名字固定【篠崎】
爆裂進化!グレイモン!
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『良いかい、アグモン。わたしの左肩のことは秘密にしておいてくれないかい』
「なんで?」
『ヒビも小さいからすぐに治る。それに、今ここで皆を余計不安にさせる訳にはいかないからね』
だから頼むよ。そう静かにお願いすると、納得はしていないようだったが了解してくれた。理由はどうあれわたしの意思を尊重してくれたのが嬉しくてアグモン(黒)の頭をわしゃわしゃと撫でる。
『さて、もう戻ろう。シェルモンだってまだいるんだ』
「頼むから大人しくしていてよ碧」
『はは、善処はするよ』
おどけて笑ってみせると呆れたような表情をされた。
皆のところへ戻ると太一くんは触手のようなものに拘束され、彼のアグモンはシェルモンの手に押さえつけられていた。他の子どもたちは崖付近でへこたれてしまっている。見た感じ怪我はないようだ。
「うわあああ!」
シェルモンが触手のようなものに力を込めて縛り上げ、それに比例するように太一くんの苦しそうな悲鳴が浜辺に響いた。
このままでは危ない、何とかしなくてはと思っているものの他の子どもたちのデジモンたちはぐったりしていて応戦は期待できそうになかった。
『太一くん…!アグモン、シェルモンに攻撃することはできない?』
「さっきから試しているけどできない」
『えっ、どうして』
「お腹……へった」
なるほど。疲れているのは何も人間だけじゃない。むしろクワガーモンと戦った彼らデジモンの方が疲れているのだ。太一くんのアグモンが戦い続けていられたのはお菓子を食べていたからだろう。
気持ちばかりが焦る。このままでは太一くんの命が危ない。しかし助けてあげられるほどの策もなければ力もないのだ。ただ見ていることしかできない自分に奥歯を噛み締めた。
「アグモ…ン!」
「太一ぃ!」
苦しさから逃れたいという思いの込められた太一くんの悲鳴に応えるようにアグモンも叫ぶ。瞬間、2人の魂が共鳴したかのような錯覚に陥った。
太一くんの腰につけている機械が光を放ち、彼のアグモンが神々しい光に包まれる。確かにそれはクワガーモンと戦うときに見た懐かしい感じがする不思議な光だった。
「アグモン進化ー! グレイモン!」
光が収まった先にはオレンジ色の大きな恐竜がそこにいた。
「うわあ!」
今まで抑えていたアグモンがグレイモンに進化したことによりシェルモンは体勢を崩して後方へと倒れ込む。その衝撃により太一くんは宙に投げ出された。丁度こちらの方へと飛んできているが受け止めるには距離があまりにも足りず、ぐるぐると思考を回転させる。
『ここからだと間に合わない……アグモン!』
「えっ、何」
わたしからの突然の呼びかけに戸惑うアグモン(黒)を無視して持ち上げた。状況が分からず手足をばたつかせているが説明をしている暇はない。
円盤投げの要領で思いきり投げ飛ばした。
『そぉれ!』
「わああああ!碧のばかあああ!」
狙いはしっかりと太一くんに定められており我ながらのコントロールに惚れ惚れする。投げ飛ばす方も大変だが飛ばされる側はたまったものじゃないんだろうな、とそんなことを他人事のように思った。
泣きながら叫んでいるがきちんと意図は察したようで、アグモン(黒)は飛ばされながらも体の向きを変えて太一くんをしっかりと受け止めてくれた。ぼふっと音を立てて無事に砂浜へ着地したのを見届ける。
「大丈夫?太一」
「あぁ。それよりお前こそ平気かよ」
「なんとか」
そんなやり取りをしている彼らの元へわたしも急いで向かう。どうやらどちらも怪我なく無事らしかった。投げた張本人ではあるがそのことにこっそりと一人胸を撫で下ろす。
「また進化……グレイモンだって!?」
再び姿が変異したアグモンに太一くんを始めわたしたちは驚きを隠せず息を呑んだ。クワガーモンやシェルモンと同じくらい大きい恐竜に変わり、その姿勢は堂々としている。これも進化、というやつなのだろう。立派で鋭利な二本の角を生やした恐竜であるはずなのに何故だか怖さを全く感じず、逆に頼もしいと思えるほどに安心できている。
進化したグレイモンは大きく吼え、突進してきたシェルモンに掴み掛り受け止めた。どちらも力の強さはほど同等で均衡しているがややシェルモンが押しているようにも見える。
「頑張れ、グレイモン!」
