれほど危険なことなのか彼は理解しているのだろうか。
『ヤマトくん、無茶はしないで…!』
「プチファイヤー!」
雄叫びを上げて襲い掛かろうとしたシードラモンにガブモンが口から蒼い炎を放出して攻撃する。他のデジモンよりも至近距離で、しかも不意打ちだったお陰かガブモンの攻撃は効いていた。
「うわあ!」
けれどシードラモンはその長い尻尾で湖の中からガブモンをわたしたちの方へ弾き飛ばしてきた。手も足も出ない、という言葉はこの時のために使うのではないだろうか。
「ガブモン!……なぁっ!?」
ガブモンに気を取られて余所見をした時、ヤマトくんの呻き声が聞こえてそちらを振り向いてが姿が見当たらなかった。どこに行ってしまったのか、想像するのは簡単だ。シードラモンの尻尾に捕まって水中へと引き摺り込まれてしまったのだろう。
『ヤマトくん!』
「ダメです碧さん!」
『離して光子郎!』
「嫌です。離しません!」
黙ってみているわけにはいかずわたしも飛び込もうとするが、寸でのところで光子郎に腕を掴まれて止められる。このままではヤマトくんが窒息してしまう。タケルくんに兄の死を体験させるにはまだ早いのだ。
『離しなさい、光子郎』
「っ…!碧さん。あなた、今どんな顔をしているか分かっているんですか」
『どんな顔って、』
普通に、いつも通りじゃないか。