もう壁はない、お前の心に何が見える
破壊された部屋は元に戻り、今
ホテルは何事もなかったように平穏の中にあった。
その部屋のダイニングで
承太郎さんは仗助と向かいあい話していた。
仗助はテーブルを挟んで立つ承太郎さんに言った。
「ーーつまり、露伴さんのスタンドに、寄生した雀のスタンド使いの能力は、露伴さんが自分のスタンドの力を封じる事で、寄生出来なくさせたって、ことであってます?」
承太郎さんはああ。と短く答える。
「へ〜、じゃ、露伴さんは、今スタンド使いが襲ってきたら何も出来ないって事すね。」
「そうだ。敵に利用されやすくなるだろう。だからスタンドの能力が戻るまでは俺の所で預かる。露伴のスタンド能力はまた、いずれ復活する。」
「それで露伴さんは、今精神不安定で寝込んでると。大丈夫なんすか?」
「生活する上では問題はないだろう。だが少し目眩があるようだ。もう少し様子を見るが、同意があれば、精神科の処方する薬を貰う事になるだろう。」
「精神科っ。まじかよ。へー大変なんですね。」
仗助はお茶を飲み、テーブルに置いた。
「それで、一番気になるのは、承太郎さんの傷です。誰が治したんですか?」
「俺にもはっきりとは分からない。だがこれは推測だが、あの時、別の世界線の俺が、自分の魂の力を使って俺に接触していた。そこに、魂が癒される出来事が起きた。……仗助、精神的な傷が、身体に本当の傷として残る事があると知っているか。俺はあると思っている。逆に俺が纏っていた魂によって、身体の修復がなされた。俺の傷は、まるごと、その魂の傷になっていたからだ。」
「う、言ってる事は理解はできるんですが、可能、なんすか?」
「いや、これは仮説だ。可能かは実証出来ないだろうな。」
承太郎さんは、露伴が寝ている寝室の方を見る。
露伴が持っていた想い、その一つで、この世界線の俺は生きている。
でも、それだけではだめだ。
まだ、だ。
俺はまだ、露伴を助けていない。
俺は露伴と肩を並べて生きたい。
愛しい露伴への想い、心が壊れても、俺はこの想いを捨てはしないだろう。
仗助は承太郎さんの横顔をみて、承太郎さんも精神が病んでるようにも、希望に燃えてるようにも見えた。
「承太郎さん、それ、ですよ。だとしたら、今回、承太郎さんも、精神がやばかったんですよね。魂が傷つくほど。何があったか気になりますが、教えてはくれないですよね。」
「今は、その時ではない。と思っている。だが、お前の言いたい事は、分かる。もしも弱みが先に敵にばれてしまったら、次は俺も生きれるか分からない。」
承太郎さんは考えながら、仗助に話す。
「時が来れば、お前にもいずれ話そうと考えていた。だが敵の多い杜王町では悠長でいられないのも確かだ。それでも全て終わらせてからじゃないと意味がない。」
「っ。分かりました。それ、本当っすね。いつか、約束、ですよ。」
仗助の瞳は朝焼に濡れて、赤く燃えてるように見えた。勘違いかもしれない一瞬の間。
「仗助…。おまえ。」
「いや俺だって、承太郎さんのこと、その、ありていに言えば、少しは心配っていうか、そんな簡単じゃないすけど、そのそういうの思ってるって事です。」
「仗助…。俺は、お前をも、傷つける事になるかもしれないんだぞ。」
「嫌っすね。けど承太郎さんは、何時でも俺の見方でいてくれてるじゃないですか。それを、恩とか言うつもりないですけど。ただ、絆は、信じても良いと思ってるんですよ。」
承太郎は仗助の想いを、心に留める。
口の端を少しあげ、分かった。と、言い、そして、承太郎さんは仗助に礼を言う。
「あ〜もう、っ俺そろそろ帰りますね。」
「…ああ。亅
仗助は少し照れながら、部屋を出てた。
「あ、でも、…承太郎さんが間違えてると思ったら俺、容赦しませんから。すいませんけど、そこは俺の測りで考えさせてもらいます。」
「ああ。」
承太郎はその背中を見送る。
「容赦はしない、か。」
扉を締めた時、承太郎は仗助の言葉を考える。
己の道を間違えるつもりはない。だがそれは承太郎の測りであって、仗助の意思、想いも受け止める必要がある。
自分達の行き着く場所へと、進む為に。
承太郎は部屋をノックすると、露伴のいる寝室に呼びかけ、部屋へと入る。