もう壁はない、お前の心に何が見える

リアリティが欲しい。
岸辺露伴は、ため息をついて額を片手で押さえた。
ここは自宅の仕事部屋。
手元にはとある人物の絵。
筋肉は猛々しく、無口な彼。
空条承太郎さんの絵だ。
「承太郎さん…」
その存在を初めて知った時から湧き上がる興奮。漫画家として自分のものにしたいと思っている気持ち。だが心が何か変化し、今はただ、承太郎さんに会えないかと模索しつづけ、仕事にも支障をきたしてしまったのだ。
正確にはこの漫画は承太郎さんを知った事で他にもっと描きたいものが、増えたように思うのだ。紙にインクが滲み出でる。
「僕としたことが…、漫画を描く手が止まったのはいつからだ、何が原因なんだ…。」
承太郎さんの絵を描くと一層漫画への意欲が溢れ出す。それなのに承太郎さんの絵しか描かない。
からん…ころころ…
ペンを置き、露伴は自分自身を強い力で抑えこむように抱きしめる。
「もう、限界だ。この興奮の仕方は異常だ。」
露伴は、手紙を書き始めた。
「空条、承太郎、様」
会ったのはたった1回。パブで、快楽で人を苦しめているスタンド使いの、噂程度の情報を渡した時のみ。もう一度会い、彼を取材し、い、いや、ちがう。なんならその噂を聞いて、どうしたのかを、聞いてみたい。
「僕が気にしているのは、僕が渡した噂が本当だったのかどうかだ。そう…承太郎さんに会いたいのは、そういうわけだ。」

この心に、この体に宿る情熱は、誰にもとめられないのだから
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