名字固定【篠崎】
蒼き狼!ガルルモン!
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わたしたちは今、崖の上で一休みしていた。下には海が広がっていて、一般的にはこういう景色を絶景と呼ぶのだろう。
「アグモン!」
「なぁに、太一ぃ?」
崖の先端で考え事をしていた太一くんがアグモンを呼ぶ。あんなところに立っていたら危ないのではないかとわたしは一人ひやひやしていた。
「お前、何でまたグレイモンからアグモンに戻っちゃったんだよ」
「それは……、」
「それは?」
誰かの息を呑む音がした。
「ボクにもよく分かんないや!」
「えぇ!?」
アグモンの予想外の回答に、太一くんがお約束のようにズッコケて崖から落ちそうになったがアグモンが引っ張り上げて事なきことを得た。
『皆笑っているけど、あれ笑えないよね』
「しぃー」
わたしの呟きに反応したアグモンがジト目で爪を口元に持ってきていた。やはり彼も思うことは一緒のようできっと以前までは苦労性だったのだろうと容易に想像ができる。
そんな太一くんと彼のアグモンのコントに皆が笑っていると、後ろの道から低い唸り声が響いた。何だかサファリパークにいるみたいだなあ、なんて暢気に考えていたがそれもあながち間違ってはいないだろう。
「なんだ、あれは?」
「モノクロモンや。でも大人しいデジモンやさかい、心配せんでもええやろ」
テントモンが落ち着いた様子で説明してくれるが、無情にもモノクロモンはその巨体をどしんどしんと音を立てながらこちらへと迫ってきていた。
「そんなこと言ったって、こっちに向かってくるぞ!?」
「やだぁ!」
ミミちゃんが悲鳴を上げて皆で後退するが、反対側の道からももう1体のモノクロモンが迫って来た。クワガーモンとシェルモンに続き次はモノクロモンとは一難去ってまた一難を地でいっているような気がする。
「もう1匹いる!」
「やばい。挟み撃ちにされた!」
「皆逃げろぉ!」
太一くんの言葉を合図にして岩々の間へ逃げ込んだ。隙間からモノクロモン達を覗き見ると、何かを争うようにその硬そうな皮膚をもってしてぶつかり合っている。
「あいつら、仲間同士で戦ってる!」
『縄張り争いってところかな』
「せや。その通りでっしゃろな」
「今のうちに行きましょ!行きましょ!」
「待ってパルモン!自分だけ先に逃げないでよー!」
先にこの場から離れたパルモンとミミちゃんを追って、わたしたちも森へと逃げる。モノクロモン同士の争いに巻き込まれたらたまったものではない。
後ろではまだモノクロモンが争っていた。
「うわあ!」
「タケル!」
「大丈夫か?」
走っていると、険しい地面に足がもつれたタケルくんが転んでしまう。心配するようにパタモンとヤマトくんが駆け寄って跪く。前を走っていた太一くんも気が付いて一度こちらを振り返った。
「平気だよな、タケル!」
「うん!」
太一くんの掛け声に、ヤマトくんを気に留めないでタケルくんはまた走り出した。
取り残されたヤマトくんの表情はどこか悲しそうである。
『ヤマトくん。わたしたちも行こう』
「あ、ああ」
タケルくんは心配されるよりも先程の太一くんのような、無条件に信頼を寄せてくれる言葉の方が嬉しかったのかもしれない。太一くんにとっては何でもないようなたった一言がタケルくんの心を燻り立ち上がらせたのだ。
反対にヤマトくんは、タケルくんが大事な弟だからこそ心配をした。いくらしっかりした子といえど彼はまだ小学2年生。無責任に放っておけるわけがないのだ。だからヤマトくんの手を振り払い太一くんに付いて行ったタケルくんにどうしようもない寂しさが募ったのだろう。
ヤマトくんの気持ちも分からないでもない。しかし残念だが今構っている暇はないのだ。後ろではまだモノクロモンが争っている音が響いているのだから。
それからどれほど歩き続けたのだろうか。既に周りは暗くなりはじめ、空は綺麗なオレンジ色に焼けていた。東京ではなかなか空を見上げることがないから何だか新鮮な気持ちになる。
「もう疲れた~」
「もう少し頑張れよ、ミミ」
先に根を上げたのはミミちゃんだ。朝からずっと歩いていてはそれも仕方があるまいが、それでも元気なのが太一くんだった。