太一くんが精一杯叫ぶ。グレイモンの腕から逃れたシェルモンが反撃といわんばかりに大量の水を放射するがグレイモンは体を横にずらすことで避けた。それに対抗するようにグレイモンも口から大量の炎を噴く。水と炎がぶつかり合う浜辺を水蒸気が覆い視界は悪くなる一方だがどちらも引けを取るまいと力を弱めることはないようだ。
だがその戦いも終盤に差し掛かるにつれてシェルモンが押され始めた。弱まる事のない炎の攻撃にシェルモンの体はどんどん後退していく。足が砂浜へ沈みかけて体勢を崩したその一瞬の隙を見逃さず、グレイモンがシェルモンの懐へと潜り込みその大きな角を振り上げると、重い殻ごと宙へ投げ飛ばした。
『……強さのレベルも段違いだ』
アグモンの頃に比べて体格も力も全てのステータスを遥かに凌駕している。彼らの進化とはこういうことなのだとどこか冷静になっている頭の片隅で理解した。
「メガフレイム!」
身動きができず格好の的になるシェルモンへグレイモンがその体に見合う巨大な火の玉を放つ。まともに喰らったシェルモンは小さな爆発をあげて海の彼方へ吹き飛んでいった。
勝ったのはグレイモンだ。
『……君もグレイモンになるの?』
「さあ」
何となく気になってアグモン(黒)に聞くがどうやら本人にも進化した後の姿がどうなるのかは分からないようだ。
無事に戦いが終わると、グレイモンが淡い光に包まれたのちアグモンに姿が戻っていた。アグモンに進化した後はコロモンに戻らなかったが今回は退化するらしい。どういう仕組みなのかと思ったがもしかしたらグレイモンの姿を保っていられるほどのエネルギーが残っていないのかもしれない。
「アグモン!戻ったんだ……大丈夫か、アグモン?」
「太一ぃ」
「ん?」
「腹、へったぁ」
「は、はは……」
太一くんの乾いた笑いが虚しく聞こえた。
「もしもし、もしもしぃ!」
一騒動を終えた後も壊れた電話に未だ奮闘している丈はそっとしておき、他の皆でこれからについて話し合いを始める。
「ここにいる理由はなくなったな」
「ああ」
電話はシェルモンの攻撃により壊れてしまったし、当初の目的でもあった着信を待つということはもうできない。太一くんの発言にヤマトくんも首を縦に振って答えた。
「さあ、どんどん食べてねー」
空ちゃんがデジモンたちにお菓子を分け与えている。進化して戦うのには膨大なエネルギーを消費しているということは今回の一件で分かったこと。
わたしたち人間はどう足掻いても太刀打ちできないので非常時には己のデジモンたちを頼ることになってしまう。その時の為にもなるべく空腹は満たしておきたいということで人間もデジモンも関係なく皆揃って食事をしようという結論に至った。
「シェルモンも完全に倒したわけではありません。また襲ってくる前に、ここから離れた方が良いと思います」
「確かにな」
光子郎の意見にヤマトくんが同意する。
「だったら、やっぱりあの森に戻ろうよ。僕らが最初にやってきた森だよ。あそこで助けを待とう!」
話を聞いていたのかいないのか、いつの間にか戻ってきていた丈が当初と変わらない意見を提案する。やはりここに人間はいないのではなはないか、とも思ったが丈はまだ望みを捨てきれていないらしいので口には出さずに苦い笑みを零した。
「前にも言ったけど、私たちは崖から落ちて川を下ったのよ?そう簡単には戻れないわ!」
「クワガーモンは嫌!」
空ちゃんとミミちゃんが強気に反論した。凄い剣幕で丈の意見を否定する彼女らに丈はたじたじである。感情に身を任せて怒鳴り合うのはいただけないかな、とわたしが3人を宥めようとしたところで横から光子郎が口を開いた。
「ここに電話ボックスがあったということは、誰か設置した人間がいるはずです。その人間を探した方が良いかもしれません」
「なるほど……」
丈へ若干のフォローを入れた光子郎の意見に反対する者は誰一人としていなかった。皆の言い分を上手く合わせた意見にわたしは心の中で静かに拍手を送る。
流石は光子郎だ。
「よし、それで行こう!」
「ボクは太一の行くところだったらどこにでも行くよ」
「ありがとよ、アグモン」
太一くんと一緒にいれることが余程嬉しいのだろう。アグモンが無垢な笑顔でそう言うと太一くんも応えるように笑い掛けた。
「じゃ、それで決まりだな」
「うん。それじゃあ皆、自分の荷物を確認してくれー!」
丈が声掛けをして、それぞれ自分の荷物を持って集まった。
『皆の士気も上がって良かった』
「太一と光子郎のおかげだね」
