名字固定【篠崎】
蒼き狼!ガルルモン!
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「うわ~!綺麗な湖!」
「ここならキャンプに最適ね!」
到着した湖を見て空ちゃんも嬉しそうだ。もちろんわたしは相変わらずで何度見ても湖は真っ黒に見えるし、やはり底面には何か大きな生き物が生息しているのではないかと息が詰まりそうだった。トラウマというのは簡単に払拭できるものではない。
「大丈夫ですか?碧さん」
ボーッと湖を見ていたわたしを覗き込むように光子郎が声を掛けてきた。
『大丈夫だよ、光子郎。この湖はキラキラしていて綺麗だね』
「……そう見えますか?」
本当は嘘。どう足掻いても真っ黒に広がる湖にしか見えない。けれど、いつまでも弱音ばかり吐いているわけにはいかないのだ。
生憎と嘘は得意だ。彼には申し訳ないと思いつつ、自分自身も一緒に騙すために言葉を吐き出した。
『もちろん。日本の湖とはとても似つかないよ。光子郎は違うの?』
「いえ、そうではありません。ただ、」
『ただ?』
「碧さんが無理をしているのではないかと思いまして」
まあ、今まで海や川で怯えていた人間が急に湖が綺麗だ、なんて言い出したらそりゃ不審を抱いてしまうか。例えそうだとしてもあまり他の子どもたちに気付かれたくないのだ。
きっと心優しい子どもたちのこと、わたしが海は苦手で怖いと思っていると分かったら心配もするし気遣ってくれるだろう。でもその心配がわたしにはあまりにも荷が重すぎる。
嘘はいずれバレると分かっていても嘘を吐かない理由にはならない。
『ここに来ていきなり川に落とされるし海で襲われてきたんだ。流石に慣れるよ』
「しかし」
『光子郎』
「……すみません」
少々お節介が過ぎました、とだけ残してわたしから離れていった。
違うんだ。違うんだよ光子郎。君の言葉は本当に身に染みている。感謝しかないんだ。こんな不安定なわたしをいつも気遣って助けてくれてありがとう。けれど、いつまでも頼ってばかりではいられない。
この旅が長く続くのであればいつまでも今までのように甘えてはいられない。わたしと光子郎の2人だけ、という世界ではない。他の子どもたちもいる限り弱音は吐けないし、この機会にわたしも成長しなければいけないのだ。
そう思ってはいるけれど光子郎の心配を無碍にしたのは辛かった。
『はぁ』
「落ち込むくらいなら嘘を吐かなきゃ良いのに」
隣にいたアグモン(黒)がわたしに言った。
その体は黒いけれど、湖とはかけ離れた黒色でわたしにとってはどこか懐かしく安心できる色だった。何色にも染まらない彼だけの色だからそう思っているだけかもしれないが、それでも良かった。
『バレてたんだ?』
「オレに嘘は通用しないからね」
『へぇ、頼もしいなあ』
「ただし、碧専用だけど」
『ふふ。なんだそりゃ』
砕けたように言うけれど、アグモン(黒)には絶対に嘘を吐かないと心に決めた。名前しか知らないわたしを気が遠くなるくらい待ち続けた彼に吐く嘘を、わたしは持ち合わせていなかったのだ。
「行ってみようぜ!」
皆との会話から離れていると、急に子供たちが少し離れたところの島にある謎の路面電車へ向かって走っていた。
なぜここに路面電車なのか。疑問に思うけれど砂浜に電話ボックスという事例もあるので何でもありなのだろう。ミスマッチで違和感だらけのことはきっとこれからもあるに違いない。
「碧も行ってみる?」
『そうだね。雨風を凌げる場所になるだろうし』
子どもたちを追いかけてわたしたちも路面電車へと向かった。
「誰もいない」
「本当!」
急に点灯した路面電車に反し、中には人間はもちろんのことデジモンの気配さえなかった。ここだけ見れば至って何も変わらない普通の電車である。
光子郎やミミちゃんが座席に座ってその座り心地を確かめている。埃一つ積もっていないそこは新品以外の何物でもなくしっかりと清潔感が保たれていた。
「まだ新しいですね」
「ちゃんとクッション効いてる!」
『良かったね、ミミちゃん』
「ええ!」
にしても電車にしては弾力のあるクッションだ。しっかりと体を支えてくれる素材なのでここで寝てもさほど体は傷めないだろうと思う。
初日の野宿がいきなり地面なら体も休まらずコンディションは最低。気分も上がらず出鼻を挫かれていたかもしれないから謎の路面電車には感謝しなくてはいけない。
「しかし分かんねえなあ。この間の海辺の電話といいどうなってんだ?」
「まさか勝手に動き出すとか……」
「そんなことないだろう。線路なんてないんだから」
いや、しかし。電話ボックスからあり得ないような情報が流れてきたということもあったから、もしかしたらこの電車だってあり得ないようなことが起こるかもしれない。
それこそ、線路がないのに動き出したりとか。……いややめよう。変なことは考えない方がこの身の為である。
「この中なら眠れそうね」
