もう壁はない、お前の心に何が見える

かちゃかちゃ、
目の前のテーブルのサラダにフォークをさし、口にもっていく。
露伴は、今、チェーン店のステーキ屋さんにきていた。

承太郎さんと一緒に。
「…」
「…」
承太郎さんは先程、ソースを掛けず食べてしまいそうになっていて、露伴が、ソースを差し出した。その時、手が、触れた。
承太郎さんの大きな手がまるで包み込むように手ごとソースを受けとったのだ。ただ手が大きかっただけだ。そうだというのに。
その時なぜか、露伴は体中にしびれがくるような熱い何かを感じた。心臓はドキドキとたかなり、いっぱいいっぱいだった。だが嫌な気はしない。
承太郎さんがもつ荒々しくどこか優しい雰囲気に、…その魅力に、惹き込まれてしまいそうだ。
露伴は微かに首をふる
まさか、そんなわけ、ない。
惹き込まれる、そう、それだけならいい。
露伴が、そう思っていた時、承太郎さんがフォークを置いて、言った。

「…どうした?首をふっていたが、不味かったか?」
「い、いや、僕は、すきですよ。このサラダ好きです。」
何故か好きをいっぱい言って露伴は、顔が熱くなった。
「そうか…うれしいぞ。俺も気に入った。」
サラダを食べ終わるか、どうかくらいにステーキが運ばれてきた。
「済まないがフォークとナイフをとってくれ」
露伴はドキドキしながら、テーブルに置く
「露伴、体調がよくないのか?顔が真赤だが」
置いて離れようとした露伴の手首を掴み、ぐいっと近寄る承太郎。
「具合がよくないのにここまで来たのか?それとも何か嫌な事でもしてしまったなら、謝る」
「だ、そ、そんな事はないですよ。きのせいです。」
承太郎さんはそうか…と手を離した。
「わかった」
「はい。」
そして、ステーキに取り掛かる。
露伴は、目の前の承太郎さんを暫くみて、我に返り、ステーキを食べ始めた。
なんだこの興奮を上まわる心は。ステーキの味は美味い、承太郎さんも、いい人なのだと分かる。
まさか、友人にでもなれる気がする。友人?いや、と、友人だ。そうだ。友人…
露伴は焦りと幸福を噛み締めながらどこまでも、動揺した。
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