名字固定【篠崎】
爆裂進化!グレイモン!
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『丈はまだやっているのか』
「結構しつこい性格してるんですね」
「丈らしいよ」
光子郎は結構スッパリ言うんだね。普段が礼儀正しい子なだけに突然辛辣になる彼にわたしは苦笑いを浮かべるほかなかった。
皆どうやら電話をかけても意味不明でデタラメな情報しか出てこなかったようで、収穫できる情報は一切なかったようだ。
「もう諦めて移動しようぜ」
「ちょっと待て」
この状況に飽きたのか、太一くんは移動を提案して立ち上がる。もちろんそれを引き留めたのはヤマトくんだ。
「こっちから掛けられなくても、向こうから掛かってくる可能性があるんじゃないか?さっきみたいに」
「ここでジッとしてても、時間の無駄だよ」
「しばらく様子をみたらどうだと言ってるんだ。皆疲れてるんだぞ」
ヤマトくんの言葉に周りを見渡す。最年少のタケルくんやミミちゃん、それにデジモンたちも体力的に限界を迎えているようだった。なるほど確かに彼の言うことは正しい。
でも太一くんの言うことも間違いではない。寝床を探さなければいけない今、ここでいつまでも時間を潰しているという訳にもいかないのだ。
2人の意見を考慮するなら、そうだな。
『なら、少しここで休憩しよう。その間に電話が掛かってくるなら吉。そうでないなら太一くんの言う通り移動しようか』
「賛成です。お腹も減ってきましたね」
「そうだな。お昼もまだだったもんな。……よし、休憩だ休憩!」
比較的穏やかに事が運んで良かった。空ちゃんもホッと胸を撫で下ろしている。喧嘩は場の空気を壊すだけだから太一くんとヤマトくんの間に生じた剣呑に皆ハラハラしていた。
太一くんの判断がわたしたちの総意になりつつあるのは感じている。それは彼の内側に秘められたカリスマ性にわたしたちが無意識のうちに惹かれているからなのだと思う。
ヤマトくんのように周りのことをしっかりと考えられるようになれば太一くんは皆を導き、そしてわたしたちが付いて行きたいと思うようなリーダーに成り上がるだろう。
「誰か食べ物持ってる?あたしが持っているのはこの……あら?」
ベルト部分のポーチへ手を掛けようとして空ちゃんの動きが止まる。
「これって、あの時空から降って来た……」
「ああそれ。俺も持ったままだ」
わたしのショルダーバッグにも同じ機械が付いている。一度にいろんなことがありすぎて気が付かなかったが、これは祠の前で不思議な光に包まれて隕石のように降ってきたものだった。
「皆持ったままだったのか」
「どうやら、これは何か……」
言いかけたところで、光子郎の腹の虫が小さく鳴った。
『ふふ。可愛いな、光子郎』
「か、からかわないで下さい!」
やはり恥ずかしかったのか、顔を赤くしている。
「ところで、誰か食べ物って話でしたよね」
「あたしが持っているのは、旅行用の救急セット。絆創膏と消毒薬。それに針と糸くらいよ」
空ちゃんに天晴である。キャンプは大人たちもいるとはいえ非常時に自分でも対処できるようにと用意したものだろう。針と糸まで用意しているところを見ると普段から面倒見が良いのかもしれない。
「僕はこのノートパソコンとデジカメ、携帯電話。でもここに来てからどれも使えなくなってるんです。まだバッテリー残っていたはずなのに……」
「良く持ってくるよなあ、こんなの。サマーキャンプに」
『はは。光子郎らしくて良いじゃない』
アウトドアな行事のはずなのに光子郎だけは常にインドアな感じがするのはもはやご愛敬か。吹雪が吹いたあの時から使えなくなったパイナップルがトレードマークのノートパソコンを広げているが、どうやら今も電源が点かないようだ。
キャンプに持ってくるものではないと太一くんも呆れている。
「太一さんは?」
「えっ、俺?えーっと、これだけ。単眼鏡!」