全くその通りだと思う。
「よーし、出発だー!」
「おお!」
新たな目的を目指し、わたしたちは歩き出した。
「なんで?」
『ヒビも小さいからすぐに治る。それに、今ここで皆を余計不安にさせる訳にはいかないからね』
だから頼むよ。そう静かにお願いすると、納得はしていないようだったが了解してくれた。理由はどうあれわたしの意思を尊重してくれたのが嬉しくてアグモン(黒)の頭をわしゃわしゃと撫でる。
『さて、もう戻ろう。シェルモンだってまだいるんだ』
「頼むから大人しくしていてよ碧」
『はは、善処はするよ』
おどけて笑ってみせると呆れたような表情をされた。
皆のところへ戻ると太一くんは触手のようなものに拘束され、彼のアグモンはシェルモンの手に押さえつけられていた。他の子どもたちは崖付近でへこたれてしまっている。見た感じ怪我はないようだ。
「うわあああ!」
シェルモンが触手のようなものに力を込めて縛り上げ、それに比例するように太一くんの苦しそうな悲鳴が浜辺に響いた。
このままでは危ない、何とかしなくてはと思っているものの他の子どもたちのデジモンたちはぐったりしていて応戦は期待できそうになかった。
『太一くん…!アグモン、シェルモンに攻撃することはできない?』
「さっきから試しているけどできない」
『えっ、どうして』
「お腹……へった」
なるほど。疲れているのは何も人間だけじゃない。むしろクワガーモンと戦った彼らデジモンの方が疲れているのだ。太一くんのアグモンが戦い続けていられたのはお菓子を食べていたからだろう。
気持ちばかりが焦る。このままでは太一くんの命が危ない。しかし助けてあげられるほどの策もなければ力もないのだ。ただ見ていることしかできない自分に奥歯を噛み締めた。
「アグモ…ン!」
「太一ぃ!」
苦しさから逃れたいという思いの込められた太一くんの悲鳴に応えるようにアグモンも叫ぶ。瞬間、2人の魂が共鳴したかのような錯覚に陥った。
太一くんの腰につけている機械が光を放ち、彼のアグモンが神々しい光に包まれる。確かにそれはクワガーモンと戦うときに見た懐かしい感じがする不思議な光だった。
「アグモン進化ー! グレイモン!」
光が収まった先にはオレンジ色の大きな恐竜がそこにいた。
「うわあ!」
今まで抑えていたアグモンがグレイモンに進化したことによりシェルモンは体勢を崩して後方へと倒れ込む。その衝撃により太一くんは宙に投げ出された。丁度こちらの方へと飛んできているが受け止めるには距離があまりにも足りず、ぐるぐると思考を回転させる。
『ここからだと間に合わない……アグモン!』
「えっ、何」
わたしからの突然の呼びかけに戸惑うアグモン(黒)を無視して持ち上げた。状況が分からず手足をばたつかせているが説明をしている暇はない。
円盤投げの要領で思いきり投げ飛ばした。
『そぉれ!』
「わああああ!碧のばかあああ!」
狙いはしっかりと太一くんに定められており我ながらのコントロールに惚れ惚れする。投げ飛ばす方も大変だが飛ばされる側はたまったものじゃないんだろうな、とそんなことを他人事のように思った。
泣きながら叫んでいるがきちんと意図は察したようで、アグモン(黒)は飛ばされながらも体の向きを変えて太一くんをしっかりと受け止めてくれた。ぼふっと音を立てて無事に砂浜へ着地したのを見届ける。
「大丈夫?太一」
「あぁ。それよりお前こそ平気かよ」
「なんとか」
そんなやり取りをしている彼らの元へわたしも急いで向かう。どうやらどちらも怪我なく無事らしかった。投げた張本人ではあるがそのことにこっそりと一人胸を撫で下ろす。
「また進化……グレイモンだって!?」
再び姿が変異したアグモンに太一くんを始めわたしたちは驚きを隠せず息を呑んだ。クワガーモンやシェルモンと同じくらい大きい恐竜に変わり、その姿勢は堂々としている。これも進化、というやつなのだろう。立派で鋭利な二本の角を生やした恐竜であるはずなのに何故だか怖さを全く感じず、逆に頼もしいと思えるほどに安心できている。
進化したグレイモンは大きく吼え、突進してきたシェルモンに掴み掛り受け止めた。どちらも力の強さはほど同等で均衡しているがややシェルモンが押しているようにも見える。
「頑張れ、グレイモン!」