「足が太くなっちゃう……」
「太い方が良いんだよ、ミミ。その方が体を支えるにも、土を蹴るにも」
「貴方と一緒にしないで」
「そうよ!足っていうのは根っこみたいな方が素敵なの!」
「それも嫌」
ミミちゃんの嘆きに太一くんのアグモンとパルモンが足主張をするが、両方とも却下されていた。確かに足は太い方が体を支えられるかもしれないが女の子は美脚に憧れるものだ。ミミちゃんのような子は特にそういうところは気を遣っているのだろう。
わたしも根っこだけは嫌だなあ。
「それにしても、奇妙な色の夕焼けですね」
「そろそろ日が暮れるみたいね」
光子郎と空ちゃんが今日はどうするか話し合っている。けど、そんなに奇妙な色してるかなあ。わたしは綺麗だと思うんだけれど。
「匂う…。匂いまっせ!真水の匂いや!」
大人しかったテントモンが急に飛び立った。
『真水の匂いとは。アグモンは分かるかい?』
「全然」
『だろうね』
どうやら分かるのはテントモンだけらしい。嗅覚が優れているようで素直に関心するが真水の匂いまで分かるとなるとある種の特技として誇っても良いと思う。
「あー!飲み水確保や!湖、湖でっせ!あそこでキャンプしまへんか!?」
「あたし賛成!もうこれ以上歩けない!」
高い位置に伸びている枝に着地し、そこから見えた湖からテントモンはキャンプを提案した。それに真っ先に便乗したのは本日既に限界を迎えているミミちゃんだった。日も暮れてきたしわたしも今日はここまでだと賛成しておく。
『にしても、テントモンのテンション高いね』
「疲れてるんだよきっと」
何も気にしていない様子でアグモン(黒)が言い放った。なるほど。
「はー!おいら泳ぐ!」
「ゴマモン待てよ!」
湖と聞いて飛び出そうとしたゴマモンを丈が尻尾を捕まえて制した。焦って一人で行っては危ないと判断したのだろう。ヤマトくんも座り込んでいるタケルくんに寄り添ってテントモンの提案に乗った。
「俺も、今日はここまでにした方が良いと思う」
「皆疲れて腹も減ってきたしな」
「よーし。今日はあそこでキャンプだ!」
この世界での初野宿は湖に決定したようだ。
『湖、か…』
わたしは1人、静かに震えていた。
「アグモン!」
「なぁに、太一ぃ?」
崖の先端で考え事をしていた太一くんがアグモンを呼ぶ。あんなところに立っていたら危ないのではないかとわたしは一人ひやひやしていた。
「お前、何でまたグレイモンからアグモンに戻っちゃったんだよ」
「それは……、」
「それは?」
誰かの息を呑む音がした。
「ボクにもよく分かんないや!」
「えぇ!?」
アグモンの予想外の回答に、太一くんがお約束のようにズッコケて崖から落ちそうになったがアグモンが引っ張り上げて事なきことを得た。
『皆笑っているけど、あれ笑えないよね』
「しぃー」
わたしの呟きに反応したアグモンがジト目で爪を口元に持ってきていた。やはり彼も思うことは一緒のようできっと以前までは苦労性だったのだろうと容易に想像ができる。
そんな太一くんと彼のアグモンのコントに皆が笑っていると、後ろの道から低い唸り声が響いた。何だかサファリパークにいるみたいだなあ、なんて暢気に考えていたがそれもあながち間違ってはいないだろう。
「なんだ、あれは?」
「モノクロモンや。でも大人しいデジモンやさかい、心配せんでもええやろ」
テントモンが落ち着いた様子で説明してくれるが、無情にもモノクロモンはその巨体をどしんどしんと音を立てながらこちらへと迫ってきていた。
「そんなこと言ったって、こっちに向かってくるぞ!?」
「やだぁ!」
ミミちゃんが悲鳴を上げて皆で後退するが、反対側の道からももう1体のモノクロモンが迫って来た。クワガーモンとシェルモンに続き次はモノクロモンとは一難去ってまた一難を地でいっているような気がする。
「もう1匹いる!」
「やばい。挟み撃ちにされた!」
「皆逃げろぉ!」
太一くんの言葉を合図にして岩々の間へ逃げ込んだ。隙間からモノクロモン達を覗き見ると、何かを争うようにその硬そうな皮膚をもってしてぶつかり合っている。
「あいつら、仲間同士で戦ってる!」
『縄張り争いってところかな』
「せや。その通りでっしゃろな」
「今のうちに行きましょ!行きましょ!」
「待ってパルモン!自分だけ先に逃げないでよー!」
先にこの場から離れたパルモンとミミちゃんを追って、わたしたちも森へと逃げる。モノクロモン同士の争いに巻き込まれたらたまったものではない。
後ろではまだモノクロモンが争っていた。
「うわあ!」
「タケル!」
「大丈夫か?」
走っていると、険しい地面に足がもつれたタケルくんが転んでしまう。心配するようにパタモンとヤマトくんが駆け寄って跪く。前を走っていた太一くんも気が付いて一度こちらを振り返った。
「平気だよな、タケル!」
「うん!」
太一くんの掛け声に、ヤマトくんを気に留めないでタケルくんはまた走り出した。
取り残されたヤマトくんの表情はどこか悲しそうである。
『ヤマトくん。わたしたちも行こう』
「あ、ああ」
タケルくんは心配されるよりも先程の太一くんのような、無条件に信頼を寄せてくれる言葉の方が嬉しかったのかもしれない。太一くんにとっては何でもないようなたった一言がタケルくんの心を燻り立ち上がらせたのだ。
反対にヤマトくんは、タケルくんが大事な弟だからこそ心配をした。いくらしっかりした子といえど彼はまだ小学2年生。無責任に放っておけるわけがないのだ。だからヤマトくんの手を振り払い太一くんに付いて行ったタケルくんにどうしようもない寂しさが募ったのだろう。
ヤマトくんの気持ちも分からないでもない。しかし残念だが今構っている暇はないのだ。後ろではまだモノクロモンが争っている音が響いているのだから。
それからどれほど歩き続けたのだろうか。既に周りは暗くなりはじめ、空は綺麗なオレンジ色に焼けていた。東京ではなかなか空を見上げることがないから何だか新鮮な気持ちになる。
「もう疲れた~」
「もう少し頑張れよ、ミミ」
先に根を上げたのはミミちゃんだ。朝からずっと歩いていてはそれも仕方があるまいが、それでも元気なのが太一くんだった。
「足が太くなっちゃう……」
「太い方が良いんだよ、ミミ。その方が体を支えるにも、土を蹴るにも」
「貴方と一緒にしないで」
「そうよ!足っていうのは根っこみたいな方が素敵なの!」
「それも嫌」
ミミちゃんの嘆きに太一くんのアグモンとパルモンが足主張をするが、両方とも却下されていた。確かに足は太い方が体を支えられるかもしれないが女の子は美脚に憧れるものだ。ミミちゃんのような子は特にそういうところは気を遣っているのだろう。
わたしも根っこだけは嫌だなあ。
「それにしても、奇妙な色の夕焼けですね」
「そろそろ日が暮れるみたいね」
光子郎と空ちゃんが今日はどうするか話し合っている。けど、そんなに奇妙な色してるかなあ。わたしは綺麗だと思うんだけれど。
「匂う…。匂いまっせ!真水の匂いや!」
大人しかったテントモンが急に飛び立った。
『真水の匂いとは。アグモンは分かるかい?』
「全然」
『だろうね』
どうやら分かるのはテントモンだけらしい。嗅覚が優れているようで素直に関心するが真水の匂いまで分かるとなるとある種の特技として誇っても良いと思う。
「あー!飲み水確保や!湖、湖でっせ!あそこでキャンプしまへんか!?」
「あたし賛成!もうこれ以上歩けない!」
高い位置に伸びている枝に着地し、そこから見えた湖からテントモンはキャンプを提案した。それに真っ先に便乗したのは本日既に限界を迎えているミミちゃんだった。日も暮れてきたしわたしも今日はここまでだと賛成しておく。
『にしても、テントモンのテンション高いね』
「疲れてるんだよきっと」
何も気にしていない様子でアグモン(黒)が言い放った。なるほど。
「はー!おいら泳ぐ!」
「ゴマモン待てよ!」
湖と聞いて飛び出そうとしたゴマモンを丈が尻尾を捕まえて制した。焦って一人で行っては危ないと判断したのだろう。ヤマトくんも座り込んでいるタケルくんに寄り添ってテントモンの提案に乗った。
「俺も、今日はここまでにした方が良いと思う」
「皆疲れて腹も減ってきたしな」
「よーし。今日はあそこでキャンプだ!」
この世界での初野宿は湖に決定したようだ。
『湖、か…』
わたしは1人、静かに震えていた。