ポケットから取り出したのは彼の手にフィットしているシンプルな単眼鏡。他の荷物はキャンプ場に置いてあるのか、はたまた本当にそれだけしか持ってきていないのかは定かではないが何とも太一くんらしいと思う。
「俺も食べ物は持ってないな」
ヤマトくんも食べられるものは持ってきていないようだった。でもあくまでも食べ物だけだから、もしかしたら他にも持ってきているものもあるかもしれない。
必要不必要をしっかりと区分けできているところは流石だなあ。
「僕持ってるよ。ほら!」
「わあ、お菓子!美味しそうね!」
得意気に言ってみせたタケルくんのリュックにはお菓子がたくさん入っていた。皆と一緒に食べようとしていたものだろうか、キャンプらしくて安心する。
ミミちゃんも様々な種類のお菓子を前に感激していた。
「あなた、うちの子ども会の子じゃなかったわよね?」
「うん!夏休みだからお兄ちゃんのとこに遊びに来たんだ。ねえお兄ちゃん!」
そう言ったタケルくんの目線はヤマトくんに向いた。
「あ、あぁ」
「ヤマトがお兄ちゃんだってさ」
「いとこですかね?」
太一くんと光子郎の会話を聞いていたであろう空ちゃんの顔は複雑そうだ。訳あり、ということで良いのだろうか。言われてみれば彼らの容姿は似ているけれど名字が違うから、太一くんと光子郎の反応にも頷ける。
「み、ミミちゃんは何を持ってるの? そのバッグ大きいけど」
空ちゃんによるあからさまな話題転換。やはり彼女は何か事情を知っているようだ。今はあまり触れない方が良いのかもしれない。
「え、これ?これはね……」
そう言って取り出したのは本格的なサバイバル用品だった。女子力以前の問題である。この子は無人島生活でもする気だったのだろうか。まあ、今は無人島に等しいのだけれど。
「普通は持ってこないぞ、こんなの」
「だが、これからは役に立つかもしれないな」
「そうね。これからどうなるか分からないし」
「そっかあ。それもそうだな」
5年生組は既にこれからのことを覚悟しているようでとても頼もしい。まだまだ不安やら抱えているだろうにそれを表に出さないあたり、年下の子たちを気遣っているのだろう。
ならばわたしや丈が彼らを支えてやらなければいけないな。
「そういえば、碧さんは何を持って来たんです?」
『残念ながら食べ物は持ってきていないよ』
まさかこんなことになるとは思ってもいなかったので今この状況で必要な物は何一つ持ってきていない。自分のショルダーバッグの中を思い出しては若干後悔するというのを繰り返しそうだ。
思わず渇いた笑いを零すと隣にいた光子郎に怪しまれてしまった。やめてくれ、そんな顔で見られると余計に自分が恥ずかしいよ。
「ところで、丈はまだ電話してるけど、食いもんなんて持ってきてな…」
『おやおや?』
「あれ、非常食だ!」
未だデタラメ電話と戦っている丈を見て太一くんも気付いたようだ。丈が肩から下げているシルバーのバッグには大きく非常用と記載されていたのである。
それを確認した子どもたち全員が声を上げた。
「おい丈! 非常食持ってるじゃないかー!」
「ええ?何で僕がそんなもの持たなきゃいけないんだよ」
『丈や。そのバッグだよ』
丈自身は気付いていなかったようだ。
「バッグ?そうだ、これをミミくんに届けにいくとこだったんだ!」
「ミミだって」
「あたし?」
名指しされたミミちゃんは心当たりがないようで不思議そうに首を傾げた。
「ミミくん!君は非常食当番だったろ。ちゃんと管理しておかなくちゃダメじゃないか!」
「えー。だって重たいし……」
いきなり説教を始めた丈にミミちゃんや他の子たちもたじたじだ。丈の気持ちも分かるけれどバッグの中身が班の人数分あるとしたらそれは重い。女の子が持つには厳しいんじゃないか。
「そういう我儘言ってちゃ」
「まあまあ。食べ物があるって分かっただけでもめっけもんだ。昼飯にしようぜ!」