太一くんが精一杯叫ぶ。グレイモンの腕から逃れたシェルモンが反撃といわんばかりに大量の水を放射するがグレイモンは体を横にずらすことで避けた。それに対抗するようにグレイモンも口から大量の炎を噴く。水と炎がぶつかり合う浜辺を水蒸気が覆い視界は悪くなる一方だがどちらも引けを取るまいと力を弱めることはないようだ。
だがその戦いも終盤に差し掛かるにつれてシェルモンが押され始めた。弱まる事のない炎の攻撃にシェルモンの体はどんどん後退していく。足が砂浜へ沈みかけて体勢を崩したその一瞬の隙を見逃さず、グレイモンがシェルモンの懐へと潜り込みその大きな角を振り上げると、重い殻ごと宙へ投げ飛ばした。
『……強さのレベルも段違いだ』
アグモンの頃に比べて体格も力も全てのステータスを遥かに凌駕している。彼らの進化とはこういうことなのだとどこか冷静になっている頭の片隅で理解した。
「メガフレイム!」
身動きができず格好の的になるシェルモンへグレイモンがその体に見合う巨大な火の玉を放つ。まともに喰らったシェルモンは小さな爆発をあげて海の彼方へ吹き飛んでいった。
勝ったのはグレイモンだ。
『……君もグレイモンになるの?』
「さあ」
何となく気になってアグモン(黒)に聞くがどうやら本人にも進化した後の姿がどうなるのかは分からないようだ。
無事に戦いが終わると、グレイモンが淡い光に包まれたのちアグモンに姿が戻っていた。アグモンに進化した後はコロモンに戻らなかったが今回は退化するらしい。どういう仕組みなのかと思ったがもしかしたらグレイモンの姿を保っていられるほどのエネルギーが残っていないのかもしれない。
「アグモン!戻ったんだ……大丈夫か、アグモン?」
「太一ぃ」
「ん?」
「腹、へったぁ」
「は、はは……」
太一くんの乾いた笑いが虚しく聞こえた。
「もしもし、もしもしぃ!」
一騒動を終えた後も壊れた電話に未だ奮闘している丈はそっとしておき、他の皆でこれからについて話し合いを始める。
「ここにいる理由はなくなったな」
「ああ」
電話はシェルモンの攻撃により壊れてしまったし、当初の目的でもあった着信を待つということはもうできない。太一くんの発言にヤマトくんも首を縦に振って答えた。
「さあ、どんどん食べてねー」
空ちゃんがデジモンたちにお菓子を分け与えている。進化して戦うのには膨大なエネルギーを消費しているということは今回の一件で分かったこと。
わたしたち人間はどう足掻いても太刀打ちできないので非常時には己のデジモンたちを頼ることになってしまう。その時の為にもなるべく空腹は満たしておきたいということで人間もデジモンも関係なく皆揃って食事をしようという結論に至った。
「シェルモンも完全に倒したわけではありません。また襲ってくる前に、ここから離れた方が良いと思います」
「確かにな」
光子郎の意見にヤマトくんが同意する。
「だったら、やっぱりあの森に戻ろうよ。僕らが最初にやってきた森だよ。あそこで助けを待とう!」
話を聞いていたのかいないのか、いつの間にか戻ってきていた丈が当初と変わらない意見を提案する。やはりここに人間はいないのではなはないか、とも思ったが丈はまだ望みを捨てきれていないらしいので口には出さずに苦い笑みを零した。
「前にも言ったけど、私たちは崖から落ちて川を下ったのよ?そう簡単には戻れないわ!」
「クワガーモンは嫌!」
空ちゃんとミミちゃんが強気に反論した。凄い剣幕で丈の意見を否定する彼女らに丈はたじたじである。感情に身を任せて怒鳴り合うのはいただけないかな、とわたしが3人を宥めようとしたところで横から光子郎が口を開いた。
「ここに電話ボックスがあったということは、誰か設置した人間がいるはずです。その人間を探した方が良いかもしれません」
「なるほど……」
丈へ若干のフォローを入れた光子郎の意見に反対する者は誰一人としていなかった。皆の言い分を上手く合わせた意見にわたしは心の中で静かに拍手を送る。
流石は光子郎だ。
「よし、それで行こう!」
「ボクは太一の行くところだったらどこにでも行くよ」
「ありがとよ、アグモン」
太一くんと一緒にいれることが余程嬉しいのだろう。アグモンが無垢な笑顔でそう言うと太一くんも応えるように笑い掛けた。
「じゃ、それで決まりだな」
「うん。それじゃあ皆、自分の荷物を確認してくれー!」
丈が声掛けをして、それぞれ自分の荷物を持って集まった。
『皆の士気も上がって良かった』
「太一と光子郎のおかげだね」
全くその通りだと思う。
「よーし、出発だー!」
「おお!」
新たな目的を目指し、わたしたちは歩き出した。