「その前に、そろそろ飯にしまへんか」
テントモンの一言で、わたしたちは夕飯の準備を始めることにした。
「ここならキャンプに最適ね!」
到着した湖を見て空ちゃんも嬉しそうだ。もちろんわたしは相変わらずで何度見ても湖は真っ黒に見えるし、やはり底面には何か大きな生き物が生息しているのではないかと息が詰まりそうだった。トラウマというのは簡単に払拭できるものではない。
「大丈夫ですか?碧さん」
ボーッと湖を見ていたわたしを覗き込むように光子郎が声を掛けてきた。
『大丈夫だよ、光子郎。この湖はキラキラしていて綺麗だね』
「……そう見えますか?」
本当は嘘。どう足掻いても真っ黒に広がる湖にしか見えない。けれど、いつまでも弱音ばかり吐いているわけにはいかないのだ。
生憎と嘘は得意だ。彼には申し訳ないと思いつつ、自分自身も一緒に騙すために言葉を吐き出した。
『もちろん。日本の湖とはとても似つかないよ。光子郎は違うの?』
「いえ、そうではありません。ただ、」
『ただ?』
「碧さんが無理をしているのではないかと思いまして」
まあ、今まで海や川で怯えていた人間が急に湖が綺麗だ、なんて言い出したらそりゃ不審を抱いてしまうか。例えそうだとしてもあまり他の子どもたちに気付かれたくないのだ。
きっと心優しい子どもたちのこと、わたしが海は苦手で怖いと思っていると分かったら心配もするし気遣ってくれるだろう。でもその心配がわたしにはあまりにも荷が重すぎる。
嘘はいずれバレると分かっていても嘘を吐かない理由にはならない。
『ここに来ていきなり川に落とされるし海で襲われてきたんだ。流石に慣れるよ』
「しかし」
『光子郎』
「……すみません」
少々お節介が過ぎました、とだけ残してわたしから離れていった。
違うんだ。違うんだよ光子郎。君の言葉は本当に身に染みている。感謝しかないんだ。こんな不安定なわたしをいつも気遣って助けてくれてありがとう。けれど、いつまでも頼ってばかりではいられない。
この旅が長く続くのであればいつまでも今までのように甘えてはいられない。わたしと光子郎の2人だけ、という世界ではない。他の子どもたちもいる限り弱音は吐けないし、この機会にわたしも成長しなければいけないのだ。
そう思ってはいるけれど光子郎の心配を無碍にしたのは辛かった。
『はぁ』
「落ち込むくらいなら嘘を吐かなきゃ良いのに」
隣にいたアグモン(黒)がわたしに言った。
その体は黒いけれど、湖とはかけ離れた黒色でわたしにとってはどこか懐かしく安心できる色だった。何色にも染まらない彼だけの色だからそう思っているだけかもしれないが、それでも良かった。
『バレてたんだ?』
「オレに嘘は通用しないからね」
『へぇ、頼もしいなあ』
「ただし、碧専用だけど」
『ふふ。なんだそりゃ』
砕けたように言うけれど、アグモン(黒)には絶対に嘘を吐かないと心に決めた。名前しか知らないわたしを気が遠くなるくらい待ち続けた彼に吐く嘘を、わたしは持ち合わせていなかったのだ。
「行ってみようぜ!」
皆との会話から離れていると、急に子供たちが少し離れたところの島にある謎の路面電車へ向かって走っていた。
なぜここに路面電車なのか。疑問に思うけれど砂浜に電話ボックスという事例もあるので何でもありなのだろう。ミスマッチで違和感だらけのことはきっとこれからもあるに違いない。
「碧も行ってみる?」
『そうだね。雨風を凌げる場所になるだろうし』
子どもたちを追いかけてわたしたちも路面電車へと向かった。
「誰もいない」
「本当!」
急に点灯した路面電車に反し、中には人間はもちろんのことデジモンの気配さえなかった。ここだけ見れば至って何も変わらない普通の電車である。
光子郎やミミちゃんが座席に座ってその座り心地を確かめている。埃一つ積もっていないそこは新品以外の何物でもなくしっかりと清潔感が保たれていた。
「まだ新しいですね」
「ちゃんとクッション効いてる!」
『良かったね、ミミちゃん』
「ええ!」
にしても電車にしては弾力のあるクッションだ。しっかりと体を支えてくれる素材なのでここで寝てもさほど体は傷めないだろうと思う。
初日の野宿がいきなり地面なら体も休まらずコンディションは最低。気分も上がらず出鼻を挫かれていたかもしれないから謎の路面電車には感謝しなくてはいけない。
「しかし分かんねえなあ。この間の海辺の電話といいどうなってんだ?」
「まさか勝手に動き出すとか……」
「そんなことないだろう。線路なんてないんだから」
いや、しかし。電話ボックスからあり得ないような情報が流れてきたということもあったから、もしかしたらこの電車だってあり得ないようなことが起こるかもしれない。
それこそ、線路がないのに動き出したりとか。……いややめよう。変なことは考えない方がこの身の為である。
「この中なら眠れそうね」
「その前に、そろそろ飯にしまへんか」
テントモンの一言で、わたしたちは夕飯の準備を始めることにした。