「そうそう」
これには仲裁に入った太一くんも空ちゃんも苦笑いものだ。
「結構しつこい性格してるんですね」
「丈らしいよ」
光子郎は結構スッパリ言うんだね。普段が礼儀正しい子なだけに突然辛辣になる彼にわたしは苦笑いを浮かべるほかなかった。
皆どうやら電話をかけても意味不明でデタラメな情報しか出てこなかったようで、収穫できる情報は一切なかったようだ。
「もう諦めて移動しようぜ」
「ちょっと待て」
この状況に飽きたのか、太一くんは移動を提案して立ち上がる。もちろんそれを引き留めたのはヤマトくんだ。
「こっちから掛けられなくても、向こうから掛かってくる可能性があるんじゃないか?さっきみたいに」
「ここでジッとしてても、時間の無駄だよ」
「しばらく様子をみたらどうだと言ってるんだ。皆疲れてるんだぞ」
ヤマトくんの言葉に周りを見渡す。最年少のタケルくんやミミちゃん、それにデジモンたちも体力的に限界を迎えているようだった。なるほど確かに彼の言うことは正しい。
でも太一くんの言うことも間違いではない。寝床を探さなければいけない今、ここでいつまでも時間を潰しているという訳にもいかないのだ。
2人の意見を考慮するなら、そうだな。
『なら、少しここで休憩しよう。その間に電話が掛かってくるなら吉。そうでないなら太一くんの言う通り移動しようか』
「賛成です。お腹も減ってきましたね」
「そうだな。お昼もまだだったもんな。……よし、休憩だ休憩!」
比較的穏やかに事が運んで良かった。空ちゃんもホッと胸を撫で下ろしている。喧嘩は場の空気を壊すだけだから太一くんとヤマトくんの間に生じた剣呑に皆ハラハラしていた。
太一くんの判断がわたしたちの総意になりつつあるのは感じている。それは彼の内側に秘められたカリスマ性にわたしたちが無意識のうちに惹かれているからなのだと思う。
ヤマトくんのように周りのことをしっかりと考えられるようになれば太一くんは皆を導き、そしてわたしたちが付いて行きたいと思うようなリーダーに成り上がるだろう。
「誰か食べ物持ってる?あたしが持っているのはこの……あら?」
ベルト部分のポーチへ手を掛けようとして空ちゃんの動きが止まる。
「これって、あの時空から降って来た……」
「ああそれ。俺も持ったままだ」
わたしのショルダーバッグにも同じ機械が付いている。一度にいろんなことがありすぎて気が付かなかったが、これは祠の前で不思議な光に包まれて隕石のように降ってきたものだった。
「皆持ったままだったのか」
「どうやら、これは何か……」
言いかけたところで、光子郎の腹の虫が小さく鳴った。
『ふふ。可愛いな、光子郎』
「か、からかわないで下さい!」
やはり恥ずかしかったのか、顔を赤くしている。
「ところで、誰か食べ物って話でしたよね」
「あたしが持っているのは、旅行用の救急セット。絆創膏と消毒薬。それに針と糸くらいよ」
空ちゃんに天晴である。キャンプは大人たちもいるとはいえ非常時に自分でも対処できるようにと用意したものだろう。針と糸まで用意しているところを見ると普段から面倒見が良いのかもしれない。
「僕はこのノートパソコンとデジカメ、携帯電話。でもここに来てからどれも使えなくなってるんです。まだバッテリー残っていたはずなのに……」
「良く持ってくるよなあ、こんなの。サマーキャンプに」
『はは。光子郎らしくて良いじゃない』
アウトドアな行事のはずなのに光子郎だけは常にインドアな感じがするのはもはやご愛敬か。吹雪が吹いたあの時から使えなくなったパイナップルがトレードマークのノートパソコンを広げているが、どうやら今も電源が点かないようだ。
キャンプに持ってくるものではないと太一くんも呆れている。
「太一さんは?」
「えっ、俺?えーっと、これだけ。単眼鏡!」
ポケットから取り出したのは彼の手にフィットしているシンプルな単眼鏡。他の荷物はキャンプ場に置いてあるのか、はたまた本当にそれだけしか持ってきていないのかは定かではないが何とも太一くんらしいと思う。
「俺も食べ物は持ってないな」
ヤマトくんも食べられるものは持ってきていないようだった。でもあくまでも食べ物だけだから、もしかしたら他にも持ってきているものもあるかもしれない。
必要不必要をしっかりと区分けできているところは流石だなあ。
「僕持ってるよ。ほら!」
「わあ、お菓子!美味しそうね!」
得意気に言ってみせたタケルくんのリュックにはお菓子がたくさん入っていた。皆と一緒に食べようとしていたものだろうか、キャンプらしくて安心する。
ミミちゃんも様々な種類のお菓子を前に感激していた。
「あなた、うちの子ども会の子じゃなかったわよね?」
「うん!夏休みだからお兄ちゃんのとこに遊びに来たんだ。ねえお兄ちゃん!」
そう言ったタケルくんの目線はヤマトくんに向いた。
「あ、あぁ」
「ヤマトがお兄ちゃんだってさ」
「いとこですかね?」
太一くんと光子郎の会話を聞いていたであろう空ちゃんの顔は複雑そうだ。訳あり、ということで良いのだろうか。言われてみれば彼らの容姿は似ているけれど名字が違うから、太一くんと光子郎の反応にも頷ける。
「み、ミミちゃんは何を持ってるの? そのバッグ大きいけど」
空ちゃんによるあからさまな話題転換。やはり彼女は何か事情を知っているようだ。今はあまり触れない方が良いのかもしれない。
「え、これ?これはね……」
そう言って取り出したのは本格的なサバイバル用品だった。女子力以前の問題である。この子は無人島生活でもする気だったのだろうか。まあ、今は無人島に等しいのだけれど。
「普通は持ってこないぞ、こんなの」
「だが、これからは役に立つかもしれないな」
「そうね。これからどうなるか分からないし」
「そっかあ。それもそうだな」
5年生組は既にこれからのことを覚悟しているようでとても頼もしい。まだまだ不安やら抱えているだろうにそれを表に出さないあたり、年下の子たちを気遣っているのだろう。
ならばわたしや丈が彼らを支えてやらなければいけないな。
「そういえば、碧さんは何を持って来たんです?」
『残念ながら食べ物は持ってきていないよ』
まさかこんなことになるとは思ってもいなかったので今この状況で必要な物は何一つ持ってきていない。自分のショルダーバッグの中を思い出しては若干後悔するというのを繰り返しそうだ。
思わず渇いた笑いを零すと隣にいた光子郎に怪しまれてしまった。やめてくれ、そんな顔で見られると余計に自分が恥ずかしいよ。
「ところで、丈はまだ電話してるけど、食いもんなんて持ってきてな…」
『おやおや?』
「あれ、非常食だ!」
未だデタラメ電話と戦っている丈を見て太一くんも気付いたようだ。丈が肩から下げているシルバーのバッグには大きく非常用と記載されていたのである。
それを確認した子どもたち全員が声を上げた。
「おい丈! 非常食持ってるじゃないかー!」
「ええ?何で僕がそんなもの持たなきゃいけないんだよ」
『丈や。そのバッグだよ』
丈自身は気付いていなかったようだ。
「バッグ?そうだ、これをミミくんに届けにいくとこだったんだ!」
「ミミだって」
「あたし?」
名指しされたミミちゃんは心当たりがないようで不思議そうに首を傾げた。
「ミミくん!君は非常食当番だったろ。ちゃんと管理しておかなくちゃダメじゃないか!」
「えー。だって重たいし……」
いきなり説教を始めた丈にミミちゃんや他の子たちもたじたじだ。丈の気持ちも分かるけれどバッグの中身が班の人数分あるとしたらそれは重い。女の子が持つには厳しいんじゃないか。
「そういう我儘言ってちゃ」
「まあまあ。食べ物があるって分かっただけでもめっけもんだ。昼飯にしようぜ!」
「そうそう」
これには仲裁に入った太一くんも空ちゃんも苦笑いものだ。