もう壁はない、お前の心に何が見える

きらきら輝く緑の光の中、承太郎さんはこちらに手を伸ばす。
「来い」
露伴はゆっくりとしっかり、目に焼き付ける。
承太郎さんの目は蒼然とした光に染められ、猛々しい強い想いが滲む眼差しでこちらを見ている。声にははっきりと勇ましさのようなものが滲み出でていて、露伴は己の心に言いしれぬ何か、無窮の深奥にまで届く何かを感じ燦然と輝く星のような承太郎さんに、体中痺れのようなものが駆け巡った。
衝撃で声も出せず、露伴はゆっくり承太郎さんに近づく。
手を、伸ばす。
手が触れるかとおもったら、抱き込まれていた。
「準備が整った。お前に見せたいのはこれからだ。上をみろ。」

「…?うえ…ですか?」
さーと、風が、ふき、葉と葉の間から太陽が、覗く。
こぼれ日が葉が揺れる度に現れる。
そして…
日の光を受け緑の光は、鮮やかなオレンジに変わった。少し黄色みがかったオレンジは、辺たりのこぼれ日にまじって白くひかる。
あたたかそうな優しい光につつまれる。まるで、太陽の光が2人を祝福してるかのように。
「これは…」
「どうだ?少しは漫画に使えそうか?」
「…ええ。僕が全力の力で漫画にしてみせます。」
「そうか。」
承太郎は、露伴の頬に、触れ、ゆびを口唇にすべらせ上を向かせる。
「露伴、覚えておけ。俺はお前が思ってるほど良いやつじゃない。気取ってるうちはまだ、良い。だが、次は無いと思え。」
「…っ…な、あ、あむむ」
口唇から侵入した指に舌を絡めとられ、露伴は思考ができなくなった。

そしていつまでそうしていただろう。
いつの間にかオレンジも緑の光もなくなり、何事もなかったかのように、辺りはしずまり返る。
口内を弄ばれ、ぼーと、承太郎さんを見つめる露伴はもう、意識を失いかけているようだ。それほど、今日起きた出来事が、露伴に影響を与えた。
承太郎さんは、やおら満足気に、露伴から自分の指を抜くと、ぼーと目がさまよう露伴の肩を支え、その場を後にした。
4/28ページ
